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稍
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やゝ
ふりがな文庫
“
稍
(
やゝ
)” の例文
代助の
父
(
ちゝ
)
の場合は、一般に
比
(
くら
)
べると、
稍
(
やゝ
)
特殊的傾向を帯びる丈に複雑であつた。彼は維新前の武士に固有な道義本位の教育を受けた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
籠
(
かご
)
は
上
(
うへ
)
に、
棚
(
たな
)
の
丈
(
たけ
)
稍
(
やゝ
)
高
(
たか
)
ければ、
打仰
(
うちあふ
)
ぐやうにした、
眉
(
まゆ
)
の
優
(
やさ
)
しさ。
鬢
(
びん
)
の
毛
(
け
)
はひた/\と、
羽織
(
はおり
)
の
襟
(
えり
)
に
着
(
つ
)
きながら、
肩
(
かた
)
も
頸
(
うなじ
)
も
細
(
ほそ
)
かつた。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
稍
(
やゝ
)
焦り気味だったのが、今度始めて彼の手で嗅ぎ出した、どうやらものになる事件だったので、彼は充分意気込んでいるのだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
上に載する所は倉知本を底本とし、遠近新聞の謄本を以て対校した。二本には多少の出入がある。倉知本の自筆なることは
稍
(
やゝ
)
疑はしい。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
稍
(
やゝ
)
、うつむきこんで軸列器をがちゃがちゃ鳴らし、木枠に軸木を植えつけている
于立嶺
(
ユイリソン
)
は、おどおどして、あたふたと頭をさげた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
▼ もっと見る
稍
(
やゝ
)
老いた顔の肉は
太
(
いた
)
く落ちて、鋭い眼の光の中に無限の悲しい影を宿しながら、じつと今打ちに
蒐
(
かゝ
)
らうとした若者の顔を
睨
(
にら
)
んだ
形状
(
かたち
)
は
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
おつたは
稍
(
やゝ
)
褐色
(
ちやいろ
)
に
腿
(
さ
)
めた
毛繻子
(
けじゆす
)
の
洋傘
(
かうもり
)
を
肩
(
かた
)
に
打
(
ぶ
)
つ
掛
(
か
)
けた
儘
(
まゝ
)
其處
(
そこ
)
らに
零
(
こぼ
)
れた
蕎麥
(
そば
)
の
種子
(
み
)
を
蹂
(
ふ
)
まぬ
樣
(
やう
)
に
注意
(
ちうい
)
しつゝ
勘次
(
かんじ
)
の
横手
(
よこて
)
へ
立
(
た
)
ち
止
(
どま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
得ず然らば途中の御用心こそ
專要
(
せんえう
)
なれど心付るを平兵衞は
承知
(
しようち
)
せりと
暇
(
いとま
)
を
告
(
つげ
)
て立出れば早日は山の
端
(
は
)
に
傾
(
かた
)
ぶき
稍
(
やゝ
)
暮
(
くれ
)
なんとするに道を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
が、裏の物干臺の上に枝を張つてゐる隣家の庭の木蓮の堅い蕾は
稍
(
やゝ
)
色づきかけても、彼等の落着く家とては容易に見つかりさうもなかつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
或る人は
稍
(
やゝ
)
感動して見てゐる。或る人は又軽く微笑みながら見てゐる。兎に角この場の模様は一種の陰鬱な見ものであつた。
猿
(新字旧仮名)
/
ジュール・クラルテ
(著)
横穴
(
よこあな
)
の
中
(
なか
)
でも
格別
(
かくべつ
)
珍
(
めづ
)
らしい
構造
(
かうぞう
)
では
無
(
な
)
いが、
床
(
ゆか
)
と
溝
(
みぞ
)
とが
稍
(
やゝ
)
形式
(
けいしき
)
に
於
(
おい
)
て
異
(
こと
)
なつて
居
(
ゐ
)
る
位
(
くらゐ
)
で、
之
(
これ
)
を
信仰
(
しんかう
)
するに
至
(
いた
