すな)” の例文
彼女かのじょは、かぜかれながらっていましたが、やがて、自分じぶんもまたすなうえへすわったのです。そして、やはりうみほうていました。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬方うまかた馬方うまかた喧嘩けんくわをはじめました。すなツぽこりの大道だいどうべたで、うへになつたりしたになつたり、まるであんこ のなか團子だんごのやうに。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ぱうくさばかりで、さへぎるものはないから、自動車じどうしやなみてゝすなしり、小砂利こじやりおもてすさまじさで、帽子ぼうしなどはかぶつてられぬ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞ沙漠のすなけてゐるやうに、頭がほてツてゐるばかりだ。そして何時颶風はやてが起ツて、此の體も魂もうづめられてしまうか知れないんだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ただその大部分だいぶぶんがその上につもった洪積こうせき赤砂利あかじゃり壚※ローム、それから沖積ちゅうせきすな粘土ねんどや何かにおおわれて見えないだけのはなしでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
其樣そんなものに鼻毛はなげよまれてはてあとあしのすな御用心ごようじんさりとてはお笑止しようしやなどヽくまれぐちいひちらせどしんところねたねたしのつも
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もみの木は、すながいっぱいはいっている、大きなおけのなかにいれられました。けれど、たれの目にも、それはおけとは見えませんでた。
だれももうわらう者はなかった。空がだんだん暗くなった。あらしがどんどん来かけていた。すなけむりがうずをいて上がった。
じつ非常ひじやう手段しゆだんではあるが、※日くわじつ自動鐵車じどうてつしやすなすべりのたに陷落かんらくしたとき君等きみらすくはんがため製作せいさくした大輕氣球だいけいきゝゆうが、いまのこつてる。
八町畷はっちょうなわてすなぽこりでお徒歩ひろいになりますより、矢張やっぱり船を待たして置いてお乗りになれば、この風ですから、帆も利きます、訳無く行ってしまいますよ
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
召使めしつかいはまた馬をすすめていきました。しばらくすると、足もとのすなのなかで、なんだか声がするような気がしました。
前つぼのかた草履ぞうりさきすなって、一目散もくさんした伝吉でんきちは、提灯屋ちょうちんやかどまでると、ふと立停たちどまって小首こくびかしげた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ここはバルト海のすぐ近くなので、ガンたちがおりた畑にも、ふつうの海岸と同じように、すながいっぱいありました。
平岡は其時かほ中心ちうしんに一種の神経を寄せてゐた。かぜいても、すなんでも、強い刺激を受けさうなまゆまゆ継目つぎめを、はゞからず、ぴくつかせてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何分なにぶん支那しなひろくにでありますし、またその東部とうぶ大河たいがながしたどろだとか、かぜおくつてきたちひさいすなだとかゞつもつて、非常ひじようにそれがふかいために
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
丁度ちょうどなつのことでございましたから、小供こどもほとんどいえ内部なかるようなことはなく、海岸かいがんすないじりをしたり、小魚こざかなとらえたりしてあそびに夢中むちゅう
といいながら、またかめの子を、あおむけにひっくりかえして、足でけったり、すなのなかにうずめたりしました。浦島はますますかわいそうにおもって
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かうなると大雨おほあめるたびに、やまつちすなはどん/\ながれおち、またおそろしい洪水こうずいがおこるようになりました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
金魚鉢きんぎょばちは、ぐるりに、しろすなをしきつめてある。すなをはらいのけると、めたとせたはちが、すぽりとつちからきとれるようになつているのがわかつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それからあな硝子がらす破片はへんでふたをし、上にすなをかむせ地面の他の部分とすこしもかわらないようにみせかける。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しかたきゞ缺乏けつばふから自然しぜんにかういふすななか洪水こうずゐもたらした木片もくへんうづまつてるのをつてこれもとめてるのだといふことはかれはじめてはじめてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とうさんは表庭おもてにはなし椿つばきしたあたりへちひさなかはのかたちをこしらへました。あつめたすなつち二列ふたれつりまして、そのなかみづながしてはあそびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
東は大和口の東軍と河内口の東軍とが河内のすなに相会する所を迎え撃ち、南は熊野の土冦と相結んで、和歌山の浅野を挾撃し、又別に古田織部正の家老木村宗喜むねよししょく
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼女は、なおもその無意味なすないたずらを二三度くり返したようであったが、それにもあきたのか、顔にかかった砂を払おうともせず、ぐったりと「干物」のようにのびていた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
