さは)” の例文
新字:
八五郎は、裏口へ寄り沿つたまゝ、彌造の中から取つて置きの拳固げんこを出して、そうツと撫でるやうに、二つ三つ雨戸へさはつて見ました。
しな硬着かうちやくした身體からだげて立膝たてひざにして棺桶くわんをけれられた。くびふたさはるのでほねくぢけるまでおさへつけられてすくみがけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ひとり叫びていひけるは、ボッカよ何をかなせる、あぎとを鳴らすもなほ足らずとて吠ゆるか、汝にさはるは何の鬼ぞや 一〇六—一〇八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
もつと先祖せんぞ武家出ぶけでであらうが、如何いかにもくだんの、ならばが、ともだちのみゝさはつて聞苦きゝぐるしい。自然しぜんにつきあつてあそぶものもすくなくなる。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうして癇癪の強い、ほんの僅かな外氣に當るか、冷たい指さきにさはられても、直ぐ四十度近くの高熱を喚び起した程、危險極まる兒であつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
それからまた、彼女は、私の頬をやさしく、人差指でさはつて、「いゝ子におなりなさい。」と云つて、私をミラア先生と一緒にひきさがらせた。
しゆの色の薔薇ばらの花、ひつじが、戀に惱んではたけてゐる姿、羊牧ひつじかひはゆきずりに匂を吸ふ、山羊やぎはおまへにさはつてゆく、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
門口かどぐちだれ所有しよいうともかないやなぎが一ぽんあつて、ながえだほとんのきさはりさうにかぜかれるさま宗助そうすけた。には東京とうきやうちがつて、すこしはとゝのつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あののさめるやうなあか蛇苺へびいちごうまいことをつてよくとうさんをさそひましたが、そればかりはさはりませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
れから二人ふたり其處そこて、クレムリにき、大砲王たいはうわう(巨大な砲)と大鐘王たいしようわう(巨大な鐘、モスクワの二大名物)とを見物けんぶつし、ゆびさはつてたりした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
此の二三日いとのやうな小雨こさめがひツきりなしに降續いて、濕氣しつきは骨のずゐまでも浸潤しんじゆんしたかと思はれるばかりだ、柱も疊も惡く濕氣しつけて、さはるとべと/\する。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
うさぎは、はつとおもひました。そしてみんなのみゝをみました。それから自分じぶんのをさはつてみました。なるほどながい!
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
瀧口時頼が發心ほつしんせしと、誰れ言ふとなく大奧おほおくに傳はりて、さなきだに口善惡くちさがなき女房共、寄るとさはると瀧口が噂に、横笛とゞろく胸をおさへて蔭ながら樣子を聞けば
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
彼奴きやつる、どうして彼奴きやつ自分じぶんさきさきへとはるだらう、ま/\しいやつだとおほいしやくさはつたが、さりとて引返ひきかへすのはいやだし、如何どうしてれやうと
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
... いゝえ!』といたましげなこゑあいちやんがさけびました、『またさはつたかしら!』ねずみいけみづみだし、一生懸命しやうけんめいおよらうとするのを、あいちやんはしづかにめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
雨の音、雨の音。私は直と其のまゝ筆を執り、手頸がさはると其のたひらかなふわりとした感覺の云ふに云はれず快い白紙の上に、墨の色も濃く、「雨の音」と大きく三字、表題を書き記した。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
引明ひきあけて金三四十兩懷中ふところに入れ立上たちあがる處に横面よこつらひやりとさはる物あり何かとうたがひ見れば縮緬ちりめん單物ひとへもの浴衣ゆかた二三枚と倶に衣紋竹えもんだけに掛てありしにぞどくくはさら迄と是をも引外ひきはづして懷中へ捻込ねぢこみ四邊あたりうかゞひ人足の絶間たえま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さはらぬ神にたゝりなし』といつて、その頃の人に共通の逃避的たうひてきな心持で、平次は殊勝らしく部屋の隅つこに小さくなつたのです。
おつぎはうしろはうかくれてた。勘次かんじはしを一ぽんつて危險あぶなものにでもさはるやうに平椀ひらわん馬鈴薯じやがたらいもそのさきしては一ぱいくちいて頬張ほゝばつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
風入かぜいれのまども、正西まにしけて、夕日ゆふひのほとぼりははげしくとも、なみにもこほりにもれとてさはると、爪下つました廂屋根ひさしやねは、さすがに夜露よつゆつめたいのであつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私は頬を彼女の唇に近よせたけれど、彼女はそれにさはらうともしなかつた。彼女は私が寢床にもたれかゝつて抑へつけると云つて、再び水を欲しがつた。
