するど)” の例文
ものゝかんかた非常ひじやう鋭敏えいびんで、はなみゝはだなどにれるものをするどることの出來できめづらしい文學者ぶんがくしやであつたことをせてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
少年せうねんゆびさかたながめると如何いかにも大變たいへん! 先刻せんこく吾等われら通※つうくわして黄乳樹わうにうじゆはやしあひだより、一頭いつとう猛獸まうじういきほいするどあらはれてたのである。
ちょっと皮肉ひにくなところがありますが、やさしい微笑びしょうをたたえた皮肉で、世の中の不正やみにくさに、それとなくするど鋒先ほこさきを向けています。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「よく剣ヶ峰けんがみねおがまれる。」と、じいさんは、かすかはるかに、千ゆきをいただく、するどきばのようなやまかってわせました。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくは二階の廊下ろうかを歩き、屋上の露台ろだいのほうへ登って行きました。眼の下には、するどバウをした滑席艇スライデングシェルがぎっしり横木につまっています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「もうこんなぐあいです。どうかたくさんわらってやってください」とうとたん、かいの火はするどくカチッと鳴って二つにれました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わが堪へし活光いくるひかりするどさげにいかばかりなりしぞや、さればもしこれを離れたらんには、思ふにわが目くるめきしならむ 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
何故ならば、氏の心理解剖しんりかいばう何處どこまでも心理解剖で、人間の心持を丁度ちやうどするどぎん解剖刀かいばうたうで切開いて行くやうに、緻密ちみつゑがいて行かれます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
べつに、かたには更紗さらさ投掛なげかけ、こし長劍ちやうけんいた、するどい、はだか筋骨きんこつ引緊ひきしまつた、威風ゐふう凛々りん/\としたをとこは、しま王樣わうさまのやうなものなの……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつも憤然ふんぜんとしておおいいかり、さながら自分の愛人を侮辱ぶじょくされた時の騎士きしのごとく、するど反撃はんげきやりをふるってき当って行った。
獨りごちつゝ首傾けて暫し思案のさまなりしが、忽ち眉揚まゆあがまなこするどく『さては』とばかり、面色めんしよく見る/\變りて握り詰めし拳ぶる/\と震ひぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ながかたちよこにひらたいものとがありますが、双方共そうほうとも一方いつぽうにつまみがあり、他側たがはれるほどするどくはありませんが、にぶになつてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ところが、灰色ネズミたちが小麦こむぎを一つぶのみこんだかのみこまないうちに、中庭なかにわのほうから、するどふえが、かすかにひびいてきました。
兄弟子からするどく励まされて、千枝太郎のしおれた魂も俄に勇んだ。彼はきっとその怪異を探り出すことを泰忠に誓って別れた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
巨男おおおとこのお母さんはおそろしい魔女まじょでした。ほらわしのような高い鼻や、へびのようなするどを持ったあのおそろしい魔女まじょでした。
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そしてするどをむきしながら子家鴨こあひるのそばにはなんでみた揚句あげく、それでもかれにはさわらずにどぶんとみずなかんでしまいました。
侠者子路はまずこの点で度胆どぎもかれた。放蕩無頼ほうとうぶらいの生活にも経験があるのではないかと思われる位、あらゆる人間へのするどい心理的洞察どうさつがある。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
付る其許の巧み甚だ以て言語ごんごたえたり此儀辯解ありやサア如何に返答致されよと高聲かうせいに申されたる有樣威權ゐげんするどければ主税之助はハツと言て生膽を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると、老婆は、見開みひらいてゐた眼を、一層大そうおほきくして、ぢつとその下人のかほを見守つた。眶の赤くなつた、肉食鳥のやうな、するどい眼で見たのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大變たえへんだよ、おとつゝあ」と今度こんどすここゑころすやうにして勘次かんじうながした。勘次かんじ怪訝けげんするどもつておつぎをた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、玄竹げんちく無遠慮ぶゑんりよに、まるあたま但馬守たじまのかみまへしてせた。たゝみまいほどへだたつてはゐるが、但馬守たじまのかみするどは、玄竹げんちくあたま剃刀創かみそりきずをすつかりかぞへて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
熊五郎の活動を何時も六の日と鑑定かんていした錢形平次の智惠の裏を行つて、その前の晩——十月五日の夜中を選んだするどさは、さすがの平次も舌を卷きました。
その青白い皮膚ひふの色と、つめたい、するどい眼の光とは、むしろ神経質な知識人を思わせ、また一方では、勝ち気で、ねばっこい、残忍ざんにんな実務家を思わせた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それをお浪が知っていようはずは無いが、雁坂を越えて云々しかじかと云いあてられたので、突然いきなりするどい矢を胸の真正中まっただなか射込いこまれたような気がして驚いたのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、たちまおぼゆるむね苦痛くつうちやう疼痛とうつうたれするどかまもつて、ゑぐるにはあらぬかとおもはるゝほどかれまくら強攫しがき、きりゝとをばくひしばる。いまはじめてかれる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それ程かれいのちするどく感じぎた。従つてあつあたまを枕へけた時は、平岡も三千代も、彼に取つて殆んど存在してゐなかつた。彼は幸にしてすゞしい心持にた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十分、相手にのしかからせた富田六段は、抱かれた足をモンクスの下腹したはらに当てがうとみるや、気合いするど
