)” の例文
先生せんせいが、あきになると、空気くうきむからちかえるのだといったよ。」と、いただきてんについていないと反対はんたいした子供こどもはいいました。
木に上った子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(いゝえたれりはしませんよ。)とましてふ、婦人をんな何時いつにか衣服きものいで全身ぜんしん練絹ねりぎぬのやうにあらはしてたのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これをんだ泉の水にたとえた人がいますが、実際じっさいフランス語でこれを読むと、もう百倍もうつくしい文章だということがわかります。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
そらは深くんで、澄んだなかに、西にしはてから焼ける火のほのほが、薄赤く吹き返して来て、三四郎のあたまうへほてつてゐる様に思はれた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
山男がこんなことをぼんやり考えていますと、そのみ切った碧いそらをふわふわうるんだ雲が、あてもなく東の方へ飛んで行きました。
山男の四月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しもに焼けたつつじのみが幾重いくえにも波形に重なって、向こうの赤松あかまつの森につづいている。空は青々とんでおり、風もない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「海はいでいました」と、月が言いました。「水は、わたしが帆走ほばしっていたみきった空気のように、きとおっていました。 ...
が、今はこの気味の悪い藪も狸などはどこかへい払ったように、日の光のんだ風の中に黄ばんだ竹のをそよがせている。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「見やがれ、つらいろが変りやがった。うぬはなんだろう、大聖寺だいしょうじの前田の家来か九谷の陶器作すえものつくりのせがれだろう。うまくましていやがるな」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでは川が地下のあなにもぐって、それから、ガラスでできているのかと思われるほど、清らかなみきった流れとなります。
世間せけんの人達はあきれ返りました。甚兵衛じんべえ一人はましたもので、いつも謎のような鼻唄を歌って、街道かいどうき来しました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その面上にははや不快の雲は名残なごり無く吹きはらわれて、そのまなこは晴やかにんで見えた。この僅少わずかの間に主人はその心のかたむきを一転したと見えた。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
八幡下の田圃を突切つっきって、雑木林の西側をこみちに入った。立どまってややひさしく耳をました。人らしいものゝもない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まるい月は形が大分だいぶちひさくなつて光があをんで、しづかそびえる裏通うらどほりのくら屋根やねの上、星の多い空の真中まんなかに高く昇つてた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
きたまくらに、しずかにじている菊之丞きくのじょうの、おんなにもみまほしいまでにうつくしくんだかおは、磁器じきはだのようにつめたかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
男の目がスーッとんだように見えた。しかし、表情は殆んど変らなかった。身動きさえしなかった。女はおしゃべりの昂奮こうふんで、ほの赤く上気していた。
断崖 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なまりはあるが、カナリヤのようにきれいにんだ声だった。それはニーナだった。そばには、ワイコフ医師もいた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……わたしは、あれほどおつに気どりました、うぬぼれの強い、ひとりよがりの男を、いまだかつて見たことがない。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
かみさまも、このはなをつつむには、特別上等とくべつじょうとうんだやわらかな春光しゅんこうをつかっていらっしゃるとしかおもえない。そのうえ、またこのがすばらしい。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
女子ハアドルの内田さんが、先に進みでて、「おおきに」とましたお辞儀じぎをしたので、あなた達は笑いくずれる。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
れど瀧口、口にくはへし松が枝の小搖こゆるぎも見せず。見事みごと振鈴しんれいの響に耳をまして、含識がんしきながれ、さすがに濁らず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
山間さんかん湖水こすいのようにった、気高けだかひめのおかおにも、さすがにこのとき情思こころうごきがうす紅葉もみじとなってりました。わたくしかまわずいつづけました。——
んだそらつきながらながめる、ひといきれからのがれた郊外こうがいたのしみは、こゝにとゞめをす……それがられない。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
吉備きびくに中山なかやま——美作みまさかにある——よ。それがこしのひきまはしにしてゐる、細谷川ほそたにがはおとんできこえることよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
川上に家は一軒もなく、ちろちろの水はきれいだった。山から流れてきてはじめて、ここで人のはだにふれる水は、おどろくほど、つめたくみきっていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
