どう)” の例文
さいわい、わたしたちは、みんなよくかお人間にんげんているばかりでなく、どうからうえ人間にんげんそのままなのであるから——さかな獣物けもの世界せかいでさえ
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
革のこなし方が実に見事で、一朝にして生れた仕事でないのを想わせます。面頬めんぼおどう籠手こてもしばしば見とれるほどの技を示します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
艇から外へ出る出入口は、このカモシカ号のどうのまん中あたり、それは小さい気密室が三つ、つづいていて、三つのドアがあった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうの方からしずかに女のうしろへ立った父親は、いきなりっている女をうしろから突きとばした。女は艪を持ったなりに海の中へ落ちた。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
味方を見た朝月は、いきなり気絶きぜつした清兵衛のよろいどうをくわえ、明兵みんぺいをけちらして、まっしぐらに、しろの門へとかけこんでいった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
面附つらつきこそはれよりもよけれ、脛附すねつきが十人並にんなみ以上いじゃうぢゃ、それからあしどうやはふがほどいが、ほかには、ま、るゐい。
ひよいと飛上とびあがるのもあれば、ぐる/\と歩行あるまはるのもあるし、どうばして矢間やざまからて、天守てんしゆむね鯱立しやちほこだちにるのもえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
戸外そとは大変な人集ひとだかりだ。もっとも、みんな火事と間ちがえているので、寝巻のまま飛び出して来たやつが、寒そうにどうぶるいしながら
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それかと云って、厚着あつぎをして不形恰ぶかっこうに着ぶくれたどうの上に青い小さな顔がって居る此のへんな様子で人の集まる処へ出掛でかける気もしない。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
この牛はほっそりしたすねをして、赤いどうに茶色の耳とほおをして、目は黒くふちをとって、口の回りに白いがはいっていた。
とたんに、きはなたれた無反むぞりの戒刀かいとう、横にないでただ一せんの光が、松の枝にブラさがった大九郎のどうを通りぬけてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんだか、ピカピカ光るしんちゅうのふたと、しんちゅうのどうのついている、大きな鉄のストーブの前にすわっているような気がしました。
船は籧篨あじろを編んで日除ひよけ雨除あまよけというようなものをどうにしつらってある。何やら火爐こんろだの槃碟さらだのの家具も少し見えている。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
エレクトリークは歩きながら、ひっきりなしに頭をりもぎったり、どうぶるいをしたり、鼻を鳴らしたり、いなないたりした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
つまはおみつつて、今歳ことし二十になる。なにかとふものゝ、綺緻きりやうまづ不足ふそくのないはうで、からだ発育はついく申分まをしぶんなく、どうや四釣合つりあひほとん理想りさうちかい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さて、この湖には、足だけ水の中に入れて、頭とどうを水のおもてにつきだしたがっているものがあります。それはアシです。
切られどうさへ見えぬ此形容かたち何卒なにとぞ御情に御とむらひ下され度と涙ながらに頼みければ出家は點頭うなづき其は心やすき事かな早々さう/\生死のまよひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぼくは、どうが長くて、上体が重く、いつも起上りレカバリーが、おくれて、しかられるのですが、あの数日は、すばらしい好調でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
が、このお坊さんは十日とたたぬうちに死んでしまった。いや死んだのではなく頭だけのこしてどうや手足はほねばかりになってころされていたのであった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
こういうと、ヨハネスは子どもたちの首をとって、どうの上にのせ、傷口きずぐちに血をぬりつけました。と、みるみるうちに、子どもたちは生きかえりました。
すずどうに水を盛って雁首がんくびかられる煙がこの水の中を通って吸口まで登ってくる仕掛なのだから、慣れないうちは水を吸い上げて口中へ入れる恐れがある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
片肱かたひじふなべりに背をどうの横木に寄せかけたまま、簾越すだれごしにただぼんやり遠い川筋の景色にのみ目を移していた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お前さんのどうぱらを中心に、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、裾野中探して歩かなけりゃあならねえ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
不図見ると、あっ此処ここにも、はりの上に頭は見えぬが、大きなものがどうからした波うって居る。人間が居ないので、蛇君等が処得貌に我家と住みなして居るのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、この時の数馬の竹刀は心もち先があがって居りました。多門はその竹刀の下をどうへ打ちこもうと致しました。それからかれこれ十ごうばかりは互にしのぎけずりました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女等はこの地方ちはうの山地の出生で、この日はじめて海に這入はいるのだが、黒色のどう人魚にんぎよで無からうかと幻覺を起させるほど、ここの風景に調和した慣海性があつた。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
