心配しんぱい)” の例文
太郎たろうは、もしや、おじいさんが、この真夜中まよなか雪道ゆきみちまよって、あちらの広野ひろのをうろついていなさるのではなかろうかと心配しんぱいしました。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにしろ西にしひがしからない原中はらなかの一軒家けんや一人ひとりぼっちとりのこされたのですから、心細こころぼそさも心細こころぼそいし、だんだん心配しんぱいになってきました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こうして、心配しんぱいなことは、すっかりなくなってしまいました。それからは、みんなで、ほんとうにたのしく、なかよくくらしました。
昨日きのふあさ千葉ちばわたしびまして、奧樣おくさまこの四五にちすぐれやう見上みあげられる、うぞあそばしてかと如何いかにも心配しんぱいらしくまをしますので
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんは心配しんぱいさうに木々きゞあひだのぞまはつてゐましたが、やが其頭そのあたま眞上まうへにあつたちひさなとがつたかはに、ひよいときました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なんとなく心配しんぱいさうなかほで、左樣々々さやう/\々々/\、と、打濕うちしめつてつてるかとおもふと、やれヴオツカをせの、麥酒ビールめろのとすゝめはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
りませんよ。おっかさんが風邪かぜいて、ひとりでててござんすから、ちっともはやかえらないと、あたしゃ心配しんぱいでなりませんのさ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
よろこばるゝといへどもおや因果いんぐわむく片輪かたわむすめ見世物みせものの如くよろこばるゝのいひにあらねば、決して/\心配しんぱいすべきにあらす。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
全速力ぜんそくりょくで走ってる汽車をとめるのは、よういなことではありません。あまりきゅうにとめますと、脱線だっせんしてひっくりかえる心配しんぱいがあります。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いきなりシューラの両肩りょうかたつかんで、自分の寝室しんしつへ引っぱって行った。シューラは心配しんぱいになって、むねがどきりとした。ママはこういった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
くまさん、どうです、今日けふあたりは。ゆきうたでもうたつておくれ。わしあ、こほりかたまりにでもならなけりやいいがと心配しんぱいでなんねえだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
春枝夫人はるえふじんいた心配しんぱいして『あまりに御身おんみかろんじたまふな。』と明眸めいぼうつゆびての諫言いさめごとわたくしじつ殘念ざんねんであつたが其儘そのまゝおもとゞまつた。
彼女かのぢよよろこびも心配しんぱいも、たゞそのためにのみしてれた努力どりよくページをあらためてつてみてひそかにほこりなきをないのであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それを——時計とけいはりひとつて、あとへつゞくほどの心配しんぱいもさせないで、あつとおもふと、ぐにひろつていてくだすつたのがわかつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幾年前いくねんまへには一さいんだおふくろ處理しよりしてくれたのであつたが、今度こんど勘次かんじないしでおしな生計くらし心配しんぱいもしなくてはられなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
不幸ふかうにも、この心配しんぱいくれ二十日過はつかすぎになつて、突然とつぜん事實じじつになりかけたので、宗助そうすけ豫期よき恐怖きようふいたやうに、いたく狼狽らうばいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よびつかはしたり必らず/\心配しんぱいするに及ばず早々此所ここあふべきかぎを持參して此錠前このぢやうまへあけよと申されしかば漸々やう/\吉五郎はホツと太息といき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
返事へんじいから二けましたがそれでも返事へんじいからじゆくではどうなつたことかと非常ひじやう心配しんぱいして責任せきにんつたものは一ねむらなかつたくらゐ
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
袖子そでこものわずに寝苦ねぐるしがっていた。そこへとうさんが心配しんぱいしてのぞきにたびに、しまいにはおはつほうでもかくしきれなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
世人せじん金解禁きんかいきん出來できたならば、正貨せいくわ急激きふげき巨額きよがく積出つみだされ、其結果そのけつくわ經濟界けいざいかい非常ひじやう打撃だげきあたへるとつて心配しんぱいしてるが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
しかしわたしには、またかんがえがあるから、そんなに心配しんぱいしないでもいいよ。お前たちはきりでおたがいに顔も見えずさびしいだろう
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
お前おっかさんに心配しんぱいを掛けて、お母様っかさんがお食を勧めるのにお前は何故べない、段々疲れるよ、詰らん事をくよ/\してはいけませんよ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでは、伊那丸いなまるたちへ、合図あいずをするたよりがないので、かかるまも、竹童の腹のなかは、引っくり返るような心配しんぱいである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でも、おかあさんに、ほんとうのことをはなしたら心配しんぱいするので、きゅうな用事ようじができたことにして、見物けんぶつをやめ、いそいで東京とうきょうにかえりました。