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
それを見送っているうち、ふとそのするどい横顔から何んだか自分も見たことがあるらしいその女の若いむすめだった頃の面影おもかげかしのように浮んで来そうになった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
彼等は古びた中折帽を阿弥陀あみだにかぶった、咽喉のどよごれた絹ハンカチを巻いた、金歯の光って眼のするどい、癇癪持かんしゃくもちらしい顔をした外川先生と、強情ごうじょうできかぬ気らしい
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
艦隊かんたいのように魚以上の堂々とした隊列で遊弋し、また闘鶏とうけいのように互いに瞬間をするどつつき合う。身体に燃えるぬめりを水で扱き取ろうとして異様にひるがえり、翻り、翻る。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
銛はするど尖端せんたんと槍の如きとより成る物なるが魚の力つよき時は假令たとへ骨にさりたるも其儘そのままにて水中深く入る事も有るべく、又漁夫があやまつて此道具をながす事も有るべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
藥草類やくさうるゐってをったが、かほ痩枯やせがれ、眉毛まゆげおほかぶさり、するどひんけづられて、のこったはほねかは
牧場まきばの中には、美しい調子ちょうしふえのようながまのなく声が聞えていた。蟋蟀こおろぎするどふるえ声は、星のきらめきにこたえてるかのようだった。かぜしずかにはんえだをそよがしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
これは私がかつて、こわれた窓硝子ガラスの光ったふちから採取さいしゅしたものでした。あの怪物が室内から飛び出すときに、するどい硝子の刃状はじょうになったところで、切開したものと思います。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
きよ!』女王樣ぢよわうさまするどおほきなこゑまをされました。三にん園丁等えんていらたゞちにき、王樣わうさまと、女王樣ぢちわうさまと、皇子方わうじがたと、それから其他そのたものとに、各々おの/\辭儀じぎをしはじめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そして頭から足までするどい悲嘆にふるへた。口をけばたゞもう生れて來なければよかつた、ソーンフィールドに來なければよかつたといふ、焦れた望みを云ふばかりだつた。
そのうち高丸たかまる田村麻呂たむらまろするど矢先やさきにかかって、乱軍らんぐんの中ににしてしまいました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
苦み走った浅黒い顔が、心なしか微笑んで、でも三角形に切れの長い眼はおたかさまのようにするどく伝二郎を見下していた。気押され気味に伝二郎は咽喉が詰ってしまったのである。
此手紙以外このてがみいぐわいに、をんなにくには、如何どん秘密ひみつあとつけられてあるか、それは一さいわからぬ。こゝろおくに、如何どんこひふうめてあるか、それもとよりわからぬ。わたし想像さうぞう可恐おそろしくするどくなつてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そうっておじいさんはにっこりともせず、正面しょうめんからわたくしするど一瞥いちべつあたえられました。
どんな意味で云ったのか、僕だけの解釈では、僕以外の誰かに、済まなさを感じていたのであろう。——僕は彼女を知る前に、一人の少女を愛していた。骨格がするどく、三白眼さんぱくがんに近い。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
周三は、臺所に立ツて顏を洗ツてゐる間、種々な物をて、そして種々な事を考へた。彼の頭は自由の空氣に呼吸こきふするやうになツても、依然としてせわしく働いて、そしてはりのやうにするどい。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ジナイーダは返事をせずに、ただかたをすくめただけだった。わたしはひざをついたまま、すっかり悄気しょげかえって、彼女を見まもっていた。彼女の一言一句は、するどくわたしの胸に突き刺さった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
すなわち実業家と称する人の中には自分の商売を進むるにするどく、その成功のためにはほとんど人倫をみだすもてんとして恥じざるのみか、かえってこれを誇りとするがごとき人をしばしば見受ける。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これを読まれた時分にネパールの大王殿下はその書を下に置き手をって「愉快だ、実に愉快だ」と三度大呼たいこせられ、なお「チベット法王の胸に一弾丸を放ってつらぬいたごとく実にこの論法はするどい。 ...
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一休いっきゅうさんの頓智とんちというものは、まるで、とぎすましたやいばのような、するどさで、もし、一休いっきゅうさんが、仏門ぶつもんはいってとくをみがいたのでなければ、大分だいぶ危険きけんなようにさえおもわれるところもあるくらいです。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
するとその刹那せつな、ぱっといて菊之丞きくのじょうの、ほそこえするどきこえた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
むし暑き家のとのもに降る雨のひびきのするどさわれやつかれし
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
そのあをあかくおぼめける劇薬げきやくのエチケツテ……するどく、にがし。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
語音も土地の人とは同じからず、声細くしてするどし。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)