)
つては、
抱腹絶倒
(
はうふくぜつたう
)
せざるを
得
(
え
)
ない。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
其振動
(
そのしんどう
)
ぶりは、
最初
(
さいしよ
)
の
縱波
(
たてなみ
)
に
比
(
くら
)
べて
稍
(
やゝ
)
緩漫
(
かんまん
)
な
大搖
(
おほゆ
)
れであるがため、われ/\はこれをゆさ/\といふ
言葉
(
ことば
)
で
形容
(
けいよう
)
してゐる。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
三田の部屋の下の川岸を
住家
(
すみか
)
とする泥龜は、夏の間に相手を見つけて、何時の間にか
稍
(
やゝ
)
形の小さいのと二疋になつてゐた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
日蓮上人、
為兼卿
(
ためかねきやう
)
、遊女
初君
(
はつきみ
)
等
(
とう
)
の
古跡
(
こせき
)
もたづねばやとおもひしに、越後に入りてのち
気運
(
きうん
)
順
(
じゆん
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
年
(
とし
)
稍
(
やゝ
)
倹
(
けん
)
して
穀
(
こく
)
の
価
(
ねだん
)
日々に
躍
(
あがり
)
、
人気
(
じんき
)
穏
(
おだやか
)
ならず。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
紳士が
稍
(
やゝ
)
反身
(
そりみ
)
になつて
卓子
(
テーブル
)
の前の椅子に腰をおろすと、鵞鳥のやうに白い
上
(
うは
)
つ
張
(
ぱり
)
を着た給仕人がやつて来て註文を聞いた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
屋臺店を
稍
(
やゝ
)
大きくした程の
停車場
(
ステーシヨン
)
を通り拔けると、小池は始めて落ちついた心持ちになつたらしく、
燐寸
(
まつち
)
を
擦
(
す
)
つてゆツたりと
紙卷煙草
(
かみまきたばこ
)
を吹かした。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
そこに、房一は、酒のために紅くなつてはゐるが、そして、まだ額のあたりに筋張つた色が立つてはゐるが、
稍
(
やゝ
)
前こゞみになつた半白の頭を見た。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
泡立
(
あはだ
)
つ
波
(
なみ
)
、
逆卷
(
さかま
)
く
潮
(
うしほ
)
、
一時
(
いちじ
)
は
狂瀾
(
きやうらん
)
千尋
(
せんじん
)
の
底
(
そこ
)
に
卷込
(
まきこ
)
まれたが、
稍
(
やゝ
)
暫
(
しばらく
)
して
再
(
ふたゝ
)
び
海面
(
かいめん
)
に
浮上
(
うかびあが
)
つた
時
(
とき
)
は
黒暗々
(
こくあん/\
)
たる
波上
(
はじやう
)
には六千四百
噸
(
とん
)
の
弦月丸
(
げんげつまる
)
は
影
(
かげ
)
も
形
(
かたち
)
もなく
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
自動車の窓に吹き入つて来る風は、それでも
稍
(
やゝ
)
涼しかつたが、空には午後からの暑気を思はせるやうな白い雲が、彼方此方にムク/\と湧き出してゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
坊つちやんの蚊帳の中にバツタを運んだ腕白共も少くともこの後に聳ゆる城山の欝葱を
日夕
(
につせき
)
、仰いだ事を今でも想像し得るを幸として
稍
(
やゝ
)
好事
(
かうず
)
の心を慰めた。
坊つちやん「遺蹟めぐり」
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
晩餐を
旅館
(
オテル
)
で済ました
後
(
のち
)
ピニヨレ夫人の門から馬車に乗つたのは夜の八時半であつた。ツウルの
大石橋
(
せきけう
)
を渡つて岸に沿ふて
稍
(
やゝ
)
久しく上流の方へ駆けさせた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
