ふくろ)” の例文
だれが、そのあいだにやってきてもあわないつもりで、ぐちかためた。そして、まめふくろからして、熱心ねっしんかぞえはじめました。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
清兵衛せいべえは、うき足立った敵陣へ、まっしぐらに、朝月あさづきをおどりこませ、左右につきふせた敵兵のこしをさぐり、一ふくろあわを発見すると
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その中に玉村二郎の姿も見える。アア、警官も到着した。木戸口からなだれ込む数名の制服姿。アア、流石の魔術師ももうふくろねずみだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そんぢやぢい砂糖さたうでもめろ」とおつぎは與吉よきちだい籰棚わくだなふくろをとつた。寡言むくち卯平うへい一寸ちよつと見向みむいたきりでかへつたかともいはない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ネリはその粉を四百グレンぐらいずつ木綿のふくろにつめんだりつかれてぼんやり戸口によりかかりはたけをながめていたりする。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一寸法師は、目の前のぞうふくろのすそをめくりました。一しゃくほど象の鼻の先があらわれると、一寸法師はそれへ片手かたてけました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
大和やまとくにのある山寺やまでら賓頭廬樣びんずるさままへいてあるいしはち眞黒まつくろすゝけたのを、もったいらしくにしきふくろれてひめのもとにさししました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
みんなは、大国主神が、おとなしいかたなのをよいことにして、このかたをおともの代わりに使って、ふくろを背おわせてついて来させました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「なにかもみやの方の入口も、あれと同時に爆発して完全に閉じてしまったのです。化け物はふくろねずみです。もうなかなか出られやしません」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十三枚焼きましをしておきながら、なんとなく渡しそびれてそのままになっている写真は、ふくろのまま写真ブックのあいだにはさまっていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「ではしばらくここにて四ほうを観望かんぼうなさるがなにより。おお佐分利五郎次さぶりごろうじ組子くみこはやぶれた、ああ足助主水正あすけもんどのしょうもたちまちふくろのねずみ……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桃太郎ももたろうはおさむらいるような陣羽織じんばおりて、かたなこしにさして、きびだんごのふくろをぶらげました。そしてもものかいてある軍扇ぐんせんを手にって
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あしたは、きっと、たべもののないところにいくだろうと思いましたので、貝を持っていけるように、小さなふくろをこしらえようと思いました。
おななかにもらくなれば、此樣こんことしておくる、ゆめさらいたこゝろではけれど言甲斐いひがひのないおふくろさだめしつまはじきするであらう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふくろじゃねえよ。おいらのせるなこの中味なかみだ。文句もんくがあるンなら、おがんでからにしてくんな。——それこいつだ。さわったあじはどんなもんだの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おりと婆さんはその肉親の妹、———津村の母のことを呼ぶのに「あなた様のおふくろさま」と云うまわりくどい言葉を用いた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのらない小母をばさんがたびふくろからお菓子くわしなぞをしまして、それをとうさんにおあがりとつてれたこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「ローゼンの、あの細君さいくんをやっつけたのは、君だろう、むすめを殺したうえに、おふくろまで殺しちゃ、ちと可哀そうだね」
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
參詣さんけい老若男女らうにやくなんによは、ぞろ/\と、るやうに松並木まつなみきみち往來わうらいして、ふくろはひつたあめや、かみこしらへたはたのやうなものが、子供こどもにも大人おとなにもあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いちばん年上の男は腰帯こしおび水筒すいとうを下げ、頭のそばにはパン種のはいらないパンをいれたふくろをもっていましたが、この男がつえで砂の上に正方形をえがいて
其宅地も畑も所有地全部買収地ばいしゅうち真中まんなかに取こめられ、仮令たとい収用法しゅうようほうの適用が出来ぬとしても、もし唯一人売らぬとなればふくろねずみの如く出口をふさがれるし
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
りっぱな宝物たからものや、金貨きんかや銀貨をつめこんだ大きなふくろが、すみからすみまで、ぎっしりとつみ重ねてありました。
默つておふくろのところへ歸つてくれ。長いことは言はない、十日經たないうちに、何とか言つてやらう。兎に角お前が此處に居ちや、ろくな事がなさゝうだ。
丁度ちやうど其時そのときにははひつてたのは、いましもまちあさつて猶太人ジウのモイセイカ、ばうかぶらず、跣足はだしあさ上靴うはぐつ突掛つツかけたまゝ、にはほどこしちひさいふくろげて。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
左手は一番広くてふくろなりに水は奥へ行くほど薄れたふところを拡げ、微紅びこう夕靄ゆうもやは一層水面の面積を広く見せた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
