一夜のうれいいちやのうれい
夜は早十時を過ぎたり。されど浮立たざる心には、臥床を伸べんことさえ、いとものうし。まして我は寝ねてだに、うれしき夢見るべき目あてもあらぬ墓なき身なれば、むしろ眠らずして、この儘一夜を闇黒の中に過すべきか、むしろこの一夜の永久なる闇黒界になら …