)” の例文
あるときは、隣室りんしつてゐるKの夫人ふじんゆすおこされてましたが、彼女かのぢよにはそれがたんゆめとばかり、すことができなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「ばか、てんは、一も、二も、十も、百も、もっと、もっとたかいのだよ。」と反対はんたいした子供こどもは、それをしてさけびました。
木に上った子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まつたそが中の御厨子みづしの本尊、妖娟たをやかなる天女の姿、匂ひやかなる雪の肌、たば消ちなむ目見まみの霞……造りも造りたる偽の御堂よな。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
まむかうのくろべいもさくらがかぶさつて眞白まつしろだ。さつとかぜしたけれども、しめたあとまたこもつてせつぽい。濱野はまのさんもせきしてた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、その試合しあいを取りすことを申しでたので、龍太郎りゅうたろうや忍剣もかたすみで相談そうだんのうえ、あらためて、こういう返答へんとうをかれにあたえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の自転車の提灯の火を見て、さては、狐火、とたましいしましたぞ、などと相かえり見て言って、またひとしきり笑いさざめくのである。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さるを今は王土のそとヴェルデの岸邊きしべに雨に洗はれ風にゆすらる、彼せる燈火ともしびをもてこれをかしこに移せるなり 一三〇—一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
個人消防上こじんしようぼうじよう最大要件さいだいようけん時機じきうしなふことなく、もつと敏速びんそく處置しよちすることにある。これはちひさいほどやすいといふ原則げんそくもとづいてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
細君は下女げじょをよんで、自分のひよりげたをこまげたにとりかえさして、縁端えんばたこしをかけた。そうしてげたのあとをしてくれ、と下女にめいじた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
門野かどのしたあとで、代助は椽側にて、椅子に腰をけた。門野かどのの帰つた時は、洋燈ランプして、くらなかじつとしてゐた。門野かどのくらがりで
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それでもおまへさゝづるにしきまもぶくろといふやうな證據しようこいのかえ、なに手懸てがゝりはりさうなものだねとおきやうふをして
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みこと日頃ひごろの、あの雄々おおしい御気性ごきしょうとて「んのおろかなこと!」とただ一ごんしてしまわれましたが、ただいかにしてもないのは
『あ、とうとうだ。』とたれかが叫んでいた。おかしいのはねえ、列のまん中ごろに一人の少し年老としとった人が居たんだ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、ほかの鳥たちのさけび声も聞こえないほど遠くまで、まちがった方向にひっぱっていってから、とつぜんきりの中に姿をしてしまいました。
こゝろみに蝋燭らふそくされたあとほのふさま想像さうざうしてました、まへ其麽そんなものたことを記憶きおくしてませんでしたから。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もっと燭火あかして、家來共けらいども! 食卓テーブルたゝんでしまうて、せ、あま室内ざしきあつうなったわ。……あゝ、こりゃおもひがけん慰樂なぐさみであったわい。
つひには其處そこ恐怖おそれくははればぼうたゝいたり土塊つちくれはふつたり、また自分等じぶんら衣物きものをとつてぱさり/\とたゝいたりしてそのすことにつとめるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
白雪のふれば幽かに、たまゆらは澄みてありけど、白雪のぬるたまゆら、ほのかなるまたもにけり。白雪のはかな心地ごこちの、我身にもるかたもなし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たましひとばし更にいきたる心地もなくたがひかほを見合せ思ひ/\に神佛しんぶついの溜息ためいきつくばかりなり風は益々つよく船を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されば「れぷろぼす」はいよいよ胆をいて、学匠もろとも中空を射る矢のやうにかけりながら、をののく声で尋ねたは
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今日誤ってもいだ烏瓜からすうりって細君が鶴子の為に瓜燈籠うりどうろうをつくり、帆かけ舟をって縁につり下げ、しば/\風に吹きされながら、小さな蝋燭をともした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しながらよくると、うしうま續々ぞく/\七八十程しちはちじゆうほどあらはれてたので、サウツオラはおどろきました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いととほしたはりがまだ半襟はんえりからかれないであつたとて、それでんだとて、それでいゝのだ! いつわたしがこのからされたつて、あのひかりすこしもかはりなくる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
