普通ふつう)” の例文
普通ふつう焚火たきびの焔ならだいだいいろをしている。けれども木によりまたその場処ばしょによってはへんに赤いこともあれば大へん黄いろなこともある。
「いいね。普通ふつう野菜物やさいもの無論むろんとして、ほかにトウモロコシだのトマトウだの、トマトウのとりてつて、ほんとにおいしいからな。」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
丁度ちようど普通ふつうちひさななみについてはまおい經驗けいけんするとほりであるから、此状態このじようたいになつてからは、なみといふよりもむしながれといふべきである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
竜神より神仏へくういふ普通ふつうせつなれど、こゝにめづらし竜燈りうとうの談あり、少しく竜燈をげすべき説なればしばらくしるして好事家かうずか茶話ちやわきようす。
それは、普通ふつうのほたるよりもおおきさが二ばいもあって、あたまには、二つのあかてんがついていましたが、いろは、ややうすかったのであります。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
劣等れっとうの雲雀は戻って来る時あやまってとなりの籠へ這入ったり甚しきは一丁も二丁も離れた所へ下りたりするが普通ふつうはちゃんと自分の籠を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これはくだかたちをした筒形つゝがたたまでありまして、そのながさは一寸前後いつすんぜんごのものが普通ふつうです。いしはみな出雲いづもから碧玉へきぎよくつくつてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
大体だいたいおいもうしますと、天狗てんぐ正体しょうたい人間にんげんよりはすこおおきく、そして人間にんげんよりはむしけものり、普通ふつう全身ぜんしんだらけでございます。
たゞくちびるがあまり厚過あつすぎるので、其所そこ幾分いくぶんゆるみがえた。そのかはかれには、普通ふつう人間にんげん到底たうているべからざる一種いつしゆ精彩せいさいひらめいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代金だいきんだれがきめたものか、いづこも宿賃やどちん二三百円びやくゑんのぞいて、をんな収入しうにふきやく一人ひとりにつき普通ふつうは三百円びやくゑんから五百円ひやくゑん、一ぱく千円せんゑん以上いじやうだとふ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
道江のかれに対していだいている感情が普通ふつうの友だち以上のものでないことを、はっきり宣告され、同時に彼女と恭一との関係が
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
下部かぶ貝塚かひづかが、普通ふつうので、其上そのうへ彌生式やよひしき貝塚かひづかかさなつてるとか、たしかそんなことであつた。いま雜誌ざつし手元てもといのでくはしくはしるされぬ。
千穂子の赤ん坊は月足らずで生れたせいか、小さい上にまるで、さるのような顔をしていて、赤黒いはだの色が、普通ふつうの赤ん坊とはちがっていた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
第一種は普通ふつうの股引にして、はだへに密接するもの、第二種はち付け袴の類にして、全体甚ゆるやかに、僅に足首の所に於てかたくくられたるもの。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
顔は體程周三の心をうごかさなかツたが、それでも普通ふつうのモデルを見るやうなことは無かツた。第一血色けつしよくいのと理合きめこまやかなのとが、目に付いた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あの廣々ひろ/″\とした富士ふじ裾野すそのには、普通ふつう登山期とざんきよりもすこおくれてはち九月くがつころには、ことうつくしい秋草あきくさがたくさんきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
この一句いつく二句にくは、『つきむかしつきにあらぬ。はるむかしはるならぬ』といふのがほんとうなのです。うたでなく普通ふつう文章ぶんしようなら、さうかねばとほりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかしこんな心遣こころづかい事実じじつにおいても、普通ふつう論理ろんりにおいてもかんがえてればじつ愚々ばかばかしい次第しだいで、拘引こういんされるだの
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つたりつたりするのは、始終しじうのことでせう。わたしつてもましたけれど、頭脳あたま普通ふつうぢやないやうです。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ひとつた……隧道トンネルもつてのほかチエインがある。普通ふつう我國わがくにだい一ととなへて、(代天工てんこうにかはる)と銘打めいうつたとく、甲州かふしう笹子さゝご隧道トンネルより、むしはうながいかもれぬ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それにころこん七日なぬかからもたねばわかないやうな藍瓶あゐがめそめられたので、いま普通ふつう反物たんもののやうなみづちないかとおもへばめるといふのではなく
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はたしておおかみの足跡あしあとはたくさんある。ロボの足跡は、普通ふつうのおおかみよりは大きいのですぐわかった。
ラフカジオ・ヘルンの場合も、またその同じ例にもれなかった。彼が日本に帰化したことも、普通ふつうの常識が思惟しいするように、日本を真に愛したからではなかった。
しかし彼女かのじょはそれまで私が心の中で育てていたツルとはたいそうちがっていて、普通ふつうのおろかな虚栄心きょえいしんの強い女であることがわかり、ひどい幻滅げんめつを味わったのは
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
普通ふつうは大きな的で、あたり場所によって点数がきまるのですが、この日は、あたれば十点、あたらねば零点れいてん、しかもわずかに三発しか与えられていないのであります。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
