あやま)” の例文
まあ僕にしてあやまちなしとすれば、君がこのことをよく考えてみるために、この後十年以上もの年月が、君のために与えられるだろう。
馬上の戦ひにしるしたるは作者のあやまり也、したがふて画者もあやまれる也、雪あさき国の人の画作なれば雪の実地をしらざるはうべ也
貝塚は如何にしてつくられたるか。すべてに通じて斯く斯くなりと斷言だんげんする事は出來ざれど、主として物捨て塲なりと思へばあやまり無し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
生涯のつつしみも守りもみがきも、もしその死をあやまてば、生涯の言行すべて真を失い、ふたたび生きてその汚名をぬぐい直すことはできない
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まさ秋霜しうさうとなるとも檻羊かんやうとなる勿れと此言や男子だんしたる者の本意ほんいと思ふはかへつて其方向をあやまるのもとにしてせいは善なる孩兒がいじも生立にしたがひ其質を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先驅さきがけひかり各自てんでかほ微明ほのあかるくして地平線上ちへいせんじやう輪郭りんくわくの一たんあらはさうとする時間じかんあやまらずに彼等かれらそろつて念佛ねんぶつとなへるはずなので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いはく、ひだりよ。羿げいすなはちゆみいてて、あやまつてみぎにあつ。かうべおさへてぢて終身不忘みををはるまでわすれずじゆつや、ぢたるにり。
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五間もある長竿で、一歩踏みあやまれば溺れねばならないほどの奔流へ、胸のあたりまで立ち込む利根川の釣りは楽しみよりも苦しみであろう。
想い出 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
しかしここで述べたところの、この言葉の限られた意味を観るならば、この点について私は大きなあやまちは犯していないことがわかると思う。
この書一度ひとたび世にでてより、天下てんか後世こうせい史家しかをしてそのるところを確実かくじつにし、みずからあやまりまた人を誤るのうれいまぬかれしむるにるべし。
しかしその結果に對するきざしは彼には見えず、しかも彼の顏色が曇つて來るのを見て、私ははつとして私が全然あやまりをしたので
あえてとがむるにらずといえども、これを文字にしるして新聞紙上におおやけにするに至りては、つたえまた伝えて或は世人をあやまるの掛念けねんなきにあらず。
あか馬車ばしゃは、どうあやまったものか、いきおいよくはしってゆくと、そのがけからまっさかさまにうみなかへと四にんおんなたちをせたままちてしまいました。
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おそらくわたくし想像さうぞうあやまるまい、じつてんわざはひ人間にんげんちからおよところではないが、今更いまさらかゝ災難さいなんふとは、じつ無情なさけな次第しだいです。
記者連きしゃれんもこんな真夜中に自動車を飛ばして駈けつけたことが、のっけからそもそものあやまりだったような気がして、一緒に欠伸をもよおしたほどだった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このような場合のヨクは能の字を書くのが本当で、近ごろのように一点張いってんばりに良の字を書くのはあやまりである。これは can と good とを
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
老來精を養ふ爲に鳥兜とりかぶとの根を毒草と知りながら用ひ、ひそかに若返りを誇つてゐたところ、フト分量をあやまつて、一夜にして急死した例があります。
大学病院において、何々博士執刀のもとに、解剖して見ると、黒田名探偵の推断あやまらずという訳だね。轢死前すでに一種の毒薬を服用したらしい形跡がある。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今しも敵軍から打ち出した一弾は、照準しょうじゅんあやまたず、四つ目垣を通り越してきりの下葉を振い落して、第二の城壁すなわち竹垣に命中した。随分大きな音である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わがくにおいては餘震よしん恐怖きようふするねんとくつよいが、それはみぎ言葉上ことばじようあやまりによりても培養ばいようせられてゐるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「これはどうもとんだ失礼、覗きましたは私のあやまり、なにとぞご勘弁くださいますよう」葉之助はテレて謝った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とかくこの客気血気けっきがあれば考えにあやまりを生じやすい。一口ひとくちに熱心などと称するからよく聞こえるが、思慮のない熱心ほどおのれを害し人を害するものはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
し一歩をあやまらんか深谷中に滑落こつらくせんのみ、其危険きけんふべからず、あだかも四足獣の住所にことらずと云ふべし。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
つゆ草を花と思うはあやまりである。花では無い、あれは色に出た露のせいである。姿もろく命短く色美しい其面影は、人の地に見る刹那せつなの天の消息でなければならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかるに、このような、あるいさらに小さなものをもあきらかに見て、すこしもあやまらない人はむかしからけっして少くありません。この人たちは自分のこころをおさめたのです。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
マキアヴェリも宗教を政治の手段として用いることはたいせつだと認めているが、政治と宗教を混同することは、根本的にあやまりだということを説いているのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
近代青年に対するあなたの観察は勿論もちろん一部分に対するものとしてはあやまってはません。が比較的にって、近代の青年は案外真面目な思想を抱いているものが多いようです。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
