たゝ)” の例文
思へばうつゝとも覺えで此處までは來りしものの、何と言うて世を隔てたるかどたゝかん、我がまことの心をば如何なる言葉もて打ち明けん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かれ色々いろ/\事情じじやう綜合そうがふしてかんがへたうへ、まあ大丈夫だいぢやうぶだらうとはらなかめた。さうしてつめさきかる鐵瓶てつびんふちたゝいた。其時そのとき座敷ざしき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゝ以上いじやうなに意味いみくてはならない』とつて歩兵ほへいは、あいちやんにかまはずつゞけました、『吾々われ/\二人ふたりあひだがあつたとしたら。 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
鉄平は戸口をつと這入はひつて、正面にある離座敷はなれざしきの雨戸を半棒はんぼうたゝきこはした。戸の破れた所からは烟が出て、火薬のにほひがした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ならんだ二だいに、あたまからざつとあびせて、のきあめしのつくのが、たてがみたゝいて、轡頭くつわづらたかげた、二とううま鼻柱はなばしらそゝ風情ふぜいだつたのも、たにふかい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もんれいとほあけぱなしだからたゝ世話せわいらず、二人ふたりはずん/\とうちはひつてたが草木くさき縱横じゆうわうしげつてるのでラクダルの居所ゐどころ一寸ちよつとれなかつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ホト/\たゝきて入來り御目にかゝるははじめてなれどわたくし事去年きよねんの冬金子をおとしたるは斯々かく/\なりと段々譯を咄し其節請取に罷出ませうとは存じたれども大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
狸が浮れて腹太鼓をたゝきやアがって夜が明けて戸を明けて見ると、三匹ぐれえ腹ア敲き破ってひっくりけえって居る
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貝を吹き鐘をたゝいて徳政令とくせいれいの発布を幕府に迫り、一切の貸借関係を一瞬にして、無効にさせるのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ニキタはぱツとけるより、阿修羅王あしゆらわうれたるごとく、兩手りやうてひざでアンドレイ、エヒミチを突飛つきとばし、ほねくだけよと其鐵拳そのてつけん眞向まつかうに、したゝかれかほたゝゑた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
跳ね起きて、いづくをあてともなく、狹く曲りたるちまたを走りぬ。途にて逢ひたるは、杖もて敷石をたゝき、高聲にて歌ふ男一人のみなりき。しばらくして廣きところに出でぬ。
慈愛のふところから思ひも寄らぬ孤独の境界きやうがいに投げ出された子供は、力の限り戸をたゝいて、女中の名や、家にはゐない親しい人の名までかはる/″\呼び立てながら、救ひを求めてゐた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
きやうさん居ますかと窓の戸の外に來て、こと/\と羽目をたゝく音のするに、誰れだえ、もう寐て仕舞つたから明日來てお呉れと嘘を言へば、寐たつて宜いやね、起きて明けてお呉んなさい
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(さいの神のまつり下にしるす)又去年むこよめをむかへたる家のかどに、未明みめいよりわらべども大勢あつまり、かの斗棒をもつて門戸をたゝき、よめをだせむこをだせと同音によばゝりたゝく。
こゝろざしは行ふものとや、おろかしき君よ、そはうゑはしるに過ぎず。志はたゞ卓をたゝいて、なるべく高声かうせいに語るにとゞむべし。生半なまなかなる志を存せんは、存せざるに如かず、志は飯を食はす事なければなり。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
からツ風が吹きすさんで、森の中の梢といふ梢は、作り声をしたやうに、ざわ/\と騒ぎ立ち、落葉が羽ばたきをしながら、舞ひ立つて、夜もすがら戸をたゝき、屋根をひずり廻る、風の無い夜は
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
そして敵をのめらせてたゝきつけたのだ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ねがはくは来りてわが門をたゝくなかれ。
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
こぶし荒々あら/\しくたゝくと、なかから制服せいふくけた、圓顏まるがほかはづのやうにおほきいをしたモ一人ひとり歩兵ほへいひらかれました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
提灯を持つて、拍子木をたゝいて來る夜廻の爺いさんに、お奉行樣の所へはどう往つたら往かれようと、いちがたづねた。
最後の一句 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
うだ、一盃らないか」と、前にあつた葡萄酒のびんを持つてつて見せた。なかにはまだ余程這入つてゐた。梅子は手をたゝいて洋盞コツプを取り寄せた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
初見しよけん土地とちたいしても、すつとこかぶりもなるまいし……コツツンとおとのするまで、帽子ぼうし頂辺てつぺんたゝいて、めて
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
余りひどく表をたゝくから、側の馬小屋につないでありました馬が驚いて、ヒイーン、バタ/\/\と羽目をる。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さげ詫入る處を猶も又めつた打ちに打ちたゝやが蹴飛けとば蹴返けかへして直に請人石町甚藏店の六右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わかつたか馬鹿野郎ばかやらう!』と、イワン、デミトリチはさけんで、こぶしかためてたゝく。『やいけろ! けろ! けんか! 開けんなら打破ぶちこはすぞ! 人非人ひとでなし! 野獸けだもの!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これに乘れる寢衣ねまき着たる翁とやさしき花賣娘とは、早くも惡劇いたづらのためよりは避難のためと見て取りぬと覺しく、娘は輕く我手背をたゝき、例の玉のつぶて二つ投げかけしのみなれど
