きよ)” の例文
吉坊よしぼうは、両手りょうてあたまうえにのせて、きよちゃんがあちらへゆけば、そのほう見送みおくり、こちらへくればまたはなさずに、むかえていました。
父親と自転車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つちうへらばつてゐる書類しよるゐ一纏ひとまとめにして、文庫ぶんこなかれて、しもどろよごれたまゝ宗助そうすけ勝手口かつてぐちまでつてた。腰障子こししやうじけて、きよ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
裾野すそのけむりながなびき、小松原こまつばらもやひろながれて、夕暮ゆふぐれまくさら富士山ふじさんひらとき白妙しろたへあふぐなる前髮まへがみきよ夫人ふじんあり。ひぢかるまどる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
てんにでもいゝ、にでもいゝ、すがらうとするこゝろいのらうとするねがひが、不純ふじゆんすなとほしてきよくとろ/\と彼女かのぢよむねながた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
きよさん清さん。」という声が聞こえた。その声は狼狽ろうばいした声であった。余が蹶起けっきして病床に行く時に妹君も次の間から出て来られた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
御下屋敷には以前からお留守居をしている稲瀬十兵衛という老人のお侍夫婦のほかに、お竹とおきよという二人の女中が居りました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すべてがいかにもきよらかで、優雅ゆうがで、そして華美はでなかなんともいえぬ神々こうごうしいところがある。とてもわしくちつくせるものではない。
からははひにあともとゞめずけぶりはそら棚引たなびゆるを、うれしやわが執着しふちやくのこらざりけるよと打眺うちながむれば、つきやもりくるのきばにかぜのおときよし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おきよさん、これを大森さんのとこへ持っていって、このかたが先ほど見えましたがお留守だと言って断わりましたって……」
疲労 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ばかなやつら! その水でさかずきをそそぎ、その流れで手拭てぬぐいをしぼって頭や胸を拭く、三尺へだたればきよしなんて、いい気なものだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
青いそらからかすかなかすかながくのひびき、光のなみ、かんばしくきよいかおり、すきとおった風のほめことばがおかいちめんにふりそそぎました。
それから一週間しゅうかんばかりあとになって、ようや袖子そでこはあたりまえのからだにかえることが出来できた。あふれてるものは、すべてきよい。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
きよと英子とが同一人であるかも知れないという彼の想像は、村田が英子の顔を知らないということによって、一つの障害が除かれたわけだった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
常並つねなみの人のうむには唾液つばしるを用ふれども、ちゞみの紵績をうみには茶碗ちやわんやうの物に水をたくはひてこれをもちふ。事毎ことごとてあらひ座をきよめてこれをなすなり。
我々の祖霊は早くきよまわり、神の大きな一団に入って活きた子孫と共に季節のよろこびを味わっていたようである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すっかり打水をした広い庭に面した八畳の間に、立派な食卓が出ていて、子守のきよがひとりで番をしていた。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれど、子どもは母を、いてでも、きよらな女性、気だかい女性、純なる愛の権化ごんげとも、見たいのであった。
くその所天おっとたすけて後顧こうこうれいなからしめ、あるいは一朝不幸にして、その所天おっとわかるることあるも、独立の生計を営みて、毅然きぜんその操節をきようするもの
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
うしろになしいそぐに瀬戸せと染領そめりやうきよき小川を打渡り心は正直しやうぢきぺんの實意ぞ深き洲崎村すさきむら五里の八幡やはたも駕籠の中祈誓きせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私がまだ御飯を食べているときに、「きよちゃん。学校へ行かないか。」と云ってはじめさんが迎えにくることもあれば、私がはじめさんを誘って行くこともある。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「宮ちゃん、用があるとか何とかいっていましたよ。今いません」女中のおきよが一人いて、そういった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
一首の意は、春日山一帯を照らして居る今夜の月は、いもの庭にもまたきよく照って居る、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
亞尼アンニーは、いまは、眞如しんによ月影つきかげきよき、ウルピノ山中さんちうくさいほりに、つみもけがれもなく、此世このよおくつてことでせうが、あのにくむべき息子むすこ海賊かいぞくは、矢張やはり印度洋インドやうなみまくら
七時五十分、母屋おもやの六畳をいて、きよい白布をかけた長方形の大きな低い卓子つくえを東向きに直した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それでもやはり六部ろくぶ姿すがたあらわさないので、もういよいよだめとあきらめて、しおれかえりながら、むすめして、きれいにからだきよめて、あたらしい、白い着物きもの着替きかえさせました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それがおそろしい! そのあなむろ呼吸いきつまってはしまやせぬか? そのむさあななかへはきよ空氣くうき些程つゆほどかよはぬゆゑ、ロミオどのがするころにはわしんでしまうてゐねばなるまい。
