あは)” の例文
母と子の鶉は、それからあはの穂や、虫などの拾つたのを喰べましたが、これまでにそれ程おいしく喰べたことはないと思ひました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
勿論もちろん飛騨越ひだごゑめいつたには、七に一けんに五けんといふ相場さうば其処そこあはめしにありつけば都合つがふじやうはうといふことになつてります。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「牛の屁かえ? ふんとうにまあ。——尤も炎天に甲羅かふらを干し干し、あはの草取りをするのなんか、若え時にや辛いからね。」
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
子供等こどもら大小だいせうことなつたあは菱餅ひしもちが一つは一つとかみうへ分量ぶんりやうしてまれるのをたのしげにして、自分じぶんかみから兩方りやうはうとなりかみからとほくのはうから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのおと寂寞せきばくやぶつてざわ/\とると、りよかみけられるやうにかんじて、全身ぜんしんはだあはしやうじた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
○此地の人、上食はあはひえ小豆をもまぜくらふ。下食は粟糠あはぬかひえ乾菜ほしななどまじえて喰ふ、又とちしよくとす。
あははきつと返させよう。だから悪く思はんで置け。一体盗森は、じぶんで粟餅あはもちをこさへて見たくてたまらなかつたのだ。それで粟も盗んで来たのだ。はつはつは。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
主人しゆじん細君さいくん説明せつめいによると、この織屋おりやんでゐるむら燒石やけいしばかりで、こめあはれないから、やむくはゑてかひこふんださうであるが、餘程よほどまづしいところえて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
われは覺えずはだへあは生ぜり、われもアヌンチヤタが色に迷ひし一人なれども、そのざえの高く情の優しかりしをば、わが戀愛におほはれたりし心すら、猶能く認め得たりき。
わたしもあはアくつて、「なにかへ、ヨシんとこから来たんぢやねいか」ツていふと、これだといふのさ、挨拶あいさつもろくにしねいでうちへけいて蝋燭らふそくうつけてぢいさんに読んでもらふと
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
かれ伊豫の國を愛比賣えひめといひ、讚岐さぬきの國を飯依比古いひよりひこといひ、あはの國を、大宜都比賣おほげつひめといひ、土左とさの國を建依別たけよりわけといふ。次に隱岐おき三子みつごの島を生みたまひき。またの名はあめ忍許呂別おしころわけ
くわふるに寒肌あはを生じ沼気沸々ふつ/\鼻をく、さいはひに前日来身躰しんたい鍛錬たんれんせしが為め瘧疫ぎやくえきかかるものなかりき、沼岸の屈曲くつきよく出入はじつに犬牙の如く、之に沿うてわたることなれば進退しんたい容易やうゐ捗取はかどらず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
のがるゝこそましならめさりながら如何なる因果の報いにや我幼少えうせうにて父におく艱難辛苦かんなんしんくの其中に又母をもうしなひしかど兩親の遺言ゆゐごんを大事に守り江戸にて五ヶ年の千しん萬苦ばんくも水のあわありたふくみつるあは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
稻荷いなりさまは五穀ごこくかみまつつたものですとか。五穀ごこくとはなんなんでせう。こめに、むぎに、あはに、きびに、それからまめです。あは粟餅あはもちあはきびはお前達まへたちのお馴染なじみ桃太郎もゝたらうこしにさげて黍團子きびだんごきびです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
麦をあはに、また小豆あづきに改むれど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
耕すや五石のあはのあるじ顔
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
最早もうそれはいひツこなしとゝめるもふも一筋道すぢみち横町よこちやうかた植木うゑきおほしこちへとまねけばはしりよるぬり下駄げたおとカラコロリことひく盲女ごぜいま朝顔あさがほつゆのひぬまのあはれ/\あは水飴みづあめめしませとゆるくあまくいふとなりにあつやきしほせんべいかたきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひえびえとはだへあはだつ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あははたけ
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
