おつ)” の例文
「もし大納言さま、どうぞゆるすとおつしやつて下さい。でございませんと、山車が御前をとほつて参ることが出来ませんから……。」
拾うた冠 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「ぢや、ねいさんは何方どちらすきだとおつしやるの」と、妹は姉の手を引ツ張りながら、かほしかめてうながすを、姉は空の彼方あなた此方こなたながめやりつゝ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あれでございますか、文部省もんぶせうちましたの、空気くうきところでなければならんとおつしやいまして、森大臣もりだいじんさまがらツしやいまして。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おぼえてます。父樣おとつさんわたくしあたまでゝ、おまへ日本人につぽんじんといふことをばどんなときにもわすれてはなりませんよ、とおつしやつたことでせう。
いみもまだ明けないだらうつて。奥さんにも似合はない旧弊なことをおつしやるのですね。忌ぐらゐ明けなくつたつて、いゝぢやありませんか。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「でもうちこと始終しじゆうさむしい/\とおもつてゐらつしやるから、必竟ひつきやうあんなことおつしやるんでせう」とまへほゞやうとひかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
会長の吉井よしい夫人も久し振りで皆様に御目にかかって、精一杯面白い話でも承わり鬱積した悩みを忘れいとおつしゃるので、古い名簿を捜し出して
「はあ」とつて、りよ二足ふたあし三足みあしあるいてからうた。「それから唯今たゞいま寒山かんざんおつしやつたが、それはどうかたですか。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
銭が儲かるの儲からんのと政治家や文学者を気取る先生方が俗な事をおつしやる。銭が儲けたいなら僕の所為まねをし給へ。
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
無論むろん千葉ちばさんのはうからさとあるに、おやあの無骨ぶこつさんがとてわらすに、奧樣おくさま苦笑にがわらひして可憐かわいさうに失敗しくじりむかばなしをさぐしたのかとおつしやれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「私、たゞあなたがおつしやつたお言葉を御注意したまでゝございます。あなたは、罪は悔恨をもたらすと仰しやいました。また悔恨は人生の毒だと仰しやいました。」
『まアそないにおつしやらんと、こんなとこへでも、これを御縁ごえんにまたお越しなはつとくれやす。』と、女房にようばうは口元にゑくぼこしらへて、青い切符と釣錢の銅貨とを持つて來た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あの和尚さんはおつしやつた。一度心中しそこなつたものは永久に心中のしそこなひをするものだ。姉を姦したものは、又必ずその妹を姦するものだとかう仰しやいました。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
一通り御聞なされて下さりませ貴方あなたやうおつしやつたばかりではわけわかりませず私共の申事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彦三郎 (堪へかねて。)では、どうしても出來ぬことだとおつしやるのでござりますか。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
十二年も殿様の役目を勤めて下すつたにかかはらず、お礼の金をたつた十二円だけもらはうとおつしやつたので大臣は余り金高が少いのにびつくりしてしばらくの間は物が言へませんでしたが
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「先生、うか御戯談ごぜうだんおつしやらないで下さい。私は疝気せんきを病んでるんですから。」
『先生にわかりはしませんよ。ねえお嬢様。お父様とうさまおつしやらしないでせう。』
御門主 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あの、現界げんかい景色けしき同一どういつかとおつッしゃるか……左様さようでございます。格別かくべつちがってもりませぬが、ただ現界げんかいやまよりはなにやら奥深おくぶかく、かみさびて、ものすごくはないかとかんじられるくらいのものでございます。
「まア、貴嬢あなた、飛んでも無いことおつしやいます、此上貴嬢が退会でもなさろものなら、教会はまるやみですよ、篠田さんの御退会で——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「本当ですか。本当ですか。本心でさうおつしやつてゐるのですか。まさか、口先だけで云つていらつしやるのぢやありますまいね。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「えゝ、つてました。なんださうです。明日あした御引移おひきうつりになるさうです。今日けふ是からがらうと思つてた所だとおつしやいました」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
馬車が来ました。岩「おゝ、お立派りつぱな馬車だ、大きなかただね。婆「あのかた山岡鉄太郎様やまをかてつたらうさまおつしやるおかたです。岩「そばなにか二人いてるね。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とても相談さうだん相手あいてにはならぬの、いはゞ太郎たらう乳母うばとしていてつかはすのとあざけつておつしやるばかり、ほんに良人おつとといふではなく御方おかたおに御座ござりまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
天台てんだい國清寺こくせいじ豐干ぶかんおつしやる。」りよはしつかりおぼえてかうと努力どりよくするやうに、まゆひそめた。「わたしもこれから台州たいしうくものであつてれば、ことさらおなつかしい。 ...