そこで、利助りすけさんと海蔵かいぞうさんは、みずをのみにやまなかにはいってゆきました。みちから一ちょうばかりやまにわけいったところに、きよくてつめたい清水しみずがいつもいていたのであります。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
お靜のきよらかさを救ふ爲に、どんな事をしても——とあせりましたが、此密室はどんな設計で出來たものか、二刻ふたときあまり探し拔いても、どうしても入つた場所がわかりません。
きよちやんと私は両手に力をこめて、太鼓に自分達の喜を含ませて、たゝき始めました。
泣き笑ひ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
『あたしは、気高けだかい、きよらかなもののことを考えているのです。』と、婦人は答えた。
しかも二物とも夏にして時鳥の音のきよらなる蓴菜の味の澹泊なる処、能く夏のはじめの清涼なる候を想像せしむるに足る。これらの句は取り合せの巧拙によりてほぼその句の品格を定む。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
イヤにねちねち追窮して「うそついてもあかん、僕ちゃあんときよに聞いてるねん」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
真白まっしろりつぶされたそれらのかたちが、もなく濡手拭ぬれてぬぐいで、おもむろにふききよめられると、やがてくちびるには真紅しんくのべにがさされて、菊之丞きくのじょうかおいまにもものをいうかとあやしまれるまでに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それから翌年よくとしの春、姑はふと中風ちゅうふうになりましてね、気の強い人でしたが、それはもう子供のように、ひどくさびしがって、ちょいとでもはずしますと、おきよお清とすぐ呼ぶのでございますよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
すると留守に黒鴨くろがものこしらえでリッパな車夫がきて。あなたおうちかッて聞きましたッて。きよがるすだッていいましたら。では後ほどまた伺います。ぜひお目にかかりとうございますからッて。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
まことに此時このときうららかにかぜやはらかくうめの花、のきかんばしくうぐひすの声いと楽しげなるに、しつへだてゝきならす爪音つまおと、いにしへの物語ぶみ、そのまゝのおもむきありて身も心もきよおぼえたり、の帰るさ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
親父が聞きつけておこって、年も行かぬに母親に向って、おのれのような過言を言う奴はない、始終が見届けられないとて、脇差を抜いておれに打ちつけたが、きよという妻はあやまってくれたっけ。
その表書うわがきすなわちエッヂンボルフ王子のきよめと云う可笑しな不思議な文字をかいて、中の文句はドウかと云うに、この日本は真実、自尊自大の一小鎖国にして、外国人をば畜生同様に取扱うの常なり
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
われはおのれ生涯しやうがいのあまりきよくないこと心得こゝろえてゐる、みちかたはら菩提樹下ぼだいじゆか誘惑いうわくけたことつてゐる。たま/\われにさけませる会友くわいいうたちの、よく承知しようちしてゐるごとく、さういふもの滅多めつた咽喉のどとほらない。
山岳さんがく溪流けいりゆうにはあまりにふれませんが、やはり特有とくゆううをがゐます。いはな、やまめ、うぐひ、あゆなどはそのなかおもうをで、高山こうざんみづきよみきつてるように、そのにくも、くさみがなく、あぢがいゝ。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ぬばたまの のふけけば、楸生ひさぎおふるきよ川原かははらに、千鳥ちどり頻鳴しばな
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
うち粉叩き叩きつつゐつ此の太刀のきよの明りぞ花と照り合ふ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
月花にうかれつくして身の果は露のかをりに骨もきよけん
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
齋戒ゆまひか、——いづきよまりは
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
きよは本当に忠義者ね」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
きよきたる園守そのもり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
つききよし、ほししろ
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
「おきよさん。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いますぐ、っていてね。」と、いうよりはやく、きよちゃんは、いえからして、二人ふたりは、はなしながら、学校がっこうへいったのであります。
いちょうの葉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おいこれ一寸ちよつと其所そこいてれ」とわたすと、きよめうかほをして、不思議ふしぎさうにそれを受取うけとつた。御米およねおく座敷ざしき拂塵はたきけてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)