船頭せんどう)” の例文
船頭せんどうさんに話しかけられて、はじめて我れにかえりながら、しかし目だけは、まだ立ちさりかねている浜べの人たちからはなさずに
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ついては是迄これまで勘定かんじょうは、大阪に着たら中津の倉屋敷まで取りに来い、この荷物だけは預けて行くからと云うと、船頭せんどうが中々聞かない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たのまでは叶ふまじといへば吉兵衞はそれは兎も角も船頭せんどうまかせなればよきやうはからひ給へとて其議に決し此所こゝにて水差をたのみ江戸まはりとぞ定めける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
船頭せんどうくら小屋こやをがらつとけてまたがらつとぢた。おつぎはしばらつててそれからそく/\とふねつないだあたりへりた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
船頭せんどうたちに、患者をはこんでくれるようにと、こんこんとたのみましたが、船頭はいやがって、がんとしておうじてくれません。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
北八きたはちは、にやり/\、中流ちうりういたころほ一錢蒸汽いつせんじようき餘波よはきたる、ぴツたり突伏つツぷしてしまふ。あぶねえといふは船頭せんどうこゑ、ヒヤアときもひやす。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
船頭せんどう水夫かこも昂奮したが、船上の一座もすくんだように重くなって、立ち上る元気よりは、こわいものを見る心持が鉛のようになる。
と、ふたりが話すのを聞いていたものか、波打ちぎわにあげてあった空船からぶねのなかから、ムックリ起きあがったひとりの船頭せんどう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へさきの高い五大力の上には鉢巻をした船頭せんどう一人ひとり一丈余りのを押してゐた。それからおかみさんらしい女が一人御亭主ごていしゆに負けずに竿を差してゐた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、じぶんはねむっている王さまの頭をつかみ、船頭せんどうには両足をつかませて、ふたりでわかい王さまを海のなかへほうりこんでしまいました。
赤間あかまの関で役人にとらえられすでにあやうきところをのがれ、船頭せんどうをだましてようやくこの島に着くことができました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
すみ黒々くろ/″\かれた『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだててられると、船頭せんどうはまたふねかへさないわけにかなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
人見は小船の船頭せんどうに手つだわせて、大トランクを船につみ、じぶんも、船頭といっしょに乗りこみました。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やっとおもいきってげますと、こんどはあたまにかぶったはちがじゃまになって、しずんでもしずんでもがりました。するとそこへふねをこいで一人ひとり船頭せんどうつけて
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ただ一人の船頭せんどうともに立ってぐ、これもほとんど動かない。塔橋の欄干らんかんのあたりには白き影がちらちらする、大方おおかたかもめであろう。見渡したところすべての物が静かである。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
露店ろてんが並んで立ち食いの客を待っている。売っているものは言わずもがなで、食ってる人は大概船頭せんどう船方ふなかたたぐいにきまっている。たい比良目ひらめ海鰻あなご章魚たこが、そこらに投げ出してある。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
よくおばあさんや、おじいさんからはなしいている人買ひとかぶねひめさまがさらわれて、白帆しらほってあるふねせられて、くらい、荒海あらうみなかおにのような船頭せんどうがれてゆくのでありました。
夕焼け物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かァわをとォおれば船頭せんどうさんがとォめる……
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かれ鬼怒川きぬがは高瀬船たかせぶね船頭せんどう衣物きものかとおもやうくも/\ぎだらけな、それも自分じぶんつくろつて清潔きれいあらざらした仕事衣しごとぎ裾長すそなが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
面白おもしろい! たびのものぢやが、それいた。此方こなた手遊てあそびにこしらえる、五位鷺ごゐさぎ船頭せんどうは、つばさ舵取かぢとり、くちばしいで、みづなかくとな………
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
スルトそのつな引張ひっぱって呉れ、其方そっちの処を如何どうして呉れと、船頭せんどうが何か騒ぎ立て乗組のりくみの私に頼むから、ヨシ来たとうので纜を引張たり柱を起したり
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
またそのおかげでなずにすんだということも、すっかりわすれてしまって、船頭せんどうがすきになってしまったのです。
