)” の例文
此次このつぎ座敷ざしきはきたなくつてせまうございますが、蒲団ふとんかはへたばかりでまだあかもたんときませんから、ゆつくりお休みなさいまし
このことは後に蓬莱とも竜宮とも名をえた、とこよのくにに就いても言い得る。いわゆる常世郷とこよのくにの記事はことに『日本紀』の中に多い。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ジナイーダが、わたしたちの一座を、新しい気分のものに切りえたのだ。わたしは小姓こしょうの役目がら、彼女かのじょのそばに席をめた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
むきへて、團扇うちはげて、すらりとつた。美人びじんには差覗さしのぞく……横顏よこがほほ、くつきりと、びん艷増つやましたが、生憎あいにくくさくらかつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
え立てのたゝみうへに、丸い紫檀の刳抜盆くりぬきぼんが一つてゐて、なかに置いた湯呑には、京都の浅井黙語の模様ぐわけてあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ソコで今度の米国こうついても、役人が幕府から手当の金を一歩銀で請取うけとれば、亜米利加アメリカに行くときにはこれを洋銀のドルラルえなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
毎年まいねんれがすむと、やはりいへつくりかへ、あるひ屋根やねへたりして、おなじく、新室にひむろのうたげをおこなひました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「まア、心配しなさんな。ところでお内儀さん、お前さんが菓子をへる時は、確かに菓子の上に、赤い飾りの菓子種が載つて居たことでせうね」
(これにもかぎらずさま/″\の術あり)雁のる処をふるは夕暮ゆふぐれ夜半やはんあかつき也、人此時をまちて種々いろ/\たくみつくしてとらふ。
医者のほかには佐助にさえも負傷の状態を示すことを嫌がり膏薬こうやく繃帯ほうたいを取りえる時はみな病室を追い立てられた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
万一、鳳輦の内の君が、だまでもあっては——とする彼の周到しゅうとうな注意ぶりの一つがここにもうかがわれていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
階川の家には、隆吉と与平の自転車が二台あったのを、与平は自分のを売って金にえて、千穂子に持たせた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
又は金錢にへて渡すことをいふので、手形の書替とは、切米券きりまいけんを、請取にしてもらふことで、請取手形が渡ると、受取人の名を紙に書いて割竹に挾み
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
恭助あるじいたつかれて禮服れいふくぬぎもへずよこるを、あれ貴郎あなた召物めしものだけはおあそばせ、れではいけませぬと羽織はをりをぬがせて、おびをもおくさまづからきて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
早附木はやつけぎというよりもマッチというほうが簡単だからでもあろう。さらばとて単に簡単だという理由で、従来用い来たったことばなら早附木はやつけぎをマッチとえることはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
このごろ御所ごしょえをやって、天子てんしさまのおやすみになる御殿ごてんはしらてたときに、大工だいくがそそっかしく、東北うしとらすみはしらの下にへびかえるめにしてしまったのだ。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
情容赦なさけようしゃもなく打ちつづけてから(我慢がまんが出来ますか)と、いって訊いた。男は、顔色もえず(出来ますとも)と、答えると、今度は前よりもほめ感じて、いろいろ介抱かいほうしてくれた。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
またまつはみどりはりして一二年いちにねんちこたへたふるすこしづゝへていきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いいさして足をえつ。十とせの昔、楽しきいろり見捨てぬるよりこのかた、いまだこのようなるうれしき火にわざりき。いいつつ火の奥を見つむるなざしは遠きものを眺むるごとし。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
次のご文は、時に小禽すでに終日日光に浴し、歌唄跳躍して、疲労をなし、唯々甘美の睡眠中にあり。他人事ではないぞよ。どうじゃ、今朝も今朝とて穂吉どのところえてこの身の上じゃ
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
へ其上傳吉が庭の飛石とびいしに血のあと附置つけおきしに我が手にかけしは現在げんざい娘千代にてありしか彼が事は行衞ゆくゑ知れずしかるに彼は親をしたひ夫へ願ひ態々わざ/\尋ね來りしを不便の事をしてけりと強情がうじやう我慢がまん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鏡一台の前にはいずれも女が二、三人ずつ繍眼児押めじろおしに顔を突出つきだして、白粉おしろい上塗うわぬりをしたり髪の形を直したり、あるいは立って着物を着かえたり、大胡坐おおあぐら足袋たびをはきえたりしているのもある。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
身にもえまいとまでにしたったり、浮世をいとまでに迷ったり、無い縁は是非もないと悟ったりしたが、まだどこともなく心が惹かされていたその古い友達の太郎坊も今宵はくだけて亡くなれば
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二十二年の七月廿にぢう三号の表紙をへて(桂舟けいしうひつ花鳥風月くわてうふうげつ大刷新だいさつしんわけつた、しきり西鶴さいかく鼓吹こすゐしたのはの時代で、柳浪りうらう乙羽おとは眉山びさん水蔭すゐいんなどがさかんに書き、寒月かんげつ露伴ろはん二氏にし寄稿きかうした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
珈琲店キヤツフエに夜かしをして帰つて寝巻に着へようとする度、襯衣しやつの下から迄コンフエツチがほろほろとこぼれて部屋中に五しきの花を降らせた。しか巴里パリイで第一にさかんな祭は三月のミカレエムだと云ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そこでそれをやりえて