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「おい、圓三郎、——ちよいと來てくれ、錢形の親分が、訊きたいことがあるとおつしやる」
玄竹げんちくさまは、わたくしがおのことをおしとつて、ひをしとなまるのをおわらひになりますが、御自分ごじぶんは、しをひとちがへて、失禮しつれいをひつれい、質屋しちやをひちおつしやいます。ほゝゝゝゝゝ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
大佐閣下たいさかつか餘程よほどまへからこのくはだてはあつたので、すでに製圖せいづまで出來できるのだが、海底戰鬪艇かいていせんとうていほういそがしいので、ちからけること出來できず、いづてい竣成しゆんせい製造せいぞう着手かゝらうとおつしやつてるのだが
或時あるときにね、カンタイといふ人が、孔子様を憎んで、をの斬殺きりころさうとしたのさ。所が孔子様は、(天、徳をわれせり、カンタイわれ奈何いかん。)とおつしやつて、泰然自若としてすわつていらしたんだ。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「奥さん、キュラソオでもお上んなさいツ」とおつしやるの。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
段右衞門に向ひ是々これ/\重四郎ではない段右衞門殿そんな譯のわからぬ強情がうじやうよしにしろ今奉行ぶぎやう樣のおつしやる通りだ幾等いくら其方そなたかくして白状ねばとていのちつながる事は金輪こんりんざいありねへそれ迚も三五郎と申合したかは知ねヱが今となつては未練みれんな男だまことくるしみをしみの人間にんげんだなア掃部や藤兵衞茂助の二人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「現に伯母さん、貴女の所へ私の両親も来る、貴女あなたの旦那様も来るとおつしやつたでせう——怪物でも、不思議でもありませんよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
貴方あなたが、幾何いくらおつしやつても、僕は政治などには、興味が向かないのです。殊に現在のやうな議会政治には、何の興味も持つてゐないのです。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「妙なものつて、うまいぜつて見ろ。これはね、僕がわざ/\先生に見舞みやげに買つてたんだ。先生はまだ、これをつた事がないとおつしやる」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おぬひあきれて貴君あなた其樣そのやうこと正氣せうきおつしやりますか、平常つねはやさしいかたぞんじましたに、お作樣さくさま頓死とんししろとはかげながらのうそにしろあんまりでござります
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへはどうも不開化ふかいくわの事ばかりつてるが、どうかうなく開化かいくわの話をしたらからう、西洋の話をした事があるかとおつしやいました、左様さやうでございます
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
また地面ぢめん? 何時迄いつまでもあのことばかりかんがへてらつしやるのね。だつて、貴方あなた萬事ばんじよろしくねがひますと、叔父をぢさんにおつしやつたんでせう」とふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と死んでプウと息の止まつた時に此心このこゝろ何処どこくかとふ……何処どこまゐりませう、これ皆様方みなさまがたうかがつたら何処どこおつしやるかりませんが、円朝ゑんてうにはわかりません。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
はじめは小言こごとおつしやつたり、異見いけんあそばしたり、さとしたり、なぐさめたりあそばしたのなれど、いかにもわたし強情がうじやうふかく、かくしだてをあそばすといふをたてつて
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴方あなたおつしやる所は一々いち/\御尤もだと思ひますが、わたくしには結婚を承諾する程の勇気がありませんから、ことわるより外に仕方がなからうと思ひます」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからしてらぬとおつしやりまする、うかとつてすこしなりともわたし言條いひでうてゝけぬ御返事おへんじをしましたらそれとつてにてゆけとはれるは必定ひつぢやう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あれは。近「絵草紙ゑざうしだよ。梅「へえゝ綺麗きれいなもんですな、なでて見ちやアわかりませんが、此間このあひだ池田いけださんのおぢやうさまが、これだとおつしやいましたがわかりませんでした。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さうおつしやるけれど、これ坂井さかゐさんでなくつて、うち御覽ごらんなさい。貴方あなたやうにぐう/\らしつたらこまるぢやないの」と御米およね宗助そうすけめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんなりとおつしやれ、言譯いひわけのちにしまするとてりてけば彌次馬やぢうまがうるさいとをつける、うなり勝手かつてはせませう、此方こちら此方こちら人中ひとなかけてともなひぬ。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼奴あいつが、おれ置去おきざりにして先へけへりやアがつたが、岩田屋いはたやさんは親切だから此方こつちな、はま贔屓強ひいきづええからなんでもねえとおつしやるので、ほか手曳てひきがねえからまつれていくと
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「だつて、にいさんが留守勝るすがちで、嘸御さむしいでせうなんて、あんまり思遣おもひやりが好過よすぎる事をおつしやるからさ」と云ふ言葉があつた。代助は其所そこへ自分をはさんだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よく早速さつそくおわかりになりましたな、昨日きのふまで大塚おほつかにおまをしたので御座ござりますが何分なにぶんもう、そのなんだかしきいやにおなりなされて何處どこへかかうかうとおつしやる
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
じつ此度このたび大喪使長官様たいさうしちやうくわんさまといふのは、よるもトロ/\まどろみたまふ事もございませんといふ、大層たいそう御丁寧ごていねいおつしやいますから、わたくしどもにはしたまはらなくつてひにくいくらゐで
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ものいふこゑがけんどんであららかで、假初かりそめことにも婢女をんなたちをしかばし、わたしかほをば尻目しりめにおにらあそばして小言こごとおつしやらぬなれどもそのむづかしいことふては
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うもしからぬことをおつしやるねおまへさんは、わたし随分ずゐぶん諸家様しよけさまへお出入でいりをするが、ちりぽんでも無断むだんに持つて来た事はありませぬよ。甚「いゝえそれでもたしかに持つて来なすつた。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)