静坐
稍
(
やゝ
)
久し、無言の妙漸く熟す。暗寂の好味
将
(
まさ
)
に佳境に進まんとする時、破笠弊衣の一
老叟
(
らうそう
)
わが前に顕はれぬ。われ
依
(
な
)
ほ無言なり。彼も唇を結びて物言はず。
松島に於て芭蕉翁を読む
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
昼過
(
ひるすぎ
)
から
少
(
すこ
)
し
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
生温
(
なまあたゝか
)
い
風
(
かぜ
)
が
稍
(
やゝ
)
騒
(
さわ
)
いで、
横
(
よこ
)
になつて
見
(
み
)
てゐると、
何処
(
どこ
)
かの
庭
(
には
)
の
桜
(
さくら
)
が、
早
(
は
)
や
霏々
(
ひら/\
)
と
散
(
ち
)
つて、
手洗鉢
(
てあらひばち
)
の
周
(
まはり
)
の、つは
蕗
(
ぶき
)
の
葉
(
は
)
の
上
(
うへ
)
まで
舞
(
ま
)
つて
来
(
く
)
る。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
おしやれな
娘兎
(
むすめうさぎ
)
のこととて、でかけるまでには
谿川
(
たにがは
)
へ
下
(
を
)
りて
顏
(
かほ
)
をながめたり、からだ
中
(
ぢう
)
の
毛
(
け
)
を一
本
(
ぽん
)
一
本
(
ぽん
)
、
綺麗
(
きれい
)
に
草
(
くさ
)
で
撫
(
な
)
でつけたり、
稍
(
やゝ
)
、
半日
(
はんにち
)
もかかりました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
目読
(
もくどく
)
の興を以て耳聞の
楽
(
たのしみ
)
に換ゆ、然り而して親しく談話を聞くと坐ら筆記を読むと、
自
(
おのずか
)
ら写真を見ると実物に対するの違い有れば
稍
(
やゝ
)
隔靴掻痒
(
かっかそうよう
)
の
憾
(
かん
)
無きにあらず
松の操美人の生埋:01 序
(新字新仮名)
/
宇田川文海
(著)
「
遊
(
あそ
)
んでツてよ。」と
周囲
(
しうゐ
)
の
人込
(
ひとごみ
)
を
憚
(
はゞか
)
り、
道子
(
みちこ
)
は
男
(
をとこ
)
の
腕
(
うで
)
をシヤツの
袖
(
そで
)
と一しよに
引張
(
ひつぱ
)
り、
欄干
(
らんかん
)
から
車道
(
しやだう
)
の
稍
(
やゝ
)
薄暗
(
うすぐら
)
い
方
(
はう
)
へと
歩
(
あゆ
)
みながら、すつかり
甘
(
あま
)
えた
調子
(
てうし
)
になり
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
因
(
そこ
)
で、
今迄
(
いまゝで
)
は
毎月
(
まいげつ
)
三銭
(
さんせん
)
かの
会費
(
くわいひ
)
であつたのが、
俄
(
にはか
)
に十
銭
(
せん
)
と
引上
(
ひきあ
)
げて、四六
版
(
ばん
)
三十二
頁
(
ページ
)
許
(
ばかり
)
の
雑誌
(
ざつし
)
を
拵
(
こしら
)
へる
計画
(
けいくわく
)
で、
猶
(
なほ
)
広
(
ひろ
)
く社員を
募集
(
ぼしう
)
したところ、
稍
(
やゝ
)
百
名
(
めい
)
許
(
ばかり
)
を
得
(
え
)
たのでした
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
昨夜三時頃サン・ロツキユウス区の住民は
稍
(
やゝ
)
久しく連続して聞えたる恐しき叫声に夢を破られたり。その叫声は病院横町の一家屋の第四層にて発したるものゝ如くなりき。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
己は其れ等の書物を見たら、藝術に就いての
稍
(
やゝ
)
明瞭な概念が得られるだろうと云う希望を以て、
片
(
かた
)
っ
端
(
ぱし
)
から一生懸命に
耽読
(
たんどく
)
した。最初に取り付いたのはハムレットであった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
此処の
爺
(
じゝい
)
婆
(
ばゝあ
)
に厄介になって居りますると、先の又九郎夫婦が誠に親切に二人の看病をして呉れ、その親切が有難いと思って
稍
(
やゝ
)