ですから巣から余り遠くないところで、小さな虫を捕つたり、あはの穂を拾つたりして、少しづゝをあつめてをりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
くもくもきたり、やがてみづごとれぬ。白雲しらくも行衞ゆくへまがふ、蘆間あしまふねあり。あは蕎麥そば色紙畠しきしばたけ小田をだ棚田たなだ案山子かゝしとほ夕越ゆふごえて、よひくらきにふなばたしろし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小豆飯あづきめし昨日きのふことなつたことはなかつたが、菱餅ひしもち昨日きのふのやうにこめのではなくてどれでもあはばかりであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこらがまだまるつきり、たけたかくさくろはやしのままだつたとき、嘉十かじふはおぢいさんたちと北上川きたかみがはひがしからうつつてきて、ちいさなはたけひらいて、あはひえをつくつてゐました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
薬鑵やくわん土瓶どびん雷盆すりばちなどいづれの家にもなし、秋山の人家じんかすべてこれにおなじ。今日秋山に入りこゝにいたりて家を五ツ見しが、あはひえかりこむころなれば家にる男を見ず。
我ははだへあはを生ずる心地しつゝ、わづかに口を開きて、さてはベルナルドオなりしよ、はからざりき、おん身と伊太利の北のはてなる、アルピイ山の麓にて相見んとはと答へつ。
西風にしかぜ枯木かれきはやしから麥畑むぎばたけからさうして鬼怒川きぬがはわたつていた。鬼怒川きぬがはみづしろなみつて、とほくからはそれがあはしやうじたはだへのやうにたゞこそばゆくえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
子鶉が或日畑に出てあはの落穂を拾つてをりますと、どこからか一匹の狐が来て、子鶉に申しました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
一度いちど何處どこ方角はうがくれないしまへ、ふね水汲みづくみつたときはまつゞきの椰子やしおくに、うね、かすと、一人ひとり、コトン/\と、さびしくあはいて亡者まうじやがあつてね
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あはひゑ、粟と稗でございます。それから大豆まめでございます。それからキャべヂでございます。」
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
われは慴然せふぜんとして肌膚きふあはを生ずるを覺え、急に舟を呼んで薄赤いろなる古宮殿、獅子を刻める石柱の前を過ぎ、鹹澤かんたくの方に向ひぬ。舟の指すところは即ち所謂岸區リドなりき。
野原は今は練兵場やあはの畑や苗圃なへばたけなどになってそれでも騎兵の馬が光ったり、白いシャツの人が働いたり、汽車で通ってもなかなか奇麗ですけれども、前はまだまだ立派でした。
二人の役人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
山家やまが村里むらざと薄紅うすくれなゐ蕎麥そばきりあはしげれるなかに、うづらけば山鳩やまばとこだまする。掛稻かけいねあたゝかう、かぶらはや初霜はつしもけて、細流せゝらぎまた杜若かきつばたひるつきわたかりは、また戀衣こひぎぬ縫目ぬひめにこそ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
目をつぶっても、もしか、ひょっと、先生のことを考へたら、もうむねが悪くなるのでした。ところが、そのひよどりは、ある時、七日といふもの、一つぶのあはもらひませんでした。
鳥箱先生とフウねずみ (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
兩名りやうめい炭燒すみやきが、同一おなじ雪籠ゆきごめつてふうめられたやうになり、二日ふつか三日みつか貯蓄たくはへもあつたが、四日目よつかめから、あは一粒ひとつぶくちにしないで、くまごと荒漢等あらをのこら山狗やまいぬかとばかりおとろへ、ひからせて
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
王は早速許されたので、その場でバーユー将軍は、よろひもぬげばかぶともぬいで、かさかさ薄い麻を着た。そしてじぶんの生れた村のスざんふもとへ帰つて行つて、あはをすこうしいたりした。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
行暮ゆきくれて一夜ひとよ宿やどうれしさや、あはかしさへたまて、天井てんじやうすゝりうごとく、破衾やれぶすま鳳凰ほうわうつばさなるべし。ゆめめて絳欄碧軒かうらんへきけんなし。芭蕉ばせをほねいはほごとく、朝霜あさしもけるいけおもに、鴛鴦ゑんあうねむりこまやかなるのみ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あはあたへてやしなならひと、仔細しさいけば、所謂いわゆる窮鳥きうてうふところつたるもの。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)