おとうと)” の例文
ちょうどひるごろでありました。おとうとが、そとから、だれかともだちに、「うみぼたる」だといって、一ぴきおおきなほたるをもらってきました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕餉ゆうげどきに帰りをわすれてあそんでいるおとうとを、父や母がおこらぬうちにとハラハラしてさがすあねのような愛が、彼女の眼にこもっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つけてやるよ。しろこうとつけてやるよ。……しろ公や、こっちへこいよ。おれのでしにしてやるよ。でしでいやなら、おとうとにしてやるよ。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「わたしのおとうとが天に上つて來られるわけは立派な心で來るのではありますまい。わたしの國を奪おうと思つておられるのかも知れない」
このかみさまたちの中に、秋山あきやま下氷男したびおとこ春山はるやま霞男かすみおとこという兄弟きょうだいかみさまがありました。ある日あに秋山あきやま下氷男したびおとこは、おとうと霞男かすみおとこかって
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
食堂から寝室しんしつおごそかにやっていく時には、元気げんきのいい行進曲マーチそうした。時によっては、二人ふたりおとうとといっしょに行列ぎょうれつをつくった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
小六ころくから坂井さかゐおとうと、それから滿洲まんしう蒙古もうこ出京しゆつきやう安井やすゐ、——談話だんわあと辿たどれば辿たどほど偶然ぐうぜんはあまりにはなはだしかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それにわたくしあやふければ、おとうとたすけてくれます、わたくしもまたおとうと一人ひとりころしません。それ二人ふたりとも大丈夫だいぢやうぶおもひますから。すこしもこはくはござらぬ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わしのをひの、おとうとの! おゝ、御領主とのさま! おゝ、をひよ! わがつま! おゝ、大事だいじの/\、親族うから血汐ちしほながされてゐる! 公平こうへい御領主ごりゃうしゅさま
それは、アフリカのまほう使のおとうとも、やっぱりまほうを使っていたからです。そして、その弟は、兄さんよりももっと悪者だったからであります。
となりのてつさんは、とうさんのおうち友伯父ともをぢさんとおなどしぐらゐで、一緒いつしよあそぶにもとうさんのはうがいくらかおとうとのやうにおもはれるところがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
兄が提灯ちょうちんつけて見る眼を働かすれば、おとうとが聞く耳を立てゝ虫の音を指し、不具二人寄って一人前の虫採むしとりをしたものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
店には兄弟子あにでしおとうと弟子と幾人かの弟子がいますが、その人々はただ腕次第、勉強次第でコツコツとやっている。
もさゝず濡萎ぬれしよぼたれてはだしとは其の意を得ずと思ひしに跡にてきけおとうとなる十兵衞とやら云者が札の辻にて人手にかゝり其あかつきに長庵は病氣なりとて十兵衞が出立するを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
探しあぐんだ君尾という娘、ところもあろうに根岸住居、あねごの父上紀州様、そのお方のおとうとご様、副将軍のお家柄、水戸中納言様の下屋敷……だろうとあっしは思うのですがね。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こぼれるほどにつたきやく行商ぎやうしやう町人ちやうにんがへりの百姓ひやくしやう乳呑兒ちのみごかゝへた町家ちやうか女房にようばうをさなおとうといた町娘まちむすめなぞで、一かゝつたふねが、おほきな武士ぶしめに後戻あともどりさせられたのを
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
宮「困りますねえ何うも、じゃア判然はっきりと云うよ、えへん、おとうと無事で行って参れ」
... モツとねきへ寄せんかい、邪魔になつて洗やへんわい』『ねきへ寄つたら洗ふ処有らへん哩』『どだい、こんなつこい背中へ二人かかるんのが阿呆やい、足へ廻れ/\』でおとうと弟子が脚へ廻つた。
相撲の稽古 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
かれは、みづかまもることにおごそかなもとめの孤壘こるゐあねたいするおとうとのやうなしたしさをみせてちかづいてつた。かれ彼女かのぢよよりも二つばかり年下とししたなのであつた。いつのにかぱつと二人ふたり關係くわんけいうはさにのぼつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
くちひげのあるおとうと
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうだ、これをおとうとせてやろう。そして、りこうなはちが、どうしてつくり、また子供こどもそだてるのに苦心くしんするかをおしえてやろう。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
早口はやくちにやっているうちに、したがもつれて、かんしゃくばかりこってきました。そのおとうとほうはどこかへげて行ってしまいました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
其時そのとき宗助そうすけ何時いつもの調子てうしで、むしおだやかに、おとうとこといてゐたが、いてしまつたあとでも、べつこれといふ眼立めだつた批評ひひやうくはへなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
で、おとうと弟子の小沢松五郎をれ(上野戦争のはなしのくだりにて、半さんの家へ私と一緒に参った小僧)
隙間風すきまかぜがきらいで、どこででもさむそうに帽子ぼうしをかぶっていたが、その帽子をぬぐと、円錐形えんすいけいの赤い小さな禿頭はげあたまがあらわれた。クリストフとおとうとたちはそれを面白おもしろがった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
