無言むごん)” の例文
よ、愚劣ぐれつな×(2)に対してこぶし子供こどもらを、かほをそむけてのゝしをんなたちを、無言むごんのまゝ反抗はんこう視線しせんれつきつけるをとこたちを!
青年は、その手を無言むごんうちに、強く握りかえすと、そのままツツと屋根の上を走ると見る間に、ひらりと身を躍らせて、飛び降りた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かへりのおそきをはゝおやあんしてたづねにてくれたをば時機しほうちへはもどつたれど、はゝものいはず父親てゝおや無言むごんに、一人ひとりわたしをばしかものもなく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
麥色の薔薇ばらの花、くくりの弛んだ重い小束こたばの麥色の薔薇ばらの花、やはらかくなりさうでもあり、かたくもなりたさうである、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
とたんに、三人のそうたちも、なにかいいしれぬ魔魅まみにおそわれているのを知って、無言むごんのまま、ジロジロと部屋へやのすみずみをみつめ合った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何故この部屋が嫌になったか? ——それは独り男自身の疑問だったばかりではない。同時にまた敏子が無言むごんの内に、男へ突きつけた反問である。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
代助には平岡の腹がれた。それで平岡が自分に返事もせずに無言むごんあるいて行くのが、何となく馬鹿らしく見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はじめのびん二人共ふたりとも無言むごんぎやう呑乾のみほしてしまふ。院長ゐんちやう考込かんがへこんでゐる、ミハイル、アウエリヤヌヰチはなに面白おもしろはなしやうとして、愉快ゆくわいさうになつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かうぶるべし願くは彦兵衞を御返下おかへしくだされ候樣に願ひ奉つると申ければ大岡殿無言むごんにて居られし故權三助十は大岡殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれらがこれを証明しょうめいすることさえできたら、あのあわれな犬が、わたしのためにつごう悪く提供ていきょうした無言むごんの証明があるにかかわらず、放免ほうめんになるかもしれない。
迂老うろうは故箕作秋坪みつくりしゅうへい氏と交際最も深かりしが、当時の写本を得て両人対坐、毎度繰返しては之を読み、右の一段に至れば共に感涙にむせびて無言むごんに終るの常なりき。
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
その無言むごんの笑顔は、二人の胸に、静かによろこびをつたえてきました。足音をしのばせるようにして、二人はおばあさんに近づき、その両わきにしゃがみました。
柿の木のある家 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
それともとむらはれずかばぬれいが、無言むごんうち供養くやうのぞむのであらうもれぬ。ひとりではなにしろおもい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、いもうといてあねにすがりました。二人ふたりは、たがいにって、しばらく無言むごんでありました。
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ラクダルは無言むごんのまゝ手眞似てまね其處そこすわらした。親父おやぢ當前あたりまへすわる、愚息せがれはゴロリころんであし蹈伸ふみのばす、この臥轉ねころかた第一だいゝち上出來じやうできであつた。三人さんにんそのまゝ一言ひとことはつしない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
三十有餘名いうよめいの、日頃ひごろおにともまん水兵等すいへいらも、いままつた無言むごんに、此處こゝ一團いちだん彼處かしこ一團いちだんたがひかほ見合みあはすばかりで、其中そのうちに二三めいは、萬一まんいちにも十二のたるうち一つでも、二つでも
四十二章経にも云う、「仏言わく、吾が法は無念の念を念じ、無行むぎょうの行を行じ、無言むごんの言を言とし、無修むしゅの修を修す」と。知識のを犯した私たちは、もはや無知に帰ることはできぬ。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
悪口に対する吾人の理想的態度は無言むごん実行の弁解をもってすべきであると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
無言むごんのうちに、マタンのしようとしていることをとがめていましたが、いったん、マタンがそのことをしてしまったら、そのことはひみつにしていてやるよと、約束やくそくしているようにも思われました。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
母なる人は無言むごんにたって、芳輔よしすけの手をとらえて父の近くへせた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
嗚呼あゝ、わがげんの力を、その無言むごんの力と同じからしめ給へ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
無言むごんに泣けば『新生しんせい』の黄金光わうごんくわうえあがる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
基康 (無言むごんにて家来に礼紙を渡す)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
竜之助は無言むごん
紙細工かみざいく薔薇ばらの花、この世にあるまじき美をたくみにも作り上げた紙細工かみざいく薔薇ばらの花、もしや本當ほんたうの花でないかえ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
きびすかへしてツト馳出はせいづればおたかはしつて無言むごん引止ひきとむるおびはし振拂ふりはらへばとりすがりはなせばまとひつきよしさまおはらだちは御尤ごもつともなれども暫時しばし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのなかに、伊那丸いなまるのすがたを見出みいだしたので、忍剣は、思いやりの深い主君しゅくんの心がわかって、無言むごんのうちになみだがうかんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このとき宗助そうすけならんで嚴肅げんしゆくひかえてゐたをとこのうちで、小倉こくらはかまけた一人いちにんが、矢張やはり無言むごんまゝがつて、へやすみ廊下口らうかぐち眞正面ましやうめん着座ちやくざした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