掛け宰領さいりやう二人づつあとより麻上下あさがみしもにて股立もゝだちとりたるさむらひ一人是は御長持おながもちあづかりの役なりつゞいて金御紋きんごもん先箱さきばこ二ツ黒羽織くろはおり徒士かち八人煤竹すゝたけ羅紗らしやふくろに白くあふひの御紋を切貫きりぬき打物うちもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だけど、おさよ婆さんにしたところで、ほかにちゃあんとした因縁わけがなくちゃあ、死んだ殿様のおふくろに似てるぐれえなことで、ああいい気に奉られている道理はねえ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
此警鐘を聞くことなしにきてゐられたなら、——血をふくろが、ときふくろの用を兼ねなかつたなら、如何いかに自分は気楽だらう。如何に自分は絶対にせいを味はひ得るだらう。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
コロボックルは如何いかにして之をふせぎしか。余は彼等はエスキモーが爲す如く、もりに長きひもを付け其はし獸類ぢうるい膀胱抔ばうくわうなどにて作りたるふくろくくけ置きしならんと考ふるなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
かたパン、ビスケット、ほしぶどう、かんづめ、しおや砂糖、ほし肉、バタの類はそれぞれしばったり、つつんだり、ふくろにいれたり、早く潮がひけよとばかり待っていた。七時になった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
みぎ御神剣ごしんけんもうすのは、あれは前年ぜんねんわざわざ伊勢いせまいられたときに、姨君おばぎみからさずけられたにもとうと御神宝ごしんぽうで、みことはいつもそれをにしきふくろおさめて、御自身ごじしん肌身はだみにつけてられました。
いよ/\親爺おやぢとは絶交しました。但し、おふくろが今まで通り内証で仕送りをしてくれる筈ですから、別に慌てることもないわけです。奥さんが留守のせゐか、いやにうちなかが散らかつてますね。
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
またそれらのかゞみをおはかれるときには、はじめはふくろのようなものにをさめてれたに相違そういなく、いま發見はつけんされるかゞみはしくさつたぬののはしがいてゐるのをても、それをることが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ぼろに身を包み、こちこちの板の上に横たわり、ふくろ枕代まくらがわりにした老婆は、苦しみもがきながら息を引取った。彼女の一生は、その日その日のとぼしい暮しに、あくせく追われ通しで過ぎたのだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
(それは漢語交かんごまじりでや六ヶ言葉ことばでしたが、説明せつめいすれば、みんなで、おほきな麻布あさふくろなかへ、最初さいしよあたまつたぶたそつれ、そのくち緊乎しつかいとしばり、それからうへすわれとふことでした)
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ふくろを手にしている四十ちかくの婦人であった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
きいふくろのセメンエン
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
はなわったとき、子供こどもらは、そのしてから、これをふくろなかれて、そのうえに「アネモネ」といて、しまっておきました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
幾年前いくねんまへには一さいんだおふくろ處理しよりしてくれたのであつたが、今度こんど勘次かんじないしでおしな生計くらし心配しんぱいもしなくてはられなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それから元気よく口笛くちぶえきながらパンってパンのかたまりを一つと角砂糖かくざとうを一ふくろ買いますといちもくさんに走りだしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
……ほかなんにもなしに、撫子なでしこ小菊こぎく模様もやう友染いうぜんふくろはいつた、ちひさいまる姿見かゞみと、それだけはひつてたんです。……おこゝろおもられますこと。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うまくわなにかかりやがッたな。どうまよったのかしらないが、自分から罠のふくろへはいりこんでくるうすノロがあるか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほねれるからとてだけうんのあるならばへられぬことはづをんななどゝものうも愚痴ぐちで、おふくろなどがつまらぬことすからこま
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ニールスが、そこでふくろの中にマッチをつめこんでいますと、あの白いはねのカラスがまどからはいってきました。
丁度ちょうどそのときにわはいってたのは、いましもまちあさって猶太人ジウのモイセイカ、ぼうかぶらず、跣足はだしあさ上靴うわぐつ突掛つッかけたまま、にはほどこしちいさいふくろげて。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あなたはふくろなどをおしょいになって、おともについていらっしゃいますけれど、八上媛はきっと、あなたのおよめさまになると申します。みていてごらんなさいまし
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
小さなふくろいくつもとりだして縁側えんがわの板の間に積みかさねた。ふくろには名前が書いてある。それはみな、義理ぎりがたい岬の村から、大石先生への見舞みまいの米や豆だった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そしてしばをりながら、ふくろれてってたかちぐりして、ばりばりべました。するとたぬきはそのおときつけて、あなの中からのそのそはいしてきました。
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
という声に振り返ると、長屋のよし公がおふくろに手をひっぱられて横丁の人みに消えるところだった。その母親の白い顔が笑って、何かそそくさと挨拶をしたようだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)