ぎん)” の例文
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そっちの方から、もずが、まるで音譜おんぷをばらばらにしてふりまいたようにんで来て、みんな一度いちどに、ぎんのすすきのにとまりました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
りょうちゃんには、ひかっていれば、みんなぎんになってえるのね。」と、おねえさんは、そのうし姿すがた見送みおくりながらおっしゃいました。
小さな弟、良ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
何故ならば、氏の心理解剖しんりかいばう何處どこまでも心理解剖で、人間の心持を丁度ちやうどするどぎん解剖刀かいばうたうで切開いて行くやうに、緻密ちみつゑがいて行かれます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その小松こまつは、何處どこからかひかりけてるらしく、丁度ちやうどぎんモールでかざられたクリスマスツリーのやうに、枝々えだ/\光榮くわうえいにみちてぐるりにかゞやいてゐた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ぎんのさじを一本と、それに金貨きんかも一枚あげよう、その金貨といったら、少年の父親の銀時計ぎんどけいかわっくらいもある大きなものだと、言いました。
博士はくしの家は町をみおろす、おかのうえに建っている。そこからは、丘のふもとの『ぎんねこ』酒場さかばや、バスの停留所ていりゅうじょが、ひと目でみることができた。
玉杓子たまじやくしみづいきほひにこらへられぬやうにしては、にはかみづひたされてぎんのやうにひかつてきしくさなかかくれやうとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
したはぎ桔梗ききやうすゝきくず女郎花をみなへし隙間すきまなくいたうへに、眞丸まんまるつきぎんして、其横そのよこいたところへ、野路のぢ空月そらつきなかなる女郎花をみなへし其一きいちだいしてある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ムスメはつひにうつむいたまヽ、いつまでも/\わたし記臆きおく青白あをじろかげをなげ、灰色はいいろ忘却ばうきやくのうへをぎんあめりしきる。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
晩春の午後の陽射しを受けて淋しくいぶぎん色に輝く白樺の幹や、まばらな白樺の陰影に斜めに荒い縞目をつけられて地味に映えて居る緑の芝生を眺めて居た。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そいつは、ちょっと見たところでは、きんぎんとでってあるみたいだが、ほんとうはイオウとチャン(コールタールなどを精製せいせいしたときのこるこっかっしょくのかす)
ぎんの蜘蛛の巣がおまへの耳に絲を張つた、おまへの胴中どうなかに這つてゐる甲蟲よろひむしは涙の雨に打たれて血を吐いた。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
聞て幸ひぎんの松葉のちひさ耳掻みゝかきほししと有る故直段ねだんも安くうり彼是かれこれする中に雨もやみしかば暇乞いとまごひしてかへりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふりつけてきた、ぎん細鞭ほそむちをかわしながら、なお、忍剣にんけん片手かたてにつかんだ黒衣こくいそでをはなさない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其れから少し離れて、隣家となりもぎツて捨てたいわしの頭が六ツ七ツ、尚だ生々なま/\しくギラ/\光つてゐた。其にぎん蠅がたかツて、何うかするとフイと飛んでは、またたかツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「おぎんが作った大ももは」と呼び歩く楊梅やまもも売りのことは、前に書いたことがあるから略する。
物売りの声 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三河屋で一分いちぶぎんを両替へしたのは次郎である。横痃の跛足をよそおつてゐたのは甚五郎である。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
かんむり帶飾おびかざりなどはおなかたちでも、どうきんめっきをしたものや、ぎんつくつたものがただけです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「さあ、それが愚痴ぐちと云うものじゃ。北条丸ほうじょうまるの沈んだのも、ぎんの皆倒れたのも、——」
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おりにかないてかたことばぎん彫刻物ほりものきん林檎りんごめたるがごとし、という聖書の箴言しんげんを思い出し、こんな優しいお母さまを持っている自分の幸福を、つくづく神さまに感謝した。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ま夜中のころ、宿屋やどやのまどを、中からおしあけて、こうもりのように、ひらりととびおりた人かげを、ぎんのフライパンのようなお月さんは、高いところから見たのでありました。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
何故なぜぎん調しらべ」ぢゃ? 何故なぜ音樂おんがくぎん調しらべ」ぢゃ?……猫腸絃子サイモン・キャトリングどん、さ、なんとぢゃ?
