あて)” の例文
新字:
しなには與吉よきち惡戯いたづらをしたり、おつぎがいたいといつてゆびくはへてせれば與吉よきち自分じぶんくちあてるのがえるやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うち母親おふくろあてにしてゐるのだから、ちやんと持つてかへつて、二錢でも三錢でももちよくもらへ、と、おぢいさんは首をふつた。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
『それも駄目だめだ』とこゝろひそかにおもつてるうちあいちやんはうさぎまどしたたのをり、きふ片手かたてばしてたゞあてもなくくうつかみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
果は濡羽ぬれは厚鬢あつびん水櫛みづぐしあてて、筈長はずなが大束おほたぶさに今樣の大紋だいもん布衣ほいは平生の氣象に似もやらずと、時頼を知れる人、訝しく思はぬはなかりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
船頭の直助は其日のうちに許されましたが、さてかうなると、さすがの利助も、もう縛りやうにも縛るあてがありません。
隨つて其芝居——藝題だけしか飜譯されてゐなかつた芝居は、遂にあてを取らずに樂になつた。又隨つて觀客の方でも間もなく其芝居を忘れて了つた。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
まア/\とあてもなく慰めてゐたのであつたといふが、いよ/\今夜限りで明日の晩から妹は老爺の小屋に連れ込まれねばならぬことになつたのだ相な。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
長庵と改めてあさからばんまであては無れどいそがぶり歩行あるき廻りければ相應に病家びやうかも出來たるにぞ長庵今は己れ名醫めいいにでも成し心にて辯舌べんぜつ奸計かんけいを以て富家ふうかより金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をとこみんなあんなものおほいからとおふくわらすに、わるあてこすりなさる、みゝいたいではいか、れはえても不義理ふぎり土用干どようぼしこと人間にんげん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
無論嬉しいとは思ひながら、何故、あてのはづれたやうな、失望したやうな、つまらない氣がしたのであらうと、自分ながら其心持を怪しまなければならなかつた。
羊羹 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
マーキュ 昔話むかしばなし猫王チッバルトぢゃとおもうたらあてちがはう。見事みごと武士道ぶしだう式作法しきさはふ精通せいつうあそばしたお達人たつじんさまぢゃ。
うかとつて、べつ都合つがふはつかないんだから、とほ支度したくだけいそいでして、おまへあてにからつぽの財布さいふた。うにか、おまへ是非ぜひ算段さんだんをしてくんねえ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
尋ね尋ねあてて魚の有りや無しやを問ひそれを我等に報じてしかして後に調理にかゝられては一日二日の滯留にては味ふことかたかるべし肴の儀は取消しとすべし急ぎ膳を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
お晝休みに學監を探して、私は現在の二倍の俸給で、新らしい地位を得るあてのあることを話した。
ぼく溪流けいりう沿ふてこのさびしい往來わうらいあてもなくるいた。ながれくだつてくも二三ちやうのぼれば一ちやう其中そのなかにペンキで塗つたはしがある、其間そのあひだを、如何どん心地こゝちぼくはぶらついたらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ねんごろにきやくをもてなす花楸樹はなかまど、小鳥が毎年まいとしあてにする降誕祭ノエルまつり飾木かざりぎよ、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
冒險者アドヹンチユアラー」とふたゝ先刻さつき言葉ことば力強ちからづよかへした。「なにをしてゐるかわからない。わたくしには、牧畜ぼくちくをやつてゐます。しかも成功せいこうしてゐますとふんですがね、一向いつかうあてにはなりません。 ...
