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其
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その
ふりがな文庫
“
其
(
その
)” の例文
とその
家庭
(
かてい
)
の
苦痛
(
くつう
)
を
白状
(
はくじやう
)
し、
遂
(
つい
)
にこの
書
(
しよ
)
の
主人公
(
しゆじんこう
)
、
後
(
のち
)
に
殺人
(
さつじん
)
の
罪人
(
ざいにん
)
なるカ……イ……を
伴
(
ともな
)
ひて
其
(
その
)
僑居
(
けうきよ
)
に
歸
(
かへ
)
るに
至
(
いた
)
る
一節
(
いつせつ
)
極
(
きは
)
めて
面白
(
おもしろ
)
し。
罪と罰(内田不知庵訳)
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
鍬
(
くは
)
を
擔
(
かつ
)
いで
遺跡
(
ゐせき
)
さぐりに
歩
(
ある
)
き、
貝塚
(
かひづか
)
を
泥
(
どろ
)
だらけに
成
(
な
)
つて
掘
(
ほ
)
り、
其
(
その
)
掘出
(
ほりだ
)
したる
土器
(
どき
)
の
破片
(
はへん
)
を
背負
(
せお
)
ひ、
然
(
さ
)
うして
家
(
いへ
)
に
歸
(
かへ
)
つて
井戸端
(
ゐどばた
)
で
洗
(
あら
)
ふ。
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
「ぢやあ
其
(
その
)
菊
(
きく
)
を
見
(
み
)
やうと
思
(
おも
)
つて
学校
(
がくかう
)
へおいで。
花
(
はな
)
にはね、ものをいはないから
耳
(
みゝ
)
に
聞
(
き
)
こえないでも、
其
(
その
)
かはり
眼
(
め
)
にはうつくしいよ。」
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
小六
(
ころく
)
さん、
憚
(
はゞか
)
り
樣
(
さま
)
。
座敷
(
ざしき
)
の
戸
(
と
)
を
閉
(
た
)
てて、
洋燈
(
ランプ
)
を
點
(
つ
)
けて
頂戴
(
ちやうだい
)
。
今
(
いま
)
私
(
わたし
)
も
清
(
きよ
)
も
手
(
て
)
が
放
(
はな
)
せない
所
(
ところ
)
だから」と
依頼
(
たの
)
んだ。
小六
(
ころく
)
は
簡單
(
かんたん
)
に
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
芝生の上へ円形に
其
(
その
)
花を落すサンバ
樹
(
じゆ
)
などの蔭を踏むと、極楽鳥と云ふ
類
(
るゐ
)
の美しい鳥が𤍠帯に棲んで居るのも不思議でない気がする。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
東京
天王寺
(
てんのうじ
)
にて菊の花片手に墓参りせし
艶女
(
えんじょ
)
、一週間思い
詰
(
つめ
)
しが
是
(
これ
)
も
其
(
その
)
指つきを
吉祥菓
(
きっしょうか
)
持
(
もた
)
せ
玉
(
たも
)
う
鬼子母神
(
きしぼじん
)
に写してはと工夫せしなり。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
驚いて
其
(
その
)
仔細を
訊
(
ただ
)
したが、
彼女
(
かれ
)
は何にも答えなかった。赤児は恐らく重蔵の
胤
(
たね
)
であろうと思われるが、男の
生死
(
しょうし
)
は一切不明であった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其後「
血笑記
(
けっしょうき
)
」を除く外、翻訳物は大抵見た。「
其
(
その
)
面影
(
おもかげ
)
」はあまり面白いとも思わなかった。「
平凡
(
へいぼん
)
」は新聞で半分から先きを見た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
其
(
その
)
晩は場末の安宿に泊り翌日父は私をY中学の入学式につれて行き、そして我子を寄宿舎に
托
(
たく
)
して置くと、
直
(
す
)
ぐ村へ帰つて行つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
喜
(
き
)
一
郎
(
らう
)
と云つた
其
(
その
)
お幸の父も、お幸とお幸より三つ
歳下
(
としした
)
の長男の
久吉
(
ひさきち
)
がまだ幼少な時に肺病に
罹
(
かか
)
つて二年余りも
煩
(
わづら
)
つて
歿
(
な
)
くなりました。
月夜
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
山と雲との影が
綾
(
あや
)
に織り出されたり消されたりして、
其
(
その
)
間を縫って銀光沢を帯びた青緑色のヤンマの一種が
梭
(
ひ
)
のように飛び交うている。
日本アルプスの五仙境
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
余
(
よ
)
は
曾
(
かつ
