)” の例文
でっぷりえた中年の人間が——倉庫係のおじさんだ——ぼくたちのぎっしりまっているボールばこを手にとって、ふたを明けたのだ。
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくしやうなものには到底たうていさとりひらかれさうにりません」とおもめたやう宜道ぎだうつらまへてつた。それはかへ二三日にさんちまへことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
呼吸いきめて、うむとこらへて凍着こゞえつくが、古家ふるいへすゝにむせると、時々とき/″\遣切やりきれなくつて、ひそめたくしやめ、ハツと噴出ふきだしさうで不氣味ぶきみ眞夜中まよなか
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まげは短くめてつてゐる。月題さかやきは薄い。一度喀血かくけつしたことがあつて、口の悪い男には青瓢箪あをべうたんと云はれたと云ふが、にもとうなづかれる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
たちまち、うしほ泡立あわだち、なみ逆卷さかまいて、其邊そのへん海嘯つなみせたやう光景くわうけいわたくし一生懸命いつせうけんめい鐵鎖てつさにぎめて、此處こゝ千番せんばん一番いちばんんだ。
めよられて、おどろきあわてつつも、口きき大家と言われるだけあって、喜左衛門はすぐに平静に返ってはっきりと応対する。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
書記官は一際ひときわ妙な声でいわれますには「そのマナサルワ湖に着くまでに経た道はどこであるか」と猫の鼠を追うがごとくに問いめた。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と、断るのが、多いし、上杉の藩士をめさせては、赤穂との対立になるし、素姓の知れない人間は、敵方の諜者を入れこむおそれがある。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾日も/\越後屋にめて、どんな小さい手掛りでもと搜した平次は、おこのの初七日の濟んだ日、到頭投げる外は無いと思ひ定めました。
「長崎ばってん江戸べらぼうか。ばってんは英語の but and のまったものだというが、巧いじつけじゃないか?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この煮物にものをさましていくつものかたまりに切り、その切り口へあなをあけて、毒薬をめ、その上へチーズを厚くぬってふたをした。
何かしら思いめているのか放心して仮面めんのような虚しさにあおざめていた顔が、瞬間しゅんかんカッと血の色をうかべて、ただごとでないはげしさであった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
わたしは、まち香水製造場こうすいせいぞうじょうやとわれています。毎日まいにち毎日まいにちしろばらのはなからった香水こうすいをびんにめています。そして、よる、おそくうちかえります。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
守衛は何人か交替こうたい門側もんがわめ所にひかえている。そうして武官と文官とを問わず、教官の出入ではいりを見る度に、挙手きょしゅの礼をすることになっている。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かん中の余技よぎとしてたのしむ僕達ぼくたち棋戰きせんでさへ負けてはたのしからず、あく手をしたりみの不足でみをいつしたりした時など
と見てるとかね七八なゝやツつづゝ大福餅だいふくもちなかうへからあんもちふたをいたしてギユツと握固にぎりかためては口へ頬張ほゝばしろくろにして呑込のみこんでる。金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かべの小さい柱鏡につかれた僕の顔と、ほおのふくれた彼女の顔が並んだ。僕は沁々しみじみとした気持ちで彼女の抜きえりを女学生のようにめさせてやった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
間もなく蕈も大ていなくなり理助は炭俵一ぱいにめたのをゆるく両手ですようにしてそれから羊歯しだの葉を五六枚のせてなわで上をからげました。
(新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かせにしてめ寄るとなにとぞどこへなとおりなされて下さりませ一生独り身でらす私に足手まといでござりますとすずしい顔つきで云うのである
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
拳闘けんとう某氏ぼうしのように責任を感じて丸坊主まるぼうずになったひともいましたが、やはり気恥きはずかしさやひがみもあり張りめた気も一遍いっぺんに折れた、がっかりさで
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
往来おうらいの人たちは、ふしぎな看板かんばんとおもしろそうな口上こうじょうられて、ぞろぞろ見世物小屋みせものごやめかけてて、たちまち、まんいんになってしまいました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
鐵砲てつぽう彈藥だんやく裝填そうてんしてあれば引金ひきがねはづすことによつて彈丸たま遠方えんぽうぶが、もし彈藥だんやく裝填そうてんしてなくあるひたん彈丸たまだけめて火藥かやくくはへなかつたなら
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
紅木公爵夫人がこう尋ねますと、青眼先生はグッとまりました。そうしてさも苦しそうに返事をしました——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
湯煮た魚の身を細かく切ってマイナイスで和えてめてよし、牛肉や鳥肉の細かにしたのをあえて詰てもよいのです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
つまり一口にいえば、今の日本の若い娘たちが、最も退屈たいくつを感じて『まンないの』というような場所であった。
いいえ、はなすものか、江戸中えどじゅうに、おんなかずほどあっても、おもめたのはおまえ一人ひとり。ここでえたな、日頃ひごろねがもうした、不動様ふどうさま御利益ごりやくちがいない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
家来とは何だとうと、「イヤ事急なれば皆この城中にめる方々におまかないを下さるので人数にんずを調べて居る処です。 ...
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
廊下のめに暗室があって、そこに棺桶かんおけがあって紙をり、もとの奉化府州判のむすめ麗卿のひつぎと書いてあった。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三日みつかあひだ城内じやうないりでございまして、やうや歸宅きたくいたしますと町方まちかた病家びやうかから、見舞みまひ催促さいそくるやうで、其處そこをどうにかけてまゐりました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もし昭青年がちょっとでも言葉にまったら、いたく打ちのめし、引きくくって女と一緒に寺門監督かんとくの上司へ突出つきだそうと、手ぐすね引いてめつけています。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
籠長持かごながもちめ込んである荷物を、政吉と父の兼松とが後先あとさきに担い、師匠は大きな風呂敷包みを背負しょいました。
と云いながら、雲は無いがなんとなく不透明ふとうめいな白みを持っている柔和やわらかな青い色のそらを、じーっとながめた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「幸い、御家老もめあって居られますことゆえ、彼とも申しだんじ、思召しに叶うよう、相勤めましょう」
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
無情つれなかりし妾をこそにくめ、可惜あたら武士ものゝふを世の外にして、樣を變へ給ふことの恨めしくも亦痛はしけれ。茲け給へ、思ひめし一念、聞き給はずとも言はではまじ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
今だにひとばなしのこつてるのは、此際このさいの事です、なんでも雑誌を売らなければかんとふので、発行日はつかうびには石橋いしばしわたしかばんの中へ何十部なんじふぶんで、さうして学校へ出る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
見ること聞くことが気にさわったり、家へ帰ってきてもまた同じく一生を面白くなく渡るのは、とかくまらぬことに感情の作用をたくましくするにあることを思えば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その群衆は、普通ふつう、路上に形作らるるものに比べては、かなり大きいものであった。しかも、それが岸にっては堤防に、橋の上では欄杆らんかんへとギシギシとめられている。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
Sとは、極度きよくどめた生活せいくわつをして、献身的けんしんてき運動うんどうをしてゐた、わか一人ひとり鬪士とうしだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
えりのホックをかけずに着慣れた学校服を脱ぎ捨てて、君は厚衣あつしを羽織る身になった。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼女かのじょわたくしははと一しょに、れい海岸かいがんわたくしかくって、それはそれは親身しんみになってよくつくしてくれ、わたくし病気びょうきはやなおるようにと、氏神様うじがみさま日参にっさんまでしてくれるのでした。
何か見めてでもゐると、黒瞳くろめ凝如じつすわツてとろけて了ひそうになツてゐる………うかと思ふと、ふし目に物など見詰めてゐて、ふとあたまを擡げた時などに、ひど狼狽うろたえたやうな
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
俵(タワラ)ならば、おそらく何でもかんでもめ込むために存在するものだから、先ず文字づらだけからいえば、成長しても私のような出鱈目でたらめな生活をするような男にはなるまい。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
「礼と云い礼と云う。玉帛ぎょくはくを云わんや。がくと云い楽と云う。鐘鼓しょうこを云わんや。」などというと大いによろこんで聞いているが、曲礼きょくれいの細則を説く段になるとにわかにまらなさそうな顔をする。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「どうしたことなの、ぼっちゃん、お宅がこんなに早く引揚げなさるなんて?」と夫人は、両方の鼻の穴へ煙草たばこみながら言った。わたしはその顔を見て、ほっと胸が軽くなった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
草花のれたのやらが、一種汚らしい美しさで、ぎっしりとまっていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
この他人の苦惱と犧牲の樣が、私の心を自分の惱みを獨りで思ひめてゐることからうつした。ダイアナは兄のことを、「死のやうに動かし難い」と云つてゐた。彼女は誇張したのではなかつたのだ。
目をつむって私につかまっていてくださいと言うと、すなおにその通りにしていて、ほどなく金碧きんぺき光り耀かがや常世とこよの浜に到着した、というふうにも語ることになっていて、それをさも有りなんと息をめて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あし爪先つまさきまつたどろおとすことさへなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はやはやくときやくめこむし。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「疲れはしないけれど、標本になってじこめられていたので、気がまったよ。なんか気持ちがからりとすることはないだろうかね」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)