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幾分
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いくぶん
ふりがな文庫
“
幾分
(
いくぶん
)” の例文
幾分
(
いくぶん
)
明るい空をバックにしているんで割合に見えるし——夜道で道に迷ったら
跼
(
かが
)
んで見ろ、というのはこの辺を指した言葉だよ……
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
咽喉
(
のど
)
から流れるままに口の中で
低唱
(
ていしやう
)
したのであるが、
其
(
そ
)
れによつて
長吉
(
ちやうきち
)
は
已
(
や
)
みがたい心の苦痛が
幾分
(
いくぶん
)
か
柔
(
やはら
)
げられるやうな
心持
(
こゝろもち
)
がした。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
然
(
しか
)
しながら
大地震
(
だいぢしん
)
になると、
初期微動
(
しよきびどう
)
でも
決
(
けつ
)
して
微動
(
びどう
)
でなく、
多
(
おほ
)
くの
人
(
ひと
)
にとつては
幾分
(
いくぶん
)
の
脅威
(
きようい
)
を
感
(
かん
)
ずるような
大
(
おほ
)
いさの
振動
(
しんどう
)
である。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
たゞ
唇
(
くちびる
)
があまり
厚過
(
あつすぎ
)
るので、
其所
(
そこ
)
に
幾分
(
いくぶん
)
の
弛
(
ゆる
)
みが
見
(
み
)
えた。
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
彼
(
かれ
)
の
眼
(
め
)
には、
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
に
到底
(
たうてい
)
見
(
み
)
るべからざる
一種
(
いつしゆ
)
の
精彩
(
せいさい
)
が
閃
(
ひら
)
めいた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はベアトリーチェと知り合いになったがために、何か
解
(
げ
)
し難いようなある力の影響をうけていることを、自分ながら
幾分
(
いくぶん
)
か気がついた。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
▼ もっと見る
全體
(
ぜんたい
)
月
(
つき
)
に
何々
(
なに/\
)
といふふうに、
頭
(
かしら
)
に
句
(
く
)
を
置
(
お
)
いてゐるために、
幾分
(
いくぶん
)
歌
(
うた
)
が
上調子
(
うはちようし
)
になつてゐるが、
眞底
(
しんそこ
)
にはやはりよいものがあります。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
頓
(
やが
)
て
船尾
(
せんび
)
の
方
(
かた
)
へ
來
(
き
)
て
見
(
み
)
ると、
此處
(
こゝ
)
は
人影
(
ひとかげ
)
も
稀
(
まれ
)
で、
既
(
すで
)
に
洗淨
(
せんじよう
)
を
終
(
をは
)
つて、
幾分
(
いくぶん
)
の
水氣
(
すゐき
)
を
帶
(
お
)
びて
居
(
を
)
る
甲板
(
かんぱん
)
の
上
(
うへ
)
には、
月
(
つき
)
の
色
(
ひかり
)
も
一段
(
いちだん
)
と
冴渡
(
さへわた
)
つて
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
被害者の消失について、殺人の動機について、
幾分
(
いくぶん
)
曖昧な点があったにせよ、三造の犯行は
何人
(
なんぴと
)
も否定することは出来ません。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今の場合に大原が
劇
(
あわ
)
てて来りしは尋常の事にあらざるべしと自ら席を立ちて大原を迎うるに大原は劇てていれど
幾分
(
いくぶん
)
か
笑
(
えみ
)
を含み
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そして、
日暮
(
ひぐ
)
れ
方
(
がた
)
から、
幾分
(
いくぶん
)
か
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
が、
穏
(
おだ
)
やかになったので、
英吉
(
えいきち
)
は、
喜
(
よろこ
)
んで、
陸
(
りく
)
の
方
(
ほう
)
へ、あらんかぎり、
腕
(
うで
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れてこぎだしました。
