のち)” の例文
のちに僕の死んでゐるのが、そこで見出されるだらう。長椅子に掛けてある近東製のかもを、流れ出る僕の血がけがさないやうにするつもりだ。
不可説 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
(七)舜禹しゆんうあひだ(八)岳牧がくぼくみなすすむ。すなはこれ(九)くらゐこころみ、しよくつかさどらしむることすうねん(一〇)功用こうようすでおこり、しかのちまつりごとさづく。
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上から土をかけられてしまつたのでそれからのち月をながめることはできなかつたが、それでも陽気に馬賊の首は歌をうたひ続けてゐた
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
とその家庭かてい苦痛くつう白状はくじやうし、ついにこのしよ主人公しゆじんこうのち殺人さつじん罪人ざいにんなるカ……イ……をともなひてその僑居けうきよかへるにいた一節いつせつきはめて面白おもしろし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
能く心して生活なりわいの道を治めよ、とねんごろに説き示しければ、弟はこれを口惜くちおしく思ひてそののち生活の道に心を用ひ、ようやく富をいたしけるが
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
このみつつのかたちうたを、のちには、片歌かたうたといつてゐます。これは、うた半分はんぶんといふことでなく、完全かんぜんでないうたといふことであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
銀次はそれからのち、商売にばかり身を入れて一歩もうちを出ないせいか、見る見る色が白くなって、役者のようないい男になって来た。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わたしは、おふくろがなくなったのち、どうすることもできず、おなじ長屋ながやにすんでいた、あんまさんのところで、せわになりました。
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『列車はあやまって軌道レールを滑り出したのち、数百ヤードの間軌道レールに沿うて流れておるランカシアー運河の中へ陥没してしまったものだろう』
とにかく彼はえたいの知れないまぼろしの中を彷徨ほうこうしたのちやっと正気しょうきを恢復した時には××胡同ことうの社宅にえた寝棺ねがんの中に横たわっていた。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
通りかかるホーカイぶしの男女が二人、「まア御覧よ。お月様。」といってしばらく立止ったのち、山谷堀の岸辺きしべに曲るが否や当付あてつけがましく
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
受け御手當金てあてきん百兩と御墨附おすみつき御短刀までのち證據しようことて下されしことちく物語ものがたればお三ばゝは大いによろこび其後は只管ひたすら男子の誕生たんじやうあらんことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わが年はまだ十三にて、はじめは何事ともわきまへざりしが、のちには男の顔色もかはりておそろしく、われにでもあらで、水に躍入おどりいりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
コックス説に古アリア人の神誌に、春季の太陽を紅また金色の卵と見立て、のちキリスト教興るにおよびこれを復活の印相としたという。
一つの場合をげるならば、袋中上人たいちゅうしょうにんの『琉球神道記りゅうきゅうしんとうき』に、姿を隠してのち三十二年目に、海から戻ってきた若い妻の話を載せている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『それからのちは』と帽子屋ばうしやかなしげな調子てうしで、『わたしふことをかなくなつてしまつて!まァ、何時いつでも六のところにとまつてゐる』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
お勢母子ぼしの者の出向いたのち、文三はようやすこ沈着おちついて、徒然つくねんと机のほとり蹲踞うずくまッたまま腕をあごえりに埋めて懊悩おうのうたる物思いに沈んだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「はは、予をむごいと言うか。久安百首にも選まれたほどの人びとが、これほどのことを詠み煩ろうてはのちの世の聞こえもあろうぞ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
食堂がいて乗客の多数が朝飯あさめしを済ましたのち、自分は母を連れて昨夜以来の空腹をたすべく細い廊下を伝わって後部の方へ行った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
市「これは殿さま、其ののちは誠に御無沙汰を致しやした、ちょいと上らねえばなんねえが、遂々つい/\御無沙汰になりまして相済みません」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そののち何回なんかいうした儀式ぎしきのぞんだかれませぬが、いつもいつもおな状態じょうたいになるのでございまして、それはまった不思議ふしぎでございます。
釘抜きの勘次郎の手先部屋は、以前は京橋のお竹蔵たけぐらでありましたが、のちに南の附属となってから浅草千束村の桐畑に移っていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このことはジャン・コクトオが日本へ来て、詩人堀口大学氏にあちこち案内せられ、のちかえって発表した日本印象記をよんで痛感した。
日本の秋色:世相寸評 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
一身の私徳をのちにして、交際上の公徳を先にするものの如し。即ち家にるの徳義よりも、世に処するの徳義をもっぱらにするものの如し。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
