黒髮くろかみ)” の例文
新字:黒髪
すらりと背後うしろかるゝ黒髮くろかみのたけ、帆柱ほばしらよりながなびくとおもふと、はかまもすそなみつて、つきまへを、さら/\と、かけなみしぶきたまらしながら
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奈良山の一部に人麻呂歌集などにも出てゐる黒髮くろかみ山といふ山があり、そこから法華寺村の北方の歌姫うたひめといふ部落に出る舊道のある事を知つて、ちよつとその黒髮山とか
黒髪山 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
決し在所ざいしよの永正寺と云尼寺あまでらへ入みどり黒髮くろかみそり念佛ねんぶつまい生涯しやうがいおくりし事こそ殊勝しゆしようなれされば長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
主が年の頃は十七八になりもやせん、身には薄色に草模樣を染めたる小袿こうちぎを着け、水際みづぎは立ちしひたひよりたけにも餘らん濡羽ぬれは黒髮くろかみ、肩に振分ふりわけてうしろげたる姿、優に氣高し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
空蝉うつせみなかすてヽおもへば黒染すみぞめそでいろかへるまでもなく、はなもなし紅葉もみぢもなし、たけにあまる黒髮くろかみきりはらへばとてれは菩提心ぼだいしん人前ひとまへづくりの後家ごけさまが處爲しよいぞかし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
黒髮くろかみ長き吾身こそ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
黒髮くろかみ山は朝曇
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
不思議ふしぎにこゝでひました——面影おもかげは、黒髮くろかみかうがいして、ゆき裲襠かいどりした貴夫人きふじんのやうにはるかおもつたのとは全然まるでちがひました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふさ帽子ぼうしおももちゆたかに洋服ようふくかる/″\と花々敷はな/″\しきを、ぼつちやんぼつちやんとて此子このこ追從ついしようするもをかし、おほくのなか龍華寺りうげじ信如しんによとて、千すぢとなづる黒髮くろかみいまいくとせのさかりにか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たづさへて駈付かけつけ見れば是は如何に餘りし黒髮くろかみ振亂ふりみだせし廿四五歳の女と三十ぢか色白いろしろき男とくみつほぐれつ爭ひ居たしかば扨は此奴等こやつら色事いろごと喧嘩けんくわにてもなすかや併し見て居られぬとて漸々に双方さうはう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅花ばいくわの油黒髮くろかみ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はだおほうたともえないで、うつくしをんなかほがはらはらと黒髮くろかみを、矢張やつぱり、おなきぬまくらにひつたりとけて、此方こちらむきにすこ仰向あをむけにつてます。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はんかなあまい/\甘酒あまざけ赤行燈あかあんどうつじゆれば、そ、青簾あをすだれ氣勢けはひあり。ねや紅麻こうまえんにして、繪團扇ゑうちは仲立なかだちに、蚊帳かやいと黒髮くろかみと、峻嶺しゆんれい白雪しらゆきと、ひとおもひいづれぞや。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつると、躍上をどりあがつて、黒髮くろかみ引掴ひツつかむと、ゆきなすはだどろうへ引倒ひきたふして、ずる/\とうち引込ひきこむ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞなかにも、はじめてうれしさをりましたのは、わたしたちをんななが黒髮くろかみです……しろまくらながれるやうにかゝりましたのが、自分じぶんながら冷々ひや/\と、こほりばしていたやうで
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むらさき一度いちどちうえつゝ、はしえた改札口かいさつぐちへ、ならんで入道にふだうくやうにして、かすか電燈でんとううつつた姿すがたは、みゝかくしも、のまゝ、さげがみの、黒髮くろかみながらふたけてさへえた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あきともかずひるともらず朧夜おぼろよ迷出まよひいでて、あはれ十九を一期いちごとして、同國どうこく浦崎うらざきところ入江いりえやみしづめて、あし刈根かりねのうたかたに、黒髮くろかみらしたのである。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときもあらうに、眞夏まなつ日盛ひざかり黒髮くろかみかたしくゆきかひな徐大盡じよだいじん三度目さんどめわかつまいとをもけず、晝寢ひるねをしてた。(白絹帳中皓體畢呈はくけんちやうちうかうたいひつてい。)とある、これは、一息ひといき棒讀ぼうよみのはうねがふ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此時このとき白襟しろえり衣紋えもんたゞしく、いお納戸なんど單衣ひとへて、紺地こんぢおびむなたかう、高島田たかしまだひんよきに、ぎん平打ひらうちかうがいのみ、たゞ黒髮くろかみなかあはくかざしたるが、手車てぐるまえたり、小豆色あづきいろひざかけして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うつくしさは、よるくもくらこずゑおほはれながら、もみぢのえだうらくばかり、友染いうぜんくれなゐちら/\と、櫛卷くしまき黒髮くろかみ濡色ぬれいろつゆしたゝる、天井てんじやうたかやまに、電燈でんとうかげしろうして、ゆらめくごと暖爐だんろほのほ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さびしくしかたからかに、むかなゝめはるかながら、のぞめばまゆにせまる、滿山まんざんもやにして、其處そこばかり樹立こだちふつさりと黒髮くろかみみだせるごとき、はらあたりやまに、すぽい/\、すぽい/\とたゞ一羽いちはとりいた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五月雨さみだれ茅屋かややしづくして、じと/\と沙汰さたするは、やまうへ古社ふるやしろすぎもり下闇したやみに、な/\黒髮くろかみかげあり。呪詛のろひをんなふ。かたのごと惡少年あくせうねん化鳥けてうねらいぬとなりて、野茨のばらみだれし岨道そばみちえうしてつ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しきりもない小屋内こやうちが、らぬだに、おびえるところ一齊いちどき突伏つツぷさわぎ。やゝたしかなのが、それでもわづか見留みとめると、黒髮くろかみみだした、わかをんなの、しろ姿すがたで。……るまにかげになつて、フツとえる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さき二人ふたりあたまながいのと、なにかに黒髮くろかみむすんだのは、芝居しばゐ樂屋がくや鬘臺かつらうけに、まげをのせて、さかさつるした風情ふぜいで、前後あとさきになぞへにならんで、むかうむきにつて、同伴者つれの、うして立淀たちよどんだのをつらしい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふといたまど横向よこむきにつて、ほつれ白々しろ/″\としたゆびくと、あのはなつよかをつた、とおもふとみどり黒髮くろかみに、おなしろはな小枝こえだきたるうてな湧立わきたしべゆるがして、びんづらしてたのである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やさしくつて、りしもあれかぜひとしきり、無慙むざんにもはかなくなつた幾萬いくまんひとたちの、けし黒髮くろかみかと、やなぎげし心臟しんざうかと、つるの、ちうにさまよふとゆるのを、なぐさむるやうに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
温泉いでゆけむりに、ほんのりと、ゆきなすかんばせ黒髮くろかみまげ
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
黒髮くろかみまたつめたさが、染々しみ/″\うれしかつたときでした。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)