)
て
如此
(
かくのごと
)
き事を
試
(
こゝろ
)
みし事なし、
否
(
い
)
な
試
(
こゝろ
)
みて
其
(
その
)
甚
(
はなは
)
だ
馬鹿気
(
ばかげ
)
切
(
きつ
)
たる事を
認
(
みと
)
めたれば
全然
(
ぜん/\
)
之を
放棄
(
はうき
)
せり、
道
(
みち
)
を
行
(
おこな
)
ふ
事
(
こと
)
是
(
こ
)
れ
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
く事なり
問答二三
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
初期の通信は、前にも言った通り
皆
(
みな
)
細字
(
ほそじ
)
で書かれ、
其
(
その
)
書体も均一で、Doctor, The Teacher, と署名してあった。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
ベンヺ いや、これは
和睦
(
わぼく
)
させうためにしたことぢゃ。
劍
(
けん
)
を
藏
(
をさ
)
めい、でなくば、
其
(
その
)
劍
(
けん
)
を
以
(
もっ
)
て
予
(
わし
)
と
共
(
とも
)
に、こいつらを
引分
(
ひきわ
)
けておくりゃれ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
中にも『喫茗雑話』から抄したものは、漁村の撰んだ抽斎の墓誌の略で、わたくしはその
中
(
うち
)
に「道純
諱
(
いみな
)
全善、号抽斎、道純
其
(
その
)
字
(
あざな
)
也
(
なり
)
」
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
を
見
(
み
)
ろとは、
大島小學校
(
おほしませうがくかう
)
の
神聖
(
しんせい
)
なる
警語
(
けいご
)
で、
其
(
その
)
堂々
(
だう/\
)
たる
冲天
(
ちゆうてん
)
の
勢
(
いきほひ
)
と、
其
(
その
)
飽
(
あ
)
くまで
氣高
(
けだ
)
かい
精神
(
せいしん
)
と、これが
此警語
(
このけいご
)
の
意味
(
いみ
)
です。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
昌作はヂロリと
其
(
その
)
方
(
はう
)
を見た。そして信吾が山内に挨拶して出てゆくと、不快な冷笑を憚りもなく顔に出して、
自暴
(
やけ
)
に麦煎餅を頬張つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
統計
(
とうけい
)
によれば、
餘震
(
よしん
)
のときの
震動
(
しんどう
)
の
大
(
おほ
)
いさは、
最初
(
さいしよ
)
の
大地震
(
だいぢしん
)
のものに
比較
(
ひかく
)
して、
其
(
その
)
三分
(
さんぶん
)
の
一
(
いち
)
といふ
程
(
ほど
)
のものが、
最大
(
さいだい
)
の
記録
(
きろく
)
である。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
ただ
斯
(
こ
)
う口の中で云っただけでも私の心は踊り立つ。それほど私は
其
(
その
)
町を——見捨てられたような其町を限り無く好いているのであった。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
キツプリング、ブラツクウツド、ビイアスと数へて来ると、どうも皆
其
(
その
)
机
(
つくゑ
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
には心霊学会の研究報告がはひつてゐさうな心持がする。
近頃の幽霊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「昼間の景色が本当のもので、今月光に照らされているのは、
其
(
その
)
昼間の景色が鏡に写っている、鏡の中の影だとは思いませんか」
目羅博士の不思議な犯罪
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
父も家庭に対する
苦
(
くるし
)
み、妻子に対する
苦
(
くるし
)
み、社会に対する
苦
(
くる
)
しみ——
所謂
(
いはゆる
)
中年の
苦痛
(
くるしみ
)
を
抱
(
いだ
)
いて、
其
(
その
)
時
此
(
こ
)
の狭い汚い町を
通
(
とほ
)
つたに
相違
(
さうゐ
)
ない。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
急に口へもってゆこうとして厳しく叱られたりしたというが、その時も、お
其
(
その
)
の店の赤いものに目がついて、しゃがんで二つ三つとった。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
落
(
おち
)
つけずや
母樣
(
はゝさま
)
には
我
(
わ
)
れ
願
(
ねが
)
はんとて
放
(
はな
)
し
給
(
たま
)
はず
夫樣
(
おくさま
)
も
又
(
また
)
くれ/″\の
仰
(
おほ
)