ジエンナロは二人の小娘に、査列斯チヤアレスぎん一つ(伊太利名「カルリイノ」約十五錢五厘)與ふべければ薔薇の花束得させよといひて、そを遠ざけ、あるじに迫りて接吻せんとしたり。
きんさかずききんのたちばな、にしきたんきぬ五十ぴき、これはおとうさんへのおくものでした。それからぎん長柄ながえぎんのなし、綾織物あやおりものそでが三十かさね、これはおかあさんへのおくものでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
弟のぎんちゃんは二十四、五だったが、家じゅうで一番几帳面きちょうめんなしかしけちな男だった。
「おねがひだから、しづかにしてゐてくんな」とたのみました。しづかになつたやうでした。すると、こんどはあぶやつぎん手槍てやりでちくりちくりとところきらはず、肥太こえふとつたうしからだしはじめました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それは五人ごにんとも別々べつ/\で、石造皇子いしつくりのみこには天竺てんじくにあるほとけ御石みいしはち車持皇子くらもちのみこには東海とうかい蓬莱山ほうらいさんにあるぎんきんくき白玉しらたまをもつたえだ一本いつぽん阿倍あべ右大臣うだいじんには唐土もろこしにある火鼠ひねずみ皮衣かはごろも
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ぎん黄金こがね太刀たちをひらひらとひらめかす幻想の太陽のやうなあなたのこゑも
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
貴婦人きふじんはふとくちびるに小さなぎん呼子よぶこぶえを当てて、するどいを出した。
「君と奥田君と尾崎君だな、連中で所謂いわゆるぎんさじを銜えて生れて来たのは」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
うめせいぎんすずのようなきれいなこえで、そうこたえてキョトンとしました。
「その真鍮しんちゅうぎんのメッキではとくにどんな薬品やくひん使つかいますか」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
波つづきぎんのさざなみはてしなくかがやく海を日もすがら見る
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
香炉かうろを手に取揚とりあげ、ぎんさじいたかうを口へ入れ、弥
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぎんの台のふちに、光るように鉄を置け。8940
ぎんよりしろげて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ぎんのナイフは
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
ぎんふえ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
左手のなぎさには、なみがやさしい稲妻いなずまのようにえてせ、右手のがけには、いちめんぎん貝殻かいがらでこさえたようなすすきのがゆれたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
りょうちゃんは、おねえさんのっている、ぎんのシャープ=ペンシルがほしくてならなかったのです。けれど、いくらねだっても、おねえさんは
小さな弟、良ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
と立つ時、遠浅の青畳、真中とも思うのに、錦の帯の結目がさっと落ちて、夢のような秋草に、濡れたぎんの、蒼い露が、雫のように散ったんです。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、ぎんいろのぬのや、まぶしいほどピカピカ光る美しいもうせんを、ニールスの目の前にひろげてみせました。
彼等かれらけるとぎんごとひかつて獲物えものが一でもふねればそれを青竹あをだけつゝんで威勢ゐせいよくかついでる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その都度つど御米およね眞丸まんまるふちけたぎんつきと、絹地きぬぢからほとんど區別くべつ出來できないやう穗芒ほすゝきいろながめて、んなものを珍重ちんちようするひとれないとやうえをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あるねえ。しかし、ぎんがあらかたじゃないか。これでは、よい茶はいくらも上げられないが」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、左手ひだりてはう人家じんか燈灯ともしびがぼんやりひかつてゐた——Fまちかな‥‥とおもひながらやみなか見透みすかすと、街道かいだう沿うてながれてゐるせま小川をがは水面みづもがいぶしぎんのやうにひかつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
たゞこしらつき貳尺四寸無名物むめいものふち赤銅しやくどうつるほりかしらつの目貫りよう純金むくつば瓢箪へうたんすかぼりさや黒塗くろぬりこじりぎん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつもとかわらぬしずかな景色けしきだったが、しばらく耳をすませていると、ちょうど、『ぎんねこ』酒場さかばのあたりで、がやがやとさわぐただならない人声ひとごえが、風にのってきこえてきた。
ピータ ほい、眞平御免まっぴらごめんなれぢゃ。足下おぬし唄方うたかたであったものを。乃公おれかはってはう。そも/\「音樂おんがくぎん調しらべ」とっぱ、はて、とかく樂人がくじんは金貨にはうありつかぬからぢゃ。