こゝろざ)” の例文
つぎ著意ちやくいしてみちもとめるひとがある。專念せんねんみちもとめて、萬事ばんじなげうつこともあれば、日々ひゞつとめおこたらずに、えずみちこゝろざしてゐることもある。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
代助はかほをしかめてみせた。紙包かみゞつみわきしたかゝへた儘、銀座のはづれ迄つてて、其所そこから大根河岸だいこんがしまはつて、鍛冶橋かじばしを丸のうちこゝろざした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いきほひじようじて、立處たちどころ一國一城いつこくいちじやうあるじこゝろざしてねらひをつけたのは、あらうことか、用人ようにん團右衞門だんゑもん御新造ごしんぞ、おきみ、とふ、としやうや二十はたち
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お前さんはまア其の非道をも思わず、圖書を思うこゝろざし、誠に夫を思う貞節、お前さんの志に免じて何うか圖書が改心するようにして遣りたい
わがこゝろざしゝ事我にのぞみし事と違へり、わが見んと思ひしはベアトリーチェにてわが見しは一人ひとりおきななりき、その衣は榮光の民の如く 五八—六〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ゆふおはりての宵々よひ/\いゑいでては御寺參おんてらまい殊勝しゆしように、觀音くわんをんさまには合掌がつしようを申て、戀人こひびとのゆくすゑまもたまへと、おこゝろざしのほどいつまでもえねばいが。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
次に掲げる候補者表はゼライイドの結婚にこゝろざした後、三年七ケ月十六日の間に出来上つたものだと言ふことです。
結婚難並びに恋愛難 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「これは錢形の親分さん、飛んだ無理を申しました。私は角筈の百姓で、與八郎と申しますが、これはほんの御挨拶の名札代り、私のこゝろざしでございます」
其人そのひといま新聞しんぶん題目だいもくとなつて世人よのひといぶか旅路たびぢこゝろざしたといふ、その行先ゆくさき何地いづこであらう、その目的もくてきなんであらう。
にんこゝろざしをたて国家こくかため其身そのみをいたせば、満都まんとひとな動かされて梅の花さへ余栄よえいたり、人は世にひゞわたるほどの善事よきことしたきものなり、人は世に効益かうえきあたふる大人君子たいじんくんしむかひては
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
趙州でうしう和尚といふ有名な唐の坊さんは、趙州古仏晩年発心ほつしんと人にはれただけあつて、六十一になつてから初めて道にこゝろざした奇特きどくな心懸の人である。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そんならわしこゝろざしが有りますから、此のお金をお貰い申し、昨年から引続きまして、当御領地の勝山、津山、東山村の辺は一体に不作でごぜえまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
身體からだゆすり、下駄げたにて板敷いたじき踏鳴ふみならすおとおどろ/\し。そのまゝ渡場わたしばこゝろざす、石段いしだん中途ちうとにて行逢ゆきあひしは、日傘ひがささしたる、十二ばかりの友禪縮緬いうぜんちりめん踊子をどりこか。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此度このたびくはだて残賊ざんぞくちゆうして禍害くわがいつと云ふ事と、私蓄しちくあばいて陥溺かんできを救ふと云ふ事との二つをこゝろざした者である。しかるにかれまつたく敗れ、これは成るになん/\としてくじけた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こゝろざしはうれしけれどかへりてからがをんなはたらき、れのみか御主人ごしゆじんへは給金きうきん前借まへがりもあり、それッ、とふてかへられるものではし、初奉公ういぼうこう肝腎かんじん辛棒しんぼうがならでもどつたとおもはれてもらねば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ことわが弦月丸げんげつまるいま萬里ばんり波濤はたうこゝろざして、おと名高なだか地中海ちちゆうかい紅海こうかい印度洋等インドやうとう難所なんしよすゝらんとするその首途かどでに、滊船きせん安全あんぜん航行かうかう表章しるしとなるべき白色檣燈はくしよくしやうとう微塵みじんくだけて、その燈光ともしびえ、同時どうじ
月夜つきよほしかぞへられない。くまでの赤蜻蛉あかとんぼおほいなるむれおもつた場所ばしよからこゝろざところうつらうとするのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と飯島は孝助の忠義のこゝろざしはかねて見抜いてあるから、孝助が盗み取るようなことはないと知っている故、金子は全く紛失ふんじつしたなれども、別に百両を封金ふうきんこしらえ
