たび)” の例文
この夏もおたがひたび先や何かで久しくかほを合せなかつた二人、さて新秋になると、むかうはあた海で勉強べんけうして大につよくなつたと自しんを持ち
そうすればきもは、あのたび薬屋くすりやたかれるし、にくは、むらじゅうのものでたべられるし、かわかわで、おかねにすることができるのだ。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それは、とんでもないことです。あなたのようなとしのわかい、たびになれないおぼっちゃんが、一人ひとり江戸えどへおいでになるなんて。」
たび途中とちゅうで、煙草畑たばこばたけに葉をつんでいる少女にった。少女はついこのあいだ、おどしだにからさとへ帰ってきた胡蝶陣こちょうじんのなかのひとり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまどき、めずらしいきゃくである。こんな冬の季節きせつに、しかもこんなへんぴな土地に、たび商人しょうにんだってめったにきたことはないのだ。
それからまもなくして、聖母せいぼマリアはたびからかえってきました。マリアは女の子をよんで、天国てんごくのかぎをかえすようにいいました。
その帽子ぼうし着物きものくつはもとより、かお手先てさきまで、うすぐろくよごれていて、長年のあいだたびをしてあるいたようすが見えています。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「わたしはたびものですから、やおこめをもらってもこまりますが、せっかくおっしゃることですから、りかえっこをしましょう。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まっ白な一の若いオスのガチョウは、ガンのさけび声を聞いているうちに、どうしてもたびに出かけたくなってしまいました。そして
つひには元禄七年甲戊十月十二日「たびやみゆめ枯埜かれのをかけめぐる」の一句をのこして浪花の花屋が旅囱りよさう客死かくしせり。是挙世きよせいの知る処なり。
「それはわしほうからいふ言葉ことばでさあ。こうして此處こゝうまれて此處こゝでまた俺等わしらです。一つたび土産みやげはなしでもきかせてくれませんか」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「空の工兵大隊こうへいだいたいだ。どうだ、ますなんかがまるでこんなになってはねあげられたねえ。ぼくこんな愉快ゆかいたびはしたことない。いいねえ」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この人の書いた「ニールス・ホルゲルッソンのふしぎなスウェーデンのたび」(「ニールスのふしぎな旅」と短くしておきました)
祖父殿おんぢいどんはの、山伏やまぶし姿すがたしたたび修業者しゆげふじやが、道陸神だうろくじんそば病倒やみたふれたのを世話せわして、死水しにみづらしつけ……修業者しゆげふじやならつたひます。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うまるか、かごるか、さもなければあるいてたびをした以前いぜん木曾街道きそかいだう時分じぶんには、とうさんのうまれた神坂村みさかむらえき馬籠まごめひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこが幽界ゆうかいたび現世げんせたびとのたいした相違点そういてんでございますが、かく私達わたくしたちは、またた途中とちゅうとおけて、ひとつのうま世界せかいへまいりました。
このうたはどうかすれば、うまつてたびをしてゐて、それをすぐさま枕詞まくらことばとして、くらたかねといつたようにもおもはれるが、さうかんがへてはいけません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
引摩々々ひきずり/\來るは如何にもたびなれぬ樣子なりしが夫婦づれの者此寶珠花屋このはうじゆばなや八五郎の見世にこしを打懸やれ/\草臥くたびれたりと云ていき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あかしかけをきた人形にんぎやうは、しろ手拭てぬぐひのしたにくろひとみをみひらいて、とほくきたたびをおもひやるやうにかほをふりあげました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「ここに井戸いどってたびひとにのんでもらおうとおもいます。こころざしのあるかたは一せんでも五りんでも喜捨きしゃしてください。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
尾道は夏祭りの多い港であるが、住吉明神の祭礼は「おたび」と言って、街はずれの「御所ごしょ」という海べの草っぱのあき地に神輿が移って、一夜を仮泊されるのであった。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
されば櫻木大佐さくらぎたいさふたゝ日本につぽんかへつたものとすれば、その勳功くんこう日月じつげつよりもあきらかにかゞやきて、如何いかわたくしたびからたびへと經廻へめぐつてるにしてもその風聞ふうぶんみゝたつせぬことはあるまい
幅の広い、粗天鵞絨あらびろうどの安楽椅子にレエスのおおいを掛けた一等の車室で、或るひとたびの客が身を起した——アルブレヒト・ファンクワアレンである。彼は眼をましたのである
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
たびをするんですな。わたしは、このなつ旅行りょこうをやりますが、いっしょにいかがです。わたしも道づれをひとりほしいところだ。あなたはわたしの影になって同行どうこうしてください。
