)” の例文
おやすずめは、自分じぶんだけげようとせずすずめをかばうであろう。それがために、子供こどもがわりとなって、たれるかもしれない。
すずめを打つ (新字新仮名) / 小川未明(著)
狼群ろうぐん鉄砲てっぽうをおそれて日中はあまりでないし、また人間の姿すがたが見えると、さっさとげてしまうので、この日は別段べつだん危険きけんもなかった。
といいながら、はちをつかんでげますと、したから人間にんげん姿すがたあらわれたので、びっくりして、はなしてげていってしまいました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おかみさんはれいをいい、テーブルかけをひろげて、食事しょくじのしたくをととのえ、げるように部屋へやをでていった。台所だいどころへもどりながら
彼方かなた山背やまかげからぞろ/\とあらはれてたが、鐵車てつしやるやいな非常ひじやう驚愕おどろいて、奇聲きせいはなつて、むかふの深林しんりんなかへとせた。
竹童ちくどうみたいな小僧こぞうにはりまくられ、旅僧たびそうににらまれればすぐげだすなんて、いくら町人ちょうにんにしても、あまり度胸どきょうがなさすぎるね」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いもうとも一げだしたんですけれど、やつぱりつかまつてしまひました。ちやうど大森おほもり鉱泉宿くわうせんやどへつれられてつたときのことでした。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
大方遊んでばかりいやがったのだろう、このつぶ野郎やろうめッてえんでもって、釣竿を引奪ひったくられて、げるところをはすたれたんだ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
玄竹げんちくてこすりのやうなことをつて、らにはげしく死體したいうごかした。三にん武士ぶしは、『ひやア。』とさけんで、またした。——
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
何處どこへゆく何處どこへゆく、げてはならないと坐中ざちうさわぐにてーちやんたかさんすこたのむよ、かへるからとてずつと廊下らうかいそあしいでしが
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ホモイはきだしました。りすはしばらくきのどくそうに立って見ておりましたが、とうとうこそこそみんなげてしまいました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それゆゑ二階にかいあるひ三階さんがい居合ゐあはせたひとが、階下かいかとほることの危險きけんおかしてまで屋外おくがいさうとする不見識ふけんしき行動こうどう排斥はいせきすべきである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
この木の上には、年老としおいたブナの木々の枝がおおいかぶさっているので、その上に出れば、すぐにげだすこともできるでしょう。
なぜって、みんなは、水がどっと、船の中に流れこんで、船がしずんだとき、びっくりして、わきへげてしまったのですから。
すると、まばゆいようにかゞやをんながゐます。これこそ赫映姫かぐやひめちがひないとおぼしてお近寄ちかよりになると、そのをんなおくげてきます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そして、かわにとびこんでこうぎしげようか、やぶなかにもぐりこんで、姿すがたをくらまそうか、と、とっさのあいだにかんがえたのであります。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
此間このあひだうまれたすゑをとこが、ちゝ時刻じこくたものか、ましてしたため、ぞく書齋しよさいけてにはげたらしい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
早々そうそう蚊帳かやむと、夜半よなかに雨が降り出して、あたまの上にって来るので、あわてゝとこうつすなど、わびしい旅の第一夜であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ちょっと向うがこちらの気に負けて静止した時をいっせずねらわなければげてしまう。この感じは、実は研究全体についてもいえるのである。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
よくとおる、しかし意地の悪くない高笑いに追われながら、一目散いちもくさんに自分の部屋へんで、ベッドにころがり込むと、両手で顔をかくした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「それじゃきょうじゅうに東京へいけばえい。二、三せき勝負しょうぶしてからでかけてもおそくはない。うまくいってげようたってそうはいかない」
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ねむり顏よりげしときわがうちふるひしさまに異ならじ、我はあたかも怖れのため氷に變る人の如くに色あをざめぬ 四〇—四二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ぷうんとは、やつとげるにはげたが、もうせま蚊帳かやなかがおそろしくつて、おそろしくつてたまらなくなりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そのうちに蝶々てふ/\とうさんの竹竿たけざをになやまされて、手傷てきずつたやうでしたが、まだそれでもげてかうとはしませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それを阿知直あちのあたえという者が、すばやくおかかえ申しあげ、むりやりにうまにお乗せ申して、大和やまとへ向かってげ出して行きました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ところで、ろばは、さっそくに、こりゃ、ろくなことではないとさとって、げだして、ブレーメンの町をめあてに、とことこ出かけました。