はつ口惜くやしくかなしくなさけなく、くちかれぬほど込上こみあぐなみだ呑込のみこんで、これはわたしわる御座ござんした、堪忍かんにんをしてくたされ、おりき親切しんせつこゝろざしてれたものをすて仕舞しまつたは重々ぢう/\わる御座ございました
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして信貴越しぎごえの方角をこゝろざして、格之助と一しよに、又間道かんだうを歩き出した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
樣子やうすでは、其處そこまで一面いちめん赤蜻蛉あかとんぼだ。何處どここゝろざしてくのであらう。あまりのことに、また一度いちどそとた。一時いちじぎた。爾時そのときひとつもえなかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五月十三日ごぐわつじふさんにち午後ごごである。こゝろざした飯坂いひざか温泉をんせんくのに、汽車きしや伊達驛だてえきりて、すぐにくるまをたよると、三臺さんだい四臺よだい、さあ五臺ごだいまではなかつたかもれない。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なほこゝろざ出雲路いづもぢを、其日そのひ松江まつえまでくつもりの汽車きしやには、まだ時間じかんがある。わたしは、もう一度いちど宿やどた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……まちはなれて、鎭守ちんじゆみやけますと、いまかうとする、こゝろざところはずなのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
畷道なはてみちすこしばかり、菜種なたねあぜはひつたところに、こゝろざいほりえました。わびしい一軒家いつけんや平屋ひらやですが、かどのかゝりになんとなく、むかしのさましのばせます、萱葺かやぶき屋根やねではありません。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
東京とうきやう出程ときから、諏訪すはに一ぱく豫定よていして、旅籠屋はたごやこゝろざした町通まちどほりの菊屋きくやであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汽車きしやこゝろざひとをのせて、陸奥みちのくをさしてくだく——れかゝる日暮里につぽりのあたり、もり下闇したやみに、遅桜おそざくらるかとたのは、夕靄ゆふもやそらきざまれてちら/\とうつるのであつた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また陽州やうしうえきに、顏息がんそくといへる名譽めいよ射手しやしゆてきまゆつ。退しりぞいていはく、我無勇われゆうなしれのこゝろざしてねらへるものを、とこと左傳さでんゆとぞ。じゆつや、無勇ゆうなきり。
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
矢張やつぱ当日たうじつこゝろざした奥州路おうしうぢたびするのに、一たん引返ひきかへして、はきものをへて、洋杖すてつきと、たゞ一つバスケツトをつて出直でなほしたのであるが、くるま途中とちうも、そではしめやかで、上野うへのいたとき
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みづうみ殿堂でんだうこゝろざす、曲折きよくせつかぞふるにいとまなき、このなが廊下らうかは、五ちやうみぎれ、十ちやうひだりまがり、二つにわかれ、三つにけて、次第々々しだい/\奥深おくふかく、はやきはとなり、しづかなるはふちとなり、はしるははやせとなり
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いきほひじようじて、立所たちどころ一國一城いつこくいちじやうあるじこゝろざしてねらひをつけたのは、あらうことか、用人ようにん團右衞門だんゑもん御新姐ごしんぞ、おくみととしやうや二十はたちく、如何いかにも、一國一城いつこくいちじやうたぐへつべきいたつてうつくしいのであつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしたちは、それから、御所前ごしよまへ廣場ひろばこゝろざして立退たちのくのにはなかつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまわたしは、可恐おそろし吹雪ふゞきなかを、其處そここゝろざしてるのであります——
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゝろざほとけ追善つゐぜんをしたのさ。藝者げいしやたちが感心かんしんぢやないか。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝろざみやこ振出ふりだしの、瓜井戸うりゐど宿しゆくいそいだ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)