)” の例文
旧字:
この不自由ふじゆうな、みにくい、矛盾むじゅん焦燥しょうそう欠乏けつぼう腹立はらだたしさの、現実げんじつ生活せいかつから、解放かいほうされるは、そのときであるようながしたのです。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
平生へいぜいからあざけるものはあざけるが、心優こゝろやさしい衣絵きぬゑさんは、それでもどくがつて、存分ぞんぶんかしてむやうにとつた厚情こゝろざしなのであつた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしていきなりおひめさまにとびかかって、ただ一口ひとくちべようとしました。おひめさまはびっくりして、とおくなってしまいました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これから釣堀つりぼりへまゐりますと、男女なんによ二人連ふたりづれゆゑ先方せんぱうでもかして小間こまとほして、しゞみのおつけ、おいも煑転につころがしで一猪口いつちよこ出ました。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そらこが狼火のろし……そして最後さいご武運ぶうんいよいよきてのあの落城らくじょう……四百年後ねんご今日こんにちおもしてみるだけでも滅入めいるようにかんじます。
小鳥ことりつたこともないという、ごうつくばりの因業いんごうおやじが、なぜ金魚きんぎょになつたか、そのてんにも問題もんだいがないことはない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
にいさんはいつもむつかしいことをいうので、たいていぼくにはよくわからないのだが、この言葉ことば半分はんぶんぐらいはわかるようながした。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「いや、むほどのことでもなかろうが、なんわかおんな急病きゅうびょうでの。ちっとばかり、あさから世間せけんくらくなったようながするのさ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しかし段々だんだん落着おちつくにしたがって、さすがにミハイル、アウエリヤヌイチにたいしてはどくで、さだめし恥入はじいっていることだろうとおもえば。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それすこぎて、ポカ/\するかぜが、髯面ひげつらころとなると、もうおもく、あたまがボーツとして、ひた気焔きえんあがらなくなつてしまふ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
するとだんだんがふさいで、病気びょうきになりました。それから八つきったときに、おんなおっとところって、きながら、こういました。
ところがすこつたとき、嘉十かじふはさつきのやすんだところに、手拭てぬぐひわすれてたのにがつきましたので、いそいでまたかへしました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かぞどしの二つにしかならないおとこであるが、あのきかない光子みつこさんにくらべたら、これはまたなんというおとなしいものだろう。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「頭の濡れないのは尼さんばかりだからさ。それに、松風村雨の話を聴いていたから、あの尼さんの伊勢訛いせなまりで、フとが付いたんだ」
もうその時分には今松も、よほど上方というところに、上方の寄席のなかのというものに馴らされてきていた、よんどころなく。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
すぐ……わかる……わかるつもりじゃ。なぜならば、つい先頃、大坂表で会うているのじゃ。また、いつものままが出て、わしを
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あっちはほんのしるしでいいよ。姉ちゃんいつけていつもいろんなもんやっているんだもの。——この蓬、饀はいってか?」
三月の第四日曜 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
きみ、ちょっとたまえ。きみはずいぶんっともないね。だから僕達ぼくたちきみっちまったよ。きみ僕達ぼくたち一緒いっしょわたどりにならないかい。
そしてゴットフリートが、「そんなにまずくはない……にいった……」とただそれだけでもいってくれると、うれしくてたまらなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
此地火一に陰火いんくわといふ。かの如法寺村によほふじむらの陰火も微風すこしのかぜいづるに発燭つけぎの火をかざせば風気ふうきおうじてもゆる、陽火やうくわざればもえず。
本堂ほんだうはうではきやうこゑかねおともしてゐる。道子みちこ今年ことしもいつかぼんの十三にちになつたのだとはじめてがついたときである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そして女が両側の店を覗き覗き、きよろ/\してゐるやうだつたら、その女は屹度うつだから、とて不在るすがちな海員の女房には出来かねる。
書画しょが骨董こっとううことが熱心ねっしんで、滝田たきたさん自身じしんはなされたことですが、なにがなくて日本橋にほんばし中通なかどおりをぶらついていたとき
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ラランのやつにだまされたとづいても、可哀かあいさうなペンペはそのえぐられた両方りやうほうからしたたらすばかりだつた。もうラランのばない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
主人は自分よりほかのものでは到底とても弁じない用事なので、「はあようがす」と云ってさくに立って梯子段はしごだんのぼって行った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ですから、武揚たけあきがろうやにれられているといううわさはきいたことがありますが、べつに、それいじょうはにもとめていなかったのです。
