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匹
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ぴき
ふりがな文庫
“
匹
(
ぴき
)” の例文
ついに、彼の目の睫毛と睫毛との間に小さな一
匹
(
ぴき
)
の
蜘蛛
(
くも
)
が
巣
(
す
)
をかけるに及んで、彼はようやく自信を得て、師の飛衛にこれを告げた。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ちょうど
昼
(
ひる
)
ごろでありました。
弟
(
おとうと
)
が、
外
(
そと
)
から、だれか
友
(
とも
)
だちに、「
海
(
うみ
)
ぼたる」だといって、一
匹
(
ぴき
)
の
大
(
おお
)
きなほたるをもらってきました。
海ぼたる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そこで
信田
(
しのだ
)
の
森
(
もり
)
へ大ぜい
家来
(
けらい
)
を
連
(
つ
)
れて
狐狩
(
きつねが
)
りに
来
(
き
)
たのでした。けれども
運悪
(
うんわる
)
く、一
日
(
にち
)
森
(
もり
)
の中を
駆
(
か
)
け
回
(
まわ
)
っても一
匹
(
ぴき
)
の
獲物
(
えもの
)
もありません。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
彼女はもう泣く事にも
飽
(
あ
)
いたのか、五月の
冷々
(
ひえびえ
)
とした
畳
(
たたみ
)
の上にうつぶせになって、小さい
赤蟻
(
あかあり
)
を一
匹
(
ぴき
)
一匹指で追っては殺していた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
この夜、ロボがただ一
匹
(
ぴき
)
で来たことは、その
足跡
(
あしあと
)
で知った。そしていつもとちがって、とても不注意にかけまわったようすである。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
▼ もっと見る
可哀
(
かわい
)
そうな
子家鴨
(
こあひる
)
がどれだけびっくりしたか!
彼
(
かれ
)
が
羽
(
はね
)
の
下
(
した
)
に
頭
(
あたま
)
を
隠
(
かく
)
そうとした
時
(
とき
)
、一
匹
(
ぴき
)
の
大
(
おお
)
きな、
怖
(
おそ
)
ろしい
犬
(
いぬ
)
がすぐ
傍
(
そば
)
を
通
(
とお
)
りました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
よくするためには
蘡薁
(
えびづる
)
という
蔓草
(
つるくさ
)
の
茎
(
くき
)
の中に
巣食
(
すく
)
う
昆虫
(
こんちゅう
)
を捕って来て日に一
匹
(
ぴき
)
あるいは二匹
宛
(
ずつ
)
与えるかくのごとき手数を要する鳥を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と竹童はその手紙を、一
匹
(
ぴき
)
の
小猿
(
こざる
)
にくわえさせて、
鞭
(
むち
)
で僧正谷の
方角
(
ほうがく
)
をさすと、
猿
(
さる
)
は心得たようにいっさんにとんでいく。そのあとで
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
などと
年甲斐
(
としがひ
)
もなく
男
(
をとこ
)
一
匹
(
ぴき
)
がそんな
下
(
くだ
)
らないことを
考
(
かんが
)
へたりするのも、
麻雀
(
マアジヤン
)
に
苦勞
(
くらう
)
した
人間
(
にんげん
)
でなければ
分
(
わか
)
らない
味
(
あぢ
)
かも
知
(
し
)
れない。
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
名人
(
めいじん
)
とか
上手
(
じょうず
)
とか
評判
(
ひょうばん
)
されているだけに、
坊主
(
ぼうず
)
と
呼
(
よ
)
ぶ十七八の
弟子
(
でし
)
の
外
(
ほか
)
は、
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
一
匹
(
ぴき
)
もいない、たった
二人
(
ふたり
)
の
暮
(
くら
)