見て思ひも寄ず十兩に有付ありつく事と兩手をくんで樣々と思案しあんをしやゝしばらく有て思出しけん申樣澤の井殿の宿やどの村名は私しのおとうとの名の字を上へ付候樣におぼえ申候と云に其方のおとうとの名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「えゝ私は、晩寝郡おそねごおり早起村はやおきむら濡垂ぬれたら拭兵衛ふくべえと申しますが、その、私のおとうと発狂はっきょういたしまして……」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
祖父おぢいさん、わたしはやがさめました。そのかはり何時いつまでもました。おとうとおそがさめました。そのかはりわたしよりさききました。私達わたしたちいまそのことでつてるところです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もつとそれまでにも、小當こあたりにあたることは、板屋いたやはし團栗どんぐりことならずで、蜘蛛くもごと袖褄そでつまいてたのを、やなぎかぜけつながしつ、擦拔すりぬけるせてところ義理ぎりあるおとうと内氣うちきをんな
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よい骨柄こつがらの若者。これが、自分のおとうとだったか。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶん真心まごころがいつか、にいさんにわかるときがあろう。」と、おとうとは、一粒ひとつぶのしいの裏庭うらにわめて、どこへとなくりました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとうとかみたいそうよろこんで、おかあさんのこしらえてくださったふじづるの着物きものくつからだにつけて、ふじづるの弓矢ゆみやちました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
御米およねはうから、すゝんでおとうと讒訴ざんそでもするやうだと、しかるにしろ、なぐさめるにしろ、かへつて始末しまついとかんがへるときもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おとうとがあんなことをつて威張ゐばつてます。そのくせ、わたしはやのさめた時分じぶんには、おとうとはまだなんにもらないでグウ/″\グウ/″\とねむつてました。わたしにはとりいたのをつてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
對向さしむかひに、一寸ちよいとせなひねつた、片手かたて敷辷しきすべらした座蒲團ざぶとんはしいて、すらりと半身はんしんつま内掻うちがい土間どまそろへた、二十はたちえた、白足袋しろたびで、これも勝色かついろいコートを姿すがたよくたが、おとうとよこにして
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いま、おまえのいったことがよくわかった。おれも自分じぶんちからはたらこった。どうかおれたすけてくれ。」と、おとうとたのみました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正直しょうじきおとうとうたぐっていたことがわかると、にいさんはたいそう後悔こうかいして、んだおとうとからだをしっかりきしめて、なみだながしながらいていました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
梅子は漸やく手に余るおとうとを取って抑えた様な気がしたので、後が大変云いやすかった。——
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と——あのおとうとる、床几しやうぎすみこし投下なげおろすと
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また、つぎのいもうとはなになり、おとうと小鳥ことりになったことをおうさまにらせますと、それをも魔法使まほうつかいをとおして、きたいとおもわれました。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういわれると、ちょんさんはくやしがって、けずにおとうと名前なまえんで、からかいかえしてやろうとしましたが
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「まだおとうとがいます。これは銀行の——まあ小使に少し毛の生えた位な所なんでしょう」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みつは、いつもおとうと元気げんきでいるのをうれしくおもいました。そして、たえず希望きぼうにもえているのをなんとなくいじらしくおもいました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとうとほうたいそう気立きだてがやさしくて、にいさんおもいでしたから、山へっておいもってると、きっといちばんおいしそうなところを、にいさんにべさせて
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やむを得ずこれも腰の物を抜いて立向ったが、相手は平生から極めて評判のわるい乱暴ものだけあって、酩酊めいていしているにもかかわらず、強かった。黙っていれば兄の方が負ける。そこでおとうとも刀を抜いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おとうとがやさしくて、けっしてあにたいして手向てむかいなどをしたことがありません。いつもあににいじめられて、しくしくいていました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「がんこ」というのはおいものしっぽということです。おとうとは「おいものしっぽをたべている。」ということを、「がんくう。がんくう。」といって、いたのでした。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あわれな母親ははおやは、二人ふたり子供こどもまわしていいました。そこで母親ははおやなかにして、あにひだりに、おとうと彼女かのじょみぎこしをかけたのであります。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
兄弟きょうだいはだんだん大きくなって、よくけんかをしました。するとおとうとはにいさんにさんざんわるいいたずらをしては、げてって、とおくのほうでまだからかっていました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
にいさん、もっと、どこかへいってみようじゃありませんか。さとほうへゆかなければ、いいでしょう……。」と、おとうとがいいました。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)