たま)” の例文
これからはいよ/\おたみどの大役たいやくなり、前門ぜんもんとら後門こうもんおほかみみぎにもひだりにもこわらしきやつおほをか、あたら美玉びぎよくきずをつけたまふは
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その上は、済まないけれど、力ずくで取返すから、そう思いたまえ。君をふん縛って、それから捜すんだ。僕は本気で言ってるんだぜ。
「そら、ね。いゝぱんだらう。ほし葡萄ふだう一寸ちょっと顔を出してるだらう。早くかばんへ入れたまへ。もうお日さまがお出ましになるよ。」
いてふの実 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
木曾きそ掛橋かけはし景色けしきおなことながら、はし風景ふうけいにはうたよむひともなきやらむ。木曾きそはしをば西行法師さいぎやうほふしはるはなさかりとほたまひて
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「君、いろんな言草いいぐさしてくれたまえ。君が友人として僕をいたわってくれた段は実に感謝する。それが好意というものだろう。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
軽蔑しないでたまえ。君は浅間あさましいと思うだろうね。僕は人種が違っているのだ。すべての意味で異人種なのだ。だが、その意味を
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
『エヘン!』と一つ咳拂せきばらひして、ねずみ尊大そんだいかまへて、『諸君しよくんよろしいか?もつと乾燥無味かんさうむみなものはこれです、まァだまつてたまへ、諸君しよくん! ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
荘田に言伝ことづてをしておいて呉れたまえ、いゝか。わしの云うことをよく覚えて、言伝をして、おいて呉れたまえ。の唐沢は貧乏はしている。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一寸ちよつとたまへ」とつて、燐寸まつち瓦斯ガス煖爐だんろいた。瓦斯ガス煖爐だんろへや比例ひれいしたごくちひさいものであつた。坂井さかゐはしかるのち蒲團ふとんすゝめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人々ひとびと御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。」此世このよ御扶おんたすけ蒼白あをじろいこのわが罪業ざいごふあがなたまはなかつた。わが甦生よみがへりまでわすれられてゐる。
勉強しなくつちやならない。あひる君、きつと来たまへね。僕たち二年生は全部行くよ。あす朝、きつかり七時に鳥山とりやま駅を出発だ。
あひるさん と 時計 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
きみ、ちょっとたまえ。きみはずいぶんっともないね。だから僕達ぼくたちきみっちまったよ。きみ僕達ぼくたち一緒いっしょわたどりにならないかい。
僕の情念じょうねんを察して呉れたまえ。しかし僕は自分の任務をおろそかにはしない。この苦しき恋をはぐくんだもとの国を愛するが故に……
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
塩は万歳まんざいに似ていると思え。一合の汁に入れた塩の十倍を一升の汁に入れて煮て見たまえ。集団すれば強くなるのは人間だけとはかぎらない。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
おれは余り人を信じ過ぎて、君をまで危地きちに置いた。こらへてくれたまへ。去年の秋からの丁打ちやううち支度したくが、仰山ぎやうさんだとはおれも思つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
春のけだるさのままに、いささか億劫な気持で金堂へやって来たのである。怠惰な旅人には百済観音は何の恵みも与えたまわぬのであろうか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そのとき脱ぎ捨てたまいし真白な下着は、上から下まで縫い目なしの全部その形のままに織った実にめずらしい衣だったので
小志 (新字新仮名) / 太宰治(著)
後代手本たるべしとて褒美ほうびに「かげろふいさむ花の糸口」というわきして送られたり。平句ひらく同前どうぜん也。歌に景曲は見様みるようていに属すと定家卿ていかきょうものたまふ也。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
たまへ、露西亜ロシヤ帝国政府の無道擅制ぶだうせんせいは、露西亜国民の敵ではありませんか、ども独り露西亜政府のみでは無いです、各国政府の政策といへど
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「オイ好男子、そう苦虫を喰潰くいつぶしていずと、ちっ此方こっちを向いてのろけたまえ。コレサ丹治君。これはしたり、御返答が無い」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
『やア、ぼくいま、フアーマーをしてところだ。まアあがたまへ。あしあらふ。離座敷はなれざしき見晴みはらしがいから』ときやくこのむ。
加賀見忍剣かがみにんけんどのへ知らせん このじょうを手にされし日 ただちに錫杖しゃくじょうを富士の西裾野にしすそのへむけよ たずねたもう御方おんかたあらん 同志どうしの人々にも会いたまわん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なほ此後こののちもこれにつくさんのれうにせまほしとておのれにそのよしはしかきしてよとこはれぬかゝるかたこゝろふかうものしたまへるを
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
「この国ぢや何でも物を言つて、何でもひとりで動くのだよ。そんなことをきいてゐるよつかも、早くこの服を着てくれたまへ。僕困つてゐるんだ。」
夢の国 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
三吾太祖の意を知るや、何ぞげん無からん、すなわいわく、し燕王を立てたまわば秦王しんおう晋王しんおうを何の地に置き給わんと。秦王そう、晋王こうは、皆燕王の兄たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なアにだれがあんな所へくもんか、まアきみ一緒いつしよたまへ、何処どこぞで昼飯ひるめし附合給つきあひたまへ。乙「そんなら此所こゝから遠くもないから御成道おなりみち黒焼屋くろやきや横町よこちやうさ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
