ひる)” の例文
旧字:
ちょうどひるごろでありました。おとうとが、そとから、だれかともだちに、「うみぼたる」だといって、一ぴきおおきなほたるをもらってきました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるすこしまえにはもう二人ふたりにいさんが前後ぜんごして威勢いせいよくかえってた。一人ひとりにいさんのほう袖子そでこているのをるとだまっていなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて、ガンたちは、おなかいっぱいたべてしまいますと、またみずうみへ飛んでいって、おひるごろまで、いろんなことをして遊びました。
かの家の者一同ある日はたけに行きて夕方に帰らんとするに、女川のみぎわうずくまりてにこにこと笑いてあり。次の日はひるの休みにまたこの事あり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「もう駄目でせう」と一口ひとくち答へたが、野々宮君の呑気なのには驚ろいた。三四郎は此無神経を全くよるひるの差別から起るものと断定した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
下の子は男の子でこれは「ひる」という名でした。そのわけは、弟のほうが、ねえさんよりも、ずっとりっぱで、美しかったからでございます。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
雪下ゆきふるさかんなるときは、つもる雪家をうづめて雪と屋上やねひとしたひらになり、あかりのとるべき処なく、ひる暗夜あんやのごとく燈火ともしびてらして家の内は夜昼よるひるをわかたず。
なにしろ、ひとにしられてはたいへんなので、いえのおくにひっこみ、だれにもあわず、ひるよるも、ちからのかぎり、むちゅうになってうつしました。
中にはまだひるなのに電燈でんとうがついて、たくさんの輪転機りんてんきがばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりラムプシェードをかけたりした人たちが
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それ同時どうじ此処こゝひかりさへぎつてひるもなほくら大木たいぼく切々きれ/″\に一ツ一ツひるになつてしまうのに相違さうゐないと、いや、まツたくのことで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで、その子どもたちにパンをたべさせるために、男は、いやおうなしに、ひるとなくよるとなく働きつづけました。
当時とうじ夏目先生なつめせんせい面会日めんかいび木曜もくようだったので、私達わたしたちひるあそびにきましたが、滝田たきたさんはよるって玉版箋ぎょくばんせんなどに色々いろいろのものをいてもらわれたらしいんです。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ひるちかくまで、清造は、長い町を歩きました。町はずれのむこうの方に、汽車きしゃの通る土手の見えるへんまでくると、その町は少しさびれてきました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
やがてふるふるすぎ木立こだちがぎっしりと全山ぜんざんおおいつくして、ひるくらい、とてもものすごいところへさしかかりました。
鞍馬山くらまやまのおくに僧正そうじょうたにという谷があります。まつすぎしげっていて、ひるも日のひかりがささないようなところでした。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しんたのむねからちあげられて、すこしくもったそら花火はなびがはじけたのは、はるすえちかいころのひるでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ボロ市過ぎて、冬至もやがてあとになり、行く/\年もくれになる。へびは穴に入り人は家にこもって、霜枯しもがれの武蔵野は、静かなひるにはさながら白日まひるの夢にじょうに入る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あるところは、右にもたき、左にも滝、そして、渓流のとろちたおれている腐木ふぼくの上を、てんや、むささびや、りすなどが、山葡萄やまぶどうをあらそっているのをひるでも見る。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひるからになって配達はいたつがすむと、今度こんど店番みせばんです。つぎからつぎと、いろんなお客がやってきます。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ひる間のように明るいのだが、飲み飽き食い飽きてしまったように、なんとなく白けていた。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ひるちかくになると、おかみさんはいいにおいをたてて、じゅうじゅうとにくをやきはじめた。
ひるれどかぬ田児たごうら大王おほきみのみことかしこみよるつるかも 〔巻三・二九七〕 田口益人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おこのがひるといわず夜といわず、ひそかににらんだとどのつまりは、ひとり四畳半じょうはん立籠たてこもって、おせんのかたにうきをやつす、良人おっとむねきつけたおびが、春信はるのぶえがくところの
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あるじの君よく聞きわけて給へ。我もしあやしき物ならば、此の二二六しげきわたりさへあるに、二二七かうのどかなるひるをいかにせん。二二八きぬ縫目ぬひめあり、日にむかへば影あり。
向う両国の観世物小屋でこんな不意の出来事が人を驚かしたのは、文化三年の江戸の秋ももう一日でちょうど最中もなかの月をようという八月十四日のひるの七つ(四時)下がりであった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれひるには室内しつないまどからまど往来おうらいし、あるいはトルコふう寐台ねだいあぐらいて、山雀やまがらのようにもなくさえずり、小声こごえうたい、ヒヒヒと頓興とんきょうわらしたりしているが、よる祈祷きとうをするときでも
