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漸
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やうや
ふりがな文庫
“
漸
(
やうや
)” の例文
私
(
わたくし
)
は
漸
(
やうや
)
くほつとした
心
(
こころ
)
もちになつて、
卷煙草
(
まきたばこ
)
に
火
(
ひ
)
をつけながら、
始
(
はじめ
)
て
懶
(
ものう
)
い
睚
(
まぶた
)
をあげて、
前
(
まへ
)
の
席
(
せき
)
に
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
してゐた
小娘
(
こむすめ
)
の
顏
(
かほ
)
を一
瞥
(
べつ
)
した。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
漸
(
やうや
)
つとそれを遣り過して、十間も行つてから思切つて向側に駆ける。先づ安心と思ふと胸には動悸が高い。
況
(
ま
)
して乗つた時の窮屈さ。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
徳川氏以後世運の
漸
(
やうや
)
く熟し来りたるを以て、
爰
(
こゝ
)
に漸く、多数の預言者を得て
孚化
(
ふか
)
したる彼等の思想は、漸く一種の趣味を発育し来れり。
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
寅五郎殺しの下手人は、——俺に
漸
(
やうや
)
く判つたやうな氣がするよ。——俺は此處から引返す。お前は眞つ直ぐに目白へ行つて、松藏を
銭形平次捕物控:121 土への愛著
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
五つ六つ、
七八
(
なヽや
)
つで母親を亡くした人を見ては、
光
(
ひかる
)
もああなるのではあるまいかと運命を恐れながら
漸
(
やうや
)
く
十三歳
(
じうさん
)
に迄なるのを見ました。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
目
(
め
)
にたゝへてお
高
(
たか
)
斯
(
か
)
くとは
言
(
いひ
)
出
(
だ
)
しぬ
歳月
(
としつき
)
心
(
こゝろ
)
を
配
(
くば
)
りし
甲斐
(
かひ
)
に
漸
(
やうや
)
く
此詞
(
このことば
)
にまづ
安心
(
あんしん
)
とは
思
(
おも
)
ふものゝ
運平
(
うんぺい
)
なほも
油斷
(
ゆだん
)
をなさず
起居
(
たちゐ
)
につけて
目
(
め
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
曉
(
あかつき
)
の
頃
(
ころ
)
になつて
漸
(
やうや
)
く
水
(
みづ
)
も
盡
(
つ
)
きたので、
二人
(
ふたり
)
は
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
り、
今
(
いま
)
は
何處
(
いづく
)
と
目的
(
めあて
)
もなく、
印度洋
(
インドやう
)
の
唯中
(
たゞなか
)
を
浪
(
なみ
)
のまに/\
漂流
(
たゞよ
)
つて
居
(
を
)
るのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
熱
(
あつ
)
い
茶
(
ちや
)
が
漸
(
やうや
)
く
内儀
(
かみ
)
さんの
前
(
まへ
)
に
汲
(
く
)
まれた。
被害者
(
ひがいしや
)
は
老父
(
ぢいさん
)
と
座敷
(
ざしき
)
の
隅
(
すみ
)
で
先刻
(
さつき
)
からこそ/\と
噺
(
はなし
)
をして
居
(
ゐ
)
る。さうして
更
(
さら
)
に
老母
(
ばあさん
)
を
喚
(
よ
)
んだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それから
後
(
あと
)
私
(
わたし
)
も
何
(
ど
)
うしたか
能
(
よ
)
く
知
(
し
)
らなかつたんですが、
其後
(
そののち
)
漸
(
やうや
)
く
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ると、
驚
(
おど
)
ろきましたね。
蒙古
(
もうこ
)
へ
這入
(
はい
)
つて
