いたゞ)” の例文
容易に夫人の警戒がゆるみそうもないのをて取ると、河内介は懐から小さな錦の袋を取り出して、それを二三度押しいたゞきながら云った。
酉陽雑俎いうやうざつそに、狐髑髏どくろいたゞ北斗ほくとはいし尾をうちて火を出すといへり。かの国はともあれ我がまさしく見しはしからず、そはしもにいふべし。
買に參りしと申せしはいつはり今は何をかくしませう去年夜廻よまはりの節金八十兩拾ひたるを此程御番所よりいたゞきし其夜此者が參り斯々申て其金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それだのにおなゆきいたゞいたこゝのひさしは、彼女かのぢよにそのつたこゝろあたゝめられて、いましげもなくあいしづくしたゝらしてゐるのだ。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
醫者いしやつてね。昨夜ゆうべくすりいたゞいてから寐出ねだして、いまになつてもめませんが差支さしつかへないでせうかつていてれ」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鬼怒川きぬがは徃復わうふくする高瀬船たかせぶね船頭せんどうかぶ編笠あみがさいたゞいて、あらざらしの單衣ひとへすそひだり小褄こづまをとつておびはさんだだけで、あめはこれてかたからけてある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
老叟らうそうしづかに石をでゝ、『我家うちの石がひさし行方ゆきがたしれずに居たが先づ/\此處こゝにあつたので安堵あんどしました、それではいたゞいてかへることにいたしましよう。』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
へい/\有難ありがたぞんじます……(泣きながら伜に向つて)まア八百膳やほぜん御料理おれうりなぞをいたゞきますといふのは、これはおまへなんぞはのう、はじめのをさめだ
「いや。わたくしは群生ぐんしやう福利ふくりし、憍慢けうまん折伏しやくぶくするために、乞食こつじきはいたしますが、療治代れうぢだいいたゞきませぬ。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
裁判官さいばんくわんつひでに、王樣わうさまがなされました。王樣わうさまかつらうへかんむりいたゞき、如何いかにも不愉快ふゆくわいさうにえました、それのみならず、それはすこしも似合にあひませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたしはいまほんを、ちひさい兄弟姉妹けうだいしまいたちである日本にほんどもたちおくります。また。そのどもたちおやであり、先生せんせいである方々かた/″\にも是非ぜひんでいたゞきたいのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
擧動に目を付け、口にする言葉を考量かうりやうし、行爲を一々嚴重に審査して、彼女の魂を救ふ爲めに彼女の肉體を罰していたゞきたい——もしも、斯の如き救ひが可能ならば。
「いえ、お醫者樣にも及びません、持藥ぢやくも用意してあります、少し休ましていたゞけば——」
其時在所ざいしよの者が真言しんごん道場だうじやうであつた旧地へ肉食にくじき妻帯さいたい門徒坊もんとぼんさんを入れるのは面白く無い、御寺の建つ事は結構だがうか妻帯をさらぬ清僧せいそう住持じうぢにしていたゞきたいと掛合かけあつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「クンカンぢやありません。カンカンですよ。あれはタンゴをどりなどと一緒に最新の流行ですが、もう日本に来てるとは驚きましたね。この次に往つたら是非見せていたゞきませう。」
毎日まいにち/\あしたほしいたゞいて大佐等たいさらともいへで、終日しうじつ海底かいてい造船所ざうせんじよなか汗水あせみづながして、夕暮ゆふぐれしづかな海岸かいがんかへつてると、日出雄少年ひでをせうねん猛犬まうけん稻妻いなづまとは屹度きつと途中とちうまでむかへ
返す言葉の暇さえ惜しく、其儘そのまゝ帽子をいたゞきて彼れに従い珈琲館を走出はしりいでたり。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
双鸞菊とりかぶと、毒のかぶといたゞき、鳥の羽根はねの飾をした女軍ぢよぐん勇者つはもの
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いたゞいてけ。れいへい。」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せんいたゞきませぬ。
へばとついたゞ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
申位なら去年紛失ふんじつの節訴へていたゞきますが私しは奉公の身の上なれば金は入らねどたゞ老母らうぼの病を治し度一心にて出ましたに名前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼は三十分と立たないうちに、吾家わがいへ門前もんぜんた。けれどももんくゞる気がしなかつた。かれは高いほしいたゞいて、しづかな屋敷町やしきまちをぐる/\徘徊した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
露「米や、わたしゃ何うしても諦める事は出来ないから、百目ひゃくめ金子きんすを伴藏さんに上げて御札を剥がしていたゞき、何うぞ萩原様のお側へやっておくれヨウ/\」
