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裏透
夜の雲に暗く
梢を
蔽はれながら、もみぢの枝の
裏透くばかり、
友染の
紅ちら/\と、
櫛巻の黒髪の
濡色の
露も
滴る、天井高き山の
端に、電燈の影白うして、
揺めく如き暖炉の
焔は
其から伯爵の
釵を抜いて、意気込んで
一振り振ると、……黒髪の
颯と
捌けたのが烏帽子の
金に
裏透いて、
宛然金屏風に名誉の絵師の、松風を
墨で流したやうで、雲も竜も
其処から
湧くか
と
持つた
手巾の
裏透くばかり、
唇を
輕く
壓へて
伏目に
成つたが