海の踊り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私
(
わたくし
)
は
其
(
そ
)
の
後
(
ご
)
幾度
(
いくたび
)
も
竜宮界
(
りゅうぐうかい
)
に
参
(
まい
)
り、そして
幾度
(
いくたび
)
も
御両方
(
おふたかた
)
にお
目
(
め
)
にかかって
居
(
お
)
りますので、
幾分
(
いくぶん
)
その
辺
(
へん
)
の
事情
(
じじょう
)
には
通
(
つう
)
じて
居
(
い
)
るつもりでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
林
(
はやし
)
の
持主
(
もちぬし
)
に
請
(
こ
)
うて
掘
(
ほ
)
つたのである。それでも
餘
(
あま
)
りに
人
(
ひと
)
の
口
(
くち
)
が
八釜敷
(
やかましい
)
ので
主人
(
しゆじん
)
は
只
(
たゞ
)
幾分
(
いくぶん
)
でも
將來
(
しやうらい
)
の
警
(
いまし
)
めをしようと
思
(
おも
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
突然声をかけたのは首席教官の
粟野
(
あわの
)
さんである。粟野さんは五十を越しているであろう。色の黒い、
近眼鏡
(
きんがんきょう
)
をかけた、
幾分
(
いくぶん
)
か
猫背
(
ねこぜ
)
の
紳士
(
しんし
)
である。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼女も会釈を返したが、
幾分
(
いくぶん
)
びっくりしたような色を顔に浮べて、本を下へおろした。父の後ろ姿を見送っている彼女の様子が、わたしには見えた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
螺
(
ばい
)
でも
昔
(
むかし
)
と
今
(
いま
)
は
角度
(
かくど
)
が
幾分
(
いくぶん
)
相違
(
そうい
)
してゐるようですし、
赤貝
(
あかゞひ
)
でも
線
(
せん
)
の
數
(
かず
)
が
少
(
すこ
)
し
變
(
かは
)
つてゐるといふようなことが、
貝塚
(
かひづか
)
の
貝殼
(
かひがら
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ればわかります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
敵を
殺
(
ころ
)
したる時
復讐
(
ふくしう
)
の意を以て其肉を食ふとか、
親戚
(
しんせき
)
の死したる時
敬慕
(
けいぼ
)
の
情
(
じやう
)
を表す爲其肉を食ふとか、
幾分
(
いくぶん
)
かの
制限
(
せいげん
)
は何れの塲合にも
存在
(
そんざい
)
するものなり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
何
(
なん
)
となれば、
無智
(
むち
)
には
幾分
(
いくぶん
)
か、
意識
(
いしき
)
と
意旨
(
いし
)
とがある。が、
作用
(
さよう
)
には
何
(
なに
)
もない。
死
(
し
)
に
対
(
たい
)
して
恐怖
(
きょうふ
)
を
抱
(
いだ
)
く
臆病者
(
おくびょうもの
)
は、
左
(
さ
)
のことを
以
(
もっ
)
て
自分
(
じぶん
)
を
慰
(
なぐさ
)
めることが
出来
(
でき
)
る。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
けれども
校長
(
かうちやう
)
の
之
(
かれ
)
に
對
(
たい
)
する
樣子
(
やうす
)
は
郡長樣
(
ぐんちやうさん
)
に
對
(
たい
)
する
程
(
ほど
)
の
丁寧
(
ていねい
)
なことなので、
既
(
すで
)
に
浮世
(
うきよ
)
の
虚榮心
(
きよえいしん
)
に
心
(
こゝろ
)
の
幾分
(
いくぶん
)
を
染
(
そ
)
められて
居
(
ゐ
)
た
僕
(
ぼく
)
の
目
(
め
)
には
全
(
まつた
)
く
怪
(
あや
)
しく
映
(
うつ
)
つたのです。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
『
何方
(
どつち
)
にしても
利益
(
とく
)
はないでせう』と
愛
(
あい
)
ちやんが
云
(
い
)
ひました、
自分
(
じぶん
)
の
知慧嚢
(
ちゑぶくろ
)
の
幾分
(
いくぶん
)
を
示
(
しめ
)
す
機會
(
きくわい
)
に
到
(
いた
)
つたのを
大變
(
たいへん
)
喜
(
よろこ
)
ばしく
思
(
おも
)
つて、『まァ、
考
(
かんが
)
へても
御覽
(
ごらん
)
なさい、 ...