しであった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
一
匹
(
ぴき
)
の鯉魚にも天地の全理が
含
(
ふく
)
まれるのを知ると同時に、恋愛のみが全人生でなく、そういう一部に分外に
滞
(
とどま
)
るべきでないとも知ることです。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
傷口
(
きずぐち
)
も
乾
(
かわ
)
いて
居
(
を
)
つたやうでございます。おまけに
其處
(
そこ
)
には、
馬蠅
(
うまばへ
)
が一
匹
(
ぴき
)
、わたしの
足音
(
あしおと
)
も
聞
(
きこ
)
えないやうに、べつたり
食
(
く
)
ひついて
居
(
を
)
りましたつけ。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ところがその雄羊が一
匹
(
ぴき
)
小溝
(
こみぞ
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
えて道のまん中にやって来ました。しかして頭を下げたなりであとしざりをします。
真夏の夢
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
「ほんとにろくな
晩
(
ばん
)
じゃねえ。人の子一
匹
(
ぴき
)
つかまえなかった。腹の虫がグーグー鳴るわい。」と外の家来が
合槌
(
あいづち
)
を打った。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
馬方
(
うまかた
)
らは夜行には、たいてい十人ばかりも
群
(
むれ
)
をなし、その一人が
牽
(
ひ
)
く馬は
一端綱
(
ひとはづな
)
とてたいてい五六七
匹
(
ぴき
)
までなれば、常に四五十匹の馬の数なり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
或
(
ある
)
島に一
匹
(
ぴき
)
の椰子蟹がおりました。大変おとなしい蟹で、
珊瑚岩
(
さんごいわ
)
の穴に住まっておりました。
潮
(
しお
)
が
退
(
ひ
)
くと、穴の口にお日様の光りが
覗
(
のぞ
)
き込みます。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
気の毒の至りだ。おれは一
匹
(
ぴき
)
で
懲
(
こ
)
りたから、胴の間へ
仰向
(
あおむ
)
けになって、さっきから大空を眺めていた。釣をするよりこの方がよっぽど
洒落
(
しゃれ
)
ている。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
男一
匹
(
ぴき
)
なる句は一種
爽快
(
そうかい
)
なる感想を人に与える。わが輩はその出所を知らぬが、おそらくは徳川時代の産物であろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
こんな
風
(
ふう
)
に
話
(
はなし
)
をしてゐたら、お
終
(
しまひ
)
には
喧嘩
(
けんくわ
)
になつてしまひませう。ところが
喧嘩
(
けんくわ
)
にならない
前
(
まへ
)
に、一
匹
(
ぴき
)
の
蛙
(
かへる
)
が
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
からぴよんと
跳
(
と
)
び
出
(
だ
)
して
來
(
き
)
ました。
お母さん達
(旧字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
ところで、この四
人
(
にん
)
の、大きい人たち、
強
(
つよ
)
い人たち、
元気
(
げんき
)
な
人
(
ひと
)
たちは、
急
(
きゅう
)
に
立
(
た
)
ちどまります。
地面
(
じめん
)
に一
匹
(
ぴき
)
の生きものが
跳
(
と
)
んでいるのを見つけたのです。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
土地
(
とち
)
ではそれを
目掘
(
めぼ
)
りというて
居
(
ゐ
)
る。
與吉
(
よきち
)
には
幾
(
いく
)
ら
泥
(
どろ
)
になつても
鰌
(
どぜう
)
は
捕
(
と
)
れなかつた。
仲間
(
なかま
)
の
大
(
おほ
)
きな
子
(
こ
)
はそれでも一
匹
(
ぴき
)
位
(
ぐらゐ
)
づつ
與吉
(
