はか)” の例文
女の子は、まい日、おかあさんのおはかのところへいっては、いてばかりいました。でも、神さまをしんじて、すなおな心でいました。
むらひとは、べつに、たたるものもないが、おばあさんがんだけれど、だれも、はかててやるものがないということをげました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
どるめんといふも、いしつくゑといふ意味いみ言葉ことばであります。このてーぶるのした人間にんげんはうむつたので、これはうたがひもなくはかであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
りょうしはつくづくかわいそうなことをしたとおもって、なみだをこぼしながら、んだいぬのために、りっぱなおはかをこしらえてやりました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
半年ばかりたつ何者なにものとも知れず、はかあばいて石をぬすさつたものがある。子は手掛てがかりがないのでふことも出來ず其まゝにして二三日たつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
はかは府にちかき四ツ辻といふ所に定め、 御くわんをいだしけるに途中とちうにとゞまりてうごかず、すなはちその所に葬り奉る、今の 神庿しんべう是なり。
しもあの懐剣かいけんが、わたくしはかおさめてあるものなら、どうぞこちらに取寄とりよせていただきたい。生前せいぜん同様どうようあれを守刀まもりがたないたうございます……。
となりかた身代みがはりにつてくだすつたやうなものだから、此方こちらなほつたら、おはかたづねて、わたしまゐる、おまへ一所いつしよ日參につさんしようね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
番甲 これにをりまする老僧らうそう、またころされましたるロミオのしもべにんいづれもはかあばきまするに屈竟くっきゃう道具だうぐをばたづさへてをりまする。
おれも、あの市來知いちぎしりにある、野菊のぎくいてる母親マザーはかにだけはきたいとおもつてゐる。本當ほんたう市來知いちぎしりはいゝところだからなあ。』
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
はかみちは、むらのものだけがとほみちです。旅人たびびとらないみちです。田畠たはたけはたら人達ひとたちえるたのしいしづかなみちです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そうしたらあいつの事だから、まさかおらが亡くなったっておらのはかを草ん中にころげさせてしまいもすめえと思うのさ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一寸ちよつとうかゞひますが、アノ、アノ、田村たむらをんなのおはか御在ございますが、アノ、それはこちらのおてら御在ございませうか。」と道子みちことゞこほちにきいてた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
彼等かれらはさういふ仕事しごとがあるのではかくにもひとよりも先立さきだつて非常ひじやういそいだのであつたが、それでもこめせるまでにはいへうち薄闇うすくらつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかし、それではこまるというので、みんなよって相談そうだんをして、だんうらの近くの赤間あかませき(今の下関しものせき)に安徳天皇あんとくてんのうのみささぎと平家一門へいけいちもんはかをつくりました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
お葬式でおはかにいったときにね、あたしが叔父おじさんや叔母おばさんたちの間で立ってたら、白いちょうちょうが舞ってきて、あたしの肩のこの花にとまったのよ。
病む子の祭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
八津のはかにもいなりずしもってってやろう。ぼく、明日あした学校の帰りにK町のやみ市であぶらげ買ってきとく。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
三四郎はかへさうと思つて、つてたハイドリオタフヒアをして読み始めた。ぽつぽつ拾ひ読をする。中々なか/\わからない。はかなかに花をげる事がいてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
カレンは、にがよもぎが生えている、貧乏人のおはかに、腰をかけようとしました。けれどカレンは、おちつくこともできなければ、休むこともできませんでした。
はか這入はいるまで八ゑん月給げつきうではるまいとおもひますに、其邊そのへん格別かくべつ御心配ごしんぱいなくと見事みごとへば、母親はゝおやはまだらにのこくろして、るほど/\立派りつぱきこえました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なし父母のはか參詣さんけいし夫より村長上臺憑司かみだいひようじ方へ行き妻子のことをたのみ置き其日住馴すみなれたる寶田村を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先生の宿志しゆくし、ここにおいてか足れり。すでにしてきやうかへり、即日、ところ瑞龍山ずゐりゆうざん先塋せんえいかたはらさうし、歴任れきにん衣冠魚帯いくわんぎよたいうづめ、すなはち封し載ちし、自ら題して、梅里先生ばいりせんせいはかふ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
案内して下さいとふと、「へいかしこまりました」とつてはかへ案内して掃除さうぢしてくれましたから、はかの前にむかつてわたし縁類えんるゐでもなんでもないが、先祖代々せんぞだい/\囘向ゑかうをしながら、只見とみると