漂浪
(
うろつ
)
いてゐるんです。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
燕
(
つばめ
)
は
嬉
(
うれ
)
しさうに
父
(
とう
)
さんを
見
(
み
)
て
尻尾
(
しつぽ
)
の
羽
(
はね
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふり
)
ながら、
遠
(
とほ
)
い
空
(
そら
)
から
漸
(
やうや
)
くこの
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
へ
着
(
つ
)
いたといふ
話
(
はなし
)
でもするらしいのでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
合はせんばかりにして、
漸
(
やうや
)
くみんなをなだめました。しかし代官さまとれふしどもの仲は一向よくならないで、ますます悪くなりました。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
……
何
(
なん
)
とかや——いと
呼
(
よ
)
んでさがして、
漸
(
やうや
)
く
竹
(
たけ
)
の
臺
(
だい
)
でめぐり
合
(
あ
)
ひ、そこも
火
(
ひ
)
に
追
(
お
)
はれて、
三河島
(
みかはしま
)
へ
遁
(
に
)
げのびてゐるのだといふ。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
妻
(
つま
)
の
青
(
あを
)
ざめた
顔色
(
かほいろ
)
は
漸
(
やうや
)
く
花
(
はな
)
のためにやはらぎ出した。しかし、やがて、
秋風
(
あきかぜ
)
が立ち出した。
花
(
はな
)
々は
葉
(
は
)
を落す前に、その
花
(
はな
)
を
散
(
ち
)
らすであらう。
美しい家
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
数多い墓の
中
(
うち
)
から、
漸
(
やうや
)
く父の墓をさがし出して
其
(
その
)
前に立つた。墓は小さな石で、表面に姓名、裏に戦死した
年月日
(
ねんぐわつひ
)
と場所とが刻んであつた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
ソノ
脛
(
はぎ
)
ハナハダ白カリシカバ
忽
(
たちま
)
チニ
染著
(
せんぢやく
)
ノ心ヲ生ジテ即時ニ堕落シケリ、ソレヨリ
漸
(
やうや
)
ク煙火ノ物ヲ食シテ
鹿域
(
ろくゐき
)
ノ
交
(
なか
)
ニ
立却
(
たちかへ
)
レリ
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
得たれば
久々
(
ひさ/″\
)
にて一
杯
(
ぱい
)
飮
(
のま
)
ふと
或料理屋
(
あるれうりや
)
に
立入
(
たちいり
)
九郎兵衞惣内夫婦三人
車座
(
くるまざ
)
になり
獻
(
さし
)
つ
酬
(
おさへ
)
つ
數刻
(
すうこく
)
酌交
(
くみかは
)
せしが
良
(
やゝ
)
夜
(
よ
)
も
戌刻過
(
いつゝすぎ
)
漸
(
やうや
)
く此家を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
若
(
もし
)
やと聞着けし車の音は
漸
(
やうや
)
く
近
(
ちかづ
)
きて、
益
(
ますます
)
轟
(
とどろ
)
きて、
竟
(
つひ
)
に
我門
(
わがかど
)
に
停
(
とどま
)
りぬ。宮は
疑無
(
うたがひな
)
しと思ひて起たんとする時、客はいと
酔
(
ゑ
)
ひたる声して物言へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
草
(
くさ
)
の
根
(
ね
)
が
邪魔
(
じやま
)
をして、
却々
(
なか/\
)
掘
(
ほ
)
り
難
(
にく
)
い。それに
日
(
ひ
)
は
當
(
あた
)
らぬ。
寒
(
さむ
)
くて
耐
(
たま
)
らぬ。
蠻勇
(
ばんゆう
)
を
振
(
ふる
)
つて
漸
(
やうや
)
く
汗
(
あせ
)
を
覺
(
おぼ
)
えた
頃
(
ころ
)
に、
玄子
(
げんし
)
は
石劒
(
せきけん
)
の
柄部
(
へいぶ
)
を
出
(
だ
)
した。
探検実記 地中の秘密:07 末吉の貝塚