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そんな辣腕らつわんたちちがつても、都合上つがふじやう勝手かつてよろしきところくるまへるのが道中だうちう習慣ならはしで、出發點しゆつぱつてんで、とほし、とめても、そんな約束やくそくとほさない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その場限りにさしえていながら、なお山中の大木の根を枕にしてというものがあり、また薩摩さつま甑島こしきじまなどでは、山の中に野宿しているのに
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今朝に引きえて、はなはだ静かな姿である。俯向うつむいて、瞳の働きが、こちらへ通わないから、相好そうごうにかほどな変化を来たしたものであろうか。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも木地きじは古いようだから、あるいはいつの代かにえたものかも知れない。「さあそんなことかも存じませぬ」と、主人は一向無関心な返答をする。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「お母様に出して頂こうとは言やしないわ。ベロヴゾーロフさんが一時えて下さるわよ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
あるい畳針たたみばりかって来て畳のおもてえ、又或は竹を割っておけたがを入れるような事から、そのほかの破れ屋根のりを繕うまで当前あたりまえの仕事で、皆私が一人ひとりでして居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いいえ、脇坂様は、御普請ごふしん方をしておりますところから、永代橋のおえに、職人達へ支払う公金を、たった一晩、お屋敷の土蔵にとめておいたのが間違いだったのです。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平常着ふだんぎのまゝで御座ござりましたかとへば、はあ羽織はをりだけえてかれたやうで御座ござんす、なにつてゆきましたか、いゑそのやうにはおぼえませぬとるに、はてなとうでまれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もし地をえて、同じ詩を日本人が書き、これを日本の新聞か雑誌かに掲げたなら、如何いかなる非難を受けるかと思えば、僕はかえって隣邦米人の心持の広きをうらやましく思うのである。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
僕は字引を街で金にえて、平井の紹介状しょうかいじょうふところに、その郊外の邸へ行ってみた。武者窓でもつけたら、さむらいが出て来そうな、古風な土塀どべいをめぐらした大邸宅で、邸を囲んで爽々さつさつたる大樹がしげっていた。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
二人はかわるがわるだまって茶椀ちゃわんえた。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「私は、あのお菓子をへました」
翌年よくねん、二ぐわつ初午はつうまことで、元二げんじばんおもむきへて、部屋へや一人ひとり火鉢ひばちひきつけながられいうた手本てほんに、うつくしいかなの手習てならひをしてた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうして土山つちやまから出た人物のうちでは、千両函せんりょうばこえてはりつけになったのが一番大きいのだと云う一口話をやはり友達から聞いた通り繰り返した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花の姿にえてしおるるつゆの床の内智慧ちえの鏡もくもる、法師にまみえ給いつつ母も招けばうしろみ返りてさらばと云わぬばかりにて、泣くより外の事ぞなき
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
のぶさんの下駄げたれがげてかう、臺處だいどこほうんでおいたら子細しさいはあるまい、さあへてれをおしと世話せわをやき、鼻緒はなをれしを片手かたてげて、それならのぶさんいつておいで
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なぜならば、遠い旅の空で醤油飯しか食っていない、義父や母の事を考えると、私は古ハガキで、地獄壺の中をほじくり、銀貨と云う銀貨は、母への手紙の中へ札にえて送ってやっていたのである。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
身を法体ほつたいへて
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さうして土山つちやまから人物じんぶつうちでは、千兩凾せんりやうばこへてはりつけになつたのが一番いちばんおほきいのだと一口話ひとくちばなし矢張やは友達ともだちからいたとほかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
てよ、先刻さつき紳士しんしは、あゝして、鹽尻しほじり下車おりたとおもふが、……それともしつへて此處こゝまでたか、くるまが三だいそろつて。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、何か暮らし向きに困る事情が出来て、娘を金にえたのであることは察せられる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
年紀としわかし……許嫁いひなづけか、なにか、へておもひとでも、入院にふゐんしてて、療治れうぢとゞかなかつたところから、無理むりとはつても、世間せけんには愚癡ぐちからおこる、人怨ひとうらみ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころからきよて、らした皿小鉢さらこばち食卓しよくたくごといてつたあとで、御米およねちやへるために、つぎつたから、兄弟きやうだい差向さしむかひになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いったん古賀さんへ嫁に行くてて承知をしときながら、今さら学士さんがおいでたけれ、その方にえよてて、それじゃ今日様こんにちさまへ済むまいがなもし、あなた
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)