何處どこ)” の例文
新字:何処
文化ぶんくわ發達はつたつしてれば、自然しぜん何處どこ漠然ばくぜんとして稚氣ちきびてるやうな面白おもしろ化物思想ばけものしさうなどをれる餘地よちくなつてるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
『これから大阪までいても、何處どこぞへ泊らんなりまへんよつてな。……大阪からうちへはさみしいよつて、わたへもうようにまへんがな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
まなこはなたず睥睨へいげいしてる、猛狒ゴリラ益々ます/\たけ此方こなたうかゞつてる、この九死一生きうしいつしやうわか不意ふいに、じつ不意ふいに、何處どこともなく一發いつぱつ銃聲じうせい
學生がくせい平日いつもよりはかず不足ふそくであつた。不審ふしんことには、自分じぶんより三四さんよまへかへつてゐるべきはず安井やすゐかほさへ何處どこにもえなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兎角とかく一押いちおし、と何處どこまでもついてくと、えんなのが莞爾につこりして、馭者ぎよしやにはらさず、眞白まつしろあを袖口そでくち、ひらりとまねいて莞爾につこりした。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何處どこへゆく何處どこへゆく、げてはならないと坐中ざちうさわぐにてーちやんたかさんすこたのむよ、かへるからとてずつと廊下らうかいそあしいでしが
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我が心の萬一もみとらで、何處どこまでもつれなき横笛、冷泉と云へる知れる老女を懸橋に樣子を探れば、御身も疾ぐより心を寄する由。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
鍛冶かぢとき仕事しごとつかへてたが、それでもういふ職業しよくげふくべからざる道具だうぐといふと何處どこでもさういふれいすみやかこしらへてくれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
みん拔放ぬきはなしければ鍔元つばもとより切先きつさきまで生々なま/\しき血汐ちしほの付ゐるにぞコレヤおのれは大膽不敵なる奴かな是が何より證據なり何處どこで人を殺し夜盜よたう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「虫や魚の話ぢやありませんよ。それ、何處どこの家にも祖先といふのがあるでせう。その過去帳くわこちやう見たいな卷物を——何んとか言ひましたね」
おほかぶさつてるまゆ山羊やぎのやうで、あかはな佛頂面ぶつちやうづらたかくはないがせて節塊立ふしくれだつて、何處どこにかう一くせありさうなをとこ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何故ならば、氏の心理解剖しんりかいばう何處どこまでも心理解剖で、人間の心持を丁度ちやうどするどぎん解剖刀かいばうたうで切開いて行くやうに、緻密ちみつゑがいて行かれます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
くだるわ、/\、/\。ながれは何處どこまでつてもきないのかしら?『いままでにわたしいくマイルちたかしら?』とあいちやんは聲高こわだかひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しかしそのとき周圍しうゐ事情じじやうは、病人びやうにんをKうちかしてことゆるさないので、ぐに何處どこへか入院にふゐんさせなければならなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
何方どつちいたツて、人の影が一つ見えるのではない。何處どこまでもくらで、其の中に其處そこらの流の音が、夜の秘事ひめごと私語ささやいてゐるばかり。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
けてたびをしてある飴屋あめやさんは、何處どことほいところからかついでかたけて、ふえき/\出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
マーキュ うんうん引掻ひっかかれた/\。はて、これで十ぶんぢゃ。侍童こやっこめは何處どこにをる? 小奴やっこ、はよって下科醫者げくわいしゃんでい。
其所そこつてもいですか』と遠慮勝ゑんりよがちうてると、令息れいそくわらひながら『何處どこでもよろしい、つたところ御掘おほりなさい』とはれる。
何處どこを搜しても、チエスタ孃にまさる人はないと考へたのであつた、彼女は彼女が讀みながら泣いてゐた手紙を、『エイブラム師』に見せた。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
何處どこで聞いたか私の大阪に來てゐるといふことを知つて「直太郎なほたらう(私)も當地ださうだ。遊んでゐるなら私のうちの書生に寄越よこしたらうだ。」
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
何時いつ何處どこで、どこから降つて來るかも知れないところの、見たことも聞いたこともない未來の良人を、貞淑につつましく待つてることだ。」
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
その小松こまつは、何處どこからかひかりけてるらしく、丁度ちやうどぎんモールでかざられたクリスマスツリーのやうに、枝々えだ/\光榮くわうえいにみちてぐるりにかゞやいてゐた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そのうちにやつとがついてると、あのこん水干すゐかんをとこは、もう何處どこかへつてゐました。あとにはただすぎがたに、をつとしばられてゐるだけです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
出した湯の持主が隅へ小さくなツて何處どこの者か知れぬ奴が無代たゞで巾を利かせて歌など唄ツて騷ぐとはエライ話しだと不平を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
あまあしがたち消えながらも何處どこからとなく私のはだを冷してゐる時、ふとあかい珊瑚の人魚が眞蒼まつさをな腹を水に潜らせる
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
それゆゑ規則きそくでやつたこと何處どこへも通用つうようするといふわけにはまゐりません。矢張やはり本人ほんにん獨立心どくりつしんまかせなければなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
不思議ふしぎなこともあるものです。それが今日けふは、なにをおもひだしたのか、めると、めそめそすゝきをしながら、何處どこへかつてしまひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
成程なるほどさうへば何處どこ固拗かたくなのところもあるが、ぼくおもふには最初さいしよ頑固ぐわんこつたのながらのちにはかへつて孤獨こどくのわびずまひが氣樂きらくになつてたのではあるまいか。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
而して實際こんな狹い町では何處どこの誰が何處に居ると云ふ事が愉快なる穿鑿の種になり、それが歸宅の後家人に告げられると、女達の夜の爐邊の話題を賑かし
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
肝腎かんじん稼業かげふのお稽古もしないで、色情さかりのついた犬みたやうに、一體何處どこ彷徨うろついて歩いてゐるんだよ。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
初め排斥せられた方言が何處どこかに殘つて居て、下行水と云ふやうな風に、何處かに殘つて居つて、そのものが何時か頭を持上げて革命的に新しい文語が起つて來る。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
さゝやかな小流が何處どこともなく流れてゐたりする。之から少し上りになる樣子であつたが、暫く偵察をして、愈々豫定の下り場所に違ひないと見極めた。午後四時の事である。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
それからの私は何處どこへどう歩いたのだらう。私は長いあひだ街を歩いてゐた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
吾が身の何處どこを截つても其の畫題たる花なり鳥なりが咲き出し啼き出して、直ちに其の香を放ち其の聲を出しさうな位になつて、其の畫題のほかに別の物も無くなるか、吾と畫題と融合するか
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
これは『自然論』の要點であるが、心靈その物の解釋は何處どこにも見えて居ない。エメルソン自身もその思想が進歩するに從つて、論旨に滿足しないところが出來たさうだが、そんなことはかまはない。
神秘的半獣主義 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
私の住んでゐる村では、何處どこで井戸を掘つても、一丈程下へ行くと屹度澤山な眞菰まこもの根に掘當てる。多い處ではそうを成してあらはれる。三間ほどつて漸く水を含んだ砂に突き當てる。それは青い砂だ。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
何處どこやらの骨董こっとうてんみせさきで見たることあり此奴こやつの顏を
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
B わかつたにはわかつたが、きみ其句そのく何處どこ面白おもしろい?
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
GONSHAN. GONSHAN. 何處どこへゆく
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ながなかを何處どこ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
何處どこで?』と言つた。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あゝ、わかしうなにかい、つれのものが、何處どこ二次會にじくわい引張出ひつぱりださうとして、わたしなか引挾ひつぱさんだ、……れをはづしたのだとおもつたのかい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
深閑しんかんとして、生物いきものといへばありぴき見出せないやうなところにも、何處どことなく祭の名殘なごりとゞめて、人のたゞようてゐるやうであつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
武村兵曹たけむらへいそうその仲間なかまつて、しきりに愉快ゆくわいだ/\とさはいでつたが、何時いつ何處どこから聞知きゝつけたものか、れい轟大尉とゞろきたいゐ虎髯とらひげはぬつとすゝ
おもてむきは何處どこまでも田舍書生いなかじよせい厄介者やつかいものひこみて御世話おせわ相成あいなるといふこしらへでなくてはだい一に伯母御前おばごぜ御機嫌ごきげんむづかし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねこだとて王樣わうさまはいして差支さしつかへない』とあいちやんがひました。『わたし書物しよもつでそれをみました、何處どこであつたかおぼえてませんが』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
今更何處どこに下げて吾等にむかひ得るなど、後指うしろゆびさして嘲り笑ふものあれども、瀧口少しも意に介せざるが如く、應對等は常の如く振舞ひけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ふゆ季節きせつほこりいて西風にしかぜ何處どこよりもおつぎのいへ雨戸あまど今日けふたぞとたゝく。それはむら西端せいたんるからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小六ころく宗助そうすけきるすこまへに、何處どこかへつて、今朝けさかほさへせなかつた。宗助そうすけ御米およねむかつて別段べつだんその行先ゆくさきたゞしもしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ヂュリ おゝ、うれしや御坊樣ごばうさまか! 殿御とのご何處どこにぢゃ? どこおぼえてゐる、おゝ、さうぢゃ、そこへわしてゐるのぢゃ?