かけ)” の例文
染出そめいだしたる萌黄緞子もえぎどんす油箪ゆたんを掛て二棹宰領四人づつ次に黒塗くろぬり金紋きんもんむらさきの化粧紐けしやうひもかけたる先箱二ツ徒士十人次に黒天鵞絨に白く御紋ごもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おつかはいくらもかけねえつちやつたから、まあだまるつきりあたらしいやうだろ、どうしたランプまつとこつちへしてせえまあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
またちっとでも強情ねだりがましい了見があったり、一銭たりとも御心配をかけるようなかんがえがあるんなら、私は誓って口は利かんのです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それですッかりおびやかされた彼は、もう伊兵衛よりスタスタと先に立って、柳町のかけ小屋の裏から飛び込むように姿をかくしました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
電話機械でんわきかいといふものが始めてまゐつた時に、たがひかけやうを知らぬから、両方で話をしようと思つても、うしてもわからなかつたといふ。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何時いつにか細君さいくんの名をたがひに知つて仕舞しまつて居るので三浦工学士のペンを走らせて居るうしろから「たま子さんによろしく」などと声をかける者もある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
鎧潟よろひがたに近き横戸よこと村の長徳寺、谷根たにね村の行光寺も怪力くわいりよくのきこえたかし。此人々はいづれもひとりしてつりがねかろかけはづしするほどの力は有し人々なり。
刀の儀難有御厚禮申上候。何卒便宜べんぎを以て御遣し被下度奉合掌がつしやう候。かけ重疊かさね/″\自由の儀申上不都合千萬に御座候得共、御仁宥可下候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
叔父おじにさえあさましき難題なんだい云いかけらるゝ世の中に赤の他人でこれほどのなさけ、胸にこたえてぞっとする程うれし悲しく、せ返りながら、きっと思いかえして
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お客へ出す前に玉子の黄身へ塩胡椒とレモンの汁を絞り出して混て白身を泡立せて加えたものをソースにしてかけます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
おもいのほか金が散かったり品物がかけになったりして、資本の運転が止ったところで、去年よりも一層不安な年の暮が、すぐにまた二人を見舞って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
元園町の女中に遣らうと思つて四十五銭と云ふ紅入べにいりのを一かけ買つたが、外にも何か買はせようとする熱誠ねつせいと云ふものが主人と小僧さんの顔に満ちて居るので
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
荒凉くわうりやうたれたかれは、なにかなしてこゝろまぎらさんと、イワン、デミトリチの寐臺ねだいところつてこしかける。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
丸いテーブルには、薔薇ばらの花を模様にくずした五六輪を、淡い色で織り出したテーブルかけを、雑作ぞうさもなく引きかぶせて、末は同じ色合の絨毯じゅうたんと、づくがごとく、切れたるがごとく
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少し我達おれたち利益ためになることをいふと、『中止ツ』て言やがるんだ、其れから後で、弁士の席へ押しかけて、警視庁が車夫の停車場きやくまちに炭火を許す様に骨折てほしいつて頼んでると
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
浴槽ゆぶねの一たん後腦こうなうのせて一たん爪先つまさきかけて、ふわりとうかべてつぶる。とき薄目うすめあけ天井際てんじやうぎは光線窓あかりまどる。みどりきらめくきり半分はんぶんと、蒼々さう/\無際限むさいげん大空おほぞらえる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
昨日きのう富家ふうかの門を守りて、くびに真鍮の輪をかけし身の、今日は喪家そうかとなりはてて、いぬるにとやなく食するに肉なく、は辻堂の床下ゆかしたに雨露をしのいで、無躾ぶしつけなる土豚もぐらに驚かされ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
幸運こううん悲運ひうんのけじめは勿論もちろんあるとしても、つ者がつにはかならず當ぜん由がある。蹴落けおとされて憐憫れんびんつ如き心かけなら、はじめから如何なる勝負せうふにもたゝかひにも出る資格しかくはないわけだ。
「少しばかりのかけを集めて、あんまり汗になったから途中で一と風呂入って戻りました」
拠無よんどころなく夕方から徒歩で大坂おおさかまで出掛でかける途中、西にしみやあまさきあいだで非常に草臥くたびれ、辻堂つじどう椽側えんがわに腰をかけて休息していると、脇の細道の方から戛々かつかつと音をさせて何か来る者がある
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
してみると、乃公わしらも二千五百万年後には矢張今のやうにお前さんの店で午飯ひるめしを食つてゐる筈なのだ。ところで、物は相談だが、この勘定をそれまでかけにして置いては呉れまいかね。
偐紫田舎源氏にせむらさきいなかげんじ』の版元はんもと通油町とおりあぶらちょう地本問屋じほんどんや鶴屋つるや主人あるじ喜右衛門きうえもんは先ほどから汐留しおどめ河岸通かしどおり行燈あんどうかけならべたある船宿ふなやどの二階に柳下亭種員りゅうかていたねかずと名乗った種彦たねひこ門下の若い戯作者げさくしゃと二人ぎり
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
金銭なんぞ取扱うよりも読書一偏の学者になって居たいというかんがえであるに、ぞんかけもなく算盤そろばんとって金の数を数えなければならぬとか、藩借はんしゃく延期の談判をしなければならぬとかう仕事で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
どれも大きなまげに結って、綺麗なかんざしをさし、緋の長襦袢ながじゅばんに広くない帯、緋繻子の広いえりを附けたかけという姿です。すっかり順に並びますと、その前へ蒔絵まきえの煙草盆と長い煙管キセルとを置きます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