石をり截るには木の小枝抔せうしなどを採り、其の一端へかたすなを付けて之を握り墨をる時の如くに手を前後ぜんごうごかし、一面より摩り初めて凹みのふかさ石の厚さのなかばに達したるころ
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
貴重品きちようひん一時いちじ井戸ゐどしづめることあり。地中ちちゆううづめる場合ばあひすなあつ五分ごぶほどにても有效ゆうこうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ひょっと、わき見をしていた者が見なおすと、もうそこにパッとすなが立っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都を立ったフロイスたちは、鳥羽から船に乗り、夕方枚方で飯盛の武士たちに迎えられ、夜半に飯盛山下すなの結城左衛門の建てた小庵に着いた。そこにはビレラや信者たちが集まっていた。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
五七 川の岸のすなの上には川童の足跡あしあとというものを見ること決して珍しからず。雨の日の翌日などはことにこの事あり。猿の足と同じく親指おやゆびは離れて人間の手のあとに似たり。長さは三寸に足らず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
せめ自然しぜんと知せる天下の大法たいはふはやき身とまで覺悟かくごせしおみつ親子は不測ふしぎに助り然のみならずこひしと言をとこもとえんづくやう再度ふたゝびむす赤繩せきじよう有難泪ありがたなみだ白洲しらすなるすなしめらす其よろこびお勝ははじめて庄兵衞のわるきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すなくずれ、かげゆがみ、銃架じうかは×(19)いて地上ちじやうたふれる
海のべの唐津からつのやどりしばしばも噛みあつるいひすなのかなしさ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
柵内さくうちすな乾きゐて春風しゆんぷうにカンガルー跳躍とびのさぶしも
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
み冬の夕かげあかきすなの原空眼そらめ薄らに駱駝来れり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
線路せんろすなに——あゝこの時
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
すなすなとのうちふれて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
それで、かれは、じっとして見守みまもっていました。ふねから、ひとがおりて、みぎわあるいて、ちいさなはこなみのとどかないすなうえにおろしました。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とほりかゝつた見知越みしりごしの、みうらと書店しよてん厚意こういで、茣蓙ござ二枚にまいと、番傘ばんがさりて、すなきまはすなか這々はふ/\ていかへつてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからぼくらは、すなっぱの上やふちを、あっちへ行ったり、こっちへ来たり、押えたり押えられたり、何べんも鬼っこをした。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すなすべりのたに一名いちめいたにばるゝほどで、一度いちどこのあななか陷落かんらくしたるものは、到底とうていがれこと出來できないのである。
黄色のかえるはあとあしですなをけとばしましたので、あいてはたびたび目玉からすなをはらわねばなりませんでした。
二ひきの蛙 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ふたりは、やわらかい、美しいすなでおおわれている、さびしいはまべに立っていました。海べにそって、テンキ草のえている砂丘さきゅうが、長くつづいています。
「わたしはある川をわたりました。この金貨は、そこからとってまいりましたのです。その川の岸には、すなのかわりに、こういうものがいっぱいございます。」
女は白足袋たびの儘すなだらけの縁側へがつた。あるくと細い足の痕が出来る。たもとから白い前垂まえだれを出して帯の上からめた。其前垂のふちがレースの様にかゞつてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところが川のそばですから、あめがふって、みずがふえて、河原かわらみずながすたんびに、小石こいしすながくずれして、おはかもいっしょにながれていきそうになりました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つてみると、しゃくすんほどの瀬戸せとはちが、にわつちにいけてあつて、そのはちは、からつぽだけれど、みずだけはつてあるし、ぐるりに、しろすなをきれいにまいてあつて
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
素燒すやきでありますけれども、くろずんだ茶色ちやいろいぶされたのがおほいのです。そしてそのつちしつこまかいすなや、ときには大粒おほつぶすながまじつてゐるために平均へいきんしてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
荷物にもつ背中せなかむすびつけてわたしたちは出発した。カピがよろこんで、ほえて、すなの中をころげていた。
洞窟どうくつっても、それはよくよくあさいものであかるさはほとんど戸外そとかわりなく、そして其所そこからうみまでの距離きょりがたった五六けん、あたりにはきれいなすなきつめられていて
またうみのつよいかぜ濱邊はまべすなばして、砂丘さきゆうつくつたり、その砂丘さきゆうすなをまた方々ほう/″\はこんで、大事だいじはたや、ときによると人家じんかまでもうづめてしまふことがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)