いまだからそんなくちもきけるんだ。あまつちよめ!……貴樣きさまはなだつた時分じぶんときたらな……どうだい、あの吝嗇けちくせえちつぽけな、えてなくなりさうなはながさ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
持皈もちかへりてぬしたづねばやとかまにさげて二町ばかりあゆみしにしきりにおもくなり、かまの内にこゑありて我をいづくへゆくぞといふにきもかまをすてゝにげさりしに
る、かれはランプをして寐室ねべやつた。が、奈何どうしても睡眠ねむりくことは出來できぬのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ふと、あるひわらひとがあるかもれぬ。が、それ秘密ひみつがなかつたをりのことで、つたら、それこそ大事だいじだ。わたしむし此不安このふあんすために、そつと四畳半でふはん忍込しのびこんだ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
消し口を取ると、ふだというものをぶら下げた。これは箱根竹に麻糸で結わえた細い木の札で、これが掛かると、その組々の消し口が裏書きされたことになったのです。
はじめあひだ矢張やはりあたまめうで、先刻せんこくおなやうにいろ/\の妄想まうざうしてもしてもむねうかんで
ことにはげしいかぜおとにもされずに、しづかな時雨しぐれおとのしてゐるのを自分じぶんいてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そのうち、シャツがくねくねと気味きみわるく動き、人間にんげんがぬぎすてるようにまるまったと思うと、ぽんとまどぎわになげすてられて、あやしい男は完全かんぜんにその姿すがたしてしまった。
これは球突たまつきすこしやつた人のたれしも經驗けいけんする事で、よる電氣でんきして床にはひるとくら闇の中に赤白の四つのたまをのせた青い球台たまたいかんで來て、り方を中で空想くうそうしたりする。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
このゆきのこるときにいざかな山橘やまたちばなるもむ 〔巻十九・四二二六〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
でも、そこまできたら、こわいなぞという気持は、すっかりしとんでしまいました。
活きて爾苦しかくるしめる身をも、なほさすがにたましひぬべく打駭うちおどろかしつる彼等が死状しにざまなるよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たはむれに枯草かれくさうつした子供等こどもらは、はるかにえる大勢おほぜい武士ぶし姿すがたおそれて、周章あわてながらさうと、青松葉あをまつばえだたゝくやら、えてゐるくさうへころがるやらして、しきりにさわいでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
普通人の生活といふものを、その女のところではじめて知つた、深い、せない思ひ出があればこそ、果敢はかなくてた、夕顏の宿の女も心にのこつて、いつまでもいつまでも消えなかつたのだ。
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ローウッドの塀の中に暗影とおそれがひそんでゐる間に、部屋や廊下に病院の匂ひが流れ、藥品や香料が死の惡臭をさうとむなしい努力をしてゐる間に戸外の生々とした丘や、美しい森林地には
「ウン。野郎……元ッカラ本職だったかも知んねッテみんな左様せい云ってッケンド……いつも仕事をブッタクリやがった癖に挨拶もしねえでえちまった罰当ばちあたりだあ。今にキット捕まるにきまってら」
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
女はにっこりわらって、すっとかきすようにえなくなりました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
行方ゆくへなき空にちてよかがり火のたよりにたぐふ煙とならば
源氏物語:27 篝火 (新字新仮名) / 紫式部(著)
酒のみの我等がいのち露霜のやすきものを逢はでをられぬ
木枯紀行 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
ほの白く山きりかゝる岩のればぬがに咲ける石楠花
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
奥山おくやますがぬぎふるゆきなばしけむあめなふりそね
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
あした咲きゆふべは消ぬる鴨頭草つきくさぬべき恋も吾はするかも
或る国のこよみ (新字旧仮名) / 片山広子(著)
すやうに見えなくなつた——といふのです。
影薄れゆき、いろあをみ、えなむとしてつべきか。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
霞気不消連旬雪 霞気かきさず連旬れんじゅんの雪
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
照りては、またおともなくぬるけはひ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
えろとおっしゃいましても。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)