その父親はもう十年以上も中風で寝ていて、普通ふつうならとっくに死んでいるところを持ちこたえているだけに、いつ死なぬとも限らず、眼の黒いうちにと蝶子は焦った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
丁度ちやうど普通ふつう蒸滊船じようきせん石炭せきたん缺乏けつぼうしたとおなことで、波上はじやう停止ていししたまゝ、朽果くちはつるのほかはありません。
自分じぶんいへうまれた子供こどもでもなく、むかしやまつけたのをやしなつただけのことでありますから、氣持きもちも世間せけん普通ふつうひととはちがつてをりますので、殘念ざんねんではございますが……
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
およそほかの者は普通ふつうの影ですましているのですが、どうもわたくしはそれがきらいなのです。
「白痴ですが、普通ふつうの馬鹿とは大分変っておりまして、みんなに、とても大事にされました」
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
子供こどもは考えこんだ。よくわからなかった。けれど説明せつめいしてもらわなくてもよかった。なるほど、それは音楽おんがくではなかった。普通ふつうの歌みたいに音楽ではなかった。彼はいった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
その群衆は、普通ふつう、路上に形作らるるものに比べては、かなり大きいものであった。しかも、それが岸にっては堤防に、橋の上では欄杆らんかんへとギシギシとめられている。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
普通ふつう身長せいになるまでには幾度いくたびおほきくなつたりちひさくなつたりしたかれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ふたりは賓主ひんしゅ普通ふつうの礼儀などはそっちのけで、もうてんから打ちとけて対座した。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なるほど、そう言えば、普通ふつう憑きもののした人間は、もっと恍惚こうこつとした忘我の状態でしゃべるものである。シャクの態度には余り狂気きょうきじみた所がないし、その話は条理が立ち過ぎている。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これらの事は普通ふつうの人の考えから見れば余り過ぎたる行いなるかのごとく感ずるかも知れぬけれども、病気に対する薬はいつも普通の人に対しては過ぎたる薬を用うればこそ全快もするのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
これらは決しておもちゃの盆栽ぼんさいではない、盆栽でないこれらの松は太さはそれほど眼に立たないが、ことごとく普通ふつうの自然に生えた樹木にくらべると、まずすでに初老のよわいをかさねているのだ。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その證據しようこにはかつこひめにくるしもだえたひとも、ときつて、普通ふつうひととなるときは、何故なにゆゑ彼時あのとき自分じぶんこひめにくまで苦悶くもんしたかを、自分じぶんうたがうものである。すなはかれこひちかられてないからである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この紫外線も赤外線も、同じ光線でありながら、普通ふつう、人間の眼には感じない。つまり人間の網膜もうまくにある視神経ししんけいは、紫から赤までの色を認識することが出来るが、紫外線や赤外線は見えないといえる。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竜神より神仏へくういふ普通ふつうせつなれど、こゝにめづらし竜燈りうとうの談あり、少しく竜燈をげすべき説なればしばらくしるして好事家かうずか茶話ちやわきようす。
陶器師とうきしは、おそって御殿ごてんがりました。それから、その有名ゆうめい陶器師とうきしは、厚手あつでちゃわんをつく普通ふつう職人しょくにんになったということです。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
大体だいたい天狗てんぐはたらきはそうおおきいものではないらしく、普通ふつう人間にんげんかかって小手先こてさきの仕事しごとをするのがなにより得意とくいだともうすことでございます。
かゝる大發掘だいはつくつこゝろみてから、非常ひじやう此所こゝ有名いうめいつたが、いま兒島惟謙翁こじまゐけんおう邸内ていない編入へんにふせられて、とて普通ふつうでは發掘はつくつすること出來できずにた。
要するに普通ふつう世間に行きわたっている範囲はんいでは、読み本にも、浄瑠璃じょうるりにも、芝居しばいにも、ついぞれたものはないのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
土器どきはやはり日本につぽん彌生式やよひしきちか種類しゆるいのものが普通ふつうでありまして、ときにはめづらしく、だんだら模樣もよう彩色さいしきしたうつくしいものがることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
まへばんに、ちゝ宗助そうすけんで、宗助そうすけ請求せいきうどほり、普通ふつう旅費りよひ以外いぐわいに、途中とちゆうで二三にち滯在たいざいしたうへ京都きやうといてからの當分たうぶん小遣こづかひわたして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、からだが丈夫だからこんなこともできるよ。普通ふつうの人なら死んでしまうからな。」楽長が向うで云っていました。
セロ弾きのゴーシュ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
床上しようじよう振動しんどう地面ぢめんのものゝ三割さんわりしなることが普通ふつうであるけれども、木造もくぞう二階建にかいだて階上かいじよう三倍程度さんばいていどなることが通常つうじようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
普通ふつうの学校教育以外のことを何かもくろんでいるらしいと想像していただけだったが、田沼——朝倉——青年塾——と、こう結びつけて考えただけで
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
つぎには紅葉もみぢするは、どんなかといひますと、日本につぽんでは普通ふつうもみぢ(槭樹せきじゆ)がいちばんおほいのです。なかでも、やまもみぢはにはにもよくゑられます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)