)” の例文
旧字:
「あのつらに、げんこつをくらわせることはなんでもない。だが、おれが、うでちからをいれてったら、あのかおけてしまいはせぬか?」
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
上窄うえすぼまりになったおけ井筒いづつ、鉄のくるまは少しけてよく綱がはずれ、釣瓶つるべは一方しか無いので、釣瓶縄つるべなわの一端を屋根の柱にわえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
つまり、よくが破れているとか、プロペラのはしけているとか、座席の下に穴が明いとるとか、そういうボロ飛行機でよいのじゃ。
「聖者たるは異例なり、正しき人たるは常則なり。道に迷い、務めをき、罪を犯すことはありとも、しかも常に正しき人たれ。」
そらにあるつきちたりけたりするたびに、それと呼吸こきゅうわせるような、奇蹟きせきでない奇蹟きせきは、まだ袖子そでこにはよくみこめなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
溢れ出したものは遅く上って来た半けの月と零下二十度近い、霜の氷り付いた黒土原の上に、眼も遥かに投出されたままになっている。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
内匠頭たくみのかみ従兄弟いとこが美濃大垣の城主にあたるから、それか、芸州藩か、さもなければ、勅使に礼をいた件で、京都へのぼる公儀の急使か。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巨礫きょれきがごろごろしている。一ついて見せるかな。うまくいった。パチンといった。〔これは安山岩あんざんがんです。上流かみの方からながれてきたのです。〕
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
『ほんとに、さうでしたねえ』とだれ合槌あひづちうつれた、とおもふと大違おほちがひ眞中まんなか義母おつかさんいましもしたむい蒲鉾かまぼこいでらるゝところであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
服飾ふくしよくの事は前回にてしるおはりたれば是より飮食の事を記すべし先づみ物には如何なる種類しゆるゐ有りしかと云ふに、人生じんせいく可からざる水は勿論もちろん
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
あいしてだいじにするのか、運動の習慣しゅうかんでだいじにするのか、いささか分明ぶんめいくのだが、とにかく牛をだいじにすることはひととおりでない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あによめでも、誠太郎でも、縫子でも、あに終日しうじつうちに居て、三度の食事を家族と共にかさずふと、却つてめづらしがる位である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただ母と弟にはまだ内証ないしょうにしてあった。もう一人このせきにだいじな人がけていた。それはあの気のどくなヴィタリス親方。
中にも矢毒は原始人類にとりて必要くべからざるものであり、又人間を毒殺するてふことの濫觴らんしやうとも見られぬでもない。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
しかしその宇宙を一っけのビスケットと見るような、より大きな世界が、無いとは断言出来ないことではありませんか。
宇宙爆撃 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
半時間毎はんじかんごとくらいかれ書物しょもつからはなさずに、ウォッカを一ぱいいでは呑乾のみほし、そうして矢張やはりずに胡瓜きゅうり手探てさぐりぐ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「スポーツマンシップにけるようですが、お考えどおり、ガラスの破片はへんをよういさせましょう。目に見えない怪物かいぶつに、あばれられては大変たいへんですからな」
まして当人とうにんはよほど有難ありがたかったらしく、早速さっそくさまざまのお供物くもつたずさえておれいにまいったばかりでなく、その終生しゅうせいわたくしもと参拝さんぱいかさないのでした。
状使のこれはきはめて急なれば、車に乗りてけとめいぜられたる抱車夫かゝへしやふの、御用ごようとなれば精限せいかぎけてけてかならずおかざるべし、されど車に乗るとふは
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
文久三年に生れたのが一太郎いちたろう、その次は捨次郎すてじろうと、次第に誕生して四男五女、合して九人の子供になり、さいわいにして九人とも生れたまゝ皆無事で一人もけない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
帳付け お松どんそんなことを当人の前でいうじゃないぜ、頭を半分ブッかれるか知れないからなあ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「それもそうだが、はじめに黒の一石をわがゆうにしたそっちの石も、つまり見事な男ぶり……いやなに、石振りではないはずだぞ。けとる、ハッハッハ右がける」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伊弉諾神いざなぎのかみはしまいには、もう待ちどおしくてたまらなくなって、とうとう、左のびんのくしをおぬきになり、そのかたはしの、大歯おおはを一本き取って、それへ火をともして
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
よくるとの一つしかないのや、口のまるでないのや、はなけたのや、それはそれはなんともいえない気味きみわるかおをした、いろいろなものしくらをしておりました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その石も巨大なるブッきや、角の取れない切石や、石炭のかすのような「つぶて」で、一個一個としては、咸陽宮かんようきゅうの瓦一枚にすらかないものであるが、これが渾然こんぜんとして
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
つひ一晩ひとばんかさねえで、四手場よつでばぢいも、きし居着ゐつきのいはのやうだ——さてけばひよんなことぬまぬし魅入みいられた、なに前世ぜんせ約束やくそくで、じやうぬま番人ばんにんつたゞかな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日ごろこれらの修養をく人が、ある一事にかかることを為すと、自分はともかく、他人に大なる迷惑をかけ、しかしてかえって悪事を為すことを奨励しょうれいするに傾きがちである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