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あてになるものか。』と女は鼻で笑つて、『お前さんの口前くちまへの巧いにもあきれるよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
君からのをあてにして、屹度どうかしてあげるから、ときつぱり云つてあるんだ。
奇病患者 (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
つきものをあてにせずして、もとよつこよみたつるは、事柄ことがらおいたゞしきみちといふべし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
うと、四五十二、四六十三、四七——オヤ!そんな割合わりあひでは二十にならないわ!けど、乘算じようざん九々ひやうあてにならないのね。今度こんど地理ちりはうよ。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
てえか、そんでもたえしたこともねえから心配しんぺえすんなよ」おつぎははらはれたきたな卯平うへい白髮しらがへそつとあてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
強面つれなくいたさるゝこと誠に朝夕目もあてられぬ次第故私し共三人の者種々いろ/\いさめ候へ共いさゝかも取用とりもちひ之なく非道の所置日々に増長ぞうちやう致すに付藤五郎も若氣わかげにて是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小机こづくゑに、茫乎ぼんやり頬杖ほゝづゑいて、待人まちびとあてもなし、ことござなく、と煙草たばこをふかりとかすと
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬鹿野郎ばかやらうよばはりは太吉たきちをかこつけにれへのあてこすり、むかつて父親てゝおや讒訴ざんそをいふ女房にようぼう氣質かたぎれがおしへた、おりきをになら手前てまへ魔王まわう商買人しようばいにんのだましはれてれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すこあてちがつたがづ/\繁盛はんじやうしたことなしと斷念あきらめて自分じぶん豫想外よさうぐわいへやはひつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そりややすさんの計畫けいくわくが、くちでいふとほうまけばわけはないんでせうが、段々だん/\かんがへると、なんだかすこあてにならないやうがししてね。鰹船かつをぶねもあんまりまうからないやうだから」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「よく存じませんが、大店おほだな支配人ばんとうのことですから、一人や二人かこひ者があつたところで、文句を言ふ方が間違つて居ります。それにあの年まで女房も持たず、暖簾のれんを分けて貰ふあてもないのですから」
明日あした屹度きつとるやうにいつてつたよ」勘次かんじはおしなみゝくちあてていつた。今更いまさらのやうに近所きんじよものたのまれて夜通よどほしにもくといふことにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さぐり給ふか吾儕わたしも共に案じられてと云ば忠兵衞點頭うなづきて年より怜悧さかしき和郎そなたの心配吾儕も切迫せつぱつまつた故まづ云るゝ通り五日をば承知をなして受合たれど何をあてにも雲をやみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのおとうさんをつてるが、攝津守せつつのかみだか、有鎭ありしづだか、こゝが柳川やながはせつだからあてにはらない。その攝津守せつつのかみが、わたしつてるころは、五十七八の年配ねんぱい人品ひとがらなものであつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
齒黒はぐろはまだらに次第しだい眉毛まゆげみるかげもなく、あらひざらしの鳴海なるみ裕衣ゆかたまへうしろりかへてひざのあたりは目立めたゝぬやうに小針こはりのつぎあて狹帶せまおびきりゝとめて蝉表せみおもて内職ないしよく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
翌日よくじつ約束やくそくどほ一人ひとり三保みほ龍華寺りゆうげじ見物けんぶつして、京都きやうとつてから安井やすゐはな材料ざいれう出來できだけこしらえた。しか天氣てんき所爲せゐか、あてにしたつれのないためか、うみても、やまのぼつても夫程それほど面白おもしろくなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「一つ穴だ、あてになるものか」
手桶てをけふのまでむすびつけた、小兒衆こどもしうがお馴染なじみの、あてものの臺紙だいがみやまつゝんだていもある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
面白おもしろくもない女郎めらうめとしかりつけられて、れはおまへ無理むりだ、邪推じやすいすぎる、なにしにおまへあてつけよう、このあんまわからぬと、おりき仕方しかたくらしさにおもひあまつてつたこと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それぢやどうしても兼こたあうつちやんだな。おら今夜はどうでもかうでもうんと云はせべえと思つたんだがあてが外れた。雪で歩けなくなつちやつまんねえからおら歸るぞ、そんぢや、兼次はうつちやるんだな」
芋掘り (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
阿部川あべかはへば、きなこもちとばかり心得こゝろえ、「贊成さんせい。」とさきばしつて、大船おほふなのサンドヰツチ、國府津こふづ鯛飯たひめし山北やまきたあゆすしと、そればつかりをあてにして、みなつてべるつもりの
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きやうさん母親おふくろ父親おやぢからつきりあていのだよ、おやなしでうまれてがあらうか、れはうしても不思議ふしぎでならない、とやきあがりしもち兩手りやうてでたゝきつゝいつもふなる心細こゝろぼそさを繰返くりかへせば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
えりからの前垂まへだれ幅廣はゞびろやつを、遣放やりぱなしに尻下しりさがりにめた、あとのめりに日和下駄ひよりげた土間どま突立つツたち、あたらしいのをあてがつても半日はんにち駈破かけやぶる、つぎだらけの紺足袋こんたびひざツきり草色くさいろよれ/\の股引もゝひき
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし惡人あくにんになりまする、なりりたうはけれどらねばりませぬ、ばちをおあててなさらばわたし一人、つかふても伯父おぢ伯母おばらぬことなればおゆるしなさりませ、勿躰もつたいなけれど此金このかねぬすませてくだされと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)