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
自分一人が
漸
(
やうや
)
く食べてゆけるだけの貧乏人でありましたから、いくら一生懸命に働いても、さう沢山の犬を養ふことはとても出来ませんでした。
犬の八公
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
され共東天
漸
(
やうや
)
く白く夜光全く
去
(
さ
)
り、清冷の水は俗界の
塵
(
ちり
)
を去り
黛緑
(
たいりよく
)
の山は
笑
(
えみ
)
を
含
(
ふく
)
んて迎ふるを見れば、
勇気
(
いうき
)
勃然
(
ぼつぜん
)
為めに過去の
辛苦
(
しんく
)
を一
掃
(
そう
)
せしむ。
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
そして叔父からいろ/\
教
(
をし
)
へを
受
(
う
)
けると同時に、いよ/\長
崎
(
さき
)
へ
歸
(
かへ
)
るといふ時に、さん/″\母にせびつて
漸
(
やうや
)
く
買
(
か
)
つてもらつたのが二円五十錢の
写真と思ひ出:――私の写真修行――
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
慶応三年の冬、此年頃
醞醸
(
うんぢやう
)
せられてゐた世変が
漸
(
やうや
)
く成熟の期に達して、徳川
慶喜
(
よしのぶ
)
は
大政
(
たいせい
)
を奉還し、将軍の職を辞した。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
『
有難
(
ありがた
)
う、
見
(
み
)
てると
却々
(
なか/\
)
面白
(
おもしろ
)
い
舞踏
(
ぶたう
)
だわ』と
云
(
い
)
つて
愛
(
あい
)
ちやんは、
漸
(
やうや
)
くそれが
濟
(
す
)
んだのを
嬉
(
うれ
)
しく
思
(
おも
)
ひました、『
私
(
わたし
)
も
其
(
そ
)
の
奇妙
(
きめう
)
な
胡粉
(
ごふん
)
の
歌
(
うた
)
が
大好
(
だいす
)
きよ!』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
かくて
漸
(
やうや
)
く
明日
(
あす
)
の朝薩摩富士の見ゆべしと云ふ海に
来
(
きた
)
り
候
(
さふらふ
)
。これにて
船中
(
せんちゆう
)
の
筆
(
ふで
)
とどめ申し
候
(
さふらふ
)
。かしこ。(十月廿七日)
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
輝
(
かゞや
)
かしかつた
彼
(
かれ
)
の
文壇的運命
(
ぶんだんてきうんめい
)
が、
漸
(
やうや
)
くかげりかけようとしてゐたところで、
彼
(
かれ
)
もちよつと
行
(
ゆ
)
きづまつた
形
(
かたち
)
であつた。
彼女の周囲
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
皆天には霧の球、地には火山の
弾子
(
だんし
)
、五合目にして一天の霧
漸
(
やうや
)
く
霽
(
は
)
れ、下に
屯
(
よど
)
めるもの、風なきに
逆
(
さか
)
しまに
颺
(
あ
)
がり、故郷を望んで帰り
去
(
い
)
なむを
私語
(
さゞめ
)
く。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
要
(
えう
)
するに、このごろに
至
(
いた
)
つて
地震
(
ぢしん
)
の
恐
(
おそ
)
ろしさが
漸
(
やうや
)
く
分
(
わ
)
かつたので、
神
(
かみ
)
を
祭
(
まつ
)
つてその
怒
(
いか
)
りを
解
(
と
)
かんとしたのであらう。
日本建築の発達と地震
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
路次の中には
寄席
(
よせ
)
もあつた。道が
漸
(
やうや
)
く人一人行き違へるだけの狭さなので、寄席の木戸番の高く客を呼ぶ声は、通行人の鼓膜を突き破りさうであつた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
長男の竜一が
漸
(
やうや
)
く小学校に上つた
許
(
ばか
)
りであり、次の昌平は
悪戯
(
いたづら
)
盛りで、晩年のお産のためか軍治は発育が悪く、無事に育てばよいがと思はれる程だつた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
