たの)” の例文
三十七ねんぐわつ十四幻翁げんおう望生ぼうせい二人ふたりとも馬籠まごめき、茶店ちやみせ荷物にもつ着物きものあづけてき、息子むすこ人夫にんぷたのんで、遺跡ゐせきむかつた。
いつものように、おかあさんは、洋服屋ようふくやへこられて、こんどは、せい一が、新学期しんがっきからるためのあたらしいふくを、おたのみなさったのでした。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうなると、もうなんでもつよい人に加勢かせいたのむよりしかたがないとおもいまして、このあいだからはしの上にっていたのでございます。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
山家やまがあたりにむものが、邸中やしきぢう座敷ざしきまでおほききのこいくつともなくたゝるのにこうじて、大峰おほみね葛城かつらぎわたつた知音ちいん山伏やまぶしたのんでると
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お婆さんがこの部屋までくるのには、なんどもなんども、ちょっとしたおくものをしたり、言葉をつくしてたのみこんだりしたのでした。
以て此證據の品にもとづき事成就じやうじゆ致すやう深慮しんりよの程こそ願はしとのべければ伊賀亮は欣然きんぜんと打笑ひ左こそ有べし事を分てたのむとあれば義を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勘次かんじはそれでも分別ふんべつもないので仕方しかたなしに桑畑くはばたけこえみなみわびたのみにつた。かれふる菅笠すげがさ一寸ちよつとあたまかざしてくびちゞめてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「こんど日向ひゅうがからお召しよせになったあの髪長媛かみながひめを、お父上にお願いして、わたしのおよめにもらってくれないか」とおたのみになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
本当には弱いのであるが「丈夫そうに見える。」と云う事から来る、間違った健康上の自信でもあった時の方がまだたのもしかった。
マスク (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「おや、わしの好きな燻製が朝から出て来るぞ。これはたのもしい。彼奴きゃつらの目の覚めないうちに、腹一杯喰っておくことにしよう」
此上このうへにおたのみは萬々ばん/″\見送みおくりなどしてくださるな、さらでだにおとこ朋友ともだち手前てまへもあるになにかをかしくられてもおたがひつまらず
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「受けるも受けないもない。こっちは家来、むこうはお殿様だ。それに近いうち奥様がおまえのところへじきじきたのみにおいでになる」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ことに欄間らんまの周囲に張つた模様画は、自分の知り合ひの去る画家にたのんで、色々相談の揚句あげくに成つたものだから、特更興味が深い。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そうともそうとも。こうなったら、いそいでくれろとたのまれても、あしがいうことをきませんや。あっしと仙蔵せんぞうとの、役得やくとくでげさァね」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
但東京の屋敷にたのまれて餅を搗く家や、小使取りに餅舂もちつきに東京に出る若者はあっても、村其ものには何処どこ師走しわすせわしさも無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ところが彼はおどりあがって、皆がたのみに来るまでは、もう二度と寄合へ出て口なんかきいてやらないぞ、と負けずにどなりかえしました。
負けない少年 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
文字通りの熱狂ねっきょう的な歓送のなか、名も知られぬぼくなどにまで、サインをたのみにくるおじょうさん、チョコレェトや花束はなたばなどをくれる女学生達。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
甚兵衛じんべえは、もうだれたのんでも人形を使いませんでした。そして山からときどきあそびにくるさる相手あいてに、たのしく一しょうおくりましたそうです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
もしかしてざるのかはりに釣竿つりざををかついで、なにかもつとほかさかなをもりたいとおもときには、ぢいやにたのんで釣竿つりざをつくつてもらひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかしたのが官軍の将校なので彼らも不正直には扱いかねる。宿場へ着くたびに、駕の中の様子をのぞく、そのうちに初めて
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたらずとも六分利付りつきそんなしといふやうなことが、可り空たのめなことながら、一めんさうの青木さんの氕持きもちつよげきした。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
武内たけのうちつたのは、新著百種しんちよひやくしゆ挿絵さしゑたのみに行つたのがゑんで、ひど懇意こんいつてしまつたが、其始そのはじめより人物にれたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そして踊りまってがら家されで来ておれ実家じっかさ行ってとまって来るがらうなこっちで泣いてたのんでみなよ。おれの妹だって云えばいいがらよ。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いよいよわたくし病勢びょうせいおもって、もうとてもむずかしいとおもわれましたときに、わたくし枕辺まくらべすわってられるははかってたのみました。
ピータ 樂人がくじんさん、おゝ、樂人がくじんさん、「こゝろなぐさめ、こゝろなぐさめ」。乃公おいら陽氣やうきにさせてくれるなら、たのむ、かせてくれ、れいの「こゝろなぐさめ」を。
