眞面目まじめ)” の例文
新字:真面目
そばをつとのゐることほとんどわすれて眞面目まじめいてゐるらしかつた。宗助そうすけうらやましいひとのうちに御米およねまで勘定かんぢやうしなければならなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ロチスター氏は優しく眞面目まじめに私を見つめながら默して坐つてゐた。だまつたまゝでしばらくの時が經つた。とう/\彼は口を切つた——
與吉よきち眞面目まじめなのに釣込つりこまれて、わらふことの出來できなかつたおしなは、到頭たうとうほねのある豆腐とうふ注文ちうもんわらはずにました、そして眞顏まがほたづねた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
戲談じようだんつてはこまります。だから新聞記者しんぶんきしやひとわるい。ひと眞面目まじめくのに。』と高商紳士かうしやうしんしみじかくなつたシガーをストーブにんだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なしお待遊まちあそばせよと待遇もてなしぶりことばなめらかのひととて中々なか/\かへしもせずえだえだそふものがたり花子はなこいとゞ眞面目まじめになりてまをしてはを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんはなにからなにまで可笑をかしくてたまりませんでした、がみんそろひもそろつて眞面目まじめくさつてるので、眞逆まさか自分じぶんひとわらわけにもきませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
御歸おかへし下さる樣偏へに御願ひ申ますと眞面目まじめで云ふゆゑ居並ゐならびし役人共一同笑ひに耐兼たへかね眞赤まつかに成て居るにぞ越前守殿もわらはれながら好々よし/\御威光ごゐくわう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
赤裸々せきらゝに、眞面目まじめに、謙遜けんそんゐることの、悲痛ひつうかなしみと、しかしながらまた不思議ふしぎやすらかさとをもあはせて經驗けいけんした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
これは近時きんじ建築けんちくたいする世人せじん態度たいどきはめて眞面目まじめになり、徹底的てつていてき建築けんちく根本義こんぽんぎ解決かいけつし、れから出發しゆつぱつして建築けんちくおこさうとかんがへからたことで
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
紋切型の挨拶を上の空に聞いて、奧へ通されると親分の平次が、恐ろしく眞面目まじめ腐つた顏をして迎へてくれます。
あまりのおどろきに御亭主ごていしゆは、自分じぶん酒慾しゆよくなにもすつかり、どこへかわすれました。そして眞面目まじめはたらきだしました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
『そればかりか、少年せうねん活溌くわつぱつことツたらはなしになりませんよ。獅子狩しゝがりもやります、相撲すまふります。よわ水兵すいへいなんかはかされます。』とかれ至極しごく眞面目まじめ
そして、ひとかど、かんがんで、眞面目まじめかほをして、一寸ちよつとつて頂戴ちやうだいつて頂戴ちやうだいつたら、と喧嘩けんくわしてゐる。
次に遊戯又はそれに近い事が、眞面目まじめな事のゆるかせにせられる中で、活氣を帶びて行はれ、それに關係した嚴重な、微細なおきてが立てられるのが認められる。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あめこそは、さても眞面目まじめに、しつとりと人の氣分きぶんを落ちつかせ、石の心も浮きあげてつめたい光を投げかける。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
さア、やれ、よるよ、くろづくめのきものた、るから眞面目まじめな、嚴格いかめしい老女らうぢょどの、はやをしへてたも、清淨無垢しゃうじゃうむくみさをふたけたこの勝負しょうぶける工夫くふうをしへてたも。
かう云つてをぢさんは又默つて茶をんでゐたが、やがて少し眞面目まじめになつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
なにを考へてゐたかといふと、はなは漠然バウとしたことで、彼自身じしんにも具體的ぐたいてき説明せつめいすることは出來できない。難然けれども考へてゐることは眞面目まじめだ、すこ大袈裟おほげさツたら、彼の運命うんめい消長せうちやうくわんすることである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
また南國の海邊に似付かはしい「眞面目まじめ」の服裝であると頷かしめる。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
私達は貞操道徳に對して最も眞面目まじめに幾多の疑惑を感じて居ます。
其滿足そのまんぞくかほひと見下みさげるやうな樣子やうすかれんで同僚どうれうことばふか長靴ながぐつ此等これらみな氣障きざでならなかつたが、ことしやくさはるのは、かれ治療ちれうすること自分じぶんつとめとして、眞面目まじめ治療ちれうをしてゐるつもりなのが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼女かれは、眞面目まじめかほをして、うなづいた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
汽車がはしる…………眞面目まじめふたつの眼玉から
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
眞面目まじめに色めた墓原はかはらを過る時
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「まあ御金持おかねもちね。わたし一所いつしよれてつて頂戴ちやうだい」とつた。宗助そうすけあいすべき細君さいくんのこの冗談じようだんあぢは餘裕よゆうたなかつた。眞面目まじめかほをして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
野心家やしんかであると、暴君であるとに拘らず——若し彼等が眞面目まじめであるならば——彼等が征服し支配するとき、崇高な刹那を持つものである。