下人は又、それを行かすまいとして、しもどす。二人は屍骸しがいの中で、暫、無言むごんのまゝ、つかみ合つた。しかし勝敗しようはいは、はじめから、わかつている。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いよいよ室内へはいるが、無言むごんでいること、足音をたてないことを、もういちど係官たちにもとめたのであった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はじめのびん二人共ふたりとも無言むごんぎょう呑乾のみほしてしまう。院長いんちょう考込かんがえこんでいる、ミハイル、アウエリヤヌイチはなに面白おもしろはなしをしようとして、愉快ゆかいそうになっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それより無言むごんにて半町はんちやうばかり、たら/\とさかのぼる。こゝにひるくら樹立こだちなかに、ソとひと氣勢けはひするを垣間かいまれば、いし鳥居とりゐ階子はしごかけて、輪飾わかざりくるわか一人ひとり落葉おちばおきな二人ふたりあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし時間じかんればうごかぬわけにいかない人車鐵道じんしやてつだうさへをはれば最早もうゐたも同樣どうやうそれちからはこはひると中等ちゆうとう我等われら二人ふたりぎりひろいのは難有ありがたいが二時間半じかんはん無言むごんぎやうおそるとおもつてると
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
台所だいどころへでて、無言むごんにタアちゃんをだいたときには、家のものみなが目をうるおした。花前はなまえったあと、あのはしの話を聞きたかったけれど、なんだかきのどくで聞かれなかったと下女げじょなみだをふいた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
無言むごん凝視みつ赫耀かくえう波動はどうけば、夢心地ゆめごこち
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さゝれて理左衞門はグツト言て暫く無言むごんなりしがいや然樣さやうの儀は御座なくとぐづ/\答ければ大岡殿假令たとへ其方ちんずるとも不吟味の罪はのがれぬぞ此上にも申かすめんとなさば餘儀なく拷問がうもんにも掛ねばならず然すれば武士の恥辱ちじよくは申に及ばず主人へ猶はぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
眼の黒い薔薇ばらの花、おまへの死の鏡のやうな眼の黒い薔薇ばらの花、不思議といふ事を思はせておくれ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
宗助そうすけ障子しやうじけたなり、少時しばらくさかなからつゆあぶらおといてゐたが、無言むごんまゝまた障子しやうじてゝもともどつた。細君さいくんさへさかなからはなさなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
りやうさん今朝けさ指輪ゆびわはめてくださいましたかとこゑほそさよこたへはむねにせまりてくちにのぼらず無言むごんにさしひだりせてじつとばかりながめしが。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
け死ぬか、のがれだせるか、人間最高の努力どりょくをふりしぼる瞬間しゅんかんには、かれもこれも、おそろしい無言むごんであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらく無言むごんが続いたのち、お蓮がこう問い直すと、声はやっと彼女の耳に、懐しい名前をささやいてくれた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
アンドレイ、エヒミチはぜに勘定かんぢやうして、五百ゑん無言むごんともわたしたのである。ミハイル、アウエリヤヌヰチは眞赤まつかになつて、面目無めんぼくないやうな、おこつたやうなふうで。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、言葉もとみに発し得ないで、反対の側の片隅を、無言むごんうちに指した。そこには黒い横長の木札の上に、トイレットという文字が白エナメルで書きしるされてあった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前刻ぜんこくより無言むごんにて平伏へいふくしたる恩田杢おんだもく此時このときはじめてかうべもた
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでれい無言むごんで、不意ふいにうしろから兼吉にげんこをくれた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私は無言むごんつめたい小酒杯リキユグラスをとりあげ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
殺した事も皆々みな/\汝ぢだと疑つてゐるぞ此盜人野郎ぬすびとやらう乞食こじきに近い此彌十よりは遙かおとりし人非人にんぴにんめサア言わけが有なら返答へんたふろと大聲おほごゑに言こめけるに流石さすが不敵ふてきの段右衞門も更に無言むごんとなり此時に至つて大いに赤面せきめんたる有樣なれども未だ白状はざりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「これがあの……」と叔母をば逡巡ためらつて宗助そうすけはうた。御米およねなん挨拶あいさつのしやうもないので、無言むごんまゝたゞあたまげた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
アンドレイ、エヒミチはぜに勘定かんじょうして、五百えん無言むごんともわたしたのである。ミハイル、アウエリヤヌイチはまだ真赤まっかになって、面目無めんぼくないような、おこったようなふうで。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから私たちは、無言むごんうちに仕事をやった。それは私たちにとって珍らしいことだった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)