れから屹度きつとやらないなら今日けふところだけは大目おほめいたゞいて警察けいさつれてかれないやうにうかゞつててあげるがね、どうしたもんだね」と勘次かんじへいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
所が親戚のものははゞかりがあつて葬式をいたすことが出來ませんでした。其時眞志屋の先祖が御用達ごようたしをいたしてゐますので、内々お許をいたゞいて死骸しがいを引き取りました。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たもととらへて『あんまりじやアありませんか、何卒どうか返却かへしていたゞきたいもんです』と泣聲なきごゑになつてうつたへた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
忠朝の墓前に小さな壺があつていつもふたがしてあるが、中には銀のやうな水が溢れてゐる。酒を断たうとする者は、その水をいたゞいて飲むと、何日いつの間にか酒嫌さけきらひになるといふ事だ。
大佐たいさ少年せうねん其他そのほか三十有餘名いうよめい水兵等すいへいら趣味しゆみある日常にちじやう生活せいくわつのさま/″\、あしたにはほしいたゞいてき、ゆふべにはつきんでかへる、その職務しよくむ餘暇よかには、むつまじき茶話會ちやわくわい面白おもしろ端艇競漕たんていきようそう
頭に蝋燭はいたゞかねど見る人毎を呪うとは恐ろしくも忌わしき職業なり立派と云う所を云えば斯くまで人に憎まるゝを厭わず悪人を看破みやぶりて其種を尽し以て世の人の安きを計る所謂いわゆる身を殺して仁を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
馬来マレイ人やヒンヅ人が黒光くろびかりのするからだ黄巾赤帽くわうきんせきばういたゞき、赤味の勝つた腰巻サロンまとつて居る風采ふうさいは、極𤍠ごくねつの気候と、朱の色をした土と、常に新緑と嫩紅どんこうとを絶たない𤍠帯植物とに調和して中中なかなか悪くない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
是非ぜひ御返事をいたゞきたいと、云ってくれたゞろうね」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
能々拜見はいけんしてさて申やう此御短刀は私しのぞみ御座なく候何卒君の常々つね/″\手馴てなれし方をいたゞき度むね願ひければ君も御祕藏ごひざうの短刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ういふお慈悲なさけぶか旦那様だんなさまがおありなさるから、八百膳やほぜん料理れうり無宿者やどなしくだされるのだ、おれいまうしていたゞけよ、おぜんいたゞくことは、きさま生涯しやうがい出来できないぞ。
かれはそれからとなり主人しゆじん挨拶あいさつたが、自分じぶんのどそこものをいうてげるやうにかへつた。かれは三にんこほつたそらいたゞいて燒趾やけあと火氣くわき手頼たよりにかした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにわたくしからふと、じつはあの文庫ぶんこはうむし大切たいせつしなでしてね。祖母ばゞむか御殿ごてんつとめてゐた時分じぶんいたゞいたんだとかつて、まあ記念かたみやうなものですから」とやうこと説明せつめいしてかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
穿うがちたるいと立派なる服をかざり胸には「レジョン、ドノル」の勲章をきらめかせてほかより帰ると見たるにそのわずか数日後に彼れは最下等の職人がまとごときたならしき仕事衣しごとぎに破れたる帽子をいたゞきて家を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
エヘヽヽ此手このてでは如何いかゞでございます。婦人「成程なるほどこれとんうございますね、ぢやアこれを一ついたゞきませうか。 ...
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しアヽーうもこのふすまなんどす、銀錆ぎんさびで時代が十ぶんに見えますな、此方こツちや古渡更紗こわたりさらさ交貼まぜはりで、へえーうも此位このくらゐお集めになりましたな、へい、いたゞきます
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
どうも誠に有難ありがたうございます、わたくしう一生涯しやうがい、お薄茶うすぷくでもいたゞけることでないと
十一歳の時から今日きょうまで剣術を覚えたいと心掛けて居りましたが、漸々よう/\のことで御当家様にまいりまして、誠に嬉しゅうございます、是からはお剣術を教えていたゞき、覚えました上は
五円いたゞいた内で、三円伯母さんにお返し申し、お厨子を返して貰いましたから、弐円の金子は棟梁さんにお返し申しますから、あと三円のところは、何卒どうぞお慈悲に親子三人不憫ふびん思召おぼしめ
もらつたが、橋本先生はしもとせんせいいたゞいてもむづかしいとはれた、さういふ御名医方ごめいゝがた見放みはなすくらゐの病気びやうきだから、ぼく覚悟かくごをしてたけれども、少し横になつてうと/\られると思つたら
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此のめえめえりました時、でけえ御紋の附いたお菓子を戴きましたっけ、在所に居ちゃアとても見ることも出来ねえ、お屋敷様からいたゞえた、有りがたい事だって村中の子供のある処へちっとずつ遣りましたよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)