かざ)” の例文
ジョバンニは、せわしくいろいろのことを考えながら、さまざまのあかりや木のえだで、すっかりきれいにかざられた街を通って行きました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、店先みせさきって、なるほど、たくさんいろいろな仏像ぶつぞうや、彫刻ちょうこくがあるものだと、一ひととおかざられてあるものにとおしたのです。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
油煙ゆえんがぼうつとあがるカンテラのひかりがさういふすべてをすゞしくせてる。ことつた西瓜すゐくわあかきれちひさなみせだい一のかざりである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そして、もうさっそくに、きょう、町へ出たら、きものと身のかざりのこまものを、買って来てくれるように、父親にせがみました。
るりをしきつめたみちをとおって、さんごでかざった玄関げんかんはいって、めのうでかためた廊下ろうかつたわって、おくおく大広間おおひろまへとおりました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あれこそはひとりこの御夫婦ごふうふだいかざる、もっとうつくしい事蹟じせきであるばかりでなく、また日本にほん歴史れきしなかでのりの美談びだんぞんじます。
お米の手に持つ菊の花、かざった菊の植木鉢、それから借金取が取ってき出す手箒てぼうきも、皆彼の家から若者等が徴発ちょうはつして往ったのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一通りの話をきき、万吉の苦衷くちゅうのある所に、鴻山もとくとうなずいて、次には、自分がここへ来るまでの経路を、かざり気なく物語った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
教会と市役所のあいだには、広場をとりかこんで、さまざまのかざりのついた、見るも美しい破風はふのある家々が立ちならんでいました。
一體いつたいこりや、了見れうけんだね」と自分じぶんかざけたものながめながら、御米およねいた。御米およねにも毎年まいとしうする意味いみとんわからなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かざりつきのつぼだとか、またくちのついたしびんのようなかたちをしたものもありますが、なかにも不思議ふしぎなのははさふといふ器物きぶつです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
左右さいうふり我元より言葉ことばかざらざるが故に其許のえきは申されずと云ふ靱負問て今も申如く假令如何なることなりとも苦しからず夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とこにも座敷ざしきにもかざりといっては無いが、柱立はしらだちの見事な、たたみかたい、の大いなる、自在鍵じざいかぎこいうろこ黄金造こがねづくりであるかと思わるるつやを持った
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつお木というのは、天皇のお宮か、神さまのおやしろかでなければつけないはずの、かつおのような形をした、むねのかざりです。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その小松こまつは、何處どこからかひかりけてるらしく、丁度ちやうどぎんモールでかざられたクリスマスツリーのやうに、枝々えだ/\光榮くわうえいにみちてぐるりにかゞやいてゐた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
然らずして、いたづらに聞見をむさぼるのみならば、則ち或はがうちやうじ非をかざらんことを恐る。謂はゆるこうに兵をし、たうりやうするなり、おもんぱかる可し。
れの徳義とくぎは——「かくすよりあらはるゝはなし」——へれば——「外見ぐわいけんかざるな、いく體裁ていさいばかりつくろつても駄目だめだ、かはづぱりかはづさ」
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
書院の床の間のまえに、経机が置かれて、その上に、生首が一つかざってあるのだ……妙見勝三郎の首、たった今玄関で
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
正月しやうぐわつのおかざりを片付かたづける時分じぶんには、村中むらぢう門松かどまつ注連繩しめなはなどをむらのはづれへつてつて、一しよにしてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
伯爵は肩をすくめたが、素直すなおに一礼すると、宝石入りの指輪でかざりたてた白い手にペンをとりあげ、小さな紙切れをき取って、それに書き始めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それは、この前のクリスマスのときに、お金持の商人の家で、ガラス戸ごしに見たのよりも、ずっと大きくて、ずっとりっぱにかざりたててありました。
きみ遺族いぞく小穴君をあなくんなどがそれをもとめるけれど、きみほんかざれるやうなことがぼくけるものか。でもぼくはこのほんのためにたつたひとつだけは手柄てがらをしたよ。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
著名ちょめいの学者のふでになる「はえにくむの」が現代的科学的修辞しゅうじかざられて、しばしばジャーナリズムをにぎわした。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
うきかざりのべにをしろいこそらぬものあらがみ島田しまだ元結もとゆひすぢきつてはなせし姿すがたいろこのむものにはまただんとたヽえてむこにゆかんよめにとらん
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かざりのないたばがみに、白い上衣うわぎを着たあなたが項垂うなだれたまま、映画をまるで見ていないようなのも悲しかった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
与一は、この部屋に手製の額に入れた自分の風景画を一枚かざりつけた。あんまりいい絵ではない。私はかつて、与一の絵をそんなに上手じょうずだと思った事がない。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