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
チベットと日本とはもちろん人情が違って居るからそりゃ
幾分
(
いくぶん
)
か違うところもあるですが、人を笑わせるような事をして導くという点に至っては全く一致して居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
さればといって
甚
(
はなはだ
)
不良なのではなく、ただ動物質の食品に比して
幾分
(
いくぶん
)
劣るというのであります。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と
愛想
(
あいそ
)
をいって、宿へも女にも
幾分
(
いくぶん
)
か心づけをする。書生としては
珍
(
めずら
)
しい客だから宿の受けはもちろんよい、火鉢に
茶具
(
ちゃぐ
)
、比較的下等でないのを取りそろえて貸してくれた。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
上流
(
かわかみ
)
の毒汁が
幾分
(
いくぶん
)
でも流れ込んでいるので、もう五つ六つの鱣が腹をかえして
片泳
(
かたおよ
)
ぎをしていた。そこにもまた皮粕を入れた。山女や
岩魚
(
いわな
)
がまた七八尾
半死
(
はんし
)
になって浮いて来た。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これがまた彼の心を他へ
誘
(
そゝの
)
かして、
幾分
(
いくぶん
)
其の製作を
妨
(
さまた
)
げてゐる。
無論
(
むろん
)
藝術家が製作に熱中してゐる場合に、些としたひつかゝり
氣懸
(
きがゝり
)
があつても他から
想像
(
さう/″\
)
されぬ位の
打撃
(
だげき
)
となる。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
同盟罷工
(
どうめいひこう
)
を
為
(
な
)
し
兼
(
か
)
ねまじき
有様
(
ありさま
)
に至りたるが
如
(
ごと
)
き、かかる場合に於て、予も
幾分
(
いくぶん
)
か頭痛を感ずることあるも、何ともなきを
仮粧
(
かそう
)
したり、また土用中なるにもかかわらず寒気
凜冽
(
りんれつ
)
にして
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
手紙の
宛名
(
あてな
)
を大石小石先生と書いてきたりするのだが、人間の成長の
過程
(
かてい
)
のおもしろさは、母の予言どおりおしゃべりの小ツルを
幾分
(
いくぶん
)
控
(
ひか
)
え目に、無口な早苗をてきぱき屋に育てていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
他人に渡すのは
業腹
(
ごうはら
)
だから、山岡屋さんの手に
揚
(
あ
)
げて貰って、
石塔
(
せきとう
)
の一つも建って貰えれば有難いし、運よく、
遠島
(
えんとう
)
とでもなって、娑婆の風にふかれる日があったら、そのうちの
幾分
(
いくぶん
)
でも
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四人の姉妹のうちで春琴が最も器量よしという評判が高かったのは、たといそれが事実だとしても
幾分
(
いくぶん
)
か彼女の不具を
憐
(
あわ
)
れみ
惜
(
お
)
しむ感情が手伝っていたであろうが佐助に至ってはそうでなかった。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかしこれらも間接のまた間接に云えば天下に影響しないとは限らない、否
観方
(
みかた
)
によっては世界の大勢に
幾分
(
いくぶん
)
か関係していないとも限らない。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして、
雪
(
ゆき
)
もたいてい
消
(
き
)
えてしまって、ただ
大
(
おお
)
きな
寺
(
てら
)
の
裏
(
うら
)
や、
圃
(
はたけ
)
のすみのところなどに、
幾分
(
いくぶん
)
か
消
(
き
)
えずに
残
(
のこ
)
っているくらいのものでありました。
金の輪
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これは
只
(
ただ
)
の
慰
(
なぐさ
)
めの
言葉
(
ことば
)
よりも
幾分
(
いくぶん
)
かききめがあったようで、
母
(
はは
)
はそれからめっきりと
楽
(
らく
)
になって、
間
(
ま
)
もなく
気息
(
いき
)
を
引
(
ひ
)
きとったのでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼等
(
かれら
)
は
平生
(
へいぜい
)
でもさうであるのに
酒
(
さけ
)
の
爲
(
ため
)
に
幾分
(
いくぶん
)
でも
興奮
(
こうふん
)
して
居
(
ゐ
)
るので、
各自
(
かくじ
)
の
口
(
くち
)
から
更
(
さら
)
に
聞
(
き
)
くに
堪
(
た
)
へぬ
雜言
(
ざふごん
)
が
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
された。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
私は良人が帰ったらお返事をしようと
幾分
(
いくぶん
)
か腹も
立
(
たち
)
ましたからケンモホロロに追返しましたけれどもその時の心持と申すものは今に忘れませんよ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
非常
(
ひじやう
)
に
變
(
へん
)
な
心地
(
こゝち
)
がしたので、
寧
(
むし
)
ろ
此
(
この
)
塲
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
らんと、
春枝夫人
(
はるえふじん
)
を
見返
(
みか
)
へると、
夫人
(
ふじん
)
も
今
(
いま
)
の
有樣
(
ありさま
)
と
古風
(
こふう
)
なる
英國人
(
エイこくじん
)
の
獨言
(
ひとりごと
)
には
幾分
(
いくぶん
)
か
不快
(
ふくわい
)
を
感
(
かん
)
じたと
見
(
み
)
へ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
しかし彼はどう云う
訣
(
わけ
)
か、誰よりも特に粟野さんの前に、——あの
金縁
(
きんぶち
)
の近眼鏡をかけた、
幾分
(
いくぶん
)
か
猫背
(
ねこぜ
)
の老紳士の前に彼自身の威厳を保ちたいのである。……
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
K氏は
幾分
(
いくぶん
)
は好意的に、幾分はひやかし気味に云った。私達の関係は殆ど社内に知れ渡っていたのだから。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
幾分
(
いくぶん
)
耐震的
(
たいしんてき
)
になつた
所
(
ところ
)
もあるけれども、それも
地震
(
ぢしん
)
の
種類
(
しゆるい
)
によるのであつて、われ/\が
謂
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
の
大地震
(
だいぢしん
)
に
對
(
たい
)
しては、
先
(
ま
)
づ
暫時
(
ざんじ
)
無能力
(
むのうりよく
)
となるものと
諦
(
あきら
)
めねばなるまい。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
もし
然
(
しか
)
らばそんなに原書の違ったものがあるのか知らん、あるいはまた訳された方々がその土地の人情等に応じて
幾分
(
いくぶん
)
か
取捨
(
しゅしゃ
)
を加えたような点もありその意味を違えたのもあるか知らん。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
然
(
しかし
)
ながら
不死
(
ふし
)
の
代替
(
だいたい
)
を
以
(
もつ
)
て、
自分
(
じぶん
)
を
慰
(
なぐさ
)
むると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
臆病
(
おくびやう
)
ではなからうか。
自然
(
しぜん
)
に
於
(
おい
)
て
起
(
おこ
)
る
所
(
ところ
)
の
無意識
(
むいしき
)
なる
作用
(
さよう
)
は、
人間
(
にんげん
)
の
無智
(
むち
)
にも
劣
(
おと
)
つてゐる。
何
(
なん
)
となれば、
無智
(
むち
)
には
幾分
(
いくぶん
)
か、
意識
(
いしき
)
と
意旨
(
いし
)
とがある。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
初さんがこれほど
叮嚀
(
ていねい
)
な言葉を使おうとは思いも寄らなかった。おおかた
神妙
(
しんびょう
)
に下りましょうと出たんで、
幾分
(
いくぶん
)
か
憐愍
(
れんみん
)
の念を起したんだろう。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三