まへさん何時いつ左樣さうつたね、うんときになるとれに糸織いとおり着物きものをこしらへてれるつて、本當ほんたう調製こしらへてれるかえと眞面目まじめだつてへば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『さうです、故郷くに小學校せうがくかうです、私立小學しりつせうがくです』とつたとき兒玉こだまかほ眞面目まじめであつたけれど、人々ひと/″\わらした。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ところが、今日けふくわい眞面目まじめなんだよ。婦人をんなたちはおしやくたのでもなければ、取卷とりまきでもない、じつ施主せしゆなんだ。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かきさらば三次が引請ひきうけんと其夜は戻りて二三日すぎ眞面目まじめに成て尋ね來れば長庵はお安を打招うちまねきお富を奉公に世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あいちやんは芋蟲いもむしがこんなつまらぬねんすのですこ焦心じれッたくなつて、やゝ後退あとじさりしてきはめて眞面目まじめかまへて、『おまへこそだれだ、一たいさきはなすのが當然あたりまへぢやなくッて』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
『はい、けつして御無事ごぶじにはみません。』と、亞尼アンニー眞面目まじめになつた、わたくしかほ頼母たのも見上みあげて
眞面目まじめな勤め振りと、人柄を見込まれて、先代がお雛の許婚に定めた位の若者です。
しんの心は、要らないどころか、大事だいじで大事でならないものを、うるさいなどゝあんまり世間並せけんなみなことを仰言るな、あなたのめぐまれた母の愛を、なほこのうへとも眞面目まじめにお大切たいせつになさいまし。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
俊男は今年ことし三十になる。ぼう私立大學しりつだいがく倫理りんり擔任たんにんしてゐるが、講義の眞面目まじめで親切であるわりに生徒のうけくない。自躰じたい心におもりがくツついてゐるか、ことばにしろ態度にしろ、いやに沈むでハキ/\せぬ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そばにや親爺おやぢ眞面目まじめがほ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
今夜こんや御誘おさそまをしますから、これから夕方ゆふがたまでしつかり御坐おすわりなさいまし」と眞面目まじめすゝめたとき、宗助そうすけまた一種いつしゆ責任せきにんかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「緑いろの着物を着た人たちは、みんなもう百年も前に英國からゐなくなつてゐます。」私は彼と同じやうに出來るだけ眞面目まじめくさつて云つた。
ぼく眞面目まじめこたへたのです。まつたぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんです。故意わざ奇妙きめうこたへをして諸君しよくんおどろかすつもりけつしてもたないので。これまでもぼく出身しゆつしん學校がくかうきかれましたが。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ててもかれず、うしたとくと、「どうもへんなんですよ。」と不思議ふしぎがつて、わるく眞面目まじめかほをする。ハテナ、小倉をぐら色紙しきしや、たか一軸いちぢく先祖せんぞからないうちだ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞面目まじめらしくりつぐをけば、時鳥ほとヽぎすもず前世ぜんせ同卿人どうきやうじんにて、くつさしと鹽賣しほうりなりし、其時そのときくつひてだいをやらざりしかば、れが借金しやくきんになりてもずあたまがらず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今宵こよひもおなじやうに、しろ窓掛まどかけゆるぐほとりに倚子ゐすならべたとき櫻木大佐さくらぎたいさ眞面目まじめわたくしむかつて。
『おまへつたことではない』とねずみ眞面目まじめになつてあいちやんにつて、『なにかんがへてるのか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かはして別かれしにあらずや然るに此間このあひだも六兩三分と言金子を譯なく合力がふりよくし間もなく其形にて又々まゐらるゝ事餘りなる仕方なりむかしとは違ひ今は眞面目まじめに日々の利潤りじゆんを以て其日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「親分は、本當に眞面目まじめに聞いて下さるでせうか、笑つちや嫌で御座いますよ」
「そりや機嫌のい時のことさ。」とかろ眞面目まじめにいふ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
今朝けさから美登利みどり機嫌きげんわるくてみんなあぐねてこまつてます、あそんでやつてくだされとふに、正太しようた大人おとならしうかしこまりて加减かげんるいのですかと眞面目まじめふを、いゝゑ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それ東京とうきやう出來できなかつたら、故郷こきやう住居すまひもとめるやうに、是非ぜひ恰好かつかうなのを心懸こゝろがける、と今朝けさ從※いとこふから、いや、つかまつりまして、とつい眞面目まじめつて叩頭おじぎをしたつけ。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼく諸君しよくんこの不可思議ふかしぎなる大宇宙だいうちうをも統御とうぎよしてるやうな顏構かほつきをしてるのをると冷笑れいせうしたくなるぼく諸君しよくんいますこしく眞面目まじめに、謙遜けんそんに、嚴肅げんしゆくに、この人生じんせいこの天地てんち問題もんだいもらひたいのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
正太しようた一人ひとり眞面目まじめりて、れいたまぐる/\とさせながら、美登利みどりさんは冗談じようだんにしてるのだね、れだつて大人おとならぬものいに、おいらのふが何故なぜをかしからう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)