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ポチのおはかは今でも、あの乞食こじきの人の住んでいた、森の中の寺の庭にあるかしらん。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
わたしたちは生きながらうずめられて、地の下百尺(約三〇メートルだが、ここでは深いという意味)のはかの中にいるのであった。わたしたちはみんなこの場合の恐怖きょうふを感じていた。
まして我はねてだに、うれしき夢見るべき目あてもあらぬはかなき身なれば、むしろ眠らずして、このまま一夜を闇黒のうちに過すべきか、むしろこの一夜の永久なる闇黒界にならんことを
一夜のうれい (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「ぼくらは今後この洞穴のなかで生命いのちをつながなければならん、それはひっきょう山田先生のおかげである、ぼくらは礼として、まず山田先生のはかに、おじぎをするのが至当しとうじゃなかろうか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
公園の赤土あかつちのいろ奇兵隊きへいたい戦死せんしはか延命寺の春は海潮音かいてうおん
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
僕が札幌さっぽろの郊外に一はかをもっている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
前世さきのよつまはか赤埴あかはにおもひ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はかの下から 出て来たようだ。
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
少女をとめはうせしやはかはいづこ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
こそは吾家わがや、またはか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
はかのうへに雨がふる。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
なにはかぞも
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「おまえは、兄妹きょうだい、カフェーのひとたちに、もう一あって、はなしをしたいとおもうか。それとも、あのしずかなはかなかかえりたいとおもうか。」
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぴらみっとやふるはかからたいろ/\の寶物ほうもついつぱいありまして、いまから四五千年前しごせんねんまへ王樣おうさまのみいらも、そのまゝることが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
はかは府にちかき四ツ辻といふ所に定め、 御くわんをいだしけるに途中とちうにとゞまりてうごかず、すなはちその所に葬り奉る、今の 神庿しんべう是なり。
「もしもわたくしがおひめさまよりあとまで生きておりましたら、お姫さまといっしょにはかのなかへはいらなければなりません。」
と、さそはれたかれも、ぐら/\と地震なゐふるはかなかに、一所いつしよんでるもののやうなおもひがして、をかしいばかり不安ふあんでならぬ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
カピ妻 はい、まうしましたなれど、有難ありがたうはござりますが、のぞまぬとうてゐます。阿呆あはうめははか嫁入よめいりしたがようござります!
そしてそのなきがらをめたおはか将軍塚しょうぐんづかといって、千何年なんねんというながあいだ京都きょうと鎮守ちんじゅ神様かみさまのようにあがめられて、なになかわざわいのこるときには
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はかにある御先祖ごせんぞさまは永昌院殿えいしやうゐんどんひました。永昌寺えいしやうじのおてらおなでした。あの御先祖ごせんぞさまが馬籠まごめむらひらけば、おてらてたといふことです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
両親りょうしんおこたらず、わたくしはかもうでてはなみず手向たむけ、またさいとか、五十にちさいとかもうには、その都度つど神職しんしょくまねいて鄭重ていちょうなお祭祀まつりをしてくださるのでした。
平家のはかのそばにあるあみだでらぼうさんが、それをきいて、たいへん同情どうじょうをし、またじぶんはびわもきだったので、この法師をお寺へひきとり、くらしには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
雲飛うんぴ許可ゆるしを得て其片々へんぺん一々ひとつ/\ひろつて家に持歸もちかへり、ふたゝ亡父なきちゝはかをさめたといふことである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おつぎはもう十九のあきであつた。おつぎは浴衣地ゆかたぢておしなはかつたのである。かみひるうち近所きんじよ娘同士むすめどうし汗染あせじみた襦袢じゆばんひとつの姿すがたたがひうたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やぶの中のおじいさんのそばにおはかがあるよ。川原かわらから、おとうさんが、このくらいのまるい石をひろってきて立ててある、それがアキコのお墓さ、まだ子どもだもんね。
うた時計 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
朽ちざるはかねむり、つたはることき、知らるる名に残り、しからずは滄桑そうそうの変に任せて、のちそんせんと思ふ事、むかしより人のねがひなり、此ねがひのかなへるとき、人は天国にあり。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)