漸
(
やうや
)
く
雪解
(
ゆきどけ
)
がすんだばかりなので、ところどころでちよろ/\
小流
(
こながれ
)
が出来てゐた。掘返へしても掘返へしても、かなり下の方まで土がぢく/\
濡
(
ぬれ
)
れてゐた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
私は彼れとの会話がさう容易には融合の中心へと
這入
(
はい
)
つては行かないらしい事を、私は彼れの様子によつて
漸
(
やうや
)
く察したので、自分の聞きたい話も要求せず
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
五郎兵衛
(
ゴロベイ
)
どんも
漸
(
やうや
)
く気がついたと見えて、「さうだつけ、モウちつとで忘れるとこだつけ」といふ様な訳さネ。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
進んで和文世に出でゝ言語と文章の
漸
(
やうや
)
く親密に
近
(
ちかづ
)
きし事情を叙する所、鋭敏なる観察力は火の如く
耀
(
かゞや
)
けり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
一秒間
(
いちびようかん
)
に
四五回
(
しごかい
)
の
往復振動
(
おうふくしんどう
)
になつて
漸
(
やうや
)
く
急激
(
きゆうげき
)
な
地動
(
ちどう
)
としてわれ/\の
身體
(
しんたい
)
にはつきりと
感
(
かん
)
ずるようになる。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
彼の狂暴ないら立たしい心持は、この家へ移つて来て後は、
漸
(
やうや
)
く、彼から去つたやうであつた。さうして秋近くなつた今日では、彼の気分も
自
(
おのづか
)
ら平静であつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
私は疲れた足をひいて
漸
(
やうや
)
く自分の家へ辿りついた。床をのべてそして静かに身を横へた。私は
強
(
し
)
ひて思ふまい、また強ひて祈るまい、私の感謝の道は別にあらう。
愛は、力は土より
(新字旧仮名)
/
中沢臨川
(著)
武士は
漸
(
やうや
)
く実力がありながら官位低く、屈して伸び得ず、藤原氏以外の者はたまたま菅公が暫時栄進された事はあつても遂に左遷を免れないで
筑紫
(
つくし
)
に
薨
(
こう
)
ぜられた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
定跡
(
ぢやうせき
)
の研究が進み、花田・金子たちは近代将棋といふ新しい将棋の型をほぼ完成した。さうして、棋界が
漸
(
やうや
)
く
賑
(
にぎ
)
はつたところへ、関根名人が名人位引退を宣言した。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
資本の奴隷どもは、
漸
(
やうや
)
く真人間の仲間入をしようとする権利を得ながら、半途にしてこの宗教といふ下等な
火酒
(
くわしゆ
)
の中に
溺没
(
できぼつ
)
してしまふのである。とさへ
罵
(
ののし
)
つてゐる。
日本大地震
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
つぎの第一義的効果は、死霊退散にあつたのだから、後
漸
(
やうや
)
く、つぎ自身呪文の様な威力を持つて来た。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
そうしてさらに「およそ斯くの如きは、山の手に至りては特に甚だしく、下町もまた
漸
(
やうや
)
く浸蝕せられ、たゞ浅草区のみは、比較的にかゝる田舎漢に征服せらるゝの少きをみる」
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
一同
瞑目
(
めいもく
)
せり、
拱手
(
きようしゆ
)
せり、沈思せり、疑団の雲霧は
漸
(
やうや
)
く彼等の
心胸
(
しんきよう
)
に往来し
初
(
そ
)
めけるなり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
如上
(
うへのごとき
)
文人の作なほ
未
(
いま
)
だ西欧の評壇に於ても今日の
声誉
(
せいよ
)
を博する事
能
(
あた
)
はざりしが、