茶代ちゃだいの多少などは第二段の論にて、最大大切なるは、服の和洋なり。たびせんものは心得置くべきことなり。されどおごるは益なし、洋服にてだにあらば、帆木綿ほもめんにてもよからん。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
なつはじめたびぼくなによりもこれすきで、今日こんにちまで數々しば/\この季節きせつ旅行りよかうした、しかしあゝ何等なんら幸福かうふくぞ、むねたのしい、れしい空想くうさういだきながら、今夜こんやむすめはれるとおもひながら
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いへにあればいひ草枕くさまくらたびにしあればしひる 〔巻二・一四二〕 有間皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
東京に居ても、田舎に居ても、何処までもたびの人、宿れる人、見物人なのである。然しながら生年百に満たぬひといのちの六年は、決して短い月日では無い。儂は其六年を已に村に過して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それでこの前の時のように、品物を買いあつめて、商売のたびに出ました。
おびのなかにきんぎんまたはぜにつな。たびふくろも、二枚にまい下衣したぎも、くつも、つえつな。よ、われなんじらをつかわすは、ひつじ豺狼おおかみのなかにるるがごとし。このゆえへびのごとくさとく、鴿はとのごとく素直すなおなれ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
れいに、なにかよいものをおあげしたいが、たびのことで、なにもなくお気のどくです。けれどこれからあと六日の滞在たいざいちゅう、毎夜来て、こよいの物語を聞かしてくだされば、ありがたいことです。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
はたたびの夕まぐれ、えのこるくも湿しめり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
九七わすれても汲みやしつらんたび人の
たびたびにねざめて
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
たび八百日やほかさびしさ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あはれなるたびをとこ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
不思議ふしぎたび
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たびみちづれ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たび七日なのか
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おれたびへゆこう。そしてゆきのない、いいくにはたらこう。かねがもうかり、おもしろいことがたくさんあって、いいらしができるだろう。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)
つひには元禄七年甲戊十月十二日「たびやみゆめ枯埜かれのをかけめぐる」の一句をのこして浪花の花屋が旅囱りよさう客死かくしせり。是挙世きよせいの知る処なり。
むすめはたびのふたりに、とびらという扉をのこらずあけて、なかにつみあげてあるたくさんのたからものを見せました。けれども王子は
けてたびをしてある飴屋あめやさんは、何處どことほいところからかついでかたけて、ふえき/\出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それでも源次郎は謙遜無口で、よく大九郎のめんどうをみたり、才蔵に槍の教えをうけたりしながら、順路じゅんろ東海道とうかいどうたびをはかどっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今度こんどたびは、一體いつたいはじめは、仲仙道線なかせんだうせん故郷こきやういて、其處そこで、一事あるようすましたあとを、姫路行ひめぢゆき汽車きしや東京とうきやうかへらうとしたのでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むかしのことで、越後えちごからみやこのぼるといえば、幾日いくにちも、幾日いくにちたびかさねて、いくつとなく山坂やまさかえてかなければなりません。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
日様ひさまはもえる宝石ほうせきのようにひがしそらにかかり、あらんかぎりのかがやきをかなしむ母親ははおやたびにでたどもらとにげておやりなさいました。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もうたび懲々こり/\でした。そうおもふと、自分じぶんいへこひしくつてこひしくつてたまりません。はやくかえらう。はやくかえらう。と、……………………
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
冒険ぼうけんや、自由や、空高くたびをすることなどが、これからはできなくなることを思って、そのかなしみのために、泣いたのです。
ターコール僧正そうじょうがおいのりをしてるとき、コスモとコスマとは、故郷こきょうへのたびをいそいでいました。コスモはいいました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)