よきち
)
の
笊
(
ざる
)
にも
入
(
い
)
れて
遣
(
や
)
るのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その牛馬一
匹
(
ぴき
)
々々の
玩具
(
おもちゃ
)
のような小ささ、でもさすがに、
獣
(
けだもの
)
の生々しい毛皮の色が、今も眼にあります。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
御殿
(
ごてん
)
づくりでかしづいた、が、
其
(
そ
)
の
姫君
(
ひめぎみ
)
は
可恐
(
おそろし
)
い
蚤
(
のみ
)
嫌
(
ぎら
)
ひで、
唯
(
たゞ
)
一
匹
(
ぴき
)
にも、
夜
(
よる
)
も
晝
(
ひる
)
も
悲鳴
(
ひめい
)
を
上
(
あ
)
げる。
其
(
そ
)
の
悲
(
かな
)
しさに、
別室
(
べつしつ
)
の
閨
(
ねや
)
を
造
(
つく
)
つて
防
(
ふせ
)
いだけれども、
防
(
ふせ
)
ぎ
切
(
き
)
れない。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
何時
(
いつ
)
の間にか一
匹
(
ぴき
)
の飼犬が飛んで来て、鋭い眼付で彼の側へ寄って、
吠
(
ほ
)
えかかりそうな
気勢
(
けはい
)
を示した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは
猫
(
ねこ
)
のため、
兒猫
(
こねこ
)
のため、五
寸
(
すん
)
にたらぬ
小
(
ちひ
)
さな
猫
(
ねこ
)
一
匹
(
ぴき
)
で、五
尺
(
しやく
)
に
近
(
ちか
)
い
體
(
からだ
)
を
持
(
も
)
てあます。
苦
(
くる
)
しい。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
一
匹
(
ぴき
)
の鬼がゐる、この狹い石の地獄の、聯想や記憶で、あなたを苦しめようとは思はない。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「わしだよ。そこでさっきの話のつづきだがね、おまえは魚屋の前からきたとすると、いま
鱸
(
すずき
)
が一
匹
(
ぴき
)
いくらするか、またほしたふかのひれが、十
両
(
テール
)
に何
片
(
ぎん
)
くるか知ってるだろうな。」
山男の四月
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
眞黒
(
まつくろ
)
な
艷
(
つや
)
の
佳
(
い
)
い
洋犬
(
かめ
)
が一
匹
(
ぴき
)
、
腮
(
あご
)
を
地
(
ぢ
)
に
着
(
つ
)
けて
臥
(
ねそ
)
べつて、
耳
(
みゝ
)
を
埀
(
た
)
れたまゝ
是
(
こ
)
れ
亦
(
また
)
尾
(
を
)
をすら
動
(
うご
)
かさず、
廣庭
(
ひろには
)
の
仲間
(
なかま
)
に
加
(
くは
)
はつて
居
(
ゐ
)
た。そして
母屋
(
おもや
)
の
入口
(
いりくち
)
の
軒陰
(
のきかげ
)
から
燕
(
つばめ
)
が
出
(
で
)
たり
入
(
はひ
)
つたりして
居
(
ゐ
)
る。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
日が
暮
(
く
)
れだすと、通りには、人っ子ひとりいなくなって、みんなが、うちにとじこもったあとには、なん百
匹
(
ぴき
)
、なん千匹という犬のむれが、一
晩
(
ばん
)
じゅう、うなったり、ほえたりしていたものだ。
キリストのヨルカに召された少年
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
一
匹
(
ぴき
)
の
犬
(
いぬ
)
は
吠
(
ほ
)
えながら
彼
(
かれ
)
を
追
(
お
)
ふ。
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
では
農夫
(
のうふ
)
が
叫
(
さけ
)
ぶ。イワン、デミトリチは
兩耳
(
りやうみゝ
)
がガンとして、
世界中
(
せかいぢゆう
)
の
有
(
あら
)
ゆる
壓制
(
あつせい
)
が、
今
(
いま
)
彼
(
かれ
)
の
直
(
す
)
ぐ
背後
(
うしろ
)
に
迫
(
せま
)
つて、
自分
(
じぶん
)
を
追駈
(
おひか
)
けて
來
(
き
)