きやうさんますかとまどそとて、こと/\と羽目はめたゝおとのするに、れだえ、もう仕舞しまつたから明日あしたておれとうそへば、たつていやね、きてけておんなさい
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(さいの神のまつり下にしるす)又去年むこよめをむかへたる家のかどに、未明みめいよりわらべども大勢あつまり、かの斗棒をもつて門戸をたゝき、よめをだせむこをだせと同音によばゝりたゝく。
美吉屋みよしやで二月二十四日の晩に、いつものやうに主人が勝手に寝て、家族や奉公人を二階と台所とに寝させてゐると、よひの五つ過に表の門をたゝくものがある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
やがて咖啡コーヒーる。一人ひとりが椅子を離れて立つた。与次郎がはげしく手をたゝくと、ほかのものもたちまち調子を合せた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
でも、こゝには、金銀如山きんぎんやまのごとく綾羅りようら錦繍きんしう嘉肴かかう珍菓ちんくわ、ありあまつて、ほ、りないものは、お使者ししやおにたゝくととゝのへるんです、それに不足ふそくはありません。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此処こゝへ大橋の方から前橋まえばし松屋新兵衞まつやしんべえが駈付けてまいりましたが、人ごみで少しも歩けませぬ、突退つきの撥返はねかえし、あるいは打たれ或はたゝかれ、転がるように駈出しましたが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たとへばおまへなかたゝいたとする、さうすればわたしはおまへそとしてやるとふものだらう、ね
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
堅く閉てはやたる樣子也やうすなり然れども此所をおこして尋ねずばいづれにも尋ぬる方あるまじと思ひ門の戸をたゝきて呼起よびおこすに未だ内には寢ざるにや年寄たるをんなの聲にて應と言て門の戸をあけ友次郎の顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われは扉をほと/\とたゝきしに、寺僮は我が爲めに門を開きつ。そは曾てわが市長に伴はれて來ぬる時、我にチチヤノとカノワとの墓をゆびざし教へしことあれば、猶我面を見知り居たりしなり。
かへりはれいまどたゝいてと目算もくさんながら横町よこちやうまがれば、いきなりあとよりひすがるひとの、兩手りやうてかくしてしのわらひするに、れだれだとゆびでゝ、なんだおきやうさんか、小指こゆびのまむしがもの
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いか、貴樣きさまあたまたゝるぞ! 人殺奴ひとごろしめ!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
昨夕ゆふべ飲んだ麦酒ビールこれくらべるとおろかなものだと、代助はあたまたゝきながら考へた。さいはひに、代助はいくらあたま二重にぢうになつても、脳の活動にくるひを受けた事がなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ほと/\と板戸をたゝき、「この執念深き奥方、何とて今宵こよひに泣きたまはざる」と打笑うちわらひけるほどこそあれ、生温なまぬるき風一陣吹出で、腰元のたづさへたる手燭てしよくを消したり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこで門をたゝかれた時、門番がすぐに立つて出て、外に来たものの姓名と用事とを聞き取つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
はじまりはお屋敷そとを槍持六尺棒持を連れて見廻らんければなりません、槍持は仲間部屋ちゅうげんべやから出ます、棒持の方は足軽部屋からて、甃石いしの処をとん/\とん/\たゝいてるく
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先生は熟睡してゐる。三四郎は静かでい心持になつた。つめ鉄瓶てつびんたゝいて見た。あつい湯を茶碗にいでふう/\いて飲んだ。先生はむかふをむいて寐てゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うつゝぜめとかまをすのに、どら、ねうばち太鼓たいこ一齊いちどきたゝくより、かねばかりですから、餘計よけい脈々みやく/\ひゞいて、とほつて、くるしさつたら、に三注射ちうしやはりされます
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私は斬られたならかたきがあらう、其敵は私がかうして討つと云つて、庭に飛び降りて、木刀で山梔くちなしの枝をたゝき折つた。母はそれに驚いて、其後は私の聴く所で父の噂をしなくなつたさうである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
敵の行方は八州へも頼んでえたから、今に関取が出て来れば手分てわけえして富五郎を押えてたゝいたら、大概たいがい敵は一角にちげえねえと思ってるくらいだから、機嫌の悪い事が有るなら私にそういって
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それ自分じぶん自分じぶんあたまつてみて、二つのものをぜやうとつとめたものである。かれいままくらうへかみけたなり、みぎの手をかためて、みゝうへを二三度たゝいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かけはしちんで、はるかにポン/\とおる。へーい、と母家おもやから女中ぢよちうくと、……たれない。いけうめ小座敷こざしきで、トーンと灰吹はひふきたゝおとがする、むすめくと、……かげえない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かねてお名前なめえは聞いて居りましたがあなたが業平の旦那様ですか、道理で腕にこてえがあると思った、仔細というはほかでもない、少し訳があって此の島の取締り役人をたゝき殺し、一同死ぬ気でございます
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
宗助そうすけひとのするごとくにかねつた。しかもちながら、自分じぶん人並ひとなみこのかね撞木しゆもくたゝくべき權能けんのうがないのをつてゐた。それを人並ひとなみらしてさるごとおのれをふか嫌忌けんきした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、驟雨しううすさまじさはすこしもない。すぐ、まはゑん座敷ざしきに、畳屋たゝみやはいつてゐたのも、なんとなくこゝろゆくみやこ時雨しぐれて、をりからゑんはしにトントンとたゝいた茣蓙ござから、かすかつたほこりあをい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)