おさ)” の例文
新字:
棟近むねちかやまかけて、一陣いちぢんかぜわたつて、まだかすかかげのこつた裏櫺子うられんじたけがさら/\と立騷たちさわぎ、前庭ぜんてい大樹たいじゆかへでみどりおさへてくもくろい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
始終私の心をおさへつけてゐた不吉な塊がそれを握つた瞬間からいくらかゆるんで來たと見えて、私は街の上で非常に幸福であつた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
寢ても覺めても私の傍には、私の身を世界に唯一の頼りとする女一人が生きてゐるのだ。義務と責任の重さがたへられぬ程私の肩をおさへる。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
こひちからである、ひと抵抗ていかうすることの出來できないちからである。此力このちから認識にんしきせず、また此力このちからおさるとおもひとは、此力このちかられなかつたひとである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それは惡魔のやうな笑ひ聲だつた——低く、おさへつけられた、そして太いその聲は、ちやうど私の部屋の扉の鍵穴かぎあなのところで聞えたやうだつた。
平次は二人をおさへました。路地の奧から、輕い人の跫音がして、近づくまゝに、サヤサヤと衣摺れの音も聞えるのです。
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
船室キヤビン中央ちゆうわうつるしてある球燈きゆうとうひかり煌々くわう/\かゞやいてるが、どうも其邊そのへんなに魔性ませうでもるやうで、空氣くうきあたまおさへるやうにおもく、じつ寢苦ねぐるしかつた。
ねずみが二三びきがた/\とさわいで、なにかでおさへつけられたかとおもふやうにちう/\とくるしげなこゑたていた。おつぎは手探てさぐりに壁際かべぎは草刈鎌くさかりがまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お葉はいま不意に心弱くもふさがつて來た胸をおさへて、火鉢の灰をかき上げた時、母の聲が靜かに言つたのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ベンヺ 馬鹿ばかな! そこがそれ、おさへられ、げんぜられるためしぢゃ。ぎゃく囘轉まはるとうたのがなほり、ぬるほど哀愁かなしみべつ哀愁かなしみがあるとわすれらるゝ。
かたく我等をおさふ、正しき主の好みたまふ間は、我等いつまでも身を伸べて動かじ。 —一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
繰返くりかへして三度さんど、また跫音あしおとがしたが、其時そのときまくらあがらなかつた。室内しつない空氣くうきたゞいやうへ蔽重おほひかさなつて、おのづと重量ぢうりやう出來できおさへつけるやうな!
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれ幾度いくたびげても徒勞むだであつた。るやうな北風きたかぜ田圃たんぼわたつて、それをへだてようとするうしろはやしをごうつとおさへてはちて、かれ運動うんどうまつたにぶくしてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
みんなおさへても、ふるあがるやうに、寢臺ねだいうへから、天井てんじやうて、あれ/\彼處あすこへんなものがて、にらみます、とつて頂戴ちやうだい、よう、とつて頂戴ちやうだい
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おつぎも心部しんぶえるつぼみであつた。しかそのつぼみはさしげられないのみではなくおさへるつよちからくはへられてある。勘次かんじ寸時すんじもおつぎを自分じぶんそばからはなすまいとしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
をつむつて、みゝおさへて、發車はつしやつのが、三ぷん、五ふん、十ぷん十五ふん——やゝ三十ぷんぎて、やがて、驛員えきいん不通ふつう通達つうたついたときは!
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、まち便たよりなく、すうと月夜つきよそらく。うへからのぞいて、やまがけ處々ところ/″\まつ姿すがたくさびれて、づツしりとおさへてる。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしげようとちますすそを、ドンとつゑさきおさへました。熊手くまでからみましたやうなひどちからで、はつとたふれるところを、ぐい、とつてくのです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玲瓏れいろうつてふんですか、自分じぶんも、うでも、むねなんぞはちゝのなり、薄掻卷うすかいまきへすつきりといて、うつつて、眞綿まわた吉野紙よしのがみのやうにおさへて、ほねつゝむやうなんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
莞爾につこりして、かぜみだれる花片はなびらも、つゆらさぬ身繕みづくろひおびおさへたパチンどめかるひとつトンとてた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これに、よれ/\としぼつた、美人たをやめ眞白ましろゆびが、むねおさへて、ぶる/\とふるへたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「へい、おちなさいまし、石磈いしころきしみますで。」とつくばつて、ぐい、とかぢおさへる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
までふることでもない。いまの院線ゐんせんがまだつうじない時分じぶんには、土手どて茶畑ちやばたけで、たぬきが、ばつたをおさへたとふ、番町邊ばんちやうへんに、いつでもさうなへびいたちを、つひぞことがなかつたが。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すとんきようなこゑし、螇蚸ばつたおさへたり、とつきで、團扇うちははさんで、仰向あふむいた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うちにのら/\としてれば、兩親りやうしんもとより、如何いかひといわ、とつてあにじやひと手前てまへ据膳すゑぜん突出つきだして、小楊枝こやうじ奧齒おくば加穀飯かてめしをせゝつてはられぬところから、いろツぽくむねおさへて
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうぢや、さうぢや、はあさうぢや。はあさうぢや。」と、馬鹿囃子ばかばやしうかれたやうに、よいとこまかして、によいと突立つツたち、うでいた小兒こどもむねへ、最一もひとおとがひおさへにくと、いきほひ必然ひつぜんとして
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
洋杖ステツキ紙入かみいれと、蟇口がまぐち煙草入たばこいれを、外套ぐわいたうした一所いつしよ確乎しつかおさへながら、うや/\しく切符きつぷ急行劵きふかうけん二枚にまいつて、あまりの人混雜ひとごみ、あとじさりにつたるかたちは、われながら、はくのついたおのぼりさん。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のまゝ、六でふ眞中まんなか卓子臺ちやぶだいまへに、どうすわると、目前めさきにちらつく、うすき、染色そめいろへるがごとく、ひたひおさへて、ぐつたりとつて、二度目どめ火鉢ひばちつてたのを、たれともらず
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鶯懷爐うぐひすくわいろはるめいたところへ、膝栗毛ひざくりげすこ氣勢きほつて、熱燗あつかんむしおさへた。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……欄干らんかんむねおさへて、故郷ふるさとそらともかぬ、はるかなやまいたゞきほそけむりくのをれば、あれがほのほかとおもひ、いしはしらもたれて、利鎌とがまつきときは、それもやいばかとおもつたんです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つた手巾ハンケチ裏透うらすくばかり、くちびるかるおさへて伏目ふしめつたが
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とて、夫人ふじん椅子いすなるそでせた、白鞘しらさやかるおさへながら
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
學士がくし手巾ハンケチで、くちおほうて、一寸ちよつとひたひおさへた——
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つて、そつとおさへるやうにして
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ばうひさしおさへたまゝつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えりおさへた、ゆびさき
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしみゝまでおさへてた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)