たかのやうに
思
(
おも
)
はれた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
河の
小波
(
さざなみ
)
が
岸
(
きし
)
にひたひた音をたてていた。クリストフは
気
(
き
)
がぼうとして
来
(
き
)
た。目にも見ないで、草の小さな
茎
(
くき
)
をかみきっていた。
蟋蟀
(
こおろぎ
)
が一
匹
(
ぴき
)
そばで鳴いていた。
彼
(
かれ
)
は
眠
(
ねむ
)
りかけてるような
気持
(
きもち
)
だった。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
一、
大滝壱岐守
(
おおたきいきのかみ
)
——三つ、および
縮緬
(
ちりめん
)
十
匹
(
ぴき
)
、酒五
駄
(
だ
)
。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一
匹
(
ぴき
)
飼
(
かひ
)
て
追
(
おは
)
せける故九郎兵衞も今は行處なければ條七の弟分になつて三年程
稼
(
かせ
)
ぐ中
茲
(
こゝ
)
に條七女房お
鐵
(
てつ
)
と云ふは三歳になる
娘
(
むすめ
)
お里もありながら何時しか九郎兵衞と
怪敷
(
あやしき
)
中と成しにぞ或日九郎兵衞と云合せ
土地
(
ところ
)
の
鎭守
(
ちんじゆ
)
白旗
(
しらはた
)
明神
(
みやうじん
)
の
森
(
もり
)
にて
白鳥
(
はくてう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
一
匹
(
ぴき
)
やる。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
もう一
匹
(
ぴき
)
の
牝鹿
(
めじか
)
は、
海
(
うみ
)
を一つへだてた
淡路国
(
あわじのくに
)
の
野島
(
のじま
)
に
住
(
す
)
んでいました。
牡鹿
(
おじか
)
はこの二
匹
(
ひき
)
の
牝鹿
(
めじか
)
の
間
(
あいだ
)
を
始終
(
しじゅう
)
行ったり
来
(
き
)
たりしていました。
夢占
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
ところが、どうしたことか、そのうち
巣
(
す
)
にとまっているのがいつも一
匹
(
ぴき
)
であって、もう一
匹
(
ぴき
)
のすがたが
見
(
み
)
えなくなったことです。
はちの巣
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
龍太郎! おぬしは
退
(
ひ
)
くなら、退くがいい、おれは
徳川家
(
とくがわけ
)
の
蛆虫
(
うじむし
)
めらを、ただ一
匹
(
ぴき
)
でも、この
御岳
(
みたけ
)
から下へおろすことはできない
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
匹
(
ぴき
)
の指導おおかみにしたがうのがならわしであるのに、ここのはおりおりロボの大きい
足跡
(
あしあと
)
の前にやや小さい足跡がついているのである。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
「ああ、この
頃
(
ごろ
)
は
耳
(
みみ
)
の
聞
(
き
)
こえる
日
(
ひ
)
と
聞
(
き
)
こえぬ
日
(
ひ
)
があってのオ。きんのは
朝
(
あさ
)
から
耳
(
みみ
)
ん
中
(
なか
)
で
蠅
(
はえ
)
が一
匹
(
ぴき
)
ぶんぶんいってやがって、いっこう
聞
(
き
)
こえんだった。」
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
孔子も初めはこの
角
(
つの
)
を
矯
(
た
)
めようとしないではなかったが、後には
諦
(
あきら
)
めて
止
(
や
)
めてしまった。とにかく、これはこれで一
匹
(
ぴき
)
の見事な牛には違いないのだから。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「おやまァ
滅相
(
めっそう
)
な。そこへは
鼠
(
ねずみ
)
一
匹
(
ぴき
)
も
滅多
(
めった
)
に
入
(
はい
)
るこっちゃァないよ。——
何
(
な
)
んぞ
変
(
かわ
)