匹
(
びき
)
のありは、その
日
(
ひ
)
からはじめて、
知
(
し
)
らない
土地
(
とち
)
に
巣
(
す
)
を
造
(
つく
)
って
働
(
はたら
)
いたのです。
幾日
(
いくにち
)
か
日
(
ひ
)
がたつと、このあたりの
土地
(
とち
)
にも
幾分
(
いくぶん
)
か
慣
(
な
)
れてきました。
三匹のあり
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
食物の配合は
何
(
な
)
んでも化学作用に帰するので猪の肉をブランデーへ漬けておくと味が良くなるばかりでなく
幾分
(
いくぶん
)
か毒質の分解作用を起しましょう。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
こんないくじのない
者
(
もの
)
に
幾分
(
いくぶん
)
か
心
(
こころ
)
の
落
(
おち
)
つきが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たように
思
(
おも
)
われるのは、たしかにあの
海
(
うみ
)
の
修行場
(
しゅぎょうば
)
で一
生涯
(
しょうがい
)
のお
浚
(
さらい
)
をしたお
蔭
(
かげ
)
であると
存
(
ぞん
)
じます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
同年輩
(
どうねんぱい
)
の
子
(
こ
)
は
皆
(
みな
)
踊
(
をどり
)
に
行
(
ゆ
)
くのである。おつぎには
幾分
(
いくぶん
)
それが
羨
(
うらや
)
ましくぼうつとして
太鼓
(
たいこ
)
に
聞
(
き
)
き
惚
(
ほ
)
れて
居
(
ゐ
)
た。
軟
(
やはら
)
かな
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
におつぎの
肌膚
(
はだ
)
は
白
(
しろ
)
く
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
始めの間は
幾分
(
いくぶん
)
不快であったけれど、見ている内に、彼はこの怪物に段々魅力を感じて来た。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
『イエ、
此
(
この
)
兒
(
こ
)
はよく
眠
(
ねむ
)
りましたが、
私
(
わたくし
)
は
船
(
ふね
)
に
馴
(
な
)
れませんので。』と
答
(
こた
)
ふ。さもありぬべし、
雪
(
ゆき
)
を
欺
(
あざむ
)
く
頬
(
ほう
)
の
邊
(
へん
)
、
幾分
(
いくぶん
)
の
蒼色
(
あをみ
)
を
帶
(
お
)
びたるは、たしかに
睡眠
(
ねむり
)
の
足
(
た
)
らぬ
事
(
こと
)
を
證
(
しよう
)
して
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
Mは膝ほどある水の中に
幾分
(
いくぶん
)
か腰をかがめたなり、日に焼けた
笑顔
(
わらいがお
)
をふり向けて見せた。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ところで上等社会の婦人は
幾分
(
いくぶん
)
か
綺麗
(
きれい
)
であるとはいうものの、一番お
座
(
ざ
)
の冷める話は、お
便
(
ちょうず
)
に行ってその儘お越しになるという秘密を思い出すと、どんな美人でも一遍に嫌になってしまうです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
隣家
(
りんか
)
からの
延燒
(
えんしよう
)
を
防
(
ふせ
)
ぐに、
雨戸
(
あまど
)
を
締
(
し
)
めることは
幾分
(
いくぶん
)
の
效力
(
こうりよく
)
がある。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
下
(
した
)
から
覗
(
のぞ
)
くと、
寒
(
さむ
)
い
竹
(
たけ
)
が
朝
(
あさ
)
の
空氣
(
くうき
)
に
鎖
(
とざ
)
されて
凝
(
じつ
)
としてゐる
後
(
うしろ
)
から、
霜
(
しも
)
を
破
(
やぶ
)
る
日
(
ひ
)
の
色
(
いろ
)
が
射
(
さ
)
して、
幾分
(
いくぶん
)
か
頂
(
いたゞき
)
を
染
(
そ
)
めてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
幾
常用漢字
中学
部首:⼳
12画
分
常用漢字
小2
部首:⼑
4画
“幾分”で始まる語句
幾分位
幾分時