船のどうにひろげたふとんが見られ、そこにだれかがねかされているとさっした。しかし、またたくまに船は遠ざかり、乗りこんでいる人の判別はんべつもつかなかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
雜然ざつぜんたるこゑなみごとしづんでおこつた。太鼓たいこばちつよかるち、さらあかつたどうをそつとつて、さうしてまただらり/\とつよかるつことを反覆はんぷくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
友達殿はあくまで真面目くさって、それからが極意ごくいなのだ、そうして立合っているうちに、先方が必ず打ち込んで来る。めんとか、籠手こてとか、どうとかいって、打ち込んで来る。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして義家よしいえがつい無造作むぞうさんだ短刀たんとうは、りっぱにへびくびどうはなしていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、ひどい厭味いやみつたときは、與力よりきどもが冷汗ひやあせ仕立したておろしの襦袢じゆばんどうらした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
どうの側に立っているこれもスマートな風体の男が装填発火の作業をする役割である。
雑記(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ひれは神女ののようにどうを包んでたゆたい、体色はり立てのようなあざやかな五彩ごさいよそお
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
近くの壁画を見れば、やまいぬわに青鷺あおさぎなどの奇怪きかいな動物の頭をつけた神々の憂鬱ゆううつな行列である。顔もどうもないおおきなウチャトが一つ、細長い足と手とをやして、その行列に加わっている。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
買い求めると番頭に見咎みとがめられぬようにさおどうとを別々に天井裏てんじょううら寝部屋ねべやへ持ち込み
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
むちは持たず、せをしたように頭を低めて、馬の背中にぴたりと体をつけたまま、手綱たづなをしゃくっている騎手の服の不気味な黒と馬のどうにつけた数字の1がぱっと観衆のにはいり
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
此處こゝ内儀ないぎまへにうかびたるかたちは、横巾よこはゞひろくたけつまりしかほに、目鼻めはなだちはまづくもあるまじけれど、びんうすくして首筋くびすぢくつきりとせず、どうよりはあしながをんなとおぼゆると
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手のさき天窓あたまさきそろへ、どうめて閑雅しとやか辞儀じぎをして、かね/″\おまねきにあづかりました半田屋はんだや長兵衛ちやうべゑまうす者で、いたつて未熟みじゆくもの、此後こののちともお見知みしかれて御懇意ごこんいに願ひますとふと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて刀劍とうけんるくらゐでありますから、甲胄かつちゆうもまたはかなかからたくさんるのです。これはたいていてつつくつたものでありまして、のち時代じだいよろひ劍道けんどうのおどうたようなものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ほこえたような沢山たくさんきば……どう周囲まわりは二しゃくくらい身長みのたけは三げんあまり……そうったおおきな、神々こうごうしいお姿すがたが、どっと飛沫しぶき全身ぜんしんびつつ、いかにも悠々ゆうゆうたる態度たいどで、巌角いわかどつたわって
(くひありてつゞのすゑをもくゝしおく)此つゞの作りやうは竹を簀にあみてすゑをばくゝし、鮏の入るべき口の方には竹のとがりを作りかけてあごをなし、地につく方はひらめ上は丸くし、どうには彭張ふくらみあり
平次の調子の物々しさに、八五郎もツイどうぶるひが出るのでした。
岸にあがった富士男はどうぶるいをすると大きなくしゃみをした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
或樹あるきは細長いどうに真赤な海老えびかふを着けて居る。
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
山のようなどうがかくれ
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しか今度こんどのは半分はんぶん引切ひききつてあるどうからばかりのむしぢや、切口きりくちあをみびてそれ黄色きいろしるながれてぴくぴくとうごいたわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
工場が引けてしまうと、あの広い内部が、がらんどうだ。幸い女も、工場の案内を知っていた。というのが、その女も工場に働いていたのだ。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とんでもない大声でかごえ船夫ふなこの猛るのや、くるくるとうごいて廻る影が四国屋の帆印をたたんだ二百石船のどうに躍ってみえた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうでは父親が一枚の蒲団ふとんにくるまってともの方をまくらにして眠っていた。忰はいきなり父親の肩に手をかけてり動かした。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)