度々たび/\)” の例文
えゝお茶を上げな……あなたにも此の度々たび/\御贔屓で呼んでおくれなすった事も有りますが、明後日あさってから美代吉はうちにいませんよ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
東は富士河みなぎりて流沙りうさの浪に異ならず。かかる所なればおとなふ人もまれなるに、加樣かやう度々たび/\音信おんしんせさせ給ふ事、不思議の中の不思議也。
「えゝ度々たび/\」とよし子は依然として画紙に向つてゐる。三四郎は、よし子が画のつゞきをき出してから、問答が大変楽になつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
むかし小野浅之丞あさのじようといふ少年があつた。隣家となりの猫が度々たび/\大事なひなを盗むので、ある日築山つきやまのかげで、吹矢で猫をねらうちにした。
外國人がいこくじん命懸いのちがけでないと旅行りよこう出來できないくにである。國民こくみんはあゝ度々たび/\地震ぢしん火災かさいなやまされてもすこしもりないものゝようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こたへてわたくし夫婦八ヶ年浪人の身の上ゆゑ油屋五兵衞方へ衣類いるゐ大小等だいせうとう質物しちもつあづおきし處約束の月切つきぎれに相成質屋しちやよりは度々たび/\催促さいそくなれども其品々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
度々たび/\みません。——御免ごめんなさいましよ。」と、やつと佛壇ぶつだんをさめたばかりの位牌ゐはいを、内中うちぢうで、こればかりは金色こんじきに、キラリと風呂敷ふろしきつゝとき
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして売地うりち貸家かしやふだを見てすぎ度々たび/\なんともつかず胸算用むなざんようをしながら自分も懐手ふところで大儲おほまうけがして見たいと思ふ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何處どこ御馳ごちなンてものがあるか』とつて海龜うみがめは、『だが、しおまへがそんなに度々たび/\それをたならば、無論むろんまへはそれのきなものつてるだらう』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
また先代の放埒はうらつのために廃寺同様になつてゐる寺にさういふことがあらうとは思はないので、好い加減に聞いてゐたが、その話が度々たび/\耳に入るので、ある時
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ミハイル、アウエリヤヌヰチは此頃このごろでは始終しゞゆうかれ留守るすばかく。ダリユシカは旦那だんな近頃ちかごろ定刻ていこく麥酒ビールまず、中食迄ちゆうじきまでおくれることが度々たび/\なので困却こまつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから自分じぶん學校時代がくかうじだいによく進撃しんげきしたやぶそばや梅月ばいげつことや、其他そのほか樣々さま/″\こと懷想くわいさうして、つばさあらばんでもきたいまで日本につぽんこひしくなつたこと度々たび/\あつたが
で、かれはムキになればなるだけ教練けうれん武術ぶじゆつ失敗しつぱいし、上官達じやうくわんたちしかりつけられ、戰友達せんいうたちにはなぶりものにされるのだつた。——どくだな‥‥と、おもふことがわたし度々たび/\あつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
実見せしこと度々たび/\なれば別にあやしとも思わずだ余がおおいに怪しと思いたるは老人の顔の様子なり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ヘエ」と、伯母は良久しばし言葉もなく、合点がてん行かぬ気に篠田のおもてもれり「お前の神様のお話も度々たび/\聞いたが、私には何分どうも解らない、神様が嫁さんだなんて、全然まるで怪物ばけものだの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
徒然草つれ/″\ぐさ最初さいしよほとけはどうして出來できたかとはれてこまつたとふやうなはなしがあつた。子供こどもものはれてこまることは度々たび/\である。なかにも宗教上しうけうじやうことには、こたへきうすることがおほい。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
降らぬやうに祈るぞと云しが山下やまおろしの風の音雨と聞なされてさむること度々たび/\なり果して夜半に雨來る彼方あちに寐がへり此方こちに寐がへり明日あすこゝに滯留とならば我先づ河原へ出て漁者を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
度々たび/\だけれども」野村は千鶴の利発らしい顔をじっと見つめながら、「前の晩、君が水を持って行った時に、重明さんは催眠剤を呑んだというが、むろん一回分だったろうね」
希臘神話の中に出て来る魔法使ひの女サーシーはこのマンドレークを最も屡々しば/\使用したといはれて居る。この迷信は余程久しい間行はれ、沙翁さをうの劇の中にも度々たび/\引用せられてゐる。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
私は米何こめなにを無名の人と書きましたが、あの海軍の収賄問題のやかましい頃に贈賄者として検挙されるはずであるとか、家宅捜索を受けたとか、度々たび/\米何こめなにの名は新聞に伝へられましたから
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かういつてると、うた非常ひじように、おもしろくなくきこえるかもれませんが、一度いちどこの意味いみあたまれて、そののち度々たび/\かへしてください。さうすると、自然しぜんにわかつてるでせう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
どういふふうくものやら全然まるで不案内ふあんないであつたがチヨークでいたたことは度々たび/\あり、たゞこれまで自分じぶんかないのは到底たうてい自分じぶんどものちからおよばぬものとあきらめてたからなので
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
矢張やはり『御返事ごへんじつてります』とある。をとここまつてしまつて、あんな葉書はがき度々たび/\よこしてはいけないとつてやつたが、矢張やはまたその翌月よくげつの一じつには『御返事ごへんじつてります』の葉書はがきた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
いま何處どこうちつて、お内儀かみさんも御健勝おまめか、小兒ちツさいのも出來できてか、いまわたしをりふし小川町をがはまち勸工塲くわんこうば見物ゆきまする度々たび/\もとのおみせがそつくり其儘そのまゝおな烟草店たばこみせ能登のとやといふにつてまするを
