はら)” の例文
しょうはらがすいてくるし、からださむくなって、をいくらおおきくけても、だんだんあたりはくらく、えなくなってくるばかりでした。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其處そこふるちよツけた能代のしろぜんわんぬり嬰兒あかんぼがしたか、ときたならしいが、さすがに味噌汁みそしるが、ぷんとすきはらをそゝつてにほふ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「やい、宿やど六、めしをだしてくれ、めしを。はらがぺこぺこだ。え。こんなにくらくなつたに、まだランプもけやがらねえのか。え、おい」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
あいちやんはふたゝ福鼠ふくねずみはらたせまいと、きはめてつゝましやかに、『わたしにはわかりませんわ。何所どこからみん糖蜜たうみつんでたのでせう?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
料理りょうりはうまかった。そうだ、まったくすばらしかった。はららないし、くたびれもしないし、暑すぎもせず、寒すぎもしなかった。
代助は人類の一人いちにんとして、たがひはらなかで侮辱する事なしには、たがひに接触を敢てし得ぬ、現代の社会を、二十世紀の堕落と呼んでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
グレーテルはぷんぷんはらをたてて、つなをひきちぎって、にげだします。せっかく、ハンスのおよめさんになるつもりでしたのにねえ。
だがあの金色によくみのったびわをはらいっぱいたべられると思うと正九郎はやあ公をちっとばかりうらやまずにはいられなかった。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
此返事このへんじいて、むつとはらつた。頭巾づきんした剥出むきだして、血色けつしよく頸元えりもとかゝるとむかう後退あとすざりもしない。またいてた。
勿論もちろんいま境涯きやうがいとてけつして平和へいわ境涯きやうがいではないが、すでにはら充分じゆうぶんちからがあるので、すぐよりは餘程よほど元氣げんきもよく、赫々かく/\たる熱光ねつくわうした
そのようすは、しばらく、おまえさんがしゃべりたいようにしゃべらしておいてあげるよ、とでもはらの中で思っているようでした。
滝見屋たきみやというところで、はらをこしらえ、弁当を用意し、先達せんだつを雇っていよいよ出発したが、この山越やまごえは僕には非常に難儀なものであった。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
縁側にはらいになって、ありの作業を眺めながら、煙草をすっているところへ、いきなりガラッ八がこの判じ物を持込んで来たのでした。
なれども仔馬はぐんぐんれて行かれまする。向うのかどまがろうとして、仔馬はいそいで後肢あとあしを一方あげて、はらはえたたきました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
だれにいうともない独言ひとりごとながら、吉原よしわらへのともまで見事みごとにはねられた、版下彫はんしたぼりまつろうは、止度とめどなくはらそこえくりかえっているのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゆくゆくは水穂国みずほのくにを自分が取ってしまおうというはらで、とうとう八年たっても大神の方へはてんでご返事にも帰りませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
米友ほどのはらわざもある奴ではないから、ついにはいい若い男が尋ねあぐねて途方に暮れ、ワアワア手ばなしで泣き出してしまいました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とき勘次かんじもおしなはら大切たいせつにした。をんなが十三といふともうやくつので、與吉よきちそだてながら夫婦ふうふは十ぶんはたらくことが出來できた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ふかくめれば、はらを切ってもわびそうな気色けしきなので、四人はぼうぜんと顔を見あわせたのみで、一火をめる気にもなれない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると為朝ためともしたがえられた大名だいみょうたちは、うわべは降参こうさんしたていせかけながら、はらの中ではくやしくってくやしくってなりませんでした。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あれっきりきゃく部屋へやにはよりつく人もない。おかみさんは朝食ちょうしょくをもってゆかなかった。きっと客は、はらをすかせてよわりきっているのだろう。
さて国経が酔臥ゑひふしたるを叔母をばを車にいだき入れて立かへり、此はらに生れたるを中納言敦忠あつたゞといふ、時平の不道ふだう此一を以て其余そのよるべし。
ママははらったらしい目つきでシューラをにらんだ。そして、いまいましそうに顔を赤くして、ぶつぶつ小言こごとをいい出した。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
それを聞いておかあさんはようやく安心ができたといった。おとうさんは二、三日の間、毎日警察に呼び出されて、しじゅうはらをたてていた。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
わるいラランもすこしばかりさびしくなつてきた。今度こんどこそはらつてきた。すると突然とつぜん、ヱヴェレストの頂上てうじやうからおほきなこえ怒鳴どなるものがあつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
盗人ぬすびとに殺された女は臨月であつたので、その山に住む法師があはれに思つて、母のはらいて男のをとりいだして養育した。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