まだ十二、三と見える船頭せんどうは、小さなからだ全体を動かしてしすすめながら、まだ遠い岬の村にながめいった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「湖水に落ちておぼれたものがある、それを救ってやるいそぎの船をりたい。これ、だれかおらぬか、船頭せんどうは!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つく極月ごくげつ廿八日は吉日なりとて西濱にて新艘卸しんざうおろしをなし大坂へまはして一商賣ひとしやうばいせんつもりなりし此事はかねて吉兵衞も承知しようちの事なれば心に思ふ樣是より西濱にしはまに到り船頭せんどう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
船頭せんどうさおりなほしてふねさうとするのを、玄竹げんちくは、『あゝ、こら、て/\。』とめて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
勘次かんじ船頭せんどうわざ自分じぶんきのめしたものゝやうにかんじてひど手頼たよりない心持こゝろもちがした。かれ凝然ぢつかゞんで船頭せんどうあやつまゝまかせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
船頭せんどうさん、渡場わたしば一番いちばん川幅かははゞひろいのは何處どこだい。此處こゝだね。何町位なんちやうぐらゐあるねといふ。つばかわきてはず、煙管きせるしたがふるへる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私も飲みたくてたまらぬけれども、金がないからただ宮島を見たばかりで、船にかえって来てむしゃ/\船のめしくってるから、船頭せんどうもこんな客はやだろう
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「まだよいなのに、矢走やばせ(矢橋または八馳)へかよう船がないはずはない。そのへんの小屋に、船頭せんどうがいるであろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もよほしけるが三日もくれはや四日となりにける此日は早天さうてんより長閑のどかにて四方晴渡はれわたり海上青疊あをだたみを敷たる如くあをめきわたりければ吉兵衞も船頭せんどう船表ふなおもてへ出て四方をながなみしづかなる有樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夫は、航海こうかいのあいだに、きゅうに病気びょうきになりまして、んでしまいました。もしこの感心な船頭せんどうが手をかしてくれませんでしたら、あたしはとんだめにあうところでした。
その翌朝よくちょう、思いたった大石先生は、みさきの村へ船で出かけた。船頭せんどうは小ツルの父親とおなじく、わたし舟をしたり、車をひいたりするのが渡世とせいの、一本松の村のチリリンヤであった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
船頭せんどう憎々にく/\しさうに、武士ぶし後姿うしろすがた見詰みつめながら、ふねした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
はじめは、不思議ふしぎ機関からくり藩主様とのさま御前ごぜんせいふて、おしろされさしけえの、其時そのときこさへたのが、五位鷺ごゐさぎ船頭せんどうぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これ船中せんちうはなしたがね、船頭せんどうはじめ——白癡たはけめ、をんなさそはれて、駈落かけおち眞似まねがしたいのか——で、ふねひとぐるみ、うして奈落ならくさかさま落込おちこんだんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの……木葉船こツぱぶねはの、ちやん自然ひとりでうごくでがすよ……土地とちのものはつとります。で、さぎ船頭せんどう渾名あだなするだ。それ、さしつたとほり、五位鷺ごゐさぎぐべいがね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みねながめて、やまたゝずんだときもあり、きしづたひに川船かはぶねつて船頭せんどうもなしにながれてくのをたり、そろつて、すつとけて、二人ふたりとこはしらからこともある。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかひと筑前ちくぜん出生うまれ博多はかた孫一まごいち水主かこでね、十九のとし、……七ねんまへ福岡藩ふくをかはんこめんだ、千六百こく大船たいせんに、乘組のりくみ人數にんず船頭せんどうとも二十にん寶暦はうれきうまとしぐわつ六日むいか
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はツ/\とやつして、漫々まん/\たるおほきなかはの——それは庄川しやうかはであらうとおもふ——はしで、がつかりしてよわつてところを、船頭せんどうなかば好意かういせられて、ながれくだりに伏木ふしきわたつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船頭せんどう馬方うまかた木樵きこり機業場はたおりば女工ぢよこうなど、あるがなかに、木挽こびきうたうたはなかつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一人女ひとりをんな」「一人坊主ひとりばうず」は、暴風あれか、火災くわさいか、難破なんぱか、いづれにもせよ危險きけんありて、ふねおそふのてうなりと言傳いひつたへて、船頭せんどういたこれめり。其日そのひ加能丸かのうまる偶然ぐうぜんにん旅僧たびそうせたり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まゆしろ船頭せんどうぐにまかせ、蒔繪まきゑ調度てうどに、待乳山まつちやまかげめて、三日月みかづきせたる風情ふぜい敷波しきなみはないろたつみやこごとし。ひとさけくるへるをりから、ふとちすましたるつゞみゆる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)