肉色の薔薇ばらの花、慈悲の女神めがみのやうに肉色の薔薇ばらの花、若々わかわかしてゐて味の無いおまへの肌の悲みに、この口をさはらせておくれ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いて周圍しうゐからあきらめさせられたやうがして、縁側えんがはさむいのがなほのことしやくさはつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『さうとも、兒玉こだまさんぼくつたことはおさはらんやうにねがひます。何卒どうぞその大島小學校おほしませうがくかうのことをはなしてもらひたいものです』とハーバードは前言ぜんげんのお謝罪わびにオックスホードに贊成さんせいした。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ポケツトに出し忘れた土産物の卷烟草があつたのに手がさはつた。
羊羹 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
ああ、ああ、舶來のリイダアの新らしい版畫はんぐわの手さはり。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「でも、何かお氣にさはツたのかも知れないよ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さはつたりしちやいけません。それぢやお孃さん、もうお目にかゝる折もないでせう。お身體に氣をつけて、お丈夫で暮して下さい
豐岡とよをかからあひだ夕雲ゆふぐも低迷ていめいして小浪さゝなみ浮織うきおりもんいた、漫々まん/\たる練絹ねりぎぬに、汽車きしやまどからをのばせば、あし葉越はごしに、さはるとれさうなおもひとほつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ぶく/\やりたけりやへえつたはうがえゝや」船頭せんどうはそつけなくいつておもむろにさをてる。船底ふなぞこさはつてつて身體からだがぐらりとうしろたふさうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それはいけない——私はあなたにさはり、あなたの聲を聞き、あなたのこゝにゐる樂しさ、あなたの慰めの快さを感じたのだ。この喜びを棄てることは出來ない。
草色くさいろ薔薇ばらの花、海の色の薔薇ばらの花、ああうみのあやしい妖女シレエヌほぞ草色くさいろ薔薇ばらの花、波に漂ふ不思議な珠玉しゆぎよく、指が一寸ちつとさはると、おまへは唯の水になつてしまふ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
喧嘩好けんくわずきの少年せうねん、おまけに何時いつくらすの一ばんめてて、試驗しけんときかならず最優等さいゝうとう成績せいせきところから教員けうゐん自分じぶん高慢かうまんしやくさはり、生徒せいと自分じぶん壓制あつせいしやくさはり、自分じぶんにはどうしても人氣にんきうすい。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
手にてさはればそのたねは
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「いろ/\訊きたいことがあるんだが、——第一にお前はお喜代をどう思つてゐた。人柄とか、お前へのさはりとか、隱さずに言つて貰ひたいが——」
うすると此方こつち引手茶屋ひきてぢやや女房かみさん先方むかうしやくさはらせたから、「てますか。」とつたんだらう。てますかとつたものを、たれないとはふはない。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大村兵庫は痛いところにさはられて、ムズムズして居りますが、平次の調子によどみがないのと、一つも嘘が交らないので、口の出しやうがありません。
おとがひをすくつて、そらして、ふッさりとあるかみおび結目むすびめさはるまで、いたいけなかほ仰向あふむけた。いろしろい、うつくしいだけれど、左右さいうともわづらつてる。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、私の頭は、相手の懷中のあたりにさはつたやうでした。無我夢中でしたが、それでも夢のやうに、何んか良い匂ひがプーンとして來たやうで」
ぞんじのとほり、品行方正ひんかうはうせいてんは、ともだちが受合うけあふが、按摩あんまいたつては、しかだんじて處女しよぢよである。錢湯せんたうでながしをつても、ばんとうにかたさはらせたことさへない。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「すると、宵に顏を見せて、千兩箱を眺めるかさはるかしたのは、その寺男と小坊主が二人といふわけですね、親分」
多時しばらくにはへもられなからうとおもはれましたので、そつつゆなかを、はなさはつて歩行あるいてたんでございます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その底に附いた新しい土を爪でさはつて見て、それからたつた二た間しかない家の中を、疾風しつぷうの如く調べあげました。
これだけの人參にんじん一人ちよつとさはつて一舐ひとなめしても大抵たいてい病人びやうにんたすかる。で、それだけ代物しろものる、合點がつてんか。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「有難いツ、錢形の親分が來る迄は、誰にもさはらしちやならねエ——と、隱居は路地一パイにはびこつて居ますよ」
およぐやうなる姿すがたして、右手めてさぐれば、竹垣たけがきれたるが、する/\とさはる。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何をするかと思ふと、蝋燭に溜つたしんる爲で、眞鍮しんちゆうはさみを取つて、燭臺の上へ持つて行きましたが、何うしたはずみか、たもとさはつて一基の燭臺を横倒しにしてしまひました。
わかかあさんにさはるまいと、ひよいとこしかしてた、はずみに、婦人ふじんうへにかざした蛇目傘じやのめがさしたはひつて、あたまつかへた。ガサリとおとすと、ひゞきに、一時ひとときの、うつゝのねむりさますであらう。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから一刻近くも經つて熱で蝋燭がやはらかくなると、私がさはつただけで倒れて提灯を燒いた
道具屋だうぐや女房かみさんは、十錢じつせん値切ねぎつたのをしやくさはらせたのにちがひない。」
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)