すゞ)” の例文
仁三郎は全くの一人者で、金も係累けいるゐも、人に怨を買ふおぼえもなく、その上、賽錢さいせん箱が無事で、取られた物といつては、拜殿のすゞだけ。
やまなつらしくなると、すゞおときこえるやうにります。御嶽山おんたけさんのぼらうとする人達ひとたち幾組いくくみとなく父さんのおうちまへとほるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ロミオ や、おれぶは戀人こひゞとぢゃ。あゝ、戀人こひゞとよる聲音こわねは、白銀しろがねすゞのやうにやさしうて、けばくほどなつかしい!
やがてまちちかい、すゞはしが、河原かはら晃々きら/\しろい、みづあをい、對岸むかうぎしくらい、川幅かははゞよこつて、艷々つや/\一條ひとすぢかゝる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一番に傘矛かさぼこ錦のみづひきをかけめぐらはしすゞをつけ、又裁工きれさいくの物さま/″\なるをさげる、傘矛かさぼこの上には諫鼓を飾る。
たとへば日比谷公園ひゞやこうえんよこ道路どうろや、青山赤坂通あをやまあかさかどほりなどにゑてあるすゞげたようなのなる並木樹なみきぎとして立派りつぱなすゞかけのは、あかるい淡緑色たんりよくしよくをしてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ねえさんにげませう」とつた。それからすゞけたうめはなかたちつた御手玉おてだま宗助そうすけまへいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
としおそしと待居たり然るにあけ寅刻頃なゝつごろとも思ふ頃はるかに聞ゆる驛路えきろすゞ馬士唄まごうたこゑ高々たか/″\と來掛る挑灯てうちん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
役所に出てゐても、内にゐても、ちりん/\とすゞが鳴つては、電話口に呼び出されるのである。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
時々豆腐屋とうふやすゞの音、汽笛きてきの音、人の聲などがハツキリと聞える。また待乳山まつちやまで鰐口が鳴ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
牝牛めうしさん、いてください。わたし可愛かはいいばうたちはね。きつとうつくしい瑠璃色るりいろをしてゐて、薔薇ばらはなみたいによいにほひがしますよ。そしてすゞをふるやうなよいこゑでちる/\とうたひますよ。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
いろ淺黒あさぐろ面長おもながで、ひんいといふではいか、おまへ親方おやかたかわりにおともまをすこともある、おがんだことるかとへば、だん格子戸かうしどすゞおとがするとぼつちやんが先立さきだちして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またこれにすゞがついてゐるのもあつて、餘程よほどうまく出來できてをります。そのほか、馬鐸ばたくといつて杏葉きようよういつしょに、ぶらげるすゞのようなものもあり、すゞみつつらなつためづらしいかたちのものもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いけあしそよぎにうつくしい小波さゞなみちました——ガラ/\茶碗ちやわんはチリン/\とひゞすゞに、女王樣ぢよわうさま金切聲かなきりごゑ牧童ぼくどうこゑへんじました——して赤兒あかごくさめ、グリフォンのするどこゑ其他そのた不思議ふしぎ聲々こゑ/″\
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すゞけてむかさうのうるほひ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
かれ泣く停車場ていしやばすゞみぞどく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しつに、玉鳳ぎよくほうすゞふくみ、金龍きんりうかうけり。まどくるもの列錢れつせん青瑣せいさなり。しろきからなしあかきすもゝえだたわゝにしてのきり、妓妾ぎせふ白碧はくへきはなかざつて樓上ろうじやうす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「富坂のおすゞ坊、後家ごけのおこのの娘で、年は十九、やくは厄でも、こんな綺麗な娘には神も佛もばちは當てねえ」
わたしあるたびにこのすゞります。わたしはこのすゞおとながらおうちはうかへつてまゐります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奪ひ取り仕合せ宜と獨笑ひとりゑみしてお兼が死骸しがい見遣みやりもせずすゞもりの方へとはしり行こそ不敵ふてきなれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
白牡丹はくぼたん這入はいつて、景物けいぶつ金時計きんどけいでもらうとおもつたが、なにふものがなかつたので、仕方しかたなしにすゞいた御手玉おてだま一箱ひとはこつて、さうしていく百となく器械きかいあげられる風船ふうせんひとつかんだら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
町子まちこよいごゝちゆめのごとくあたまをかへして背後うしろるに、雲間くもまつきのほのあかるく、社前しやぜんすゞのふりたるさま、紅白こうはくつなながくれて古鏡こきようひかかみさびたるもみゆ、あらしさつと喜連格子きつれがうしおとづるれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
巫子みこが來て振り鳴らすすゞ…………
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
すゞらしかねをつき
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
御神輿おみこしはしらの、かざり珊瑚さんご𤏋ぱつき、ぎんすゞ鳴据なりすわつて、鳳凰ほうわうつばさにはとりのとさかが、さつあせばむと、彼方あつち此方こつちさま團扇うちはかぜなみに、ゆら/\とつて
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「馬鹿だなおめえは、すゞが鐵砲玉の代りになるかよ——ところで、その鈴を買ひに歩くのは男か女か」
さううまつて、さも自慢じまんさうにくびについてすゞらしてせました。とうさんのおうちまへ木曾街道きそかいだうつて、鐵道てつだう汽車きしやもない時分じぶんにはみんなそのみちあるいてとほりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こえよひすゞ森迄もりまでまゐりしがせめて父彦兵衞のほねなりとも拾はんと存じたづねたれども更に知れ申さず然る處へ各々方おの/\がたとほり掛り給ひ彦兵衞がうはさいたされしゆゑ不思議ふしぎに思ひすぐに鈴ヶ森を出て御後おあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひとなきにすゞからんとして、幣束へいそくかみゆらぐもさびし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いづこにかすゞしつつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
呼吸いきめて、なほすゞのやうなひとみこらせば、薄暗うすぐら行燈あんどうほかかべふすま天井てんじやうくらがりでないものはなく、ゆきくるめいたにはひとしほで、ほのかにしろいはわれとわが、おもかげほゝあたり
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くるまきしりすゞおと
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
驛路えきろうますゞおと、しやんと道筋みちすぢながら、時世ときよといひ、大晦日おほみそか道中だうちうひつそりとして、兩側りやうがはひさしならぶる商賈しやうこいへまきそろへて根占ねじめにしたる、門松かどまつつらねて、としかみおくるといふ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つまさせ、てふ、かたさせ、ときますなかに、くさですと、そこのやうなところに、つゆ白玉しらたまきざんでこしらへました、れう枝折戸しをりどぎんすゞに、芥子けしほどな水鷄くひなおとづれますやうに、ちん、ちん……とかすか
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)