わったことでもおありかえ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「バッタを知らないのか、知らなけりゃ見せてやろう」と云ったが、
生憎
(
あいにく
)
掃き出してしまって一
匹
(
ぴき
)
も居ない。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
小屋
(
こや
)
には、
一人
(
ひとり
)
の
女
(
おんな
)
と、一
匹
(
ぴき
)
の
牡猫
(
おねこ
)
と、一
羽
(
わ
)
の
牝鶏
(
めんどり
)
とが
住
(
す
)
んでいるのでした。
猫
(
ねこ
)
はこの
女御主人
(
おんなごしゅじん
)
から
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
外
(
そと
)
を
覗
(
のぞ
)
くと、うす
暗
(
ぐら
)
いプラットフォオムにも、
今日
(
けふ
)
は
珍
(
めづ
)
らしく
見送
(
みおく
)
りの
人影
(
ひとかげ
)
さへ
跡
(
あと
)
を
絶
(
た
)
つて、
唯
(
ただ
)
、
檻
(
をり
)
に
入
(
い
)
れられた
小犬
(
こいぬ
)
が一
匹
(
ぴき
)
、
時時
(
ときどき
)
悲
(
かな
)
しさうに、
吠
(
ほ
)
え
立
(
た
)
ててゐた。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また小食の人も
健啖家
(
けんたんか
)
も、
肉
(
にく
)
を注文すれば同じ分量を
授
(
さず
)
けられる。ほとんど個性を無視して
男
(
おとこ
)
一
匹
(
ぴき
)
の
食物
(
しょくもつ
)
は
何合
(
なんごう
)
、衣類は
何尺
(
なんじゃく
)
と、一人前なる分量が定まっている。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「はてな、今日はもう
誰
(
だれ
)
か
他
(
ほか
)
の蟹が来たかしら?」と、
見廻
(
みまわ
)
してみても、他に蟹は一
匹
(
ぴき
)
もおりません。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
そのうちに頭がぼんやりして来たので、六兵衛は頭をひやすつもりで庭の方に出て行きました。と、その時、一
匹
(
ぴき
)
の虫が六兵衛の大きな鼻の
穴
(
あな
)
へとびこんだのです。
とんまの六兵衛
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
でおまけに
坂道
(
さかみち
)
の
多
(
おほ
)
い
所
(
ところ
)
ですから
荷物
(
にもつ
)
はこの
通
(
とほ
)
り
馬
(
うま
)
が
運
(
はこ
)
びました。どうかすると五
匹
(
ひき
)
も六
匹
(
ぴき
)
も
荷物
(
にもつ
)
をつけた
馬
(
うま
)
が
續
(
つゞ
)
いて
父
(
とう
)
さんのお
家
(
うち
)
の
前
(
まへ
)
を
通
(
とほ
)
ることもありました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
わざと
大袈裟
(
おほげさ
)
に
頭
(
あたま
)
をかきながら、
夫
(
をつと
)
は
鞠
(
まり
)
を
追
(
お
)
つた。そして、
庭
(
には
)
の一
隅
(
すみ
)
の
呉竹
(
くれたけ
)
の
根元
(
ねもと
)
にころがつてゐるそれを
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あ
)
げようとした
刹那
(
せつな
)
、一
匹
(
ぴき
)
の
蜂
(
はち
)
の
翅音
(
はおと
)
にはつと
手
(
て
)
をすくめた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
今日も復一はようやく変色し始めた
仔魚
(
しぎょ
)
を一
匹
(
ぴき
)
二
匹
(
ひき
)
と
皿
(
さら
)
に
掬
(
すく
)
い上げ、熱心に拡大鏡で
眺
(
なが
)
めていたが、今年もまた失敗か——今年もまた望み通りの金魚はついに出来そうもない。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
匹
常用漢字
中学
部首:⼖
4画
“匹”を含む語句
匹儔
匹夫
一匹
匹田
二匹
匹敵
匹婦
一匹夫
数匹
匹偶
馬匹
何匹
匹夫下郎
緞匹
幾匹
匹夫匹婦
四匹
千匹屋
一匹婦
金銀緞匹
...