煕々ききとして照っていた春のはいつかはげしい夏の光に変り、んだ秋空を高くがんわたって行ったかと思うと、はや、寒々とした灰色の空からみぞれが落ちかかる。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そも/\ながれにちり一ツうかびそめしはじめにて、此心このこゝろさらへどもらず、まさんとおもふほどきにごりて、眞如しんによつきかげ何處いづく朦々朧々もう/\ろう/\ふちふかくしづみて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にはひかりがあり反射はんしやがあり、そらにはいろうるほひとがある。空氣くうきんで/\すみつて、どんな科學者くわがくしやにもそれが其處そこにあるといふことを一わすれさせるであらう。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ともしがついて夕炊ゆうげのけむりが家々から立ち上る時、すべてのものが楽しく休むその時にお寺の高いとうの上からんだすずしい鐘の音が聞こえておにであれであれ
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
とうさんがでもまはしながらあそびにつてますと、ながれてみづおほきなはこなかんでまつてます。そのみづはこからあふれてむらしもはうながれてきます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
俊敏しゅんびん早熟そうじゅくの上に盲目になった結果として第六感の神経がまされてもいたことを思うと必ずしも突飛とっぴな想像であるとはいえない気位の高い春琴は後に恋愛を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ぐっと肉の中まで入れて液を押すと、間もなく薬が効いて来たのか、一代はけろりと静かになり、死んだように眠ってしまったが、耳をませるとかすかないびきはあった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
省三はまた箸を動かしだしたが彼はもうおち着いたゆとりのあるんだ心ではいられなかった。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それを聞いたら彼が心機一転するかもしれない、などと吹聴ふいちょうしていた。劇が始まっても二人はなお吹聴をやめなかった。クリストフは二人を黙らして、耳をましていた。
黒縮くろちりつくりでうらから出て来たのは、豈斗あにはからんや車夫くるまやの女房、一てうばかりくと亭主ていしが待つてて、そらよと梶棒かぢぼう引寄ひきよすれば、衣紋えもんもつんと他人行儀たにんぎようぎまし返りて急いでおくれ。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
その赤ん坊が、すやすやと眠っている。荘厳そうごんで、しずかで、その赤ん坊のうつくしさは、底にふかい輝きを忍ばせてみきっていた。まもなく私はお前が眼をあけるのを見た。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
廃兵院で鶴の啼く声がみわたってよく聞える午前の一時近くになって、皆が席を立った。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
空は濃青にみ澱んで、小鳥は陽の光を水飴のようにつばさや背中にねばらしている朝があった。縁側から空気の中に手を差出してみたり、頬を突き出してみたりした復一は、やがて
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
丸之内の某社ぼうしゃで警察方面の外交記者を勤めて、あくまで冷酷な、現実的な事件ばかりでまされて来た私の頭には、そんなお伽話とぎばなしじみた問題を浮かべ得る余地すら無かった。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
秋らしくみ返つた夜氣やきのややはださむいほどに感じられた靜かな夜の十二時近く、そして
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その眼にとまらないものを掃き上げると、そこからべつなんだ景色が見えて来ていた。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「いゝえ、反抗は致しません。女に反抗する力なんかあツてたまるものですか。」とましきツてツて、「時にもうおひるでございませうから、御飯をおあがりなすツては?………」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
まぎらわしいが、これは、喬之助にまして——ナニ、化けなくても、生地のまんまで喬之助ソックリなんだが、その上、斬込みの時の着付けまで寸分同じな、神田は帯屋小路
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しばらくすると朗々ほがらかんだ声で流して歩く馬子唄まごうたが空車の音につれて漸々ぜんぜんと近づいて来た。僕は噴煙をながめたままで耳を傾けて、この声の近づくのを待つともなしに待っていた。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
黒いモーニングはからだにぴったりあっているがズボンの方は白色だ。んだ音楽の行進曲に歩調がそろって行く。これはその実「ペンギン鳥の住みかをたずねて」と題する南極での実写じっしゃだ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
み切った月が、暗くにごったしょくの火に打ち勝って、座敷ざしきはいちめんに青みがかった光りを浴びている。どこか近くで鳴く蟋蟀こおろぎの声が、笛のにまじって聞こえる。甘利はまぶたが重くなった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ぎにつたほがらかなこゑくぶっぽうそう(佛法僧ぶつぽうそう)はきつゝきのるいで、かたちからすてゐますが、おほきさはその半分はんぶんもありません。羽毛うもう藍緑色あゐみどりいろで、つばさとが菫色すみれいろびてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
井戸ゐどほどにふかくもければ、教會けうくわい入口程いりぐちほどにはひろくもない、が十ぶんぢゃ、やくにはつ。明日あすたづねてくれい、すればはかなかから御挨拶ごあいさつぢゃ。乃公おれの一しゃうも、誓文せいもん總仕舞そうじまひんでしまうた。
とたちまち霧は消えてしまって、空は紺青こんじょうみわたって、その中を雲雀がかけていました。遠い遠い所に木のしげった島が見えます。白砂しらすなの上を人々が手を取り合って行きかいしております。
伊香刀美いかとみはすこし拍子ひょうしけがして、そこらをぼんやり見回みまわしました。すると水晶すいしょうかしたようにみきった湖水こすいの上に、いつどこからたか、八にん少女おとめがさもたのしそうにおよいであそんでいました。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)