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それは痛みをこらえることに渾身こんしんの努力を要するので、他に注意を振り向ける余裕がないのであるらしかった。そんな風だから、よるひるっ通しにうなるのみで、一睡もせず、食事も取らない。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
御参列ごさんれつのお役人やくにんところ御参拝ごさんぱいがあるといふ事で、それを思ふと私共わたくしども有難ありがたい事で、おともをいたしてまゐりましても毎日々々うまもの御馳走ごちそうになつて、ひるも風が吹くと外へ出られんといふので
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
テン太郎や おひるのおべんとうを 天文台もんだいのおとうさんに とどけておくれ
しかしひるになると、また彼をばかにすることばかり考えて、感謝かんしゃの様子などはすこしも見せなかった。その上、クリストフはまだちいさかったので、善良ぜんりょうであるということの価値かちが十分にわからなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
それは今日ひるすこし前、例の事件について調べることがあってむかえのために警官をキャバレー・エトワールへ振出ふりだしてみると、雇人やといにんは揃っているが、主人のオトー・ポントスが行方不明であるという。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しづかな五ぐわつひる湯沸サモワルからのぼる湯気ゆげ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
菜の花やひるひとしきり海の音
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
くゆりとぶ真夏まなつひる
文月のひと日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
はるゝにこたへんとすればあかつきかねまくらにひびきてむるほかなきおもゆめとりがねつらきはきぬ/″\のそらのみかはしかりし名残なごり心地こゝちつねならず今朝けさなんとせしぞ顔色かほいろわろしとたづぬるはゝはそのことさらにるべきならねどかほあからむも心苦こゝろぐるひるずさびの針仕事はりしごとにみだれそのみだるゝこゝろひとゞめていま何事なにごとおも
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うつくしいおひめさまがいられて、いい音楽おんがく音色ねいろが、よるひるもしているということだ。」と、また一人ひとり旅人たびびとがいっていました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるごはんのころ、ガンたちが、みんなでそろって走ってきました。そして、白いガチョウを見なかったかとたずねました。
このとき諭吉ゆきちは、しろ門番もんばんをするつとめがありました。三日みっかに一どは、そのばんがまわってきます。そのだけは、ひるはうつすことができません。
およそ陸鳥りくてうは夜中めくらとなり、水鳥すゐてうは夜中あきらか也。ことにがんは夜中物を見る事はなはだ明也。他国はしらず我国の雁はおほくはひるねふり、夜は飛行とびありく。
するとおひるちかくなって、こうからたいそうりっぱないいうまった人が、二、三にんのおともれて、とくいらしくぽかぽかやってました。若者わかものはそのうまると
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひるげだと思う人が多くなってきて、そのケという語の意味が、はっきりとせぬようになったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こちらにはひるよるもないのですから、現世げんせのようにとても幾日いくにちとはっきりかぞえるわけにはかないのでございます。そのへんがどうもはなしたいへんにしにくいてんでございまして……。
さりながらはじめの内は十幾人じふいくたりの塾生ありて、教場けうぢやういたく賑ひしも、二人ふたり三人みたりと去りて、はて一人いちにんもあらずなりて、のちにはたゞひるうち通学生の来るのみにて、塾生はわれ一人いちにんなりき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、この源氏閣にも、ひるになればまた、降りる口がないことはございませんが……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひるちかくまでゆっくりねむって元気げんきをとりもどすと、研究けんきゅうに使った機械きかい道具どうぐを二度ともとにできないように、めちゃめちゃにしておき、ここからでていくじゅんびに取りかかった。
筑波嶺つくばねのさ百合ゆるはな夜床ゆどこにもかなしけいもひるもかなしけ 〔巻二十・四三六九〕 防人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「おひるにはにいさんたちかえってるな。」ととうさんはちゃのなかを見𢌞みまわしてった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あたまなかにはひるの事があざやかにかゞやいた。もう二三にちのうちには最後の解決が出来できると思つて幾たびむねおどらせた。が、そのうちおほいなるそらと、大いなるゆめのうちに、吾知らず吸収された。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
到頭近所の人を頼み、わざ/\汽車で八王子まで連れて往って捨てゝもろうた。二週間前の事である。其後デカが夜毎に帰っては来たが、ひるは其牝犬をがしあるいて居るらしかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この夫婦ふうふ大層たいそうなかかったが、小児こどもがないので、どうかして一人ひとりほしいとおもい、おかみさんは、よるも、ひるも、一しんに、小児こどもさずかりますようにといのっておりましたが、どうしても出来できませんでした。