せに
其
(
その
)
まゝの
御奉公
(
ごほうこう
)
都會
(
みやこ
)
なれぬ
身
(
み
)
とて
何
(
なに
)
ごとも
不束
(
ふつゝか
)
なるを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私
(
わたし
)
は
自分
(
じぶん
)
の
不安
(
ふあん
)
と
苦痛
(
くつう
)
を
訴
(
うつた
)
へたが、
其
(
それ
)
も
効
(
かひ
)
はなく、
此
(
この
)
まゝ
秘密
(
ひみつ
)
にしてくれと
云
(
い
)
ふ
妻
(
つま
)
の
哀願
(
あいぐわん
)
を
容
(
い
)
れて、
此事
(
このこと
)
は一
時
(
じ
)
其
(
その
)
まゝに
葬
(
はふむ
)
ることにした。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
此時
(
このとき
)
にふと
心付
(
こゝろつ
)
くと、
何者
(
なにもの
)
か
私
(
わたくし
)
の
後
(
うしろ
)
にこそ/\と
尾行
(
びかう
)
して
來
(
く
)
る
樣子
(
やうす
)
、オヤ
變
(
へん
)
だと
振返
(
ふりかへ
)
る、
途端
(
とたん
)
に
其
(
その
)
影
(
かげ
)
は
轉
(
まろ
)
ぶが
如
(
ごと
)
く
私
(
わたくし
)
の
足許
(
あしもと
)
へ
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
前
(
まへ
)
にも
述
(
の
)
べたやうに、
金解禁
(
きんかいきん
)
の
準備中
(
じゆんびちう
)
に、
海外
(
かいぐわい
)
から
來
(
き
)
た
思惑投機
(
おもわくとうき
)
の
如
(
ごと
)
きは、
其
(
その
)
巨額
(
きよがく
)
ならざることも
凡
(
およ
)
そ
明
(
あきら
)
かになつて
居
(
ゐ
)
ることであるから
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
西鶴が『五人女』の中で「広間をすぎて
縁
(
えん
)
より
梯
(
かけはし
)
のはるかに
熊笹
(
くまざさ
)
むら/\として
其
(
その
)
奥に庭籠ありてはつがん
唐鳩
(
からばと
)
金鶏
(
きんけい
)
さま/\の声なして」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
王樣
(
わうさま
)
は
其
(
その
)
お
手
(
て
)
を
女王樣
(
ぢよわうさま
)
の
腕
(
かひな
)
にかけされられ、
恐
(
おそ
)
る/\
申
(
まを
)
されました、『
考
(
かんが
)
へても
御覽
(
ごらん
)
なさい、え、
高
(
たか
)
が
一人
(
ひとり
)
の
子供
(
こども
)
ではないか!』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
私は、日本文学の発生点を、神授(と信ぜられた)の
呪言
(
ジユゴン
)
に据ゑて居る。
而
(
しか
)
も
其
(
その
)
古い形は、今日溯れる限りでは、かう言つてよい様である。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
月光
(
げつくわう
)
其
(
その
)
滑
(
なめ
)
らかなる葉の
面
(
おも
)
に落ちて、葉は
宛
(
さ
)
ながら
碧玉
(
へきぎよく
)
の
扇
(
あふぎ
)
と
照
(
て
)
れるが、
其上
(
そのうへ
)
にまた黒き
斑点
(
はんてん
)
ありてちら/\
躍
(
おど
)
れり。
李樹
(
すもゝ
)
の影の
映
(
うつ
)
れるなり。
良夜
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「茶は高貴の人に応接するが如し、
烹点
(
ほうてん
)
共に法を
濫
(
みだ
)
れば
其
(
その
)
悔かへるべからず」これが、彼の茶に対するときの心構へであつた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
二人はそこを出ると、これはと目ざす旅館を
悉
(
ことごと
)
く廻り歩いた。
其
(
その
)
日は朝から小雨が降っていたが、十時頃から本降りになった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
若
(
も
)
し
化物學
(
ばけものがく
)
といふ
學問
(
がくもん
)
がありとすれば、
今
(
いま
)
まで
述
(
の
)
べた
事
(
こと
)
は、
其
(
その
)
序論
(
じよろん
)
と
見
(
み
)
るべきものであつて、
茲
(
こゝ
)
には
只
(
たゞ
)
序論
(
じよろん
)
だけを
述
(
の
)
べた
事
(
こと
)
になるのである。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
お茶の用意をした部屋には、お由利が抱きしめて居たという曙染の振袖が
其
(
その
)
ままにしてあり、其処には血潮の跡もありません。
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お