爾来
(
じらい
)
世運の転移と共に清新の詩文を解する者、
漸
(
やうや
)
く数を増し勢を加へ、マアテルリンクの如きは
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
転子
(
かるこ
)
が
長棹
(
ながさを
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たりして
突出
(
つきだ
)
すと、また
其
(
そ
)
の
桟橋
(
さんばし
)
へ
戻
(
もど
)
つて
来
(
く
)
る、
幾
(
いく
)
ら
突放
(
つツぱな
)
しても
戻
(
もど
)
つて
来
(
く
)
るから、そんなこつてはいけないと
云
(
い
)
ふので、三
人掛
(
にんかゝ
)
つて
漸
(
やうや
)
く
突出
(
つきだ
)
したところが
塩原多助旅日記
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
明治
(
めいぢ
)
三十七
年
(
ねん
)
戰爭
(
せんさう
)
起
(
おこ
)
るや、
又一
(
またいち
)
召集
(
せうしふ
)
せられ、
故
(
ゆゑ
)
に
余
(
よ
)
は
代
(
かは
)
りて
此
(
この
)
地
(
ち
)
に
來
(
きた
)
り
留守
(
るす
)
を
監督
(
かんとく
)
する
事
(
こと
)
となれり。
我
(
わが
)
牧塲
(
ぼくぢやう
)
は
事業
(
じげふ
)
漸
(
やうや
)
く
其
(
その
)
緒
(
ちよ
)
に
就
(
つ
)
きしものにて、
創業
(
さうげふ
)
の
困難
(
こんなん
)
に
加
(
くは
)
ふるに
交通
(
かうつう
)
の
不便
(
ふべん
)
あり。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
と犬の小便の眞似をするかと思ふと疊の上に長く垂らした
褌
(
ふんどし
)
の端を
漸
(
やうや
)
く齒の生え始めた、ユウ子さんにつかまらしてお山上りを踊り乍ら、K君々々と私を見て、……君は聞いたか、寒山子
足相撲
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
北の方初めの程は兎角のおん
答
(
いら
)
へもなく打沈みておはせしが、度々の御尋ねに
漸
(
やうや
)
く面を上げ
給而
(
たまいて
)
、さん
候
(
ざふらふ
)
、
妾
(
わらは
)
が父祖の家は逆臣がために亡ぼされ、唯一人の兄さへ行衛も
不知
(
しらず
)
なり侍りしに
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そのゲイ爺さんは百一歳の時、十六人目の
女房
(
かない
)
に亡くなられて、こつそり十七人目の
後添
(
のちぞひ
)
を貰はうとしたが、親類縁者の者に
留立
(
とめだて
)
されて、ぶつ/\
呟
(
ぼや
)
きながら
漸
(
やうや
)
く思ひとまつたといふ事だ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
明治座の舞台稽古は、衣裳や
鬘
(
かつら
)
の都合で、
甚
(
ひど
)
く遅くなつたのです。私は其の間、早く稽古を済して、帰りたいと思つてゐました。それで
漸
(
やうや
)
く稽古が済んだのは、もう五日の午前二時頃でした。
忘れ難きことども
(新字旧仮名)
/
松井須磨子
(著)
日光
(
につくわう
)
は
柔
(
やはら
)
かに
導
(
みちび
)
かれ、
流
(
なが
)
れた。その
光
(
ひかり
)
が
漸
(
やうや
)
く
蒲團
(
ふとん
)
の
端
(
はし
)
だけに
觸
(
ふ
)
れるのを
見
(
み
)
ると、
私
(
わたし
)
は
跼
(
かゞ
)
んでその
寢床
(
ねどこ
)
を
日光
(
につくわう
)
の
眞中
(
まなか
)
に
置
(
お
)
くやうに
引
(
ひ
)
いた。それだけの
運動
(
うんどう
)
で、
私
(
わたし
)
の
息
(
いき
)
ははづみ、
頬
(
ほゝ
)
に
血
(
ち
)
がのぼつた。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
漸
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“漸”を含む語句
漸々
漸次
漸〻
佳人意漸疎
東漸
漸進
漸時
漸減
西漸
無漸
浸漸
漸進論
漸源
漸移
漸綻
漸蔵主
漸近線
漸進的
漸次強音
漸遅
...