井戸いどるおかねはだいたいできたのですが、いざとなって地主じぬしが、そこに井戸いどることをしょうちしてくれないので、何度なんどたのみにたのでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
私は先年、秋田県の花輪はなわ町の物屋ものやたのんで、絹地きぬじにこの紫根染しこんぞめをしてもらったが、なかなかゆかしい地色じいろができ、これを娘の羽織はおりに仕立てた。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そして、フクロウのフランメアがアッカのたのみをきいてくれて、アッカのほしい物をわたしてくれた、と言いました。
しかるにこゝ一大いちだい事件じけんおこつた。それはほかでもない、吾等われら生命せいめいつなたの沙魚ふかにくがそろ/\腐敗ふはいはじめたことである。
死ぬ二、三日前に、父はモスクワから一通の手紙を受取ったが、それを見て父は非常に興奮した。……彼は母のところへ行って、何やらたのんだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
成程なるほどそれうも御奇特ごきどくな事で、おまい葬式とむらひを出してれゝば誠に有難ありがたいね、ぢやア何分なにぶんたのまうしますよ、今にわたしきますが、早桶はやをけなにかの手当てあては。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
糟谷かすやはがらにないおじょうずをいったり、自分ながらひやあせのでるような、軽薄けいはくなものいいをしたりして、なにぶんたのむを数十ぺんくりかえしてした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そりゃこまったね。ここじゃおいそれと象つかいにたのむわけにはいかないが、お前の叔父さんのいどころがわかるまで、わしがお前を引き取って上げよう。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
彼は決して裏切ることもかわることもなかった。弟子達でしたちにとっても、リストほど親切な師はあり得ず、友人達にとって、リストほどたのもしい男はなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
◯六節にいう「汝は神をかしこめり、これ汝のよりたのむ所ならずや、汝はその道を全うせり、これ汝の望ならずや」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
もし出来るならば自分はこの楽器を修繕しゅうぜんさせ、母の命日にだれしかるべき人をたのんで「狐噲」の曲を弾かせてみたい、と、その時から津村はそう思いついた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これ我自らわがことばたのまざるのみならず、導く者なくばかく遠く記憶にさかのぼあたはざるによりてなり 一〇—一二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わたくし丁度ちやうどそのときなにひとはなしいてもらひたいとたのまれてゐたので、子供こどもにしたはなしを、ほとんどそのまゝいた。いつもとちがつて、一さつ參考書さんかうしよをもずにいたのである。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
さりながら論語ろんごきて梅暦むめごよみ六韜三略りくとうさんりやくとする当世たうせい若檀那わかだんな気質かたぎれとは反対うらはらにて愈々いよ/\たのもしからず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
人にたのんで募集ぼしゅうしても、『あのお邸なら真ッぴら、真ッぴら』と言って寄りつかない、というような記事が明治時代の新聞に特有な洒落本口調しゃれぼんくちょうで書いてあった。
単純な何の取柄とりえもない薫より、世の中をずっと苦労して来た貝原にむしろ性格のたの甲斐がいを感じるのに、肉体ばかりはかえって強く離反りはんして行こうとするのが
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
けれどもそうして働くには、どこへいって、どんな人にたのんだらいいのか清造にはわかりませんでした。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
『ラランよ、たべるものがあるならけてくれ。ずゐぶん旨味うまさうなおとだ。たのむよ。すこしでいいから。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
おきなはそのとほりをひめつたへて、ぜひともみかどのお言葉ことばしたがひ、自分じぶんたのみをかなへさせてくれといひますと
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
世間ノコトヲ聞イテたのシンデ居タラ、二十一ノ秋カラ二十四ノ冬マデ檻ノ中ヘ入ッテイタガ、苦シカッタ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その秋大阪に住んでいるある作家に随筆をたのむと、〆切しめきりの日に速達が来て、原稿げんこうは淀の競馬の初日に競馬場へ持って行くから、原稿料を持って淀まで来てくれという。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ひたすら十七の首をならべるべく、復讐に余念ないのだが——その一轍心てつしんのすがたを見るにつけ、お妙は、そうして物事に精魂を打ち込む殿方のお心もちを、たのもしい
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それをなまじつかいま歌人うたよみたのんでつくらしたところでありふれた、初日はつひうたなどは感心かんしんしないぜ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれは、昼ごろには田沼先生が見えることを思い出し、走って炊事室すいじしつに行き、中食の用意を臨時に一人分だけ加えておくようにたのむと、またすぐ事務室にもどって来た。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
氣をつけて——とたのむよりは、ひとの手をかりなければならないことで、しかも亡父があれほど氣にしてくれたかたなのだから、お灸の養生法はそれきりで中止してしまつた。
お灸 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)