縦令たとへ旦那様だんなさま馴染なじみの女のおびに、百きんなげうたるゝともわたしおびに百五十きんをはずみたまはゞ、差引さしひき何のいとふ所もなき訳也わけなり
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
これは現代の若き女性気質の描写びょうしゃであり、諷刺ふうしであり、概観がいかんであり、逆説である。長所もあれば短所もある。読む人その心して取捨しゅしゃよろしきに従いたまえ。
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
未だ人間を造らざるに先だち、まづ無量のアンジョ(天人)を造つて、厳にデウスのみを拝さんことをさとたまふ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
『君。船の入渠にゅうきょする所でも見ながら暫く待っていてたまえね。僕はこれから、ちょいと犯人をとらえて来る——』
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
其外そのほかの百姓家しやうやとてもかぞえるばかり、ものあきないへじゆんじて幾軒いくけんもない寂寞せきばくたる溪間たにま! この溪間たにま雨雲あまぐもとざされてものこと/″\ひかりうしなふたとき光景くわうけい想像さう/″\たまへ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「ムフムフ。シッカリしたまえ。オイオイ伊那一郎……S・O・S……ハハハ。ここだここだ……あがっち来い」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今度の一件はドウなるだろう、いよ/\戦争になるか、ならないか、君達には大抵たいてい分るだろうから、ドウぞれを僕に知らしてたまえ、是非ぜひ聞きたいものだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
干飯ほしいひ古酒こしゆ一筒ひとづつ、ちまき、あうざし(青麩あをふ)、たかんな(筍)方々かた/″\の物送りたまふて候。草にさける花、木のかはかうとしてほとけに奉る人、靈鷲山れいしうざんへ參らざるはなし。
「まあ、落ち付きたまえ。スパイダー。此のシンプソン君のお蔭で、自動車庫ガレイジから贓品と棍棒を発見したよ。証拠はすっかりあがっている。では、ぼつぼつ出掛けよう」
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それですら衛生問題に注意する事かくのごとし。ず一応その問題を読んでみたまえ、玉子料理の始めに
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「なんだそれ位の事でへこたれるな、しっかりしたまえ」などいわれると病人の機嫌きげんはよろしくない。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「太郎さん、もう仲善なかよしになろうね。僕が此れから行くから姉さんのところへ連れて行ってくれたまえ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
火山かざん噴火ふんか鳴動めいどう神業かみわざかんがへたのは日本につぽんばかりではないが、とく日本につぽんにおいてはそれがなり徹底てつていしてゐる。まづ第一だいゝちに、噴火口ふんかこうかみたまへる靈場れいじよう心得こゝろえたことである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
君達きみたち娯樂ごらくともならばしたまへとうつくしきたましひぐ」といふあなたの歌をS誌上しじやうに見たその時の、なんともいふことの出來ないその心持こゝろもちを、私はまだまざ/\とおぼえてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
君は予の誰なるかを知りたまうや。今夜久しぶりに君を見て、予は再び君を恋し始めたり。今一度、予と握手し給うお心はなきか。明晩もこの席に来て、予を待ち給うお心はなきか。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
アッシジのひじりフランチェスコの物語。フランチェスコは雀子をしみたまひき。雀子も慕ひまつりき。現身うつしみの人にてませば、かの人もまた人のごと寂しくましき。寂しくて貧しくましき。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よろしい。それじゃあ、明日みょうにちやしきへ来てくれたまえ。何もかも話して聞せるから。」
話けるに長兵衞は左右とかくどくに思ひつき或時あるときしやう三郎にむか時節じせつとは云ながふるき御家の斯迄かくまで不如意ふによいになりたまふ事是非ぜひなき次第しだいなりそれつき少々せう/\御相談ごさうだんあり其譯そのわけはお娘子お熊殿くまどの持參金ぢさんきんのあるむこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今年かしこくも即位の大典を挙げさせたまふ拾一月の一日いちじつに、この集の校正を終りぬ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
先代政祐のとき、番頭兼用人に進んで役料とも七百石をたまわるようになった。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……幽暗ほのくら路次ろじ黄昏たそがれいろは、いま其処そことほごとに、我等われら最初さいしよ握手あくしゆの、如何いか幸福かうふくなりしかをかた申候まをしそろ貴女きぢよわすたまはざるべし、其時そのとき我等われら秘密ひみつてらせるたゞ一つの軒燈けんとうひかりを……
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
が今、この工場の中に立って、あの煙を見、あの火を見、そうしてあの響きをきくと、労働者の真生活というような悲壮な思いがおさえがたいまでに起ってくる。彼らの銅のような筋肉を見たまえ。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
父はこの月の七日なぬか、春雨さむきあした逝水せいすい落花のあわれを示し給いて、おなじく九日の曇れる朝、季叔すえのおじの墓碑と相隣れるところとこしなえに住むべき家と定めたまいつ。数うれば早し、きょうはその二七日ふたなぬかなり。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
Vanitati creatura subjecta est etiam nolens. ——「造られたるものの虚無むなしきに服せしは、おのが願によるにあらず、服せしめたまひし者によるなり。」
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)