予は決断致してあすにも交易を差し許して遣わすぞ。のう。多井、対馬の考えはあやまっておるか
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
ここに天皇が天下の氏々の人々の、氏姓うじかばねあやまつているのをお歎きになつて、大和のウマカシの言八十禍津日ことやそまがつひさきにクカを据えて、天下の臣民たちの氏姓をお定めになりました。
シロクシナスを牢舎らうやれたのは、あやまり、第一国内こくないで一とう学者がくしやといふ立派りつぱの人物を押込おしこめて置くといふは悪かつた、とお心附こゝろづきになりましたから、早速さつそくシロクシナスをゆるして
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
つまり古今集こきんしゆう時分じぶんには、うたはかういふものだとちひさな標準ひようじゆんをきめてかゝつて、それにあてはまるものをあつめたから、規模きぼちひさい、方向ほうこうあやまつたものが、おほたわけであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
美徳びとくはふあやまれば惡徳あくとくくわし、惡徳あくとく用處ようしょ威嚴ゐげんしゃうず。この孱弱かよわい、幼稚いとけなはなぶさうちどく宿よどれば藥力やくりきもある、いでは身體中からだぢゅうなぐさむれども、むるときは心臟しんざうともに五くわんころす。
しばらくして、ラランはそのよはつたからだをみなみけて、あつ印度インドはうへふらふらんでゐたが、ガンガといふ大河たいか上流じようりうで、火傷やけどしたくちかわきを湿うるほさうとしてあやまつておぼんでしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
さすればよしやおいとが芸者になつたにしたところで、こんなに悲惨みじめな目にはずともんだであらう。あゝじつ取返とりかへしのつかない事をした。一生の方針をあやまつたと感じた。母親が急ににくくなる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
柱にもたれて身は力なくさげたるかしら少しあげながらにらむに、浮世のいざこざ知らぬ顔の彫像寛々かんかんとして大空に月のすめごとたたずむ気高さ、見るから我胸の疑惑はずかしく、ホッと息き、アヽあやまてり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かく読み終れる妾の顔に包むとすれど不快の色や見えたりけん、客はいとど面目なき体にて、アアあやまてり疎忽そこつ千万せんばんなりき。ただ貴嬢の振舞を聞きて、直ちに醜婦と思い取れる事の恥かしさよ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
小説家という者はつねに好い気な人間であって、時に屡々しばしばこれは面白いと勘違いをしてくだらない事を長々と書くあやまちを何時も繰り返していて、それにとっ掴まると、まんまとやり損うのである。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それに、説明を買ってでたレスラアB氏の説明が出鱈目でたらめで、たとえば≪すけ≫と読むべきところを≪助人じょにん≫と読みあげるようなあやまりが、ぼくには奇妙な哀愁あいしゅうとなって、引きこまれるのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
さま/″\な批評ひゝやうもてあそばれながら、繪葉書のうへいて行く女優たちの顏!これらがやがていろもなくもなくなつていつた時には一體いつたいどうなるのでせう? それはたとひ、虚榮きよえいあやまられたその不明ふめい
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
我輩はこの常則を尋ねて今より約二千五百年前の春秋戦国の歴史に鑑戒かんかいを求むる事は決してあやまりに非ず、しかして王道は最後の勝利であるけれども、かも積習の致すところ容易に改むるを得ずして
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
六郎は東京にて山岡鉄舟のじゅくに入りて、撃剣げきけんを学び、木村氏は熊谷の裁判所に出勤しゅっきんしたりしに、或る日六郎たづねきて、撃剣の時あやまりて肋骨あばらぼね一本折りたれば、しばしおん身がもとにて保養ほようしたしという。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かの六〇八雲たつ国は六一ぎたはてにありて、ここには百里をへだつると聞けば、けふとも定めがたきに、其のしを見ても六二物すともおそからじ。左門云ふ。赤穴はまことある武士もののべなれば必ずちぎりあやまらじ。
それは、金吾の理性として、いつもあやまたぬ正しい歩行であったでしょうが、理性必ずしも物を間違えない限りもありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は前回ぜんくわいに述べし如く乳房の突起は實際じつさいの形に非ずして女性ぢよせいの印しなりとしんずる者なるが、此事にしてあやまり無くば
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
はじめてその事実のあやまりを摘発てきはつして世に発表したのは私であって、記事の題は、「実物上から潮来出島いたこでじま俚謡りよう
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「人間で、あやまり易いものは、神で、完全なものゝみに安心してまかせて置くべき力を、僣取せんしゆしてはならないのです。」
とゞまりて嗚呼あゝあやまてり/\更に心を入替いれかへて義理有親の御安心あそばす樣に是からは屹度きつと辛抱しんばうする程に其方そち安心あんしんして呉と天窓あたまを下げてわびるにぞ久八は其手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
俳諧はいかい季寄きよせ雪車そりを冬とするはあやまれり。さればとて雪中の物なれば春のには似気にげなし。古哥にも多くは冬によめり、じつにはたがふとも冬として可なり。
もし地震ぢしん初動しよどうがこの程度ていどつよさをしめしたならば、これは非常ひじよう地震ぢしんであると判斷はんだんしてあやまりはないであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
或は遠方より熊を銃殺じゆうさつする位なり、し命中あやまりてくまのがるれば之を追捕するのいうなきなり、而るに秋田若くは越後の猟人年々此山奥に入り来りてりやうするを見れば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)