彼の感得せし水晶の珠数はかけて今なほ襟にあり、護身刀まもりがたなの袋の緒は常にとき右手めてに引着けたり、法華経八軸は暫らくも身辺を離れず、而して大凡悩大業獣に向ふこと莫逆ばくぎやくの朋友に対するが如し。
こけのしたにてかばいしもゆるぐべし、井戸ゐどがはにかけみづをのぞきしこと三四およびしが、つく/″\おもへば無情つれなしとても父樣とゝさま眞實まことのなるに、れはかなくりてからぬひとみゝつたへれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かけまくもあやかしこき、いはまくも穴に尊き、広幡ひろはた八幡やはた御神みかみ、此浦の行幸いでましの宮に、八百日日やおかびはありといへども、八月はつきの今日を足日たるひと、行幸して遊びいませば、神主かみぬしは御前に立ちて、幣帛みてぐらを捧げつかふれ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
近年は湯銭の五銭に対して蕎麦のもりかけは十銭という倍額になった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
染物をならべてかける柳かな 路健
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
そりゃア貴方仮令たとえ炭屋でも婚礼の席は立派にしなければなりませんから、嫁も地赤じあかに縫い模様の振袖に白のかけ位は着なければなりません
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
土間に、置きすててあるおいずるを、老人はひっくり返して、あわただしくあらためた。赤いよだかけをした地蔵如来、幾つもの巾着、守札まもりふだ、椿の花——
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晩方せた旅僧めも、その同類、茶店のばばも怪しいわ。手引した宰八も抱込まれたに相違ない。道理こそ化物沙汰に輪をかける。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其方儀主人しゆじんつま何程なにほど申付候共又七も主人のつき致方いたしかた有之これあるべき處主人又七にきずつけあまつさへ不義ふぎの申かけを致さんとせし段不屆至極ふとゞきしごくに付死罪しざいつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勘次かんじもおつぎもみそはぎちひさな花束はなたばさき茶碗ちやわんみづひたしてみづをはらりといもつた茄子なすかけけた。勘次かんじ雨戸あまどを一ぱいけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鎧潟よろひがたに近き横戸よこと村の長徳寺、谷根たにね村の行光寺も怪力くわいりよくのきこえたかし。此人々はいづれもひとりしてつりがねかろかけはづしするほどの力は有し人々なり。
殊更うれいを含む工合ぐあい凄味すごみあるに総毛立そうけだちながらなおくそこら見廻みまわせば、床にかけられたる一軸たれあろうおまえの姿絵ゆえ少しねたくなって一念の無明むみょうきざす途端
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
別に薄切のパンをバターでいためてその上へ焼いたシブレを載せてフレッシバターを鍋でがして上からかけたのがこのシブレグレーオーコロトンというものです
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
荒凉こうりょうたれたかれは、なにかなしてこころまぎらさんと、イワン、デミトリチの寐台ねだいところってこしかける。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
堂内はゴシツク式建築の大寺院の例に漏れず薄暗い中に現世げんせかけ離れた幽静いうせいを感ぜしめ、幾つかの窓の瑠璃るりに五しきいろどつた色硝子ガラスが天国をのぞく様に気高けだかく美しい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「少しばかりのかけを集めて、あんまり汗になつたから途中で一と風呂入つて戻りました」
朝夕あけくれ黄金丸が傍にかしずきて、何くれとなく忠実まめやかに働くにぞ、黄金丸もその厚意こころよみし、なさけかけて使ひけるが、もとこの阿駒といふ鼠は、去る香具師こうぐしに飼はれて、種々さまざまの芸を仕込まれ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
格子のそとから声をかけると、洋燈ランプを持つて下女がた。が平岡は夫婦とも留守であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
例の通りこの刑をおこないしが、その婦人の霊、護送者の家へ尋ね行き、今日こんにちは御主人にお手数てかずかけたり、御帰宅あらば宜敷よろしく云置いいおき、たちまち影を見失いぬ、妻不思議に思いいるところへ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
そ、そんなことかんがへちやいけない。僕達ぼくたちはせめてさういふゆめでもたのしんでゐたいぢやないか。——それにまた、おもかけない巡りあはせで、人にはどんな好運かううんが向いて※ないともかぎらないからね……
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すみさんは、休屋やすみやはまぞひに、恵比寿島ゑびすじま弁天島べんてんじま兜島かぶとじまを、自籠じごもりいは——(御占場おうらなひばうしろにたる)——かけて、ひとりでふねした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭の高いのがよく見えるのだから可笑おかしい。彼女が、今の家に、囲碁指南いごしなんのかんばんをかけると、かねがね、眼をつけていたのが早速に集まった。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれやつとのことで戸口とぐちつた。勘次かんじばうとしてたらうちはひつそりとくらい。戸口とぐちてゝたらかぎかけてあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もちたる木鋤こすきにて和尚をほりいだしければ、和尚大にわらうちを見るにいさゝかきずうけず、みゝかけたる眼鏡めかねさへつゝがなく不思議ふしぎの命をたすかり給ひぬ。
其方儀養子やうし又七にきずつけあまつさへ不義の申かけ致候樣下女きくに申つける段人にはゝたるのおこなひにあら不埓ふらち至極しごくつき遠島ゑんたうつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぶたるゝ程憎まれてこそ誓文せいもんかけて移り気ならぬ真実をと早速の鸚鵡おうむ返し、流石さすが可笑おかしくお辰笑いかけて、身を縮め声低く、この手を。離さぬが悪いか。ハイ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)