品
(
しな
)
はどうかして
少
(
すこ
)
しでも
蒟蒻
(
こんにやく
)
を
減
(
へ
)
らして
置
(
お
)
きたいと
思
(
おも
)
つた。お
品
(
しな
)
は
其
(
その
)
内
(
うち
)
に
起
(
お
)
きられるだらうと
考
(
かんが
)
へつゝ
時々
(
とき/″\
)
うと/\と
成
(
な
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
いつでも嬢様を尋ねるときは
面
(
おもて
)
に喜びの色輝やきて晴/\としてゐるが、
其
(
その
)
皮一重下に
秘
(
かく
)
るゝ苦痛は如何ばかりぞと思ふと実に同情する子。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
女子がアッパッパと称する下着一枚で戸外に出歩く奇風については、友人佐藤
慵斎
(
ようさい
)
君の文集に載っている
其
(
その
)
論に譲って、ここには言うまい。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
宛
(
あたか
)
も言附られし役目を行うが如くに泰然自若として老人の死骸の
許
(
もと
)
に行き、
其
(
その
)
傍
(
そば
)
に
跪
(
ひざま
)
ずきてそろ/\と死骸を検査し初めぬ。
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
考へだにせば、儒を聞きて儒を疑ひ、仏を聞きて仏を疑ひても
好
(
よ
)
し。疑へばいつか
其
(
その
)
疑の解くることあり、それが道がわかるといふものに候。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
以
(
もつ
)
て、あゝ云ふ世界を頭から拒絶して
了
(
しま
)
ふのは、
寧
(
むし
)
ろあゝ云ふものに敗ける事だよ。
其
(
その
)
点では僕はもつと勇敢だ。僕は
是
(
これ
)
からダンスを始めるよ。
私の社交ダンス
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
驚いて
其
(
その
)
方を見ると、右手の林の中で、一人の怪漢が片手に角灯を持ち、片手に
小刀
(
ナイフ
)
を振上げて、一人の農夫のような男を
刺殺
(
さしころ
)
す有様が見えた。
天狗岩の殺人魔
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、それが出来上ると
其
(
その
)
翌日、七里も
先方
(
さき
)
に
在
(
あ
)
る
牧場
(
まきば
)
へ庄吉をつれて行つて、豚の
仔
(
こ
)
を
一番
(
ひとつがひ
)
荷車に乗せて運んで来た。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
そして又太鼓を
打
(
たた
)
いて踊り始めたのです。けれども馬鹿七は、さつさと山へ上つて行きました。そして土を掘つて
叮嚀
(
ていねい
)
に、
其
(
その
)
杉苗を植ゑました。
馬鹿七
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
近近に実枝が主人で茶の会をするので、円通寺の茶室を借りるため、けふは
其
(
その
)
依頼なり下調べなりに行くといふのだつた。
曠日
(新字旧仮名)
/
佐佐木茂索
(著)
機関砲の砲手は、
砲架
(
ほうか
)
の前に緊張そのもののような顔をしていた。しかし
其
(
その
)
後は何者も邪魔をするものが現われなかった。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
亭主は直ぐに
家中
(
いへぢう
)
にある一番良い
布
(
きれ
)
を切つてお神さんの着物をこしらへて
其
(
その
)
上に靴から帽子手提袋まで作つて与へますとお神さんは大喜びでそれを
金剛石
(新字旧仮名)
/
夢野久作
(著)
猶
(
なほ
)
此後
(
こののち
)
もこれに
盡
(
つく
)
さんの
料
(
れう
)
にせまほしとておのれに
其
(
その
)
よしはし
書
(
かき
)
してよとこはれぬかゝる
方
(
かた
)
に
心
(
こゝろ
)
ふかうものし
給
(
たま
)
へるを
うもれ木:01 序
(旧字旧仮名)
/
田辺竜子
(著)
白雲が忙しそうに
其
(
その
)
間を去来して一種無常の
観相
(
かんそう
)
をば附加える。しばらく景色を見ていた皆は、高野山の好い山であるということに直ぐ気がついた。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
が、それでいて、
其
(
その
)
失敗の過去が、私に取っては何処か床しい処がある、後悔慚愧
腸
(
はらわた
)
を
断
(
た
)
つ
想
(
おもい
)
が有りながら、それでいて何となく心を
惹付
(
ひきつ
)
けられる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其
漢検準1級
部首:⼋
8画
“其”を含む語句
其方
其処
其様
其許
其後
其家
其樣
其儘
其間
其辺
其傍
其故
其中
其女
其々
其面
其切
其所
其處
其上
...