中には焼き肉を半分、食いかけたままで、コソコソとげだしたものもいる。ぼくは、このとき、すみの方で、ジャガイモを食いかけていた。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
部屋に上って仕事をしようとしても、そんな落ちつきを失った彼には、書くべきことがらがおこっているために、片っ端からげを打っていた。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
わたし一層いつそ藥研やげん生肝いきぎもをおろされようとも、お醫師いしや母屋おもやはうまうかとおもひました。和尚をしやう可厭いやらしさに。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
火につつまれたらげ途はない。だから早く逃げられる中に、とっさに難をけさせた。家は、私一人だけが残って守った。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
あいちやんはいまこそげるにときだとおもつてにはかにし、つひにはつかれていきれ、いぬころの遠吠とほゞえまつたきこえなくなるまではしつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なにいつくようなくろじゃなし、げてなんぞないでも、大丈夫だいじょうぶかね脇差わきざしだわな。——こっちへおいで。あたまけてあげようから。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
げるよりほかが無いから、あとの事なんか考へてゐる暇が無い。自分はちつとのすきを見てあとをも見ずにすたこら駈出した。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しかし、さすがに僧たちも、裸の姫には手を触れかね、躊躇ちゅうちょしているひまに姫はびっくりして苫船の中へげ込み、着物をかぶって縮んでいました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
幕吏搜索さうさくして樓下に至る。南洲乃ちげきを觀るに託して、舟をりてげ去れり。此れ皆勇怯ゆうきよほろぼ勝負しようぶを忘るゝものなり。
ことによるとあのをんなは、わたしが太刀打たちうちはじめるがはやいか、ひとたすけでもために、やぶをくぐつてげたのかもれない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
船長は、いよいよごしである。そうでもあろう。探険資金が少ないので、セキストン伯爵が、ねぎりにねぎってやとったこのぼろ船のことである。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで新吉は、曲馬団へ入ってそこをげ出すまでのいきさつと、東京へ叔父おじさんをたずねて来て、こうしてまよっていることを一通り話しました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
こらえつつ春琴の門に通っていたところある日撥で頭を打たれ泣いて家へげ帰ったその傷痕きずあとぎわに残ったので当人よりも親父おやじがカンカンに腹を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雑誌記者から読経どきょうをしいられるので、和尚さんはすきをみて庫裡のほうへげて行ってしまった。酔った二人は木魚と鐘とをやけにたたいて笑った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
内田さんや中村じょうのなかに交ってあなたの姿もみえたとき、ぼくは心が定らないままげだしたい衝動しょうどうにかられました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
刄物はものもつつあしてもどう一である。蛸壺たこつぼそこにはかならちひさなあな穿うがたれてある。しりからふつといきけるとたこおどろいてするとつぼからげる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
寢轉ねころんで讀書どくしよしてゐる枕頭まくらもとにお行儀げうぎよくおちんをしてゐる、しかつてもげない、にはへつまみす、また這入はいつてくる、汚物をぶつをたれながす、下女げぢよおこる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
いゝあんばいにからだいてました、うなるとよくが出てまたあがつてつゝみはす背負せお道中差だうちゆうざしをさしてげ出しました。
日本にほんでも徳川柳營とくがはりうえいにおいて、いつのころからか『地震ぢしん』としやうして、はめて頑丈ぐわんぜうな一しつをつくり、地震ぢしんさいげこむことをかんがへ、安政大震あんせいだいしんのち
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
次郎は、入れかけていた茶をそのままにして、いきなり両手で顔をおさえ、げるように室を出て行ってしまった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
板の間のことをその場で指摘してきされると、何ともいい訳けのない困り方でいきなり平身低頭してびを入れ、ほうほうのていげ帰った借金取があったと
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
私はその男と二年ほど連れっていたけれど、肋骨ろっこつられてから、思いきって遠い街にげて行ってしまった。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
『おきぬさんは最早もうませんよ、』とてゝばた/\とげてつた。あはれなるかな、これがぼく失戀しつれん弔詞てうじである! 失戀しつれん?、失戀しつれんいてあきれる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
よく見ると、それがあの盗賊とうぞくどもではありませんか。甚兵衛はびっくりして、見られないようにげだしてきました。そしてさるにそのことをげました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)