)” の例文
また、小川おがわれていって、ボンをみずなかれてあらってやったりして、ボンをよろこばせるのをもたのしみの一つとしているのです。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこで信田しのだもりへ大ぜい家来けらいれて狐狩きつねがりにたのでした。けれども運悪うんわるく、一にちもりの中をまわっても一ぴき獲物えものもありません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それにくはへてをとこ周旋業しうせんげふも一かううまくはかないところから、一年後ねんごには夫婦別ふうふわかれとはなしがきまり、をとこはゝいもうととをれて関西くわんさいく。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
子家鴨こあひるはみんながれだって、そらたかくだんだんとのぼってくのを一心いっしんているうち、奇妙きみょう心持こころもちむねがいっぱいになってきました。
ボジャック氏とかいう男は、リバプールの港へ飛び込んだ人物であり、そしてアンのれであった。すると、アンの亭主ではないか。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、折角せっかくたのみとあってればなんとか便宜べんぎはかってげずばなるまい。かく母人ははびと瀑壺たきつぼのところへれてまいるがよかろう……。
だれおれ真似まねをするのは。とつて腹を立て、其男そのをとこ引摺ひきずり出してなぐつたところが、昨日きのふ自分のれて歩いた車夫しやふでございました。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
先生せんせいふた、翌日よくじつでした、使者しゝや手紙てがみもついまから生徒せいと數名すうめいれて遠足ゑんそくにゆくがきみ仲間なかまくははらんかといふ誘引さそひです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
これで巡査じゅんさはかれをれて行った。わたしたちはみんな台所のまん中にきながら立っていた。だれ一人ものを言う者はなかった。
「どうしたね勘次かんじうしてれてられてもいゝ心持こゝろもちはすまいね」といつた。藁草履わらざうり穿いた勘次かんじ爪先つまさきなみだがぽつりとちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昨日までクローム色に晴れ渡っていた西の方の地平線が、一面に紅茶色の土煙に蔽われていることが、夜の明けるにれてわかって来た。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そういう袖子そでことうさんはやもめで、中年ちゅうねんいにわかれたひとにあるように、おとこ一つでどうにかこうにか袖子そでこたちをおおきくしてきた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
留守るす細君さいくん——(評判ひやうばん賢婦人けんぷじんだから厚禮こうれいして)——御新造ごしんぞ子供こどもたちをれてからうじてなかをのがれたばかり、なんにもない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なれども仔馬はぐんぐんれて行かれまする。向うのかどまがろうとして、仔馬はいそいで後肢あとあしを一方あげて、はらはえたたきました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
西町奉行にしまちぶぎやう荒尾但馬守あらをたじまのかみが、江戸表えどおもてから着任ちやくにんするといふので、三十與力よりきは、非番ひばん同心どうしんれて、先例せんれいとほ守口もりぐちまで出迎でむかへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
若旦那わかだんなあわせて、たってのたのみだというからこそ、れててやったんじゃねえか、そいつを、自分じぶんからあわてちまってよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
お芳とそのれが来たときのことも考えているらしかった。やがて座を立っていったが、幕があいた時分にやっとかえってきた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
代助は、一つみせ別々べつ/\品物しなものを買つたあと、平岡とつて其所そこ敷居しきゐまたぎながら互に顔を見合せて笑つた事を記憶してゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かない⁉ それはつよい! けれどいまあぶないからいけません、追付おつつ成長おほきくなつたら、大佐たいさ叔父おぢさんもよろこんでれてつてくださるでせう。
農耕が発達するにれて、平地の生存に堪えられない是等これら狩猟を生命とする民衆の一団は、狩場であった森林の喪失と獲物の減少と相待あいまって
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そうしていて、なん容赦ようしゃもなく、このあわれな少女むすめを、砂漠さばく真中まんなかれてって、かなしみとなげきのそこしずめてしまいました。
「美代姉は、んだって言ったの、おど、行がねえごったら、くびたさ、縄つけでもせで行ぐどて。お美代姉、泣いでいだけ。」
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「おッと。逢うわけにはゆかねえんだ、外にはれも待っているから、今いったことだけを頼んだぜ」ヒラリと戸外おもてへさして帰ってしまった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我死せる時フランチェスコ來りて我をれんとせしに、黒きケルビーニのひとり彼に曰ひけるは彼を伴ふ勿れ、我に非をなす勿れ 一一二—一一四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わたしがこのくにうまれたものでありますならば、お宮仕みやづかへもいたしませうけれど、さうではございませんから、おれになることはかなひますまい」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
陽炎かげろうという字を用いる者もこれである。さてその陽炎の立っている草原とか堤とかいうようなところに、一匹の老狐は子狐をれて遊んでおる。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