路傍ろぼうの淫祠に祈願をけたお地蔵様のくび涎掛よだれかけをかけてあげる人たちは娘を芸者に売るかも知れぬ。義賊になるかも知れぬ。無尽むじん富籤とみくじ僥倖ぎょうこうのみを夢見ているかも知れぬ。
茶碗ぢゃわん、それら廃品がむなしく河原に山と積まれ、心得顔した婆がよちよち河原へ降りて来て、わしはいつぞやこの辺に、かんざしを一つ落したが、それはまだ出て来ませんか
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
月のけを目標とした太陰暦の時代には、朔日くらい目に立たぬものはなかったろう。よほどそのつもりで気をつけておらぬと、今日から月がかわるということを知らずにいる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今日までの日本文化においてこの科学的思想をいていたのは、一に従来の環境によるのであると解したところで、さて環境の変化が民族思想に具体的な影響を持来さしめるまでには
日本文化と科学的思想 (新字新仮名) / 石原純(著)
ところどころ、川べりの方の家並やなみがけて片側町かたがわまちになっているけれど、大部分は水の眺めをふさいで、黒いすすけた格子こうし造りの、天井裏てんじょううらのような低い二階のある家が両側にまっている。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
和田先生は持てん八十てんだが、五十前後の年はいの方にはめづらしい奇麗きれいな、こまかなりをされる。しかも、ややいんするといへるほどのねつ心家で、連夜れんやほとんど出せきかされた事がなかつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すこ御新造ごしんぞ機嫌きげんかいなれど、目色めいろ顏色かほいろみこんで仕舞しまへばたいしたこともなく、結句けつくおだてにたちなれば、御前おまへ出樣でやう一つで半襟はんゑりはんがけ前垂まへだれひもにもことくまじ、御身代ごしんだい町内てうないだい一にて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「蕃人を女房にもっているばかりに、世間の義理までかなくちゃならん」
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
けん長屋ながやのまんなか縁起えんぎがよくないという、ひとのいやがるそんまんなかへ、所帯道具しょたいどうぐといえば、土竈どがまと七りんと、はし茶碗ちゃわんなべが一つ、ぜん師匠ししょう春信はるのぶから、ふちけたごろの猫脚ねこあしをもらったのが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其処そこには、自分の趣味なんぞ半けらもなかった。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おとこは、いえかえり、今度こんどは、失敗しっぱいをしないつもりで、けた仏像ぶつぞうをふろしきにつつんで、むら金持かねもちのところへってかけました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間を傷つけるに兇器きょうきにこといたのかはしらぬが、歯をもってみ殺すとは何ごとであるか。まるでけもののような殺し方である。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
くうをつかんで、楊志はったが、とたんに、どたと仆れてしまった。昏々こんこんとして、それ以後は意識のけらも彼になかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霜を含んだ夜気やきは池の水の様にって、上半部をいた様な片破かたわれ月が、はだかになった雑木のこずえに蒼白く光って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かれらはたいてい指で肉をつかんで食べて、がつがつ食いいたり、父母の気がつかないようにしゃぶったりした。
た時は、運動しても駄目だから遊んでゐると云ふし、今は新聞にくちがあるから出様と云ふし、少し要領をいでゐるが、追窮するのも面倒だと思つて、代助は
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まち玩具屋おもちゃやから安物やすものっててすぐにくびのとれたもの、かおよごはなけするうちにオバケのように気味悪きみわるくなってててしまったもの——袖子そでこふる人形にんぎょうにもいろいろあった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここにおいて男性としてくべからざる要素は事の本末ほんまつ物の軽重けいちょうを分別する力である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
總説 石製の利器りきを見るに、刄の部分きて作られたるものと、研ぎ磨きて作られたるものと、の二類有り。第一類に屬するものを、打製石斧、石槍、石鏃、石錐、石匕、等とす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
無残むざんや、なかにもいのちけて、やつ五躰ごたい調とゝのへたのが、ゆびれる、乳首ちくびける、みゝげる、——これは打砕うちくだいた、をのふるつたとき、さく/\さゝらにざう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
年若き教師の、詩読む心にて記憶のページひるがえしつつある間に、翁が上にはさらに悲しきこと起こりつ、すでにこの世の人ならざりしなり。かくて教師の詩はその最後の一せつきたり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
のちになぞとはヾそのうちにぼくけて、小刀ないふられるからいや、どうぞ是非ぜひいますぐかきれよ、かみふで姉樣ねえさまのをりてべし、と箒木はヽきてヽすに、づおまちなされとあわたヾしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
廉直れんちょくなる方針ほうしん地方ちほう新聞紙しんぶんし芝居しばい学校がっこう公会演説こうかいえんぜつ教育きょういくある人間にんげん団結だんけつ、これらはみな必要ひつようからざるものである。また社会しゃかいみずかさとっておどろくようにしなければならぬとかなどとのことで。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)