半年も此処に居りまして、
漸
(
ようや
)
く二人の病気が
癒
(
なお
)
ると
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「こゝへかう持つてくより外仕方がないな。」と、押入の左手の、半間幅の中塗の壁へあてがつて、
恰好
(
かつかう
)
を見てお出でになる。額は
稍
(
やゝ
)
太目の赤い絹の打紐で吊すやうになつてゐる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
そして彼は英会話が完全に自由でなく、それを顧慮して話すフロラの家族の者とだけ
稍
(
やゝ
)
自由に話し得る程度であつたから——英語を持つて様々な日本語の解釈をするのは難儀であつた。
鸚鵡のゐる部屋
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
行跡
(
ぎようせき
)
の
稍
(
やゝ
)
正
(
たゞ
)
しと
称
(
しよう
)
せらるゝ者も
猶
(
なほ
)
親
(
おや
)
に
秘
(
ひ
)
し夫に
秘
(
ひ
)
して
貯金帳
(
ちよきんてう
)
を
所持
(
しよじ
)
せん
為
(
ため
)
に
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
当の良秀は
稍
(
やゝ
)
離れて、丁度御縁の真向に、
跪
(
ひざまづ
)
いて居りましたが、これは何時もの香染めらしい狩衣に
萎
(
な
)
えた揉烏帽子を頂いて、星空の重みに圧されたかと思ふ位、何時もよりは猶小さく
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
日本は古への
倭奴
(
わど
)
なり。(中略)咸享元年使を遣はして、高麗を平ぐるを賀す。
後
(
のち
)
稍
(
やゝ
)
夏音
(
かおん
)
を習ひて倭の名を
悪
(
にく
)
み、
更
(
あらた
)
めて日本と号す。使者自ら言ふ。国日出づる所に近きを以て名と為すと。
国号の由来
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
勿論
輓今
(
ばんきん
)
稍
(
やゝ
)
我人心が少しく内に向ひ、国粋保存の説が歓迎さるゝの現象は見ゆれど、是唯我人民が小児然たる摸倣時代より進んで批評的の時代に到着したるの吉兆として見るべきものにして
英雄論:明治廿三年十一月十日静岡劇塲若竹座に於て演説草稿
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
天は遠く濁つて、低いところに集る雲の群ばかり
稍
(
やゝ
)
仄白
(
ほのじろ
)
く、星は隠れて見えない中にも唯一つ姿を
顕
(
あらは
)
したのがあつた。往来に添ふ家々はもう戸を閉めた。ところ/″\灯は窓から
泄
(
も
)
れて居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
始
(
はじめ
)
には越後の
諸勝
(
しよしよう
)
を
尽
(
つく
)
さんと思ひしが、
越地
(
ゑつち
)
に入し
後
(
のち
)
、
年
(
とし
)
稍
(
やゝ
)
侵
(
しん
)
して
穀価
(
こくか
)
貴踊
(
きよう
)
し人心
穏
(
おだやか
)
ならず、ゆゑに越地を
践
(
ふむ
)
こと
僅
(
わづか
)
に十が一なり。しかれども
旅中
(
りよちゆう
)
に於て
耳目
(
じもく
)
を
新
(
あらた
)
にせし事を
挙
(
あげ
)
て此書に
増修
(
そうしう
)
す。
北越雪譜:05 北越雪譜二編凡例
(新字旧仮名)
/
山東京山
(著)
チモフエイは
稍
(
やゝ
)
耳を
欹
(
そばだ
)
てた気味で、愉快げに
齅煙草
(
かぎたばこ
)
を鼻に啜り込んだ。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
曇日
(
くもりび
)
なので
蝙蝠
(
かほもり
)
は
窄
(
すぼ
)
めたまゝ
手
(
て
)
にしてゐる
故
(
せい
)
か、
稍
(
やゝ
)
小さい
色白
(
いろじろ
)
の顏は、ドンヨリした
日光
(
ひざし
)
の下に、まるで
浮出
(
うきだ
)
したやうに
際立
(
きわだ
)
ってハツキリしてゐる。頭はアツサリした
束髪
(
そくはつ
)
に
白
(
しろ
)
いリボンの
淡白
(
たんぱく
)
な
好
(
このみ
)