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このことがあつてからも、おきなはやはりたけつて、その/\をおくつてゐましたが、奇妙きみようなことには、おほくのたけるうちにふしふしとのあひだに、黄金おうごんがはひつてゐるたけつけることが度々たび/\ありました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
殿樣とのさま度々たび/\のおひとでございまして、おそりました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「濟みません、親分。度々たび/\御手數をかけて」
お舎弟様は文武の道にひいで、お智慧も有り、ず大殿様が御秘蔵の御方おんかた度々たび/\めのお言葉も有りました事は、父から聞いて居ります
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その成斎の弟子に、度々たび/\色街へ出掛けて、女狂ひに憂身をやつしてゐる男があつた。いろ/\と両親が異見をしてみても、一向効力きゝめが無いので
「おれだつて、金のある時は度々たび/\人に貸した事がある。然しだれも決してかへしたものがない。それだからおれは此通り愉快だ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
替て責られし故今は一めいあやふきとの事を妻のお節はきゝ及び有るにもあられぬ思ひなれば村役人倶々とも/″\お慈悲願ひに出けれども其度々たび/\役場にてしかりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(まだ、まよつてさつしやるかなう、二人ふたりとも——たびひとがの、あのわすぬまでは、おなこと度々たび/\ます。)
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うよ』とつてあいちやんは、度々たび/\それをてよ、御馳ごち——』ひかけてきふくちつぐんでしまひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
こゝに来ると、主観と客観、つまり前にも度々たび/\言つた自己の『自然』と他の『自然』との交錯が考へられて来る。自己が他へ離れ合つて行く形なども大切になつて来る。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
気候はいやにはだ寒くなつて、折々をり/\勝手口かつてぐち破障子やぶれしやうじから座敷ざしきの中まで吹き込んで来る風が、薄暗うすぐらつるしランプの火をば吹き消しさうにゆすると、度々たび/\、黒い油煙ゆえんがホヤをくもらして
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
直接毒蛇に関した話ではないが、じやに縁故がありつ西洋の文学書に度々たび/\引用せらるゝゴーゴンの伝説は、希臘神話中最も興味多き部分であるから、茲に少しく書いて置かうと思ふ。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
鹽尻の茶店ちやゝの爐に暖まり温飩うどん掻込かつこみながら是よりなら井まで馬車一輛雇ふ掛合を始む直段ねだん忽ち出來たれど馬車を引來らず遲し/\と度々たび/\の催促に馬車屋にてはやがてコチ/\とこはれ馬車を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
わが日本につぽん地震ぢしんくにといはれてゐる。また火山かざんくにともいはれてゐる。地震ぢしん火山かざんおほいからとて御國自慢おくにじまんにもなるまいし、つよ地震ぢしんはげしい噴火ふんか度々たび/\あるからとて、外國がいこくほこるにもあたるまい。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「いや。どうもかう度々たび/\宿舎をお引受ではおこまりでせう。あはゝゝ。」
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いままでに、度々たび/\はなししようとおもひましたが、御心配ごしんぱいをかけるのもどうかとおもつて、けることが出來できませんでした。じつまをしますと、わたしはこのくに人間にんげんではありません。つきみやこものでございます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
隨分ずゐぶん故郷こきようそらなつかしくなつたこと度々たび/\あつた——むかし友人ともだちことや——品川灣しながはわん朝景色あさげしきや——上野淺草うへのあさくさへん繁華にぎやかまちことや——新橋しんばし停車塲ステーシヨンことや——回向院ゑこうゐん相撲すまふことや——神樂坂かぐらざか縁日えんにちことや——よろづ朝報てうほう佛蘭西フランス小説せうせつことや——錦輝舘きんきくわん政談せいだん演説えんぜつことや——芝居しばゐこと浪花節なにはぶしこと
そんな事は度々たび/\聞いたが、最早二度と再び来ないが、田舎者にはアいう肌合はだあいな気象だから、肌は許さぬとかいう見識が有るから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これまで数へ切れないほど度々たび/\そんな眼つきで顔を見られた事のある舞台監督は、こんな場合にはどうしたらいいかといふことをよく知つてゐた。
きゝしなれば少しは心のみだれもせん此度吾助が兄君をがいせしはみな我身わがみより起りしことと思はるゝなり其のわけ日外いつぞやよりして吾助事我が身に度々たび/\不義を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あの女がもう一遍通ればい位に考へて、度々たび/\岡のうへを眺めたが、岡の上には人影もしなかつた。三四郎はそれが当然だと考へた。けれども矢張りしやがんでゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『でも!わたし度々たび/\してないねこてよ』とあいちやんははうとしたものゝ、『露出むきだしてるものはねこほかに!わたし是迄これまでたものゝうちで一ばん奇妙きめうなのは』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
意氣な身體付からだつきではなかつたが、小肥りの、いかにも顏色のいゝ、暖かさうな女で、然し指環を澤山はめた手先は、夕闇の長火鉢の上に差翳さしかざされる度々たび/\、いかにも白くしなやかに見えた。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「いや、もうあんな事は有りはしねえだ。あんな事が度々たび/\有つた日には、村は立つて行かねえだ。御方便な事には、あれからはいつも豊年で、今でア、村ア、あの時分より富貴かねもちに為つただ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
希臘ギリシヤの神話の中には度々たび/\毒蛇の話が出て来る。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
これは私がお母様の何時いつも大切に遊ばすの手箱の中へ入れて置く……きん、うも長い間度々たび/\照が来てお前のうちでも迷惑だろう
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)