読みて大尉たいゐ壮行さうかうわれともにするの感あり、此日このひよりのちことにして、此日このひ只一人たゞひとりうれしくて、ボンヤリとなり、社員にもせず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
のち十年、桑は郷試に及第して挙人となったので、家も漸くゆたかになった。狐児は頗るりこうであったが、どうも体が弱くてよく病気に罹った。
蓮香 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
五番ごばんめの石上いそのかみ中納言ちゆうなごんつばめ子安貝こやすがひるのに苦心くしんして、いろ/\とひと相談そうだんしてのち、ある下役したやくをとこすゝめにつくことにしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
王子おうじはこういうあわれな有様ありさまで、数年すうねんあいだあてもなく彷徨さまよあるいたのち、とうとうラプンツェルがてられた沙漠さばくまでやってました。
まぶしいものが一せん硝子ガラスとほしてわたしつた。そして一しゆんのち小松こまつえだはもうかつた。それはひかりなかひかかゞや斑點はんてんであつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
相変らず宗匠、駄弁をろうしている間に、酔が好い心持に廻ったと見えて、コクリコクリ。のちには胴の間へ行って到頭横になってしまった。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
そののち二月ばかりった。その間僕は毎日のように今井の叔父さんの家に遊びに行って、叔父さんの鳥打ちにはきっとおともをした。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
余り無造作なので、あれで無事に配達してくれるかと思う事もあるが、三、四時間ののちにたしかに先方で受取ったという電話がかかる。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そののち新院しんいんはおとらわれになって、讃岐さぬきくにながされ、頼長よりながげて途中とちゅうだれがたともしれないられてにました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ただし、その子供はわずかに六カ月ののちに死んだので、おそらく後見人夫婦のために冷遇と虐待を受けたせいであろうと想像された。
すなは一時いちじ活動かつどうしたのちは、暫時ざんじ休息きゆうそくして、あるひ硫氣孔りゆうきこう状態じようたいとなり、あるひ噴氣孔ふんきこうとなり、あるひはそのような噴氣ふんきまつたくなくなることがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
安子穴やすこあなというのがあった。白狗はくぐ白馬はくばとの天正時代の伝説がある。のち、おやすという女人が零落れいらくしてここに玉のような童子を育てた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
だが、それはのちのお話。我々はゴリラ男が捕縛された翌日、Dという大百貨店内に起った、奇々怪々の出来事について語らねばならぬ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夕御飯ののちお歌さんは客間に入った。女学校の先生が遊びに来たんだ。此先生は男の癖にチョクチョクお歌さんのところへ訪ねて来る。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それ無智のために生くる間も死に臨みてもこの罪を悔ゆるあたはず、のち髮を削りて起き出づるにいたる者その數いくばくぞ 四六—四八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さふらへど、この日は浪やや高く、こと昨日きのふより今日けふまで一日一夜いちにちひとよの静止ののちさふらへば、客人まろうど達は船酔ひがちに食事も進まぬやうさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
二十五年間ねんかん教育きょういくつくしてしょく退しりぞいたのち創作そうさくこころをうちこんで、千九百二十七ねんになくなるまで、じつに二十かん著作ちょさくのこした。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ですから彼等かれらのゐる村落附近そんらくふきん山林さんりんは、のちにはだん/\にせまく、まばらになつてて、つひにはまき材料ざいりようにも不足ふそくするようになりました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ところが二三日のち、よく主顧とくいにしていた、大仏前だいぶつまえ智積院ちしゃくいんという寺へ、用が出来たので、例の如く、私は書籍を背負しょって行った。
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
そこで、その首を沼に投げ棄てて、更に一首をひっさげて来たが猶許されなかった。のち森部の戦に一番乗りして、始めて許されたと云う。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あやしや三らう便たよりふつときこえずりぬつには一日ひとひわびしきを不審いぶかしかりし返事へんじのち今日けふ來給きたま明日あすこそはとそらだのめなる
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかるに初雪しよせつのち十月のころまでにこの二条ふたすぢ小流こながれ雪のため降埋ふりうめられ、流水は雪の下にあり、ゆゑ家毎いへごとくむべきほどに雪を穿うがち水用すゐようを弁ず。
これぞくむしらせとでもいふものであらうかと、のちおもあたつたが、此時このときはたゞ離別りべつじやうさこそとおもるばかりで、わたくし打點頭うちうなづ
花ののちには子房しぼうが成熟して果実となり、果中に一種子があり、種皮の中には二子葉しようを有するはいがある。春にこの種子をけばく生ずる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「気保養だなんて、まだ/\そんな気楽な真似は出来ないよ。これからうんと稼いで金でもまつたのちの事なんだね、それは。」