僕はSに別れてから、すぐにその次の横町をまがった。横町の角のかざり窓にはオルガンが一台えてあった。
死後 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
およぜいつとめ、ところけいするところかざり・しかうしてにくところ(八五)めつするをるにり。かれみづか其計そのけいとせば、すなは其失そのしつもつこれ(八六)きはむるかれ。
ぞろ/\とホテルへはいつてつた。ちやうどクリスマスの翌夜よくやでパイントリイが物々もの/\しくかざられ、食堂しよくどう舞踊ぶようがあつたりして、まるでおまつりのやうなさわぎであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
床の間にはすでに宝物の数々がかざってあって、主人はそれらの品を一つ一つ、うやうやしく私たちの前に並べた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その通りに心掛けていたのだが、どういうものか足が早くて水密桃など瞬く間に腐敗ふはいした。店へかざっておけぬから、辛い気持で捨てた。毎日、捨てる分が多かった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ガラッ八の八五郎は銭形平次の前へ、前夜日本橋から芝、田町までの間に拾った南鐐なんりょう、小判、かざぐし、四文銭、二分金、かんざし、懐中鏡——と畳の上へ並べて行ったのです。
電池と真空ポンプと測定装置とのほかには、ほとんど室のかざりになるような器械はなく、がらんとしたうすら寒い地下室であった。実験室全体の感じが薄蒼うすあおくすすけていた。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
救うのがいやだからではないのだ。僕は友人たちがくる前に、船長室のあの不気味ぶきみかざりものを処分しよう。死者ししゃれいをあつかう役目に僕を任命していただければ、光栄だ
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中央ちうわうアメリカ發見はつけんの古器物中には此類の石器にみぢかき柄を付けせ石細工を以て之をかざれる物在り、又一手に首級しゆきうかかへ他手に石槍形の匕首をたづさへたる人物の石面彫刻物せきめんてうこくぶつ有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
かざもんはこれを参酌しろのと、あらゆるものを老石工に向って押しつけてしまいました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
全身あかまみれの男が、一ヶ所だけ、例えば足の爪先だけ、無闇に美しくかざっているような、そういうおかしな所が。彼等は、神秘の雲の中における人間の地位をわきまえぬのじゃ。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
茶もなにもやつた事のねえやつが、へんひねつたことをつたり、不茶人ふちやじん偽物にせものかざつて置くのを見て、これはにせでございますともへんから、あゝ結構けつこうなお道具だうぐだとめなければならん
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
たいていの日本人は、何かというと、表面堂々とした理由で自分の行動を弁護したり、かざったりする。しかも、それで他人をごまかすだけでなく、自分自身の良心をごまかしている。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
進んで答ふらく、「其の方法は五倫五常の道を守るに在ります」と。翁は頭をつて曰ふ、否々いな/\、そは金看板きんかんばんなり、表面うはべかざりに過ぎずと。因つて、左の訓言をつゞりて與へられたりと。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
明治の初年にはじめて西洋から伝わりて爾後じごしだいに日本にひろまり、今日こんにちでは東北諸州ならびに信州からそれの良果がさかんに市場に出回でまわり、果実店頭をかざるようにまでなったのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ヂュリ 内實なかみの十ぶん思想しさうは、言葉ことばはなかざるにはおよばぬ。かぞへらるゝ身代しんだいまづしいのぢゃ。わしこひは、分量ぶんりゃうおほきう/\なったゆゑに、いまその半分はんぶんをも計算かんぢゃうすることが出來できぬわいの。
珊瑚珠さんごじゅが七つばかりでその間に宝石が一つ入って居るそのかざりを上げたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かざることなり。表を飾るをもって人間交際の要となすときは、ただに容貌顔色のみならず、衣服も飾り飲食も飾り、気に叶わぬ客をも招待して、身分不相応の馳走するなぞ、まったく虚飾を
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この座敷は板敷いたじき床畳とこだたみを用意してあり、几帳きちょう御厨子みずしなどの部屋の調度のかざりといい、壁代かべしろの絵といい、みんな時代のついた由緒ありそうな品で、とうてい身分のない人の住居ではない。
せまい土間の天井を季節の造花もみじでかざってある店を横目で見ながら
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
むかしむかし、町といなかに、大きなやしきをかまえて、金のぼんと銀のおさらをもって、きれいなおかざりとぬいはくのある、いす、つくえと、それに、総金そうきんぬりの馬車までももっている男がありました。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
私は、長い間、私の田舍の教へ子達が、私を好きなのを感じて嬉しく思つてゐた。そして、別れを告げるときになつて、私の考へは裏付けられた。彼等は、愛情を、かざなく、強く表はしてくれた。
「うむ、六七月ころになると、それをきり花にして客かざる……」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
木々きゞ若葉わかば青葉あをばかざられたころはすが/\しい景色けしきです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)