。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
己は初の間此人のゐるのを
稍
(
やゝ
)
不快に感じた。それは此人が君の親友になつてゐて、己が独りで占めてゐるやうに思つた地位を奪つたらしく見えるからであつた。併し己はこの最初の感情に打勝つた。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
稍
(
やゝ
)
ありて又問掛け
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
照
(
てら
)
し
行列
(
ぎやうれつ
)
正
(
たゞ
)
しく出仕有に程なく夜も
明渡
(
あけわた
)
り役人方
揃
(
そろ
)
はれしかば
稍
(
やゝ
)
有
(
あつ
)
て嘉川主税之助一件の者共
呼込
(
よびこみ
)
になり武家の分は玄關にて大小を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「世路風塵不耐多。池亭相値聴高歌。無端破得胸中悪。漫把觥船巻酒波。」
枳園立之
(
きゑんりつし
)
は此年二十二歳、
稍
(
やゝ
)
頭角を
露
(
あらは
)
した時であつただらう。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
日
(
ひ
)
のまだ
落
(
お
)
ちない
内
(
うち
)
から
庭
(
には
)
を
覗
(
のぞ
)
いて
居
(
ゐ
)
た
月
(
つき
)
が
白
(
しろ
)
く、
軈
(
やが
)
てそれが
稍
(
やゝ
)
黄色味
(
きいろみ
)
を
帶
(
お
)
びて
來
(
き
)
て
庭
(
には
)
の
茂
(
しげ
)
つた
柿
(
かき
)
の
木
(
き
)
や
栗
(
くり
)
の
木
(
き
)
にほつかりと
陰翳
(
かげ
)
を
投
(
な
)
げた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
一夕
(
いつせき
)
、松川の
誕辰
(
たんしん
)
なりとて奥座敷に予を招き、
杯盤
(
はいばん
)
を排し
酒肴
(
しゆかう
)
を
薦
(
すゝ
)
む、
献酬
(
けんしう
)
数回
(
すくわい
)
予は酒といふ
大胆者
(
だいたんもの
)
に、幾分の力を得て
積日
(
せきじつ
)
の屈託
稍
(
やゝ
)
散じぬ。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
友も
稍
(
やゝ
)
酔つた様子で、
漸
(
やうや
)
く
戸外
(
おもて
)
の
闇
(
くら
)
くなつて行くのを見送つて居たが、不意に、かう
訊
(
たづ
)
ねられて、われに返つたといふ風で
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
日蓮上人、
為兼卿
(
ためかねきやう
)
、遊女
初君
(
はつきみ
)
等
(
とう
)
の
古跡
(
こせき
)
もたづねばやとおもひしに、越後に入りてのち
気運
(
きうん
)
順
(
じゆん
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
年
(
とし
)
稍
(
やゝ
)
倹
(
けん
)
して
穀
(
こく
)
の
価
(
ねだん
)
日々に
躍
(
あがり
)
、
人気
(
じんき
)
穏
(
おだやか
)
ならず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
親爺
(
おやぢ
)
は戦争に
出
(
で
)
たのを頗る自慢にする。
稍
(
やゝ
)
もすると、御
前
(
まへ
)
抔はまだ戦争をした事がないから、度胸が
据
(
すわ
)
らなくつて
不可
(
いか
)
んと一概にけなして仕舞ふ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
苦味走
(
にがみばし
)
つて男らしかつた。たゞ何か大切なものが欠けてゐた。彼は身近かに、皆から
稍
(
やゝ
)
はなれて手持無沙汰にぽつねんと坐つてゐる房一を見つけた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
稍
漢検1級
部首:⽲
12画
“稍”を含む語句
稍々
稍〻
稍深
稍霎時
稍難航
稍覚暖
稍羞
稍緒
稍疲
稍然
稍明
稍後
稍傲
稍仰向
稍事
稍久
稍与二月気候相似
稍〻物