それがだん/\つのつて、七月しちがつ十五夜じゆうごやなどにはいてばかりゐました。おきなたちが心配しんぱいして、つきることをめるようにとさとしましたけれども
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ですから、やつが凶器を持ってあるく心配しんぱいはありませんが、凶器につかわれそうな物は、どの家でも、かくしておくように知らせてもらいたいのです
ニールスだけは、目をさましていられましたが、だんだんあたりがくらくなってくるにつれて、心配しんぱいになってきました。
その心配しんぱいらぬ。今日きょう神界しんかいからのお指図さしずけてたずねるのであるから、立派りっぱなお客様扱きゃくさまあつかいをけるであろう。
じっと突っ立って、二分間ほど考えこんでいた先生は、心配しんぱいそうにとりまいている生徒たちに気がつくと、きそうな顔で笑って、しかし声だけは快活かいかつ
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
いくらつても望生ぼうせいもどつてぬ。これに心配しんぱいしながら二人ふたりつてると、大變たいへんだ。殺氣立さつきだつてる。
ところこまつたことにア身躰からだわるく、肺病はいびようてゐるからぼくほとんど當惑とうわくするぼくだつて心配しんぱいでならんからその心配しんぱいわすれやうとおもつて、ついむ、めばむほど心配しんぱいする。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
「それは大變たいへんよ。」といひました。なに大變たいへんなのか牝牛めうし小鳥ことり心配しんぱいさうにきくと、かへるはいひました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
また日本につぽん島國しまぐにであつて、外國人がいこくじんからめられるといふ心配しんぱいもありませんでしたから、しろきづ必要ひつようすくなくなかつたので、さうした種類しゆるい遺蹟いせきもたくさんはありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しかしむすめはどうなりましたやら、むこことはあきらめましても、これだけは心配しんぱいでなりません。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今にも、わたしがどうかなってしまいはしないかと、それが心配しんぱいでたまらないらしいのです。
ゆめ一個ひとり風采ふうさい堂々だう/\たる丈夫ますらをあらはれて、自分は石清虚せきせいきよといふものである、けつして心配しんぱいなさるな、君とわかれて居るのは一年ばかりのことで、明年八月二日、あさはや海岱門かいたいもんまう見給みたま
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
というのは、そんな挙動きょどうせて老人ろうじんわたし警戒けいかいしたら、という心配しんぱいがあつたからです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ただ、どこの家にもいろんな心配しんぱいごとがあるものだろう。それでおとっつあんとおっかさんがいいあいするんだろうけど、そんなこと子どもは知らないふりをしていればいいのよ。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「そんなに心配しんぱいしなくったっていいわよ。こっちでかってにくさらしたんだから、またいくらでもとってあげるわよ。お金さえはらやぁ、おまえさんの商売にそんはないじゃあないの。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
しかしわれはひときずつそこなやからとはちがふ。幼児をさなごき、あしち、しばつて、これを曝物さらしものに、憐愍あはれみ悪人あくにんどもが世間せけんにある。さればこそいまこの幼児等えうじらて、心配しんぱいいたすのだ。
だからやま森林しんりんしげつてさへゐれば、けつして洪水こうずい心配しんぱいはないのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ところが、この心配しんぱいもモコウの頭からきえるときがきた。ゴルドンはある日、だちょうの森を散歩したとき、一むらの木のその葉、うすむらさきの色をなせるのを見ておどりあがって喜んだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
『そりや心配しんぱい無用むようだ。ではすぐにでも出発しゆつぱつしようか。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
ほんとに心配しんぱいしたわ でも仲直なかなほりしてよかつたわ
心配しんぱいそうに顔をあげて対手あいて赤良顔あからがほながめた
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
母親ははおやがよくならなければわかりませんね。あのも、かわいそうです。いろいろ心配しんぱいして。」と、おかあさんは、おっしゃいました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんとなく心配しんぱいそうなかおで、左様々々さようさよう左様さよう、と、打湿うちしめってってるかとおもうと、やれヴォッカをせの、麦酒ビールめろのとすすめはじめる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
木こりは、ばん寝床ねどこへはいってからも、あれやこれやと考えると、心配しんぱいで心配でねむることもできず、ねがえりばかりうっていました。
そこで、わたくし心配しんぱいするのは、義侠をとこぎ大佐閣下たいさかつかは、吾等われら大難だいなんたすけやうとして、御自身ごじしん危險きけんをおまねきになるやうことはあるまいか。