戦争が済んでからの半年ばかりは、いろんな凱旋を祝するもよおしがあった。私は父にれられて瓶詰びんづめの酒や、折詰おりづめを貰ってかえることがよくあった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
そして新吉の手がけるほどぐいと引き立て、引きずるようにして中央ちゅうおうまくのかげへれて行ってしまいました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そうだろうとも、父さんが……、(そこで彼女は、ルピック氏のほうをそっと見る)——いやだっていうもんを無理にれて行こうとするからだね。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ここからずっと西の方の国の人らしいのですけれど、れに遅れたとのことで、一夜の宿をもとめられたのですが
栗に似たひしゃげた安南あんなん兵が劒銃をらねて並んでいた。その円いヘルメットの背後では、フランスの無線電信局が、火花を散らして青々と明滅した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
まれていでくるわかどむかうふより番頭新造ばんとうしんぞのおつまちてはなしながらるをれば、まがひも大黒屋だいこくや美登利みどりなれどもまこと頓馬とんまひつるごと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山が次第に深まるにれて秋はいよいよたけなわになる。われわれはしばしばくぬぎ林の中に這入はいって、一面に散り敷く落葉の上をかさかさ音を立てながら行った。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
九時二十分頃、呂昇が出て来て金屏風きんびょうぶの前の見台けんだい低頭ていとうした。びきは弟子の昇華しょうか。二人共時候にふさわしい白地に太い黒横縞くろよこしま段だらの肩衣かたぎぬを着て居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
のみならずその木の根元には子供をれたお婆あさんが二人曇天の大川を眺めながら、花見か何かにでも来ているように稲荷ずしを食べて話し合っていた。
本所両国 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すぐに病人びやうにんれてゆけつてひどことをぬかしやがる、此方こつちもついかつとして呶鳴どなつてちやつたんですが…………
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
道翹だうげうくもはらひつゝさきつて、りよ豐干ぶかんのゐた明家あきやれてつた。がもうかつたので、薄暗うすくら屋内をくない見𢌞みまはすに、がらんとしてなに一つい。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
れて、などの意で、「雁がねの声聞くなべに明日あすよりは春日かすがの山はもみぢめなむ」(巻十・二一九五)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
『それは友人いうじん水谷幻花みづたにげんくわといふのがります。此人このひとれられて、東京近郊とうきやうきんがう表面採集ひやうめんさいしうあるきました』
或る夜父はこの事を知りて、その次の日に娘には知らせず、馬をれ出して桑の木につり下げて殺したり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
持皈もちかへりてぬしたづねばやとかまにさげて二町ばかりあゆみしにしきりにおもくなり、かまの内にこゑありて我をいづくへゆくぞといふにきもかまをすてゝにげさりしに
けれども馬車屋の法外なのには何人だれも驚く。お父さんは瀑布よりも馬車賃の高いのに一驚を喫したと言った。尤も見世物には馬車なんかれて行かなくてもいい。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ついで英露仏等の諸国も来りて新条約の仲間入なかまいりしたれども、その目的は他に非ず、日本との交際こうさいあたかも当時の流行りゅうこうにして、ただその流行にれて条約を結びたるのみ。
それは乳色ちゝいろ夜靄よもやまち燈灯ともしびをほのぼのとさせるばかりにめた如何いかにも異郷いきやうあきらしいばんだつたが、ぼく消息通せうそくつうの一いうつて上海シヤンハイまちをさまよひあるいた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「うむ、どんな高いところへでもれていってやる。そのかわり、また下へおりようといっても、それはわしは知らない。それでよかったらわしと一しょにくるがいい」
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
今度隣りに地所を買って建前たてまえを急ぎ、このたび落成らくせいしたので、壁一切を請負うけおった関係上、黒門町の壁辰も、二、三の弟子をれて、きょうの棟上むねあげに顔を出している。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こちらへも随分立派な方々がお見えになりますけれど、お子様をおれになると、お母さまや、お女中さんは、お子様の機嫌を取る工夫ばかりなすつてらつしやいます。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
横笛今は稍〻やゝ浮世に慣れて、風にも露にも、餘所よそならぬ思ひ忍ばれ、墨染のゆふべの空に只〻一人、わたる雁の行衞ゆるまで見送りて、思はず太息といきく事も多かりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ふたりの子どもをつまのやつがれて三里塚りづかへいってくれると都合つごうがえいが、承知しょうちしないかな。独身どくしんになっていま一学問がくもんがやってみたいなあ。子どもはひとりだけだなあ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
『お前にも阿母おつかさんにも迷惑めいわくは掛け無い。わしの友人ともだちが来て知らぬれ出したとお言ひ。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)