神楽坂上かぐらざかうえ御箪笥町おたんすまちまでやっておくれ。あの、ほら、南蔵院なんぞういんさまの前だよ。長丁場でどくだけれども南鐐なんりょうでいいかえ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たとえば療法りょうほうにも信仰しんこうだの加持祈祷かじきとうだのを混合する。もちろん病気によってはいわゆるやまいもあるから、心の持ちようでなおる病気もあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
まあ、そう笑い給うな、兎に角そんな風なな、殆ど無我的な気分になれる所は、神楽坂の外にはそう沢山ないよ。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
よそのうちはもう寝静ねしずまつてゐるので、なんにもかないかも知れませんが、わたし達はどうも不安心でなりません。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
右隣りの席へ就いたうすらひげのある男は、来る早々促し/\あおりかけて、斗牛とぎゅうを貫くという勢い、その上膳の物を退治ることもすこぶる神速だ。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
この界隈かいわいの、まだ全く未成熟な住民のにあわせて、その限りで納得の行くことをやってのければよかったのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ふうん、村人をなぐりたおしてあばれまわったというのか……なんて乱暴らんぼうなことをするのだ。えっ、なに、巡査じゅんさはなぐられてぜつしたっていうのか。
そうしてこういうことが、自己じこ天職てんしょくからみてもかえってとうといのじゃないかなど考えながら、ますますになって農民にしたしむことをつとめた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なくてはいけないなんの病中びやうちう失礼しつれいなにもあつたものぢやアないそれともすこきてならぼくりかゝつてるがいゝといだおこせば居直ゐなほつて。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
外套がいとうのポケットへっこんでみたが、手にあたらない。と、不意ふいがついて見ると、それは人の外套がいとうだった。シューラはさもいまいましそうにさけんだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ことつたら御覧ごらんになつたかもれないが、幼児をさなごのことゆゑ、けてやらねばなるまい。真昼時まひるどきおもくなる。ものみなこと/″\しろつぽい。しかあれかし、亜孟アメン
チョイと云う事からしてまずに障わる。文三も怫然むっとはしたが、其処そこは内気だけに何とも言わなかった。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わたくしは此詩句を取つて、しばらみだりしもの如くに解する。霞亭の学術は前年癸亥にほゞ成つた。歳晩の舟遊は、その新に卒業してあがきようがうなる時に於てせられた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
四条大橋を渡って華やかな祇園の通りは、に歩いて居れば何時いつ通っても楽しいところである。
六日月 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
一二きんせいするはにあり。を制するは其のをつと々しきにありといふは、にさることぞかし。
問、足下そくかは尚ほ何時迄いつまで著述ちよじゆつ従事じうじせれんとする乎(基督信徒きりすとしんとに他人の仕事しごとにする者おほし)。
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
此に於て熬米いりごめみ以て一時のうへしのび、一走駆さうくしてただちに沿岸にいたり飯をんとけつす、此に於て山をくだり方向をさだめて沼辺にいたらんとし、山をくだれば前方の山又山
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ちょうど、それだけのすうの小さなびんならんでいるようで、ジャンセエニュ先生せんせいは、そのびんの一つ一つへ学問という葡萄酒ぶどうしゅをつぎんでいらっしゃるのだというがします。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
私は何時いつも昔のあなたがお思ひになつたやうにとしと云ふものの目に映つて来ない幸福なに包まれた人達なのであらうと、さう云ふ人達に対しては思つて居るだけなのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まづ丹田たんでんに落つけ、ふるふ足を踏しめ、づか/\と青木子の面前にすゝみ出でゝ怪しき目礼すれば、大臣は眼鏡の上よりぢろりと一べつ、むつとしたる顔付にて答礼したまふ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
「こんな石をけずるなんて、人間にんげんにできるものか。いくらよしむらのようにながくても。」
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
かつはその可哀あわれな境遇をどくと思うのとのために、これもまたいろいろに親切にしてやる。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ようし、それがどんなの女か知らないが、両国のお初が、どういう女か、長さんに、ひとつ、とっくり見て貰いましょう。あたしだって、身も軽いが、手足も動くんだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
人といふものは二気あれば即ち病む、といふ古い支那のことわざにある通り(中略)宜しくたんさかんにし、飲食を適宜にし、運動を怠らずして、無所むしよ畏心ゐしんに安住すべきである。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)