かぞ)” の例文
旧字:
かぞどしの二つにしかならないおとこであるが、あのきかない光子みつこさんにくらべたら、これはまたなんというおとなしいものだろう。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あや車屋くるまやから四軒けんめのうちかぞえてゆきますと、そのうちは、はや、まっていました。が、のすきまから燈火あかりがさしていました。
海ほおずき (新字新仮名) / 小川未明(著)
かぞふる道楽のうちで、殿様は一番変り種の小鳥やけものが好きで、自分の力で手に入れる事が出来る限り、いろんな物を飼つてたのしんでゐた。
動物学上から云へば、猫の立つて歩くのもあるいは当然の事かも知れぬ。しかし我々俗人はこれをも不思議の一つにかぞへるのが慣例ならいだ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
一つずつかぞえたら、つめかずは、百ちかくもあるであろう。春重はるしげは、もう一糠袋ぬかぶくろにぎりしめて、薄気味悪うすきみわるくにやりとわらった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一つ二つと三十ばかりかぞうると、取り下ろして、ぐっと一気に飲みした。やわらかな天水である。二たび三たび興に乗じて此大さかずきを重ねた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それどころか、みずうみじゅうにんでいる、それこそかぞえきれないほどたくさんの鳥が、いっせいに悲しい鳴き声をあげているではありませんか。
僕は彼が傍若無人ぼうじゃくぶじんにこう言ったことを覚えている、それは二人ふたりともかぞどしにすれば、二十五になった冬のことだった。……
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼らがざっとかぞえただけでも、次の日へかけて、ここをひがしへ通って行った船影は大小四百余そうをくだっていない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此所こゝ迄考へた時、代助のあたまなかに、突然三千代みちよ姿すがたうかんだ。其時そのとき代助はこの論理中に、ある因数フアクターかぞへ込むのを忘れたのではなからうかとうたぐつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
跡にのこるは母一人に子供五人、兄は十一歳、私はかぞえ年で三つ。くなれば大阪にも居られず、兄弟残らず母に連れられて藩地の中津に帰りました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わしは、戸口のところから、手さぐりに、一人、二人と、人間の身体をかぞえて行った。彼等は、わしの手がさわたびに、非常に驚愕きょうがくしている様子であった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
活栓は一分間に二百五十回の割で動きましたから、脈搏のすうかぞえることは出来ませんが、血液が無事に巡回して居ることは、はっきり感ぜられました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
博士はかせ片手かたて眼鏡めがねつて、片手かたて帽子ばうしにかけたまゝはげしく、きふに、ほとんどかぞへるひまがないほどくつのうらで虚空こくうむだ、はしががた/\とうごいてつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じょうした能力のうりょくはじめておこったのは、じつ大正たいしょうねんはることで、かぞえてればモー二十ねんむかしになります。
あるとき弁慶べんけいがとってかたなしてかぞえてみますと、ちょうど九百九十九ほんありました。弁慶べんけいはよろこんで
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
道子みちこ小岩こいは色町いろまち身売みうりをしたとき年季ねんきと、電話でんわ周旋屋しうせんやと一しよくらした月日つきひとをむねうちかぞかへしながら
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
これために無けなしの懐裏ふところを百七十円ほどいためて、うんと参つた、かり小文学せうぶんがくをも硯友社けんいうしや機関きくわんかぞへると、それが第七期、これが第八期で、だ第九期なる者が有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三日みつかともかぞへずしておどろくばかりになりぬ、あきかぜすこしそよ/\とすればはしのかたより果敢はかなげにやぶれて風情ふぜい次第しだいさびしくなるほどあめおとなひこれこそはあはれなれ
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしそんな難題は生涯に何回と一本か二本のゆびかぞえつくせるくらいなものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
われて、アンドレイ、エヒミチはもくしたまま、財嚢さいふぜにかぞて。『八十六えん。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
主人はこれとこれとと、つぎつぎかぞえてつごう十余頭よとうちちのでるのだ。それからこの西側にしがわから三つめの黒白まだらが足をあげるから、をやっておいて、しぼらねばいかぬとつげる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
津軽海峡つがるかいきょう、トラピスト、函館はこだて五稜郭ごりょうかく、えぞ富士ふじ白樺しらかば小樽おたる、札幌の大学、麦酒ビール会社、博物館はくぶつかん、デンマーク人の農場のうじょう苫小牧とまこまい白老しらおいのアイヌ部落ぶらく室蘭むろらん、ああぼくかぞえただけでむねおどる。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かぞえ年五つぐらいから彼女は子守り役を引きうけさせられていたのだ。家へ帰って相談そうだんすれば、とてもゆるされる見こみはなかった。そしてまた、それは早苗や松江や小ツルも同じであった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
辞世じせいとて口碑こうひにつたふる哥に「岩坂のぬしたれぞとひととは墨絵すみゑかきし松風の音」遺言ゐげんなりとて死骸なきから不埋うづめず、今天保九をさる事四百七十七年にいたりて枯骸こがいいけるが如し。是を越後廿四奇の一にかぞふ。
つち空気くうきや水のいぶき、またはやみの中にうごめいてる、んだりはったりおよいだりしているちいさな生物いきものの、歌やさけびや音、または晴天せいてんや雨の前兆ぜんちょう、またはよる交響曲シンフォニーかぞえきれないほどの楽器がっきなど
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
汽車の乗客はかぞふるばかり。余の入つた室は余一人であつた。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
けふ咲ける桜はわれにえうあらじひとのうそをばひたにかぞふる
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
この人にしてかくの如し、その他はかぞうるまでもなけん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
有用植物の一にかぞうることができるわけだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たのみつる年の若さをかぞへみて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
すると、そのうちにくもてきてほしひかりかくしてしまいました。あには、がっかりして、またくるも、したにすわってかぞえました。
星と柱を数えたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
手廻しのいい家は月初めに片付けてしまうが、もうかぞという二十日過ぎになってトントンバタバタとほこりを掃き立てている家がたくさんある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのぐるりのかべりめぐらしたかずが、一かぞえて三十あまり、しかもおとこのつくものは、半分はんぶんいてあるのではなく、おんなと、いうよりも、ほとん全部ぜんぶ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それからかぞえてももうずいぶんの星霜つきひつもったであろう。一たん神木しんぼくとなってからは、勿体もったいなくもこのとおみき周囲しゅうい注連縄しめなわりまわされ、誰一人たれひとりさえれようとせぬ。
其処そこへ、かげのさすやうなのは、一つ一つ、百千とかぞれないかはづこゑである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
辞世じせいとて口碑こうひにつたふる哥に「岩坂のぬしたれぞとひととは墨絵すみゑかきし松風の音」遺言ゐげんなりとて死骸なきから不埋うづめず、今天保九をさる事四百七十七年にいたりて枯骸こがいいけるが如し。是を越後廿四奇の一にかぞふ。
今日は粕谷か、明日あす廻沢めぐりさわ烏山からすやまは何日で、給田が何日、船橋では、上下祖師ヶ谷では、八幡山では、隣村の北沢では、と皆が指折ゆびおりかぞえて浮き立つ。彼方の村には太鼓が鳴る。此方こちあざでは舞台ぶたいがけ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おかあさんはゆびって日をかぞえながら
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
けると、おきくらで、ものすごい景色けしきでありました。その難船なんせんをしたふねは、かぞえきれないほどであります。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろにわってはあるが、わずかに三かぞえるばかりの、茶室ちゃしつがかった風流ふうりゆう住居すまいは、ただ如何いかにも春信はるのぶらしいこのみにまかせて、いれがとどいているというだけのこと
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
こちらにはひるよるもないのですから、現世げんせのようにとても幾日いくにちとはっきりかぞえるわけにはかないのでございます。そのへんがどうもはなしたいへんにしにくいてんでございまして……。
「もう大抵判っているんだから、きょうはこのくらいにしておこう。おめえもかぞにここでいつまでも納涼すずんでもいられめえ。家へ帰ってかかあ熨斗餅のしもちを切る手伝いでもしてやれ」
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さくらはなるのをかぞへ、てふつばさんで、貴僧あなたわたし順々じゆん/\に。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あには、一つ、二つとかぞえました。しまいには、ゆびつかれ、つかれましたけれど、我慢がまんをして、「財産ざいさんがもらえるのだ。」とおもって、かぞえました。
星と柱を数えたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
その席上でわたしがひそかに筆記したもの、あるいは記憶にとどめて書いたもの、かぞうればまだまだたくさんあるので、その拾遺というような意味で更にこの「近代異妖編」をそうすることにした。
こま犬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
にはかぞうるほどの乗客じようかくもなさゝうな、あまさびしさに、——なつ我家わがや戸外おもてからのぞくやうに——上下あとさき見渡みわたすと、なりの寄席よせほどにむら/\とへやも、さあ、ふたつぐらゐはあつたらう。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしっている汽車きしゃは、いく百マイルもさきまでゆき、そのあいだに、かぞえきれないほどの停車場ていしゃば通過つうかするのですから……。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
師走しわすもだんだんにかぞに迫ったので、混雑もまた予想以上である。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これから、まちなかは、こんなパラソルがいくつとおるか、かぞえきれないくらいだ。」と、みみとおむすめはいいました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)