はらが出来ないとお教えしても駄目だめです、そのうちに若旦那に腹が出来たなら、何時いつでもお教えします、これからちょいちょい遊びにあがります
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
きびすかへしてツト馳出はせいづればおたかはしつて無言むごん引止ひきとむるおびはし振拂ふりはらへばとりすがりはなせばまとひつきよしさまおはらだちは御尤ごもつともなれども暫時しばし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とうとう、わたしは、むらむらとはらがたってきました。ところが、そのときふと、ポーランド人の囚人に出あったのです。
はらなかに五六十りやう金子かね這入はいつてる、加之おまけ古金こきんだ、うしてくれよう、知つてるのはおればかりだが、ウム、い事がある。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
がたうはござりますが、不調法ぶてうほふでござりますし、それに空腹くうふくもよほしましたで。‥‥』と、玄竹げんちくはペコ/\になつたはら十徳じつとくうへからおさへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
貸給かしたまへと云けれども三郎兵衞更に承知せず外の話にまぎらして取合ざれば四郎右衞門も大いにはらたてこれほど事をわけて頼むに恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たとえば野獣やじゅう盗賊とうぞくもない国で、安心して野天のてんや明けはなしの家でると、風邪かぜを引いてはらをこわすかもしれない。○をさえると△があばれだす。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ある日、彼は祖父そふいえで、そりくりかえってはらをつきし、かかと調子ちょうしをとりながら、部屋へやの中をぐるぐるまわっていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ひとつおかしいのは肉体にくたい幽体ゆうたいとのあいだひもがついてることで、一ばんふといのがはらはらとをつなしろひもで、それは丁度ちょうど小指位こゆびぐらいふとさでございます。
おまけに先刻さつき手早てばや藝當げいたうその效果きゝめあらはしてたので、自分じぶん自分じぶんはらまり、車窓しやさうから雲霧うんむうもれた山々やま/\なが
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「あゝ、はらがへつた!」MMえんじをはるとかたへの卓子たくしうえから、ビスケツトかなにかをつまんでくちほうりこんだ。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼はルピック夫人のどこからどこまでをり抜いている。だからこそ、今もまた、彼女のはらの中を見抜いたわけだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
はられば減つたで惡い事を、噫、寢てさへも、寢てさへも、實際だ、夢の中でさへも惡い事を! 夢の中でさへも俺は、噫、俺は、俺は、俺は…………
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「わたしゃなにもかまいやしません。お政がひとりではらをたってるのは、わたしにもしようがありませんもの」
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
とそこで私は、丘田医師の家で、はらたちまぎれに観察した女靴の跡のことや、丘田医師のことについて報告した。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私はロボの前へ肉と水をおいたが、かれは見向きもせず、しずかにはらばいになってはるかの草原を見つめている。私がステッキでれても身動きもしない。
白くかえした其段だらのはらを見ると、彼の勇気は頭の頂辺てっぺんからすうとぬけてしもうて如何しても足が進まぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
其上そのうへはらつとぐに、野郎やらう大馬鹿おほばか惡體あくたいはじまるので、是等これら大地主おほぢぬしくせであるが、あま感心かんしんしたふうではい、とドクトルもおもふたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ことに、むねの中やはらの中になると、右と左とはひどくちがってるものです。それですから、たとえば、目かくしをして、広いところを、歩いてみてごらんなさい。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あれは、たしかに一種の病人マラードなんだから、おはらもたったことでしょうが、かんべんしてやってください。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そも/\空想くうさうは、空氣くうきよりもほのかなもので、いま北國ほっこく結氷こほり言寄いひよるかとおもへば、たちまはらてゝ吹變ふきかはって、みなみつゆこゝろするといふそのかぜよりも浮氣うはきなものぢゃ。
二人ふたり同時どうじりよ一目ひとめた。それから二人ふたりかほ見合みあはせてはらそこからげてるやうな笑聲わらひごゑしたかとおもふと、一しよにがつて、くりやしてげた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
てんびんぼうかなんかで、なぐころしにでもしなきや、はらむしがいえねえんですからね——。が、まア、ころされやがつて、天罰てんばつというところでしよう。ありがてえとおもいます。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
次の日の朝、和歌の浦の漁夫ぎよふ、磯邊に